163 / 164
第3章
第二話~凛音の放送を聞いた俺は、二つの選択肢の中から向かう場所を選ぶことになりました~
しおりを挟む
第二話
『さて、ここで皆に話をしようと思うわ』
『私の愛しい霧都との……蜜月の時間の話を……ね』
生徒会室にあるスピーカーから、凛音のそんな言葉が聞こえてきた。
ふ、ふざけんなよ凛音!!公開しないって約束したじゃないか!!
そこまで考えたところで、俺は致命的なミスに気がついた。
そ、そうだ……凛音が『公開しない』と言ったのは、俺と凛音がキスをしている瞬間を撮られた『静流さんの写真』だけ。
その後の『行為』に関しては『凛音の一存』に託されている。
だとするならば、凛音のこの行為は『約束破り』にはならない……
「あー……この手段の選ばなさ。昔の詩織ちゃんを思い出すね……」
「あの時の詩織さんはクラスの空気だけで戦ってたからな。その時の反省を活かして、今度は全校生徒の空気を味方につけるように助言をしたんだろうな」
「な、何を呑気なことを言ってるんですか!!ど、どうしたらいいんですか!!??」
軽く遠い目をして、昔を懐かしんでいる先輩二人に俺は食ってかかった。
そんなことをしている間も、スピーカーからは俺が凛音に『言わされた愛の言葉とキスシーン』が垂れ流しになっている。
「そうだな。この後桜井が向かわなければならない場所には二つの選択肢がある」
「ふ、二つの……選択肢……」
そう言って桐崎先輩は俺に二本の指を立てて、選択肢の内訳を話し始めた。
「一つ目の選択肢は『放送室へと向かい、南野凛音の放送を辞めさせる。もしくは直接彼女を糾弾する』と言うもの」
「そ、そうですね」
「まぁ、この選択肢はお前がもう向かったところで手遅れ。南野凛音に対して、お前の気持ちを吐露するだけの行為に終わるだろうけどな」
やれやれ。と言った感じで手を広げる先輩。
確かに、もうここまで話が進んでしまった以上
仮に凛音の放送を辞めさせたとしても、意味なんか無い。
「まぁ、お前が南野の所に行けば『これがやらされたことであって本意では無い』と言うシーンを他の生徒に見せることが出来る。と言うメリットがあるな」
「……な、なるほど。それは確かにそうですね」
放送室から出て来た凛音に、俺がブチ切れて居るシーンを生徒たちに見せれば、これが『ヤラセ』であることが示せるはずだ。どっちかと言えば、こちらの方が重要に思える。
「今後のことを考えるなら、南野凛音の場所へと向かうことが選択肢の一つだ」
「そして、もう一つは……『永久の居る場所へと向かう』ですね?」
俺がそう言うと、桐崎先輩はそうだ。という意味を込めて首を縦に振った。
「そうだ。北島永久の居場所は雫からメッセージが来ている。やはりお前のクラスに居るようだ。今はとても落ち込んでいる様子らしい。まぁ……当然だよな?」
俺を責め立てるような視線。俺はその視線から逃げるように目を逸らしてしまった。
「はぁ……もう一つの選択肢は『北島永久の場所へと向かい、彼女に本当のことを話すこと』これをすれば全校生徒には誤解を与えたままだが、北島永久とその周りの人間の誤解は解ける」
「……はい」
「ただ、北島永久は『お前が南野凛音に対して行為に及ばないといけない事情があった』という事を察してはいた」
つまり、俺が今永久の元に向かわなくても、永久は俺が凛音に対して『こういう言葉を吐きながらキスをする』と言うことをしなければならない状況下であったことを予想をしていた。
ってことだ。
「だからこそ、お前は北島永久に話さなければならなかったし、理解を求めていれば何の問題にもならなかったのにな。はぁ……まぁ仕方ないことだがな」
「す、すみません……」
そうだ。俺が永久に事情を話していれば、俺が向かう場所は凛音いる放送室の一択だけ。
そこに行って凛音を糾弾すればいいだけだった。
そこには永久だって味方として居てくれたかも知れない。
「さて。桜井霧都。この話を聞いて、お前は『どちらの選択肢』を選ぶんだ?」
桐崎先輩はそう言うと、俺の前に再び指を二本立てた。
「一つ目は北島永久に対しての説明を放棄して、南野凛音の元へと向かい、今後を見据えてこの放送がヤラセであると告知する」
「二つ目は全校生徒への説明を放棄して、北島永久の元へと向かい、この放送が本意では無いとお前の口からしっかりと説明をすること」
「どちらかを選べ。悩んでる時間は無いぞ。直ぐにどちらかに向かわなければ『どちらも手遅れ』になるからな」
確かに。悩んでいる時間は……もう無い。
後悔している時間すら、もう残されていない。
今すぐ選んでどちらかに向かわなければならない!!
…………………………………………。
そして、俺は自分が向かうべき場所を決めた。
「……ありがとうございます。桐崎先輩に藤崎先輩。俺が向かう場所を決めました」
「そうか。どちらを選んでも一長一短だ。悩んで結論が出せないことが一番の悪手だ。この時点でお前は『正解のひとつ』を選んだと言える」
「あはは……私は何もしてないけどね。まぁ桜井くんの骨くらいは拾ってあげるし、凛音ちゃんには校内放送を私物化した罰としてダッシュ100本を課そうと思うかな!!」
俺は二人に背中を向けて、生徒会室の扉に手をかける。
そして、その扉を開け放ったあと二人の方を向いて、
『行先』を告げた。
「南野凛音の場所に行ってきます」
「……そうか」
「うん……それも正解のひとつだよ」
こうして、俺は生徒会室を飛び出して、凛音の居る放送室へと走って行った。
…………本当に、俺は馬鹿で、自分のことしか考えてない愚か者だと言うことを、痛いほど知ることになった。
『さて、ここで皆に話をしようと思うわ』
『私の愛しい霧都との……蜜月の時間の話を……ね』
生徒会室にあるスピーカーから、凛音のそんな言葉が聞こえてきた。
ふ、ふざけんなよ凛音!!公開しないって約束したじゃないか!!
そこまで考えたところで、俺は致命的なミスに気がついた。
そ、そうだ……凛音が『公開しない』と言ったのは、俺と凛音がキスをしている瞬間を撮られた『静流さんの写真』だけ。
その後の『行為』に関しては『凛音の一存』に託されている。
だとするならば、凛音のこの行為は『約束破り』にはならない……
「あー……この手段の選ばなさ。昔の詩織ちゃんを思い出すね……」
「あの時の詩織さんはクラスの空気だけで戦ってたからな。その時の反省を活かして、今度は全校生徒の空気を味方につけるように助言をしたんだろうな」
「な、何を呑気なことを言ってるんですか!!ど、どうしたらいいんですか!!??」
軽く遠い目をして、昔を懐かしんでいる先輩二人に俺は食ってかかった。
そんなことをしている間も、スピーカーからは俺が凛音に『言わされた愛の言葉とキスシーン』が垂れ流しになっている。
「そうだな。この後桜井が向かわなければならない場所には二つの選択肢がある」
「ふ、二つの……選択肢……」
そう言って桐崎先輩は俺に二本の指を立てて、選択肢の内訳を話し始めた。
「一つ目の選択肢は『放送室へと向かい、南野凛音の放送を辞めさせる。もしくは直接彼女を糾弾する』と言うもの」
「そ、そうですね」
「まぁ、この選択肢はお前がもう向かったところで手遅れ。南野凛音に対して、お前の気持ちを吐露するだけの行為に終わるだろうけどな」
やれやれ。と言った感じで手を広げる先輩。
確かに、もうここまで話が進んでしまった以上
仮に凛音の放送を辞めさせたとしても、意味なんか無い。
「まぁ、お前が南野の所に行けば『これがやらされたことであって本意では無い』と言うシーンを他の生徒に見せることが出来る。と言うメリットがあるな」
「……な、なるほど。それは確かにそうですね」
放送室から出て来た凛音に、俺がブチ切れて居るシーンを生徒たちに見せれば、これが『ヤラセ』であることが示せるはずだ。どっちかと言えば、こちらの方が重要に思える。
「今後のことを考えるなら、南野凛音の場所へと向かうことが選択肢の一つだ」
「そして、もう一つは……『永久の居る場所へと向かう』ですね?」
俺がそう言うと、桐崎先輩はそうだ。という意味を込めて首を縦に振った。
「そうだ。北島永久の居場所は雫からメッセージが来ている。やはりお前のクラスに居るようだ。今はとても落ち込んでいる様子らしい。まぁ……当然だよな?」
俺を責め立てるような視線。俺はその視線から逃げるように目を逸らしてしまった。
「はぁ……もう一つの選択肢は『北島永久の場所へと向かい、彼女に本当のことを話すこと』これをすれば全校生徒には誤解を与えたままだが、北島永久とその周りの人間の誤解は解ける」
「……はい」
「ただ、北島永久は『お前が南野凛音に対して行為に及ばないといけない事情があった』という事を察してはいた」
つまり、俺が今永久の元に向かわなくても、永久は俺が凛音に対して『こういう言葉を吐きながらキスをする』と言うことをしなければならない状況下であったことを予想をしていた。
ってことだ。
「だからこそ、お前は北島永久に話さなければならなかったし、理解を求めていれば何の問題にもならなかったのにな。はぁ……まぁ仕方ないことだがな」
「す、すみません……」
そうだ。俺が永久に事情を話していれば、俺が向かう場所は凛音いる放送室の一択だけ。
そこに行って凛音を糾弾すればいいだけだった。
そこには永久だって味方として居てくれたかも知れない。
「さて。桜井霧都。この話を聞いて、お前は『どちらの選択肢』を選ぶんだ?」
桐崎先輩はそう言うと、俺の前に再び指を二本立てた。
「一つ目は北島永久に対しての説明を放棄して、南野凛音の元へと向かい、今後を見据えてこの放送がヤラセであると告知する」
「二つ目は全校生徒への説明を放棄して、北島永久の元へと向かい、この放送が本意では無いとお前の口からしっかりと説明をすること」
「どちらかを選べ。悩んでる時間は無いぞ。直ぐにどちらかに向かわなければ『どちらも手遅れ』になるからな」
確かに。悩んでいる時間は……もう無い。
後悔している時間すら、もう残されていない。
今すぐ選んでどちらかに向かわなければならない!!
…………………………………………。
そして、俺は自分が向かうべき場所を決めた。
「……ありがとうございます。桐崎先輩に藤崎先輩。俺が向かう場所を決めました」
「そうか。どちらを選んでも一長一短だ。悩んで結論が出せないことが一番の悪手だ。この時点でお前は『正解のひとつ』を選んだと言える」
「あはは……私は何もしてないけどね。まぁ桜井くんの骨くらいは拾ってあげるし、凛音ちゃんには校内放送を私物化した罰としてダッシュ100本を課そうと思うかな!!」
俺は二人に背中を向けて、生徒会室の扉に手をかける。
そして、その扉を開け放ったあと二人の方を向いて、
『行先』を告げた。
「南野凛音の場所に行ってきます」
「……そうか」
「うん……それも正解のひとつだよ」
こうして、俺は生徒会室を飛び出して、凛音の居る放送室へと走って行った。
…………本当に、俺は馬鹿で、自分のことしか考えてない愚か者だと言うことを、痛いほど知ることになった。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
君と僕の一周年記念日に君がラブホテルで寝取らていた件について~ドロドロの日々~
ねんごろ
恋愛
一周年記念は地獄へと変わった。
僕はどうしていけばいいんだろう。
どうやってこの日々を生きていけばいいんだろう。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
悲しいことがあった。そんなときに3年間続いていた彼女を寝取られた。僕はもう何を信じたらいいのか分からなくなってしまいそうだ。
ねんごろ
恋愛
大学生の主人公の両親と兄弟が交通事故で亡くなった。電話で死を知らされても、主人公には実感がわかない。3日が過ぎ、やっと現実を受け入れ始める。家族の追悼や手続きに追われる中で、日常生活にも少しずつ戻っていく。大切な家族を失った主人公は、今までの大学生活を後悔し、人生の有限性と無常性を自覚するようになる。そんな折、久しぶりに連絡をとった恋人の部屋を心配して訪ねてみると、そこには予期せぬ光景が待っていた。家族の死に直面し、人生の意味を問い直す青年の姿が描かれる。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる