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第2章 後編
凛音side ①
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凛音side ①
永久と別れたあと、私は荷物を取りに教室へと向かったわ。
教室の扉を開けると、中には霧都が居たわ。
恐らく、永久のことを待っていたのでしょうね。
「私と一緒に今日は帰宅する。その話は永久から聞いてるかしら?」
私がそう聞くと、霧都は首を縦に振ったわ。
「あぁ。さっき永久さんからメッセージが来たよ」
霧都はそう言うと、私の目を見て言ってきたわ。
「いつの間に、名前で呼ぶような関係になったんだ?」
「ふふふ。そうね。つい先程からよ。ちなみに向こうも私を名前で呼ぶようになったわよ」
「仲良くなった。そんな話じゃないんだろ?」
「当たり前じゃない。私と永久は『敵同士』そんな関係よ」
ただ、お互いを認めあった。それだけの事よ。
私がそう言うと、霧都は深くため息をついたわ。
「はぁ……わかったよ。じゃあ凛音。帰ろうぜ」
椅子から立ちがり、そういう霧都。
私も自分の席からカバンを手にして彼の隣に歩いて行く。
「そうね。どうかしら。昔みたいに手を繋いで帰る?」
そして、私が左手をヒラヒラさせると、霧都はその手を握ってきたわ。
「……え?」
「何驚いてるんだよ。幼馴染の時のようなことをしたい。お前が言ったことだろ?」
霧都はなんの事でも無いようにそう言ってきたわ。
「そ、そうね……昔はこうしてたわよね……」
「まぁ、どうせ自転車に乗って帰るからな。手を繋ぐって言ったって駐輪場の辺りまでだろ?」
「だ、誰かに見られてもいいの?」
私のその言葉に、霧都は少しだけ驚いたような表情をしてきたわ。
「意外だな。誰かに見られたいのは凛音の方かと思ってたけどな」
「た、確かに……変なことを言ったわ」
「ほら、暗くなる前に早く帰ろうぜ」
「そ、そうね……」
私たちはそう言って、教室を後にしたわ。
「あまり人は居ないわね」
「まぁそうだろ。帰宅時間からは外れてるからな。学校に残ってる人なんて数えるくらいだろ」
そんな会話をしながら、私と霧都は誰にも見られることも無く、下駄箱に着いたわ。
「残念だな。誰かに見られた方が都合が良かったけどな」
「……え?」
私は霧都のその言葉に疑問符を浮かべたわ。
「俺とお前が幼馴染として仲良くしてる。それを他人に見てもらった方が都合がいいからな」
「……そう」
……なるほどね。わかったわ。
霧都は私と永久に明確な『差』をつけて接することを決めたんだわ。
つまり、私には『過去にそうしてきたこと』を許容範囲として行うようにしている。
手を繋いだりするのは霧都にとっては『許容範囲』の行為ってことね。
私と霧都は上履きから靴に履き替えて、駐輪場へと向かったわ。
すると、ちょっと良くわからないことが起きてたわ。
「わ、私の自転車の『サドル』が無いわ……」
「な、なんでそんなことが起きてるんだよ……」
「し、知らないわよ!!パンクしてるとかならまだ嫌がらせとしてわかるわよ!!なんでサドルが盗まれてるのよ!!」
「いや……それも嫌がらせの一種だって聞いたことがあるぞ」
き、気持ち悪いわね!!私が座ってたものを盗むなんて……へ、変態よ!!
「ど、どうしましょう……帰れないわ……」
あ、歩いて帰るしかないかしらね……
なんて思ってると、
「仕方ねぇな。校則違反だし、道路交通法違反だけど、この場合は許されるだろ」
霧都はそう言うと、自分の自転車の鍵を外して私の前に来たわ。
「乗れよ。二人乗りして帰るぞ」
「……え?」
「なんだよ、良くやってただろ?いまさら後ろに乗るのが怖いとか言わないだろ」
「わ、わかったわ。お言葉に甘えるわね」
私がそう言うと、霧都は眉をしかめて言ってきたわ。
「なんだよ、気持ち悪いな。『あんたは私の足なんだからしっかりと自転車を漕ぎなさいよね!!』なんて昔から言ってたじゃねぇか」
「……あはは。そうよね」
本当に、霧都は私と『幼馴染』に戻るつもりなんだわ。
……そんなことはさせない。
私が『女』だってことを思い知らせてやるわよ!!
私は霧都の自転車の荷台の部分にカバンを敷いてから座ったわ。
直接座るとおしりが痛いし、立って乗るとスカートの中が見えてしまうわ。
「さぁ、漕ぎなさい!!」
「あいよ。久しぶりだからって落っこちるなよ」
私がそう言うと、霧都は自転車を発進させたわ。
「あはは!!速いわね!!中学の時より安定感があるわね」
「まぁな。それなりに鍛えてるからな」
流れていく景色を見ながら、私は霧都にそう言ったわ。
鍛えてる。わかってるわよ。私の目の前にある背中は、あの日よりも逞しくなっている。
そして、私はその背中を強く抱き締めたわ。
さぁ!!私の『女』を感じなさい!!
ギュッと霧都に私の胸を押し当てるわ。
…………。
………………。
……………………。
おかしいわね。なんのリアクションも無いわ。
「ね、ねぇ……霧都」
「ん?どうした、凛音。揺れてしりでも痛くなったか?」
「そ、そんなことは無いわよ!!な、何も感じないのかしら!?」
「え?いや……あぁ!!そういう事か!!」
霧都は何かがわかったかのように声を上げたわ。
そして、笑いながら私に言ってきたわ。
「永久さんならともかく、凛音が後ろから抱きついてきても、なんにも感じねぇよ」
「は、はぁ!!??馬鹿なこと言ってるんじゃないわよ!!不感症なんじゃないの!!!!」
「南野凛音さんは中学の時からお胸が成長してませんからね」
「敬語で言えば許されると思ってるんじゃないわよ!!」
「あはは。凛音はこれから成長期(笑)なんだろ?」
「笑ってるんじゃないわよ!!来年には永久位のサイズになってるはずだわ!!」
「(笑)」
笑ってるんじゃないわよ!!!!!!
そんなやり取りをしながら、私と霧都は家まで帰って来たわ。
「あいよ。到着だ」
「ありがとう、霧都。助かったわ」
私の家の前。つまり霧都の家の前に到着したわ。
「じゃあな、凛音。また明日。サドルとのことは雅紀さんか静流さんに相談しておけよ」
「そうね。その……もし良かったら明日の通学も……」
「ごめんな、凛音。それは出来ない」
「……え?」
私の言葉に、霧都は真剣な目で言ってきたわ。
「俺が永久さんに頼まれたのは、凛音と帰宅すること。通学は頼まれてない」
「あはは……そうね……」
そう。これが『差』ってやつね。
つい。楽しかったから忘れてたわ。
「明日のことは、悪いけど自分でなんとかしてくれ」
「えぇ、わかったわ。今日の帰宅だけでも助けてくれてありがとう、霧都」
私が霧都にそう言った時だった。
私たちの横に、一台のタクシーが停ったわ。
「……え?」
「も、もしかして……」
私と霧都は、タクシーから降りてきた夫婦に視線を向けたわ。
「こんにちは凛音ちゃん!!久しぶりね!!霧くんに彼女が出来ても仲良くしてくれててお母さんは嬉しいわ!!」
「霧都。あんな可愛い彼女が居るのに凛音ちゃんとも宜しくしようって言うのか?そう言うのが許されるのはライトノベルの中だけだぞ?」
「……お袋に親父。帰ってきたのか」
「美香(みか)さんと大樹(たいき)おじさん……」
霧都のお母さんとお父さんがタクシーから降りてそう言ってきたわ。
どうやら霧都が永久と付き合ってることも知ってるみたいね。
「ねぇねぇ凛音ちゃん!!良かったら家に上がって行かない?」
「……え?」
「お寿司を買って帰ってきてんだ。良かったら南野家の皆さんと食べようと思ってね」
大樹おじさんはそう言うと、お寿司が入ってる袋を私に見せてきた。
「霧くんも良いでしょ?」
「はぁ……構わないよ。好きにしろよ」
こうして、私は霧都の家で夕飯を食べることになったわ。
永久と別れたあと、私は荷物を取りに教室へと向かったわ。
教室の扉を開けると、中には霧都が居たわ。
恐らく、永久のことを待っていたのでしょうね。
「私と一緒に今日は帰宅する。その話は永久から聞いてるかしら?」
私がそう聞くと、霧都は首を縦に振ったわ。
「あぁ。さっき永久さんからメッセージが来たよ」
霧都はそう言うと、私の目を見て言ってきたわ。
「いつの間に、名前で呼ぶような関係になったんだ?」
「ふふふ。そうね。つい先程からよ。ちなみに向こうも私を名前で呼ぶようになったわよ」
「仲良くなった。そんな話じゃないんだろ?」
「当たり前じゃない。私と永久は『敵同士』そんな関係よ」
ただ、お互いを認めあった。それだけの事よ。
私がそう言うと、霧都は深くため息をついたわ。
「はぁ……わかったよ。じゃあ凛音。帰ろうぜ」
椅子から立ちがり、そういう霧都。
私も自分の席からカバンを手にして彼の隣に歩いて行く。
「そうね。どうかしら。昔みたいに手を繋いで帰る?」
そして、私が左手をヒラヒラさせると、霧都はその手を握ってきたわ。
「……え?」
「何驚いてるんだよ。幼馴染の時のようなことをしたい。お前が言ったことだろ?」
霧都はなんの事でも無いようにそう言ってきたわ。
「そ、そうね……昔はこうしてたわよね……」
「まぁ、どうせ自転車に乗って帰るからな。手を繋ぐって言ったって駐輪場の辺りまでだろ?」
「だ、誰かに見られてもいいの?」
私のその言葉に、霧都は少しだけ驚いたような表情をしてきたわ。
「意外だな。誰かに見られたいのは凛音の方かと思ってたけどな」
「た、確かに……変なことを言ったわ」
「ほら、暗くなる前に早く帰ろうぜ」
「そ、そうね……」
私たちはそう言って、教室を後にしたわ。
「あまり人は居ないわね」
「まぁそうだろ。帰宅時間からは外れてるからな。学校に残ってる人なんて数えるくらいだろ」
そんな会話をしながら、私と霧都は誰にも見られることも無く、下駄箱に着いたわ。
「残念だな。誰かに見られた方が都合が良かったけどな」
「……え?」
私は霧都のその言葉に疑問符を浮かべたわ。
「俺とお前が幼馴染として仲良くしてる。それを他人に見てもらった方が都合がいいからな」
「……そう」
……なるほどね。わかったわ。
霧都は私と永久に明確な『差』をつけて接することを決めたんだわ。
つまり、私には『過去にそうしてきたこと』を許容範囲として行うようにしている。
手を繋いだりするのは霧都にとっては『許容範囲』の行為ってことね。
私と霧都は上履きから靴に履き替えて、駐輪場へと向かったわ。
すると、ちょっと良くわからないことが起きてたわ。
「わ、私の自転車の『サドル』が無いわ……」
「な、なんでそんなことが起きてるんだよ……」
「し、知らないわよ!!パンクしてるとかならまだ嫌がらせとしてわかるわよ!!なんでサドルが盗まれてるのよ!!」
「いや……それも嫌がらせの一種だって聞いたことがあるぞ」
き、気持ち悪いわね!!私が座ってたものを盗むなんて……へ、変態よ!!
「ど、どうしましょう……帰れないわ……」
あ、歩いて帰るしかないかしらね……
なんて思ってると、
「仕方ねぇな。校則違反だし、道路交通法違反だけど、この場合は許されるだろ」
霧都はそう言うと、自分の自転車の鍵を外して私の前に来たわ。
「乗れよ。二人乗りして帰るぞ」
「……え?」
「なんだよ、良くやってただろ?いまさら後ろに乗るのが怖いとか言わないだろ」
「わ、わかったわ。お言葉に甘えるわね」
私がそう言うと、霧都は眉をしかめて言ってきたわ。
「なんだよ、気持ち悪いな。『あんたは私の足なんだからしっかりと自転車を漕ぎなさいよね!!』なんて昔から言ってたじゃねぇか」
「……あはは。そうよね」
本当に、霧都は私と『幼馴染』に戻るつもりなんだわ。
……そんなことはさせない。
私が『女』だってことを思い知らせてやるわよ!!
私は霧都の自転車の荷台の部分にカバンを敷いてから座ったわ。
直接座るとおしりが痛いし、立って乗るとスカートの中が見えてしまうわ。
「さぁ、漕ぎなさい!!」
「あいよ。久しぶりだからって落っこちるなよ」
私がそう言うと、霧都は自転車を発進させたわ。
「あはは!!速いわね!!中学の時より安定感があるわね」
「まぁな。それなりに鍛えてるからな」
流れていく景色を見ながら、私は霧都にそう言ったわ。
鍛えてる。わかってるわよ。私の目の前にある背中は、あの日よりも逞しくなっている。
そして、私はその背中を強く抱き締めたわ。
さぁ!!私の『女』を感じなさい!!
ギュッと霧都に私の胸を押し当てるわ。
…………。
………………。
……………………。
おかしいわね。なんのリアクションも無いわ。
「ね、ねぇ……霧都」
「ん?どうした、凛音。揺れてしりでも痛くなったか?」
「そ、そんなことは無いわよ!!な、何も感じないのかしら!?」
「え?いや……あぁ!!そういう事か!!」
霧都は何かがわかったかのように声を上げたわ。
そして、笑いながら私に言ってきたわ。
「永久さんならともかく、凛音が後ろから抱きついてきても、なんにも感じねぇよ」
「は、はぁ!!??馬鹿なこと言ってるんじゃないわよ!!不感症なんじゃないの!!!!」
「南野凛音さんは中学の時からお胸が成長してませんからね」
「敬語で言えば許されると思ってるんじゃないわよ!!」
「あはは。凛音はこれから成長期(笑)なんだろ?」
「笑ってるんじゃないわよ!!来年には永久位のサイズになってるはずだわ!!」
「(笑)」
笑ってるんじゃないわよ!!!!!!
そんなやり取りをしながら、私と霧都は家まで帰って来たわ。
「あいよ。到着だ」
「ありがとう、霧都。助かったわ」
私の家の前。つまり霧都の家の前に到着したわ。
「じゃあな、凛音。また明日。サドルとのことは雅紀さんか静流さんに相談しておけよ」
「そうね。その……もし良かったら明日の通学も……」
「ごめんな、凛音。それは出来ない」
「……え?」
私の言葉に、霧都は真剣な目で言ってきたわ。
「俺が永久さんに頼まれたのは、凛音と帰宅すること。通学は頼まれてない」
「あはは……そうね……」
そう。これが『差』ってやつね。
つい。楽しかったから忘れてたわ。
「明日のことは、悪いけど自分でなんとかしてくれ」
「えぇ、わかったわ。今日の帰宅だけでも助けてくれてありがとう、霧都」
私が霧都にそう言った時だった。
私たちの横に、一台のタクシーが停ったわ。
「……え?」
「も、もしかして……」
私と霧都は、タクシーから降りてきた夫婦に視線を向けたわ。
「こんにちは凛音ちゃん!!久しぶりね!!霧くんに彼女が出来ても仲良くしてくれててお母さんは嬉しいわ!!」
「霧都。あんな可愛い彼女が居るのに凛音ちゃんとも宜しくしようって言うのか?そう言うのが許されるのはライトノベルの中だけだぞ?」
「……お袋に親父。帰ってきたのか」
「美香(みか)さんと大樹(たいき)おじさん……」
霧都のお母さんとお父さんがタクシーから降りてそう言ってきたわ。
どうやら霧都が永久と付き合ってることも知ってるみたいね。
「ねぇねぇ凛音ちゃん!!良かったら家に上がって行かない?」
「……え?」
「お寿司を買って帰ってきてんだ。良かったら南野家の皆さんと食べようと思ってね」
大樹おじさんはそう言うと、お寿司が入ってる袋を私に見せてきた。
「霧くんも良いでしょ?」
「はぁ……構わないよ。好きにしろよ」
こうして、私は霧都の家で夕飯を食べることになったわ。
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