十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶

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第2章 後編

第五話 ~食後に夜の散歩を永久さんとして、彼女の覚悟を聞きました~

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 第五話




「ふぅ……ご馳走様でした」

 最後の鉄火巻を飲み込んでから、俺はそう言って箸を置いた。

「あれだけあったお寿司だけど、やっぱり食べ盛りが一人いると無くなっちゃうわね」

 テーブルの上にあった寿司のパックは全て空になっていた。

 俺は食後の麦茶を飲みながら、いっぱいになったお腹をさすっていた。

「霧くんはあれで足りたかしら?」
「いや、この様子を見てくれよ。もう何も入らないよ」

 親父二人はこのあと酒を飲むからという理由でそこまで食べなかった。
 母親二人もそこまで食べる方では無い。
 子供四人であの量の寿司を食うのはなかなか気合いを入れないとキツかった。

「流石に私も少し食べすぎたわ……」
「私も同じです。残すのも勿体ないと思いましたからね……」
「私は程々にしておいたよ。お兄ちゃんが頑張ってくれるって信じてたから!!」
「あはは……とりあえず、勿体ないことにはならなくて良かったよ」

 俺はそう言いながら、時計を確認する。

 時刻は二十時になっていた。

「腹ごなしに少し外を歩いてこようと思うんだ」
「あ、それでしたら私も付き合いますね」

 俺の言葉に永久さんが続いた。

「私も着いて……」
「凛音ちゃん!!ちょっと試験勉強で分からないことがあるから教えて欲しいんだよね!!」

「え、ちょ……美鈴!!??貴女めちゃくちゃ頭良いでしょ!!何が分からないって言うのよ!!」
「あはは!!いーからいーから!!」

 美鈴はそう言うと、凛音を連れて自室へと向かって行った。

 その時に、俺の方に向かってウィンクをひとつして行った。

『永久さんと仲良く散歩してきなよ?』

 って言われてるような気がした。

「あはは。じゃあ二人で外を歩いてこようか」
「はい。では行きましょう」

 俺と永久さんはそう言って、家の外へと出て行った。



「五月とはいえ、夜は少し肌寒いね」
「そうですね。ですが、私はこのくらいの方が過ごしやすくて好きです」

 俺と永久さんは手を繋ぎながら外を歩く。

 そして、俺は彼女に聞きたかったことを問いかけた。

「なぁ、永久さん。なんで今日は俺に凛音と帰れってお願いをしたんだ?」
「ふふふ。やっぱり聞かれますよね」

 俺の問い掛けに、永久さんは頬笑みを浮かべていた。

「少しだけ、座って話しませんか?」

 永久さんはそう言うと、公園のベンチを指さした。

「そうだね。俺としても異論は無いよ」
「ありがとうございます、霧都くん」

 俺と永久さんは公園へと入り中を進み、ベンチに座る。

「ふふふ。少し冷たいですね」
「ちょっとびっくりしたよね」

 そんな話をしたあと、永久さんは切り出した。

「凛音さんと放課後に話をしました。そして、その場で彼女の覚悟を聞きました」
「……そうか」

 俺が相槌をひとつ入れると彼女は話を続けた。

「私は霧都くんが好きです。でも、貴方を信じる気持ちが足りてなかったと思っています」

「貴方の手を離したら、私ではなく凛音さんの所に行ってしまう。そんな気持ちがありました」

「……そんなことはありえないよ。俺の気持ちはもう既に全て君のものだよ」

 俺の言葉に、永久さんはふわりと微笑んだ。

「ですから、私は今回、貴方の手を離してみたんです」
「それが、俺に対して凛音と帰宅して欲しいって言うお願いだったんだね」

「はい。ですが、貴方はちゃんと私のところに戻ってきてくれました。凛音さんからの誘いにも乗らずにいてくれました。私はとても嬉しかったです。そして、安心もしました」
「君の信頼に答えられて良かったよ」
  
「試すような真似をして申し訳ございません。ですが、これで私の懸念は無くなりました」

 永久さんはそう言うと、俺の目を見て言葉を続けた。

「これから、学校では凛音さんと『幼馴染として仲良くする』こういうことが増えると思ってます。私はそれを容認します」
「……そうか」

「そうしなければならないと思ってますから。凛音さんの放送の影響もあり、霧都くんは凛音さんに対して雑な扱いが出来ません。彼女である私がそれを許している。そう言うパフォーマンスは必要です」
「確かにそうだね」

「以前の私なら、それを許すことが出来ませんでした。でも、今の私なら貴方を信じることが出来てます。凛音さんと仲良さそうな姿を見せられても、霧都くんの一番は私なのだと、彼女は私なのだと思えます」
「永久さんの気持ち。覚悟は伝わったよ」

 俺はそう言って、彼女の身体を抱きしめる。

「俺は君のことを心の底から愛している。その上で、君との幸せな日常のために、必要だから凛音とは『幼馴染』として接する」
「私も霧都くんのことを心の底から愛しています。その上で、貴方との幸せな日常の為に、霧都くんが凛音さんと『幼馴染』として仲良くすることを容認します」

 俺たちはそう言って、唇を重ね合わせる。

 思い出の公園で、誓いを立てて、行為をする。

 そして、唇を離した俺は永久さんに伝える。

「こんなことをするのは君だけだからね?」
「ふふふ。私だって同じですよ」

「じゃあ、そろそろ家に戻ろうか」
「はい。今日はありがとうございました」

「どういたしまして。俺も君の気持ちが聞けて良かったよ」


 こうして、俺と永久さんは夜の散歩を終えた。




 二人で手を繋ぎながら歩いて家に戻ると、永久さんの両親がちょうど車で迎えに来た所だった。

「おかえりなさい、永久。それじゃあ帰りましょ?」
「うん。迎えに来てくれてありがとう、お父さんにお母さん」

 助手席から声を掛ける優美さんに、永久さんが答えた。

「バイバイ、永久さん。また明日」
「はい。さよなら霧都くん。また明日」

 車に乗り込んだ彼女にそう言って、俺は永久さんに別れを告げた。

 そして、俺は玄関の扉を開けて家の中に入る。


 すると、静流さんが頬笑みを浮かべながら俺の事を待っていた。

 はぁ……なるほど。彼女との交際を説得しなければならない『母親』はこっちの方だったな。

「霧都くん。『血の繋がったお母さん』と少しお話をしましょうか?」
「はい。了解ですよ、静流さん」

 まだまだ俺の夜は終わりそうになかった。

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