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第2章 後編

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 中間テストが終了してから一週間が経った。
 試験が終わったあとの凛音の家で起きたことに関しては、永久には話してはいない。

 話せるはずもない事だ。
 こんなこと……相談することすら出来ない……

『凛音さんの家で何かありましたか?』
『いや、特には無かったよ。ご飯を食べて凛音の部屋でゲームをしたくらいかな。二人で遊びたいから仮病を使ったって話らしいよ』

 そう俺が永久に話をすると、彼女は少しだけ悲しそうな表情をしたあとに
『……わかりました。霧都が話せるようになったら話してください』
 と言ってそれ以上追求してくることは無かった。

 多分。俺が隠し事をしていることはバレてしまっている。それでも聞かないでいてくれているのは、永久の優しさだろう。

 そんな彼女に罪悪感を抱きながら、俺はこの一週間を過ごしてきた。

 そして、件の凛音とは何度も……何度も……キスを要求された。

 キス以上のことは永久としていない。
 だからそれ以上のことは要求もされていない。

『好きよ……霧都。ふふふ。貴方がこれ以上をしたいと思ってくれるなら、しても構わないわよ?』
『……ふざけるなよ。そんなこと、する訳が無いだろ』
『あら。残念ね。でもいいわ。今はキスだけで我慢してあげるわよ』

 毎晩……毎晩……凛音の家に呼び出され、キスをさせられる。
 そんな日々を一週間続けてきた。

 だが、今日は『中間テストの結果発表』がされる。

 凛音が負ければ全てが終わる。
 そうしたら全部話して永久に土下座をしよう。

 永久が負けることは考えられない。だからこそ、俺はこの一週間を歯を食いしばって耐えてきた。

 放課後。俺たちは中間テストの結果が貼りだされた場所へとやって来た。

「緊張しますね……私、こんなにテストの結果発表で緊張をしているのは受験の時以来です」
「大丈夫だよ、永久。俺は君を信じているから」

 俺はそう言って彼女の手を握り締める。

 そして、俺と永久は中間テストの順位を確認した。


 一位  700点 北島永久
 一位  700点 南野凛音
 三位  698点 桐崎雫

 ………………………………

 九位 685点 桜井霧都

「両者満点……」
「…………そうですか。やはりこの結果になりましたか」

 そう言う永久の目からは真意は読み取れなかった。

「ふん。やっぱりこの結果になったわね」
「凛音……」
「凛音さん」

 結果発表を確認した俺たちの隣に、凛音が腕組みをしながら立っていた。

「それで、永久はどうするつもりかしら。この結果になった場合の話をしてなかったわね」

 凛音のその言葉に、永久は少しだけ思案する。

 そして一つだけ提案をした。

「夏休み。霧都が望んだ一日だけ。凛音さんに霧都を貸し出します」

「……え?」
「あら。太っ腹ね。痛み分けで何もなし。それすら覚悟してたわよ」

「凛音さんがものすごい覚悟をしてこのテストに望んだのは周知の事実です。この結果で『凛音さんに対して何もしなかった』では私の立場が悪くなります」
「永久……」
「ふん。なるほど、わかってるじゃない。何もしてこなかったら私がそういう手だてに出てたってのも予想してたみたいね」

「夏休み。霧都には凛音さんと過ごす一日以外はすべて私と過ごしてもらいます。それで構いませんね?」
「あぁそれで構わないよ」

 永久の言葉に、俺は微塵も迷うことなく首を縦に振る。

「私と霧都は『大人の階段』を登るつもりです。凛音さんは指をくわえているといいですよ」

 永久のその言葉。
 本来なら凛音が打ちひしがれる言葉だろう。
 だが、凛音はその言葉を受けて……ニヤリと笑った。

「えぇ構わないわよ。せいぜい二人で楽しむといいわ」

 凛音はそう言うと、くるりと踵を返した。

「私はこの後黒瀬先輩と話をしてくるわ」
「詩織先輩と!!??」

 声を荒らげる永久に、凛音は振り向きながら笑みで返す。

「じゃあね、永久。貴女が霧都と『一線を超えることを』楽しみに待っているわよ」

 凛音はそう言い残してその場を後にした。

「……何で!!何で!!何で!!」

 取り乱す永久の身体を俺は抱きしめる。

「どうして凛音さんはあんなに余裕なんですか!!おかしいです!!試験が終わった日、霧都と凛音さんに何があったんですか!!」
「…………ごめん。話せない」

 俺のその言葉に、永久は絶望したような表情を浮かべた。

 彼女にこんな表情をさせてしまっていることに、俺は心が痛くなる。
 いや……ダメだ。この思考は。
 今、いちばん辛いのは……永久なんだから……

「……離してください」
「永久……」

 俺は彼女からそう言われて、永久の身体を自由にする。

「少し……頭を冷やしてきます……」

 永久はそう言うと、俺の元から歩いて行った。

 どうしたらいい……俺は……どうしたらいいんだよ……


 解決案が思い浮かばないまま立ち尽す俺のスマホが、メッセージの着信を知らせるように震えた。

「……メッセージ?一体誰なんだ……」

 スマホを取りだした俺の目には一人の先輩の名前とメッセージの内容が映った。


『桐崎 悠斗 生徒会長』

『桜井霧都。今すぐ生徒会室に来い』

 俺はスマホを握りしめて生徒会室へと走った。



 十年間片思いしていた幼馴染に告白したら「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」と振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

第二章後編

 ~完~


第三章へ続く
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