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第2章 後編

第四話 ~南野家と桜井家が食卓を囲むと、下ネタ談義に花が咲くのはいつもの事なのか……と思いました~

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 第四話



「じゃあ永久さん。行こうか」
「はい。お邪魔します」

 玄関先で彼女の両親と別れを告げ、俺は永久さんを連れて居間へと戻る。

「とても感じの良い両親だったね。今度はこちらから挨拶に行くことにしよう」
「そうですね。私も北島家のお風呂に興味が出てきましたから」
「永久さんの家のお風呂はホントすごいよ……」
「ふふふ。是非ともいらしてくださいね。家族一同、お待ちしておりますから」

 そんな会話を経て、居間の扉を開ける。

「はぁ……遅いわよ、霧都。もう私はお腹がぺこぺこよ」
「ごめんな、凛音。待たせて悪かったよ」

 俺がそう言うと、凛音はやれやれと手を広げた。

「まぁ、構わないわ。こうなるってのはわかってたし」
「あはは……」

 そして、そんな会話を凛音とする俺の横を抜けて、永久さんが前に出た。

「南野家の皆様、初めまして。桜井霧都くんと『結婚を前提に』お付き合いをしている北島永久と申します。招かれた身分でありながら、皆様をお待たせしてしまい、申し訳ございません」

 永久さんはそう言って頭を下げていた。

「気にしなくてもいいわよ、永久。招かれてるのはこちらも一緒よ。突然の事でびっくりしたでしょ。まぁ『霧都と付き合っていればこんなことは日常茶飯事』よ」

 しれっと『私は霧都と付き合いが長いのよアピール』を入れてくる凛音。

 しかし、永久さんは微笑みを浮かべながらそれに対して言葉を返す。

「ふふふ。そうですね。ですが『これから先』は招かれる身分ではなく、招く方にもなるかと思いますからね」

 過去のことではなく、未来のことを話していく永久さん。

 言葉は穏やかだけど、やっぱり二人の間では火花が散っていた……

「ほらほら。みんな早く席に着いてよ。凛音ちゃんだけじゃなくて、私だってお腹空いてるんだからね!!」
「あはは……ごめんな、美鈴」
「すみません、美鈴さん」
「ごめんね、美鈴。そうよね、早く食べることにしましょう」
「静流さんに、雅紀さんも待たせてすまなかったね」

「お気になさらずに、大樹さん。挨拶は大切ですからね。これから私たちとも長い付き合いになるのですから」

『私たちとも』か……

 俺は静流さんの口から出たその言葉に、まだまだ凛音と俺が一緒になることを諦めていないってことを理解した。

 身を引くつもりは微塵もない。そんな覚悟の現れ。

 そう聞こえた。


「さて、それじゃあ食べるとしようか」

 全員が椅子に座り、テーブルの上にはすごい量の寿司が広げられた。
 かっぱ巻きとか玉子とかの安そうな具材だけでなく、大トロとか中トロ。イクラやウニもある。なかなかの金額だったのは想像に難しくない。

「いただきます!!」

 と全員で声を揃えた後に、俺たちは寿司を食べ始めた。

「いつものように、わさびは全部抜いてもらってるからね。永久さん、必要だったら自分で使ってね」
「はい。ありがとうございます。実は私、わさびが苦手なので助かります」

 お袋のその言葉にお礼を言って、永久さんは自分の小皿に醤油だけを入れていた。

 俺はわさびが好きなので、醤油にわさびを溶いていった。

「ふーん?お子ちゃまなのね、永久の舌は。私はわさびを楽しめるわよ」

 凛音はそう言うと、自分の食べるイカの寿司の上にわさびをちょんと乗せた。
 こいつは『こっちの方が通なのよ!!』なんて言って寿司は食べている。

「なるほど。凛音さんはお胸はお子ちゃまですが、舌は大人なのですね」

 ぶふっ!!

 俺は思わずサーモンを吹き出しそうになるのを我慢した。

 チラリと凛音を見ると、なかなか酷い顔で永久さんを睨みつけていた。

「あ、あら……そう言う永久こそ、お胸は大人でも味覚はお子ちゃまなのね?」

 凛音のその言葉も、永久さんには何処吹く風。
 特に気にもせずに言葉を返した。

「ふふふ。ですが、あと三年もすればわさびを楽しめると私は思ってますから」
「あ、あらそう?私だって今は成長期よ。来年には貴女くらいのお胸になってるはずよ……」

 い、いや……それは難しいだろ……

 なんて思ってると、変なところから言葉が出てきた。

「残念だけど……凛音ちゃんのおっぱいはこれ以上育つのはちょっと難しいわね……」
「お、お母さん!?」

 静流さんのその言葉に、凛音は驚きの声を上げる。

「だって。中学生の頃から下着のサイズが変わってないじゃない?」

「あはは。男性陣はこれを聞いてても良いのか?」
「娘の事情をこうして耳にするのは些か問題があるとは思いますがね。ですが、これもまた話のタネですかね」

「お、お父さんたちは耳を塞いでなさいよ!!」
「あはは。じゃあ聞かなかったことにしておくよ」

 そんなやり取りをしてから、静流さんは凛音に提案した。

「実はね、凛音ちゃん。私のお胸も結婚してから大きくなったのよ」
「へ、へぇ……そ、そうなの。子供が出来ると大きくなるとは聞いたことがあるけど、まだ弟や妹は出来てないわよね」

 そう。凛音を全力で育てたいから。と言う理由で、静流さんは雅紀さんとの子供は作っていない。

「好きな人におっぱいを揉まれると大きくなる。そういう話は聞いたことがあるわよね?」
「し、静流さん!!??」

 声を大きくする雅紀さん。

 そ、そうか……やることはやってるよなぁ……

「あらあら。お二人は仲が良いんですねぇ」
「なるほど。雅紀さんもまだまだ現役でしたか」

 そんなことを言ってるうちの両親。

「触発されたりなんかしないでよ、お父さんにお母さん。私、隣の部屋に居るんだからね?」
「ふふふ……どうしましょうか、大樹さん?」
「あはは……美香さんがその気なら」

 ……や、辞めてくれないかなぁ

「ご、ごめんね、永久さん。食事中にこんな話をして」

 でも、こんな会話は『日常茶飯事』なんだよなぁ……

「ふふふ。私は楽しいですよ、霧都くん」
「そ、そう言ってくれると助かるかな……」

 そうしていると、静流さんからとんでもない言葉が放たれた。

「凛音ちゃんのおっぱいも、霧都くんに揉んでもらえば大きくなるかもしれないわよ?」
「なんてことを言ってるんですか、静流さん!?」

 ちょっと良くわからない言葉に、俺は声を荒らげた。

 隣の席の永久さんの目のハイライトが消えてる。

 怖い怖い怖い!!!!
 揉まないから!!そんなことはしないから!!

「霧都!!」

 凛音は俺を呼んでこっちを見た。

「あんたに私のおっぱいを揉ませてあげるわよ!!光栄に思いなさい!!」
「いらないから!!そんなのいらないから!!」

「なんでよ!!超絶美少女のこの私のおっぱいを揉ませてあげると言ってるのよ!!泣いて喜びなさい!!」
「何の罰ゲームだよ!!」

 そう言う俺の肩を、永久さんがちょんちょんと叩いた。

「ダメですからね?それに、揉むなら私のおっぱいにしてくださいね?」
「な、何言ってるのよ永久!!これ以上大きくなるつもりなの!?」

 凛音のその言葉に、永久さんはふわりと笑みを返した。

「凛音さん?貴女のおっぱいは『揉むほどない』と思いますが?」

「あらあら」
「あはは……」

 永久さんの言葉に、静流さんと雅紀さんが苦笑いをする。

「あ、あ、あ、あるに決まってるでしょ!!!!!!」


 そんな声が、桜井家の食卓に木霊した。


「はぁ……美味しい寿司なんだから……もっと味わって食べようぜ……」

 俺はそう呟きながら、イクラの寿司をわさび醤油に漬けてから口にした。

 あぁ……うめぇ……
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