十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶

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第2章 後編

最終話 ~永久と凛音の戦い・決戦の中間テスト~ その⑤

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 最終話  その⑤


 永久視点



「ただいま」
「お帰り、永久。テストはどうだった?」
「うん。今日の分は完璧に解けたと思ってるよ。明日に備えて早めにお風呂に入って寝る予定かな」

 家に着いた私はお母さんにそう返事をしながら、持っていたカバンを置いて、ハンガーに制服の上着を掛けました。

「南野さんと点数勝負をしてるのよね。負けるんじゃないわよ」
「当然だよ。まぁ敵はとても強いけど、油断しなければ負けないと思ってる」

 体調を崩してるように見えた凛音さん。でもそれは『仮病』だってことを霧都は話してました。
 彼女が一体どんな意図でそんなことをしてきたのかは不明です。
 あの人の性格からして、仮病を使って私の油断を誘う。なんて姑息な真似はしないと思っています。

 だとすると一体何を考えているんでしょうか?
 もしかしたら、お母さんなら何かに気が付けるかも知れませんね。

 そう考えた私は、お母さんに凛音さんのことを話してみることにしました。

「ねぇ、お母さん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど良いかな?」
「構わないわよ、何かしら永久」

 夕飯の支度にひと段落がついた頃を見計らって、私はお母さんに話しかけました。
 頃合が良かったのでしょうね。お母さんは了承を示してくれました。

 テーブルに麦茶を用意して、私とお母さんは向かい合って話すことにしました。

「今日ね、凛音さんが教室に来た時に『見るからに体調不良です』って格好で登校してきたんだよね」
「うん。それで?」

「私は最初は風邪をひいたのかな?と思ったの。まぁ凛音さんがどんな体調だろうが手を抜くつもりは微塵も無いからアレだけどね」
「当然よね。寧ろ追い詰められた女の子の力は凄いわよ。脅威度が上がったと思うべきね」
「うん。私もそのつもりだった」

 流石お母さん。私が考えていたことをしっかりと理解してくれてる。

 そして、私はそのままお母さんに話を続けました。

「でもね、霧都に言わせると凛音さんの体調不良は『仮病』だって話なんだよね」
「……なるほど。先に聞いておくわ。南野さんは仮病を使って永久の油断を誘う。そんな姑息なことをするような性格じゃないわよね?」
「うん。私もそう思ってる。そんな性格してないよ」

 私がそう答えると、お母さんは少しだけ考えるような仕草をした後に私に言ってきた。

「きっとそれは静流さんの入れ知恵ね」
「……えと、確か凛音さんのお母さんだよね」

 予想外の名前の登場に、私は少し驚いてしまいました。

「南野さんが自分でそんなことをする人間では無い以上、向こうのお母さんの入れ知恵と見て間違いないわ。彼女が何を思って娘にそんなことをやらせたのかはわからないけど、予想をすることは出来るわね」
「良いよ。お母さんの予想を聞かせて欲しい」

 私がそう言うと、お母さんは麦茶を一口飲んだあと言葉を返しました。

「霧都くんを自宅に誘き寄せるためよ」
「……え?」

 霧都を?でも、彼には凛音さんの『仮病』は見抜かれてる。

『調子が悪いからお見舞いに来て欲しい』

 なんて理由を出しても、嘘と見抜かれてるなら霧都を呼ぶことは不可能だと思うけど……

 でも、お母さんが予想してたやり方は、私が考えていたこととはまるで違うやり方でした。

「南野さんの仮病を見抜いているのは霧都くんのみ。そしてそれを知ってるのはそれを彼から聞いた永久だけ」
「そ、そうだね……」

「クラスメイトや先生はそれを知らないわけよ。だったら『霧都くんが南野さんをお見舞いに行く雰囲気』を彼女は作ってくるはずよ」
「……そ、そんなやり方が」

 そうです。凛音さんは空気を作るのがとても上手な方。そして味方を増やすのも得意な人です。
 あの日の放送のように、自分を味方するような人を沢山用意して、霧都が『仮病』とわかっていても凛音さんの家に行かざるをえないようにするのは難しくないはずです。

「家に霧都くんを呼び出した後のことは……いえ、辞めておきましょう」
「……え?」

 お母さんはそこまで話したあと、言葉を続けるのを辞めました。

「ごめんなさい、永久。全部、私の予想の話よ。そうなるかもしれないって話で貴女を惑わせるのは得策ではないわ。それよりも永久は目の前のテストに集中しなさい。負けたら元も子もないんだから」
「……そうだね」

 確かにそうです。もしかしたら『こういう事態を引き起こすこと』も凛音さん……静流さんの策略なのかもしれないですからね。

「もし、私が言う通りにことが進んだとしても、貴女は霧都くんが南野さんの家に行くのを引き止めてはダメよ」
「うん。それはわかってる。幼馴染の絆を引き裂くような真似をするのは得策では無いから。だよね?」
「そうよ。正妻は貴女。彼女は所詮は幼馴染よ。正妻としての余裕を見せてあげないとダメな場面もあるわ」

『正妻としての余裕』

 詩織先輩が話していたことですね。

 そこまで話したあと、お母さんはニコリと笑って言いました。

「今日の夕飯は貴女の好きなハンバーグカレーよ」
「やったね!!」

「たくさん食べて、早めにお風呂に入って、ゆっくりと寝なさい。明日が勝負なんだからね」
「うん!!わかってるよお母さん!!」

 凛音さんと静流さんが考えてることが何となくわかったのは収穫です。
 やっぱりお母さんに話したのは正解でした。

 私は帰ってきたお父さんと一緒にご飯を食べたあと、お風呂に入って、霧都に『おやすみなさい』の電話をした後に眠りにつきました。
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