十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶

文字の大きさ
上 下
118 / 164
第2章 後編

第二話 ~桜井家と南野家の夕飯に永久さんを呼ぶことになりました~

しおりを挟む
 第二話



 永久さんからの『お願い』で凛音と帰宅することを決めて『幼馴染』としての時間を彼女と過ごしながら家へと帰ってきた。



 凛音の自転車のサドルが盗まれる。と言う珍事があった為、久しぶりに彼女を後ろに乗せて来た。

 明日の朝の通学に関しては、何かをお願いされそうだったけど、永久さんにお願いされたのは、凛音との『帰宅』だけだ。
 登校に関してはお願いされて無い以上、永久さんとの『差』をつける意味でも、凛音からの誘いは断ることにしていた。

 そして、凛音と別れを告げ、家へと戻ろうとした俺と彼女の目の前に一台のタクシーが停った。

 窓から除く人影には見覚えがあった。


「……え?」
「も、もしかして……」

 タクシーのドアを開けて、一組の夫婦が姿を現した。

「こんにちは凛音ちゃん!!久しぶりね!!霧くんに彼女が出来ても仲良くしてくれててお母さんは嬉しいわ!!」
「霧都。あんな可愛い彼女が居るのに凛音ちゃんとも宜しくしようって言うのか?そう言うのが許されるのはライトノベルの中だけだぞ?」

「……お袋に親父。帰ってきたのか」
「美香さんと大樹おじさん……」

桜井大樹(さくらいたいき)と桜井美香(さくらいみか)

俺の親父とお袋だった。


「ねぇねぇ凛音ちゃん!!良かったら家に上がって行かない?」
「……え?」

「お寿司を買って帰ってきてんだ。良かったら南野家の皆さんと食べようと思ってね」

 親父はそう言って、かなりの量の寿司のパックを持ち上げて見せた。

「霧くんも良いでしょ?」
「はぁ……構わないよ。好きにしろよ」

 何を言ったって無駄なんだからさ。

 俺はそう思いながら、了承を示した。


 玄関の鍵を開けて、自宅の扉を開ける。

「ただいま」

 俺がそう言って家の中に入ると、美鈴が奥からやって来る音が聞こえた。

「おかえりなさい、お兄ちゃ…………え?」
「久しぶり、美鈴!!帰ってきたわよ!!」
「家を長く留守にして悪かったね。お寿司を買って帰ってきたから許して欲しいかな?」

 お袋と親父が美鈴に向かってそんな事を言っていた。

「お母さんにお父さん!!もー!!帰って来るなら言ってよねっていつも言ってるじゃん!!」
「あはは。ごめんね、美鈴」
「サプライズにしようといつも思ってるからね」

 悪びれもせずにそう言う両親に、美鈴は何を言っても無駄だと思ったのか、ため息をつきながら肩を落とした。

「はぁ…………夕飯の準備を始める前で本当に良かったよ。あと少し遅かったらシチューを作ってたよ」

「あら、残念。美鈴のシチューは美味しいわよね」
「お母さん。シチューは明日の楽しみにしようじゃないか」




 そんな会話をしたあと、俺たちは手洗いとうがいをしてから居間へと向かう。

 そして、椅子に座って常温の麦茶を飲みながら、両親に問いかける。

「今回はどのくらい家に居られるんだ?」
「しばらくはここに居られるぞ」
「そうね。仕事もようやくひと段落したからね」

「そうか。仕事お疲れ様、親父にお袋」

 俺がそう言って二人を労うと、二人は揃ってニヤリと笑った。

 どっかの生徒会長を思わせる笑い方だ。

 なんだろうな。この笑みを見ると嫌な予感しかしない。

「さて霧都。せっかくだから、夕飯に北島永久さんも呼びなさい」
「……え?」

「私も霧くんの彼女に会いたかったのよ!!」
「そ、そうか……」

「永久さんはとても良い人だよ!!会ったら二人も納得するよ!!」
「なるほど。美鈴防壁を突破してくる女性だったのか」
「美鈴がそう言うなら期待が出来るわね」

「は、話が進んでるけど……永久さんが無理って言ったら諦めろよな?」

 俺はそう言って、スマホを取りだした。

「ちょっと電話して聞いてみるよ」


 俺はそう言って永久さんに電話を掛ける。


 プル……ピ

 は、早い……

『もしもし。北島永久です。霧都くんですね』
「う、うん。そうだよ。今日も電話に出るのが早いね」

『ふふふ。霧都くんとのお話が楽しみですので待ちきれませんでした』
「そ、そうか……」

 俺はひとつ息を吐いてから本題に入る。

「その、今日なんだけどさ。今まで職場に缶詰になってた俺の両親が帰ってきたんだ」
『そうなんですね!!良かったですね』

「あはは。それでね、たくさん寿司を買ってきてるんだよね。親父とお袋は南野家と食べようって話をしててね」
『……へぇ。そうですか。やはり家族ぐるみの付き合いは強いですね』

 き、きっと今の永久さんの目のハイライトは消えてるだろうな……

 なんて思いながら、俺は話を続ける。

「俺の親父とお袋がさ、永久さんと会いたいって話をしてるんだ」
『行きます!!』

「…………え?」
『今から霧都くんのご自宅に伺わせてもらいますね!!』

「そ、その……永久さんの家の夕飯とか……」
『大丈夫です!!』

「結構遅いけどどうやってこっちに来るのかな……」
『今お母さんとお父さんがそばに居ますけど…………平気です!!そっちに送ってくれるそうです!!』

 北島家の本気がすごい……

『お父さんとお母さんは違うところで外食をするそうです。そちらでの食事会が終わったら迎えに来てくれるみたいです!!』
「い、至れり尽くせりだね……」

『なので、今からおめかししてそちらに行きますね!!』
「う、うん。待ってるね」

 ……ピ

 俺は永久さんとの通話を終えた。

「……えと。平気だってさ」
「うん。聞こえてたよ。なかなかアグレッシブなお嬢さんだね」
「まぁあのくらいじゃないと美鈴の防壁は越えられないわよ」
「私の代わりにお兄ちゃんと結婚しても良いと思えたのは、今のところ永久さんだけだからね!!」

「あら、凛音ちゃんは?」
「あはは!!凛音ちゃんは論外かな!!」

 お袋からの質問に、美鈴は笑いながらそう答えていた。

「霧都は凛音ちゃんと結婚すると思ってたけどな。現実は小説より奇なりとは良く言ったものだな」
「まぁ……色々とあったんだよ」

 俺は苦虫を噛み潰したような気分になりながら、そう言っておいた。


 さて、永久さんが来るならそれなりに準備をしておかないとな。

 俺は自室に戻って、身だしなみをしっかりと整えていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?

すず。
恋愛
体調を崩してしまった私 社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね) 診察室にいた医師は2つ年上の 幼馴染だった!? 診察室に居た医師(鈴音と幼馴染) 内科医 28歳 桐生慶太(けいた) ※お話に出てくるものは全て空想です 現実世界とは何も関係ないです ※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

処理中です...