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第2章 後編
第十話 ~放課後の時間を使って石崎に勉強を教えることになりました~
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第十話
「ねぇねぇ石崎くん。確か雪菜さんって勉強の成績は悪くなかった……と言うか、良かったと思うんだけど?」
石崎に対してそう切り出す桐崎さん。彼女は確か二人と中学時代からの知り合いだったよな。
成績のこととかも話してたのかもしれないな。
俺は石崎に小テストの答案を返しながら言葉を続ける。
「まぁ勉強を教えてもらう。って名目で一緒に居る時間を作るのもひとつの手だと思うけどな」
まだ凛音のことが好きだった中学時代の俺が、こいつに頭を下げて勉強を教えて貰ってたみたいにな。
なんて思いながら石崎に問いかけると、
「いや……これは俺のわがままなんだけど、惚れた女に弱みは見せたくないからな。と言うか、向こうも俺が勉強が得意じゃないことは知ってるけど、ここまでとは思ってないはずだからな」
「なるほどな。そういう気持ちはわからないでもないな」
俺はそう言うと、最後に残ったチャーハンを食べ終えた。
そして、軽く水を飲みながら問いかける。
「それで、石崎としては俺たちが放課後にやってる勉強会に参加して、学力の向上を図りたい。ってことで良いのか?」
「そういうこと。お前たちが放課後に集まって勉強をしてるのは知ってたからな。ちょうど今日から試験期間に入るから部活も休みになるしな」
そう。今までは部活が休みの時に参加していた凛音だったけど、今日からの一週間は毎日参加すると話をしていた。
そんな石崎に対して凛音が声を掛ける。
「あんたの考えはわかったわ。でも、参加するだけで学力が上がると思ってるなら違うと思うわよ。少なくとも私たちは60点を80点にする。80点を95点以上にする。そういう勉強をしてるわ。0点を脱却するってのはしてないのよ」
「確かに凛音さんの言う通りですね。点数を伸ばす勉強の仕方とは別のアプローチが必要だと思います」
凛音と永久の言うように点数を伸ばすためには、如何にミスを無くすかがポイントになる。
計算ミスや覚え違い。そういうのを減らすことが点数アップに繋がるからだ。
だが、石崎の場合はそもそも0点だからどっからどう手をつけたら良いかわからない……
そう思っていたところで、流が声を上げた。
「石崎くん。そもそも君がその点数になったのはいつからなのかな?少なくとも中学時代からそんな点数だったとは思えないけど」
「そうだな。中学時代も勉強が出来たわけじゃないけど、平均点の下くらいは取れてたよ。40~50点くらいだな。高校に入ってからだよ、この点数になったのは」
流の言葉に、石崎は少しだけ恥ずかしそうに言葉を返す。
「確かに。高校に入ってからめちゃくちゃ勉強が難しくなったよな……」
そもそも海皇高校は県内でも指折りの進学校だからな。
特待生でも一般学生でも授業内容は同じだ。
そうなると、平均点の下レベルの学力だった石崎が点を取れないのは理解出来た。
「なるほどね。あんたのことを考えるなら、中学時代からの勉強を最初からやり直していく方が良さそうだけど、試験までは一週間しか無いわ。そんなことをしてる時間は無いわね」
「そうですね。試験範囲に絞って最低限『赤点は取らない』そういう勉強をする必要がありそうですね」
「その、協力してくれるってことでいいのか……?」
前向きに考えを出している凛音と永久に、石崎がおずおずとそう問い掛けた。
「私が『中学時代に霧都に付きっきりで勉強を教えていた時』にもそうだったけど、他人に勉強を教えるのは自分の為にもなるのよ。私は構わないわ」
ふふん。と薄い胸を張りながら凛音がそう答えた。
中学時代に付きっきりで俺に勉強を教えていた。
と言うフレーズを強調している凛音。
永久さんが少しだけハイライトの消えた瞳でこっちを見ていたけど、少しだけ視線を外しておいた……
「そうですね。私が『凛音さんが部活で居ない時に霧都くんに勉強を教えている時』も自分の為にもなってますからね」
「……言うじゃない、永久」
「凛音さんは所詮、過去の女ですからね」
なんてやり取りをしている二人。
その様子を見ながら、石崎が俺に話し掛ける。
「……なぁ、桜井。お前はいつもこんな感じなのか?」
「ははは……そうだよ。今日は穏やかな方だと思うぞ」
桐崎さんからの静止が入らないからな。今日は穏やかだよ。
そんなことを思いながら言葉を返すと、石崎は笑いながら言葉を返す。
「お前も苦労してるんだな。色男も大変だな」
「0点男には負けるよ」
俺がそう切り返すと、石崎はケラケラと笑っていた。
パンパーン!!
俺たちの机に、桐崎さんが手を叩いた音がした。
あはは。教室で聞きなれた音。会話を辞めて彼女の方に視線を向ける。
「それじゃあ今日の放課後からは石崎くんを加えたメンツで勉強をしようか!!」
「そうだね。俺は賛成かな」
桐崎さんの言葉に、流がいち早く賛成を示した。
「私も賛成よ」
「はい。私も賛成です」
凛音と永久も賛成を示した。
残るは俺だけど、反対する理由がないな。
「俺も賛成だよ。テキトーに勉強をしててこの点数なら救いようが無いけど、真面目にやってるのにこれなら、力になりたいからな」
俺がそう言うと、石崎はほっとした様な表情を浮かべたあと頭を下げた。
「ありがとう、助かるよ。今日から一週間、よろしくお願いします!!」
でも、まずはどこから手をつければ良いんだろうな。
0点脱却の勉強法。ってのを軽く調べてみるか。
そんなことを考えながら、俺はコップの水を飲み干した。
「ねぇねぇ石崎くん。確か雪菜さんって勉強の成績は悪くなかった……と言うか、良かったと思うんだけど?」
石崎に対してそう切り出す桐崎さん。彼女は確か二人と中学時代からの知り合いだったよな。
成績のこととかも話してたのかもしれないな。
俺は石崎に小テストの答案を返しながら言葉を続ける。
「まぁ勉強を教えてもらう。って名目で一緒に居る時間を作るのもひとつの手だと思うけどな」
まだ凛音のことが好きだった中学時代の俺が、こいつに頭を下げて勉強を教えて貰ってたみたいにな。
なんて思いながら石崎に問いかけると、
「いや……これは俺のわがままなんだけど、惚れた女に弱みは見せたくないからな。と言うか、向こうも俺が勉強が得意じゃないことは知ってるけど、ここまでとは思ってないはずだからな」
「なるほどな。そういう気持ちはわからないでもないな」
俺はそう言うと、最後に残ったチャーハンを食べ終えた。
そして、軽く水を飲みながら問いかける。
「それで、石崎としては俺たちが放課後にやってる勉強会に参加して、学力の向上を図りたい。ってことで良いのか?」
「そういうこと。お前たちが放課後に集まって勉強をしてるのは知ってたからな。ちょうど今日から試験期間に入るから部活も休みになるしな」
そう。今までは部活が休みの時に参加していた凛音だったけど、今日からの一週間は毎日参加すると話をしていた。
そんな石崎に対して凛音が声を掛ける。
「あんたの考えはわかったわ。でも、参加するだけで学力が上がると思ってるなら違うと思うわよ。少なくとも私たちは60点を80点にする。80点を95点以上にする。そういう勉強をしてるわ。0点を脱却するってのはしてないのよ」
「確かに凛音さんの言う通りですね。点数を伸ばす勉強の仕方とは別のアプローチが必要だと思います」
凛音と永久の言うように点数を伸ばすためには、如何にミスを無くすかがポイントになる。
計算ミスや覚え違い。そういうのを減らすことが点数アップに繋がるからだ。
だが、石崎の場合はそもそも0点だからどっからどう手をつけたら良いかわからない……
そう思っていたところで、流が声を上げた。
「石崎くん。そもそも君がその点数になったのはいつからなのかな?少なくとも中学時代からそんな点数だったとは思えないけど」
「そうだな。中学時代も勉強が出来たわけじゃないけど、平均点の下くらいは取れてたよ。40~50点くらいだな。高校に入ってからだよ、この点数になったのは」
流の言葉に、石崎は少しだけ恥ずかしそうに言葉を返す。
「確かに。高校に入ってからめちゃくちゃ勉強が難しくなったよな……」
そもそも海皇高校は県内でも指折りの進学校だからな。
特待生でも一般学生でも授業内容は同じだ。
そうなると、平均点の下レベルの学力だった石崎が点を取れないのは理解出来た。
「なるほどね。あんたのことを考えるなら、中学時代からの勉強を最初からやり直していく方が良さそうだけど、試験までは一週間しか無いわ。そんなことをしてる時間は無いわね」
「そうですね。試験範囲に絞って最低限『赤点は取らない』そういう勉強をする必要がありそうですね」
「その、協力してくれるってことでいいのか……?」
前向きに考えを出している凛音と永久に、石崎がおずおずとそう問い掛けた。
「私が『中学時代に霧都に付きっきりで勉強を教えていた時』にもそうだったけど、他人に勉強を教えるのは自分の為にもなるのよ。私は構わないわ」
ふふん。と薄い胸を張りながら凛音がそう答えた。
中学時代に付きっきりで俺に勉強を教えていた。
と言うフレーズを強調している凛音。
永久さんが少しだけハイライトの消えた瞳でこっちを見ていたけど、少しだけ視線を外しておいた……
「そうですね。私が『凛音さんが部活で居ない時に霧都くんに勉強を教えている時』も自分の為にもなってますからね」
「……言うじゃない、永久」
「凛音さんは所詮、過去の女ですからね」
なんてやり取りをしている二人。
その様子を見ながら、石崎が俺に話し掛ける。
「……なぁ、桜井。お前はいつもこんな感じなのか?」
「ははは……そうだよ。今日は穏やかな方だと思うぞ」
桐崎さんからの静止が入らないからな。今日は穏やかだよ。
そんなことを思いながら言葉を返すと、石崎は笑いながら言葉を返す。
「お前も苦労してるんだな。色男も大変だな」
「0点男には負けるよ」
俺がそう切り返すと、石崎はケラケラと笑っていた。
パンパーン!!
俺たちの机に、桐崎さんが手を叩いた音がした。
あはは。教室で聞きなれた音。会話を辞めて彼女の方に視線を向ける。
「それじゃあ今日の放課後からは石崎くんを加えたメンツで勉強をしようか!!」
「そうだね。俺は賛成かな」
桐崎さんの言葉に、流がいち早く賛成を示した。
「私も賛成よ」
「はい。私も賛成です」
凛音と永久も賛成を示した。
残るは俺だけど、反対する理由がないな。
「俺も賛成だよ。テキトーに勉強をしててこの点数なら救いようが無いけど、真面目にやってるのにこれなら、力になりたいからな」
俺がそう言うと、石崎はほっとした様な表情を浮かべたあと頭を下げた。
「ありがとう、助かるよ。今日から一週間、よろしくお願いします!!」
でも、まずはどこから手をつければ良いんだろうな。
0点脱却の勉強法。ってのを軽く調べてみるか。
そんなことを考えながら、俺はコップの水を飲み干した。
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