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第2章 後編
第一話 ~放課後。生徒会室に桐崎先輩に話を聞きに行きました~
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第一話
放課後。俺はかなりの疲れを感じながら、生徒会室の扉の前に立っていた。
この中にはきっと既に桐崎先輩が待っている。
とりあえず、先輩には話を聞いてもらおう。
桐崎さんの話では、似たような状況を経験していると言う話だ。
きっと効果的な打開策を提示してくれると思う。
俺はそう思いながら生徒会室の扉をノックした。
凛音の放送が終わったあと、俺たち四人は食堂を後にして教室に戻って来た。
そこから先は予想していた以上の質問攻めだった。
『南野さんとはどのくらいの仲なのか』
『あんな可愛い女の子と十年間も一緒に過ごしてきてなんとも思わなかったのか』
こんな感じのことならまだ良かったけど、
『北島さんと二股するつもりなのか』
なんて言葉はちょっと……いやかなり不愉快だったので
『そういう頭の悪い事は言わないでくれないか?』
とかなりきつい言葉で返してしまった。
永久さんも女性陣から囲まれて色々と質問攻めに合ってて、かなりイラついていたのもあったと思う。
シン……と教室が静まり返った頃。
ガラリと教室の扉が開いた。
『あら、どうしたのかしら?教室の空気が重いわね』
凛音がそう言って教室に戻って来た。
そして、凛音は俺のところにやってくると、いつものように笑いながら言ってきた。
『昼の放送のことなら私の本音よ。まぁ霧都があれを聞いてどうするかは任せるわよ』
『そうか……』
『私は別に北島さんと別れろなんて言うつもりは微塵も無いわよ。でもね、霧都とこのまま疎遠になるのは寂しいわ。また昔のように仲良く過ごせることを望んでるだけよ』
凛音はそう言うと、自分の席に戻って行った。
……本当に『人の心の操作』が上手だな。
今のやり取りで、俺がもし凛音を遠ざけるようなことをしたら、俺や永久さんが『悪役』になるだろう。
凛音は『付き合ってても構わない』ってスタンスの上で話をしてるからだ。
本心は違うとは思うけどな。
この状況下で俺が、凛音に告白してこっぴどく振られてるんだ。なんて話をしても信じて貰えないだろうし、きっと凛音は俺がそんなことを言えるような人間じゃないってことを、見抜いてる。
はぁ……十年間も一緒に過ごしてきたんだ。
お互いのことなんか知り尽くしてる感があるよ……
そんなことを考えながら、俺は五時間目と六時間目の授業を過ごして行った。
「失礼します」
俺はそう言って生徒会室の扉を開ける。
「思ったよりは早かったな。もっとクラスメイトから質問攻めに合ってると思ったけどな」
『生徒会長』と書かれた席に、桐崎先輩がやはり座って待っていた。
「そうですね。質問攻めには合いましたが、SHRの後に凛音と永久さんが放課後に体育館裏に向かったので、質問相手が居なくなったのが大きいかと」
そう。俺がこうして生徒会室で先輩と話している時に、凛音と永久さんは二人で話しをしてる。
絶対に穏やかには終わらないことは確信してる……
「そうか。お前もなかなかの修羅場に巻き込まれてるな」
先輩はそう言うと、ケラケラと笑っていた。
なかなか酷い先輩だな……
「それで、妹さんから聞きましたよ。先輩は似たような経験があるそうじゃないですか?」
俺はそう言いながら『庶務』と書かれた自分の席に座る。
「そうだな。まぁ俺の場合は『クラスの中で』って感じだから、お前よりは規模は小さいがな」
「クラスの中で……ですか?」
俺がそう聞くと、先輩は少しだけ遠くを見ながら話す。
「詩織さんと早朝の教室でライトノベルを読んでたら、それが恋人同士に見えてたみたいでな。クラスメイトに誤解を招いた。ということがあってな」
「なるほど。自業自得ですね」
俺がそう言うと、先輩はケラケラと笑った。
「なかなか言うじゃないか桜井。そうだな。自業自得の極みだったと反省してるよ。俺はどうやら『自分の行動が他人からどう見られるか?』を客観視する能力が欠けているんだ」
「そうですね。そんなんだから女たらしのハーレム王なんて言われるんですよ」
「おい、桜井。お前は俺に助言を受けに来たんじゃないのか?」
ジトリとした視線を向ける先輩に、俺は言葉を返す。
「いえ、貴方が素直に話すとは思えないので少しだけ言いたいことを言っておこうと思ってました」
「なるほど。お前も言うようになったな」
「先輩のお陰ですよ。色々な経験をさせてもらってるので」
「ははは。これなら俺が引退した後も安泰だな」
先輩はそう言った後に、俺に言ってきた。
「今の現状を打破する方法がいくつかある」
「なるほど。いくつか。と言うんですから、複数あるってことですね?」
俺のその言葉に先輩は首を縦に振る。
「そうだな。まず一つ目『放送部に話をして、昼の放送枠を確保する。そして、その場で桜井霧都は南野凛音に告白をしていて、こっぴどく振られてる。傷心していた自分を慰めてくれたのが北島永久さんだった』という話をする。これが一番効果的だな」
「なるほど。そうですね。それが一番効果的です。ですが、先輩もわかってますよね?」
俺がそれを絶対にしないってことを。
「そうだな。理解してるさ。それでも『手段のひとつ』としては上げさせて貰った次第だよ」
「まぁ……そうですね……」
わかってる。それが一番効果的なのは。
でもそれをしたら……
「南野凛音の立場が無くなる。どんなにこっぴどく振られてたとしても、彼女は君の大切な幼馴染だ。そんな南野凛音を地獄に堕とすようなことは君には出来ないよな」
それがお前の『甘い』ところだよ。
「おっしゃる通りですよ……」
頭を垂れる俺に先輩は言葉を掛ける。
「では、二つ目を話そう。二つ目は『君と北島永久の熱烈なイチャイチャを全校生徒の前でやる』ってことだな」
「貴方が朝の通学路でやったように。ですか?」
ニュースにもなってましたね?
「そうだな。つまりこれは俺の二番煎じだ。そこまで効果的とは思えない。君が北島永久と付き合ってても構わない。というのが南野凛音のスタンスであるのも要因の一つだな」
「ですね……」
少しだけ肩を落とす俺に、先輩は三つ目の案を話す。
「さて、これが最後の案だ。そして、これが一番現実的だと思ってる」
「お聞きします」
「南野凛音とは幼馴染としての振る舞いをする。そして、北島永久とは恋人としての振る舞いをする。二人の女性に対して明確な『差』をつけて接するようにする」
「……二股をしろと言うんですか?」
貴方のように。
「違うぞ桜井。俺とお前とでは明確に違うところがある」
「何ですか?」
「俺は『藤崎朱里と黒瀬詩織の二人を俺の手で幸せにしたい』『この二人は誰にも渡したくない』そう思ったから今の関係性を築き上げた」
「共感はしませんが、理解はしました」
俺のその言葉に、先輩はニヤリと笑う。
「だろう?だからお前は俺と違う。お前は『北島永久だけを自分の手で幸せにしたい』と思ってる。南野凛音に対してはそうは思ってないだろ」
「まぁ……そうですね。今は、ですが」
「だったら、北島永久との幸せのために、南野凛音とは幼馴染としての振る舞いをする。それは二股では無いだろ?お前は彼女が居たら女友達は作れないのか?」
「そんなことは……」
「たまたまその女がお前に好意を持ってるだけの話だ。お前がそれに靡かなければ何の問題もないだろ?」
「……確かに」
「南野凛音がお前に『明確な告白』をしてきていない以上。お前は彼女に対して『幼馴染としての対応』に終始すれば良いだけの話だ。周りもそれを求めてる。難しい話では無いだろ?」
「……わかりました」
「もし。南野凛音が明確な告白をしてきたら、しっかりと振ってやればいい。古今東西。彼女の居る男はそうやって断ってきたんだよ」
「貴方は両方受け入れる。なんて選択肢を取りましたけどね」
俺がそう言うと、先輩はケラケラと笑った。
「ははは。そうだな。だからこそ、お前は俺とは違う。北島永久との幸せのために、南野凛音が『表面上は望んでいる幼馴染としての振る舞い』それをしっかりとこなしてこい」
「そうですね。ありがとうございます、とても為になりました」
俺はそう言って椅子から立ち上がる。
その時、俺のスマホがメッセージを受信した。
『凛音さんとのお話が終わりました。今日は私一人で帰らせてもらいます。霧都くんは凛音さんと帰ってください』
訳が……わからなかった……
放課後。俺はかなりの疲れを感じながら、生徒会室の扉の前に立っていた。
この中にはきっと既に桐崎先輩が待っている。
とりあえず、先輩には話を聞いてもらおう。
桐崎さんの話では、似たような状況を経験していると言う話だ。
きっと効果的な打開策を提示してくれると思う。
俺はそう思いながら生徒会室の扉をノックした。
凛音の放送が終わったあと、俺たち四人は食堂を後にして教室に戻って来た。
そこから先は予想していた以上の質問攻めだった。
『南野さんとはどのくらいの仲なのか』
『あんな可愛い女の子と十年間も一緒に過ごしてきてなんとも思わなかったのか』
こんな感じのことならまだ良かったけど、
『北島さんと二股するつもりなのか』
なんて言葉はちょっと……いやかなり不愉快だったので
『そういう頭の悪い事は言わないでくれないか?』
とかなりきつい言葉で返してしまった。
永久さんも女性陣から囲まれて色々と質問攻めに合ってて、かなりイラついていたのもあったと思う。
シン……と教室が静まり返った頃。
ガラリと教室の扉が開いた。
『あら、どうしたのかしら?教室の空気が重いわね』
凛音がそう言って教室に戻って来た。
そして、凛音は俺のところにやってくると、いつものように笑いながら言ってきた。
『昼の放送のことなら私の本音よ。まぁ霧都があれを聞いてどうするかは任せるわよ』
『そうか……』
『私は別に北島さんと別れろなんて言うつもりは微塵も無いわよ。でもね、霧都とこのまま疎遠になるのは寂しいわ。また昔のように仲良く過ごせることを望んでるだけよ』
凛音はそう言うと、自分の席に戻って行った。
……本当に『人の心の操作』が上手だな。
今のやり取りで、俺がもし凛音を遠ざけるようなことをしたら、俺や永久さんが『悪役』になるだろう。
凛音は『付き合ってても構わない』ってスタンスの上で話をしてるからだ。
本心は違うとは思うけどな。
この状況下で俺が、凛音に告白してこっぴどく振られてるんだ。なんて話をしても信じて貰えないだろうし、きっと凛音は俺がそんなことを言えるような人間じゃないってことを、見抜いてる。
はぁ……十年間も一緒に過ごしてきたんだ。
お互いのことなんか知り尽くしてる感があるよ……
そんなことを考えながら、俺は五時間目と六時間目の授業を過ごして行った。
「失礼します」
俺はそう言って生徒会室の扉を開ける。
「思ったよりは早かったな。もっとクラスメイトから質問攻めに合ってると思ったけどな」
『生徒会長』と書かれた席に、桐崎先輩がやはり座って待っていた。
「そうですね。質問攻めには合いましたが、SHRの後に凛音と永久さんが放課後に体育館裏に向かったので、質問相手が居なくなったのが大きいかと」
そう。俺がこうして生徒会室で先輩と話している時に、凛音と永久さんは二人で話しをしてる。
絶対に穏やかには終わらないことは確信してる……
「そうか。お前もなかなかの修羅場に巻き込まれてるな」
先輩はそう言うと、ケラケラと笑っていた。
なかなか酷い先輩だな……
「それで、妹さんから聞きましたよ。先輩は似たような経験があるそうじゃないですか?」
俺はそう言いながら『庶務』と書かれた自分の席に座る。
「そうだな。まぁ俺の場合は『クラスの中で』って感じだから、お前よりは規模は小さいがな」
「クラスの中で……ですか?」
俺がそう聞くと、先輩は少しだけ遠くを見ながら話す。
「詩織さんと早朝の教室でライトノベルを読んでたら、それが恋人同士に見えてたみたいでな。クラスメイトに誤解を招いた。ということがあってな」
「なるほど。自業自得ですね」
俺がそう言うと、先輩はケラケラと笑った。
「なかなか言うじゃないか桜井。そうだな。自業自得の極みだったと反省してるよ。俺はどうやら『自分の行動が他人からどう見られるか?』を客観視する能力が欠けているんだ」
「そうですね。そんなんだから女たらしのハーレム王なんて言われるんですよ」
「おい、桜井。お前は俺に助言を受けに来たんじゃないのか?」
ジトリとした視線を向ける先輩に、俺は言葉を返す。
「いえ、貴方が素直に話すとは思えないので少しだけ言いたいことを言っておこうと思ってました」
「なるほど。お前も言うようになったな」
「先輩のお陰ですよ。色々な経験をさせてもらってるので」
「ははは。これなら俺が引退した後も安泰だな」
先輩はそう言った後に、俺に言ってきた。
「今の現状を打破する方法がいくつかある」
「なるほど。いくつか。と言うんですから、複数あるってことですね?」
俺のその言葉に先輩は首を縦に振る。
「そうだな。まず一つ目『放送部に話をして、昼の放送枠を確保する。そして、その場で桜井霧都は南野凛音に告白をしていて、こっぴどく振られてる。傷心していた自分を慰めてくれたのが北島永久さんだった』という話をする。これが一番効果的だな」
「なるほど。そうですね。それが一番効果的です。ですが、先輩もわかってますよね?」
俺がそれを絶対にしないってことを。
「そうだな。理解してるさ。それでも『手段のひとつ』としては上げさせて貰った次第だよ」
「まぁ……そうですね……」
わかってる。それが一番効果的なのは。
でもそれをしたら……
「南野凛音の立場が無くなる。どんなにこっぴどく振られてたとしても、彼女は君の大切な幼馴染だ。そんな南野凛音を地獄に堕とすようなことは君には出来ないよな」
それがお前の『甘い』ところだよ。
「おっしゃる通りですよ……」
頭を垂れる俺に先輩は言葉を掛ける。
「では、二つ目を話そう。二つ目は『君と北島永久の熱烈なイチャイチャを全校生徒の前でやる』ってことだな」
「貴方が朝の通学路でやったように。ですか?」
ニュースにもなってましたね?
「そうだな。つまりこれは俺の二番煎じだ。そこまで効果的とは思えない。君が北島永久と付き合ってても構わない。というのが南野凛音のスタンスであるのも要因の一つだな」
「ですね……」
少しだけ肩を落とす俺に、先輩は三つ目の案を話す。
「さて、これが最後の案だ。そして、これが一番現実的だと思ってる」
「お聞きします」
「南野凛音とは幼馴染としての振る舞いをする。そして、北島永久とは恋人としての振る舞いをする。二人の女性に対して明確な『差』をつけて接するようにする」
「……二股をしろと言うんですか?」
貴方のように。
「違うぞ桜井。俺とお前とでは明確に違うところがある」
「何ですか?」
「俺は『藤崎朱里と黒瀬詩織の二人を俺の手で幸せにしたい』『この二人は誰にも渡したくない』そう思ったから今の関係性を築き上げた」
「共感はしませんが、理解はしました」
俺のその言葉に、先輩はニヤリと笑う。
「だろう?だからお前は俺と違う。お前は『北島永久だけを自分の手で幸せにしたい』と思ってる。南野凛音に対してはそうは思ってないだろ」
「まぁ……そうですね。今は、ですが」
「だったら、北島永久との幸せのために、南野凛音とは幼馴染としての振る舞いをする。それは二股では無いだろ?お前は彼女が居たら女友達は作れないのか?」
「そんなことは……」
「たまたまその女がお前に好意を持ってるだけの話だ。お前がそれに靡かなければ何の問題もないだろ?」
「……確かに」
「南野凛音がお前に『明確な告白』をしてきていない以上。お前は彼女に対して『幼馴染としての対応』に終始すれば良いだけの話だ。周りもそれを求めてる。難しい話では無いだろ?」
「……わかりました」
「もし。南野凛音が明確な告白をしてきたら、しっかりと振ってやればいい。古今東西。彼女の居る男はそうやって断ってきたんだよ」
「貴方は両方受け入れる。なんて選択肢を取りましたけどね」
俺がそう言うと、先輩はケラケラと笑った。
「ははは。そうだな。だからこそ、お前は俺とは違う。北島永久との幸せのために、南野凛音が『表面上は望んでいる幼馴染としての振る舞い』それをしっかりとこなしてこい」
「そうですね。ありがとうございます、とても為になりました」
俺はそう言って椅子から立ち上がる。
その時、俺のスマホがメッセージを受信した。
『凛音さんとのお話が終わりました。今日は私一人で帰らせてもらいます。霧都くんは凛音さんと帰ってください』
訳が……わからなかった……
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