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第2章 前編
永久side ③
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永久side ③
『おやすみ、永久さん』
「おやすみなさい、霧都くん」
私はそう言って霧都くんとの通話を終えて、電話を切りました。
『捉え方によるけど、凛音が俺に対して恋愛感情を持ってるようにも聞こえる。でも、そんなことはもう俺には関係の無い話で、響かない。俺とあいつが恋人になって夫婦になる。そういう未来は存在しないよ』
『まぁ、別に凛音が嫌いな訳じゃない。『恋愛感情』はもう無い。そうは言っても十年来の幼馴染だ。それなりの仲の良さは残ってると思う。そこは永久さんにもしかしたら心配をかけてしまう部分かも知れない』
『でも、俺はもう君と未来を共にすると決めた人間だ。今更凛音が何を言ってきたとしても『幼馴染』以上の何かになることは今後一切無いと断言出来るよ』
彼から貰ったこの言葉は、私の胸にあった不安な気持ちを溶かしていってくれました。
私が怖かったのは、南野さんが彼を好きだという気持ちを伝えた時に、霧都くんの気持ちが揺れるのではないか?と思ってしまったことです。
ですが、今の言葉で彼は私に言ってくれました。
そんなことがあっても揺れないよ。と。
幼馴染しての仲の良さは残ってしまう。と言うのも、私を信じてるから言ってくれた言葉です。
嫌いだよ。とか、今後一切口も聞かないから。なんて言われたら私は逆に疑ってしまいます。
それでも私を選んで道を歩んでくれる。そう断言をしてくれました。
本当に……本当に……嬉しかったです。
彼の信頼に応えられるように、私も頑張らないといけませんね。
そう思いながら、私は寝る支度をするために洗面所へ向かいました。
歯を磨いて寝ましょう。そう思っていました。
「永久。ちょっと話があるからこっちに来なさい」
「……え?お母さん、どうしたの?」
歯を磨き終わった私を、お母さんが呼び止めました。
私はお母さんの居る居間へと向かいました。
「お父さんはもう寝てるわ。ちょっと話があるから座りなさい」
「う、うん……」
ど、どうしたんだろう。なんかすごい剣幕をしてる。
椅子に座った私。対面にはお母さんが座った。
「今日。南野凛音さんのご両親が家に来たわ」
「えぇ!!??」
こ、こんな平日になんで!!??
「そこで少しお話をしたのよ。雄平さんは南野さんのお父さんの雅紀さんと。そして、私はお母さんの静流さんとお話をしたわ」
「ど、どうしてそんなことになってるの?」
「血の繋がった家族の息子に出来た彼女の両親に挨拶に行くのは当然のことですよ。と言われたわ」
「……そう、なんだ。それで、何を話したの?」
私がそう聞くと、お母さんは少しだけ視線を空に向ける。
「そうね。霧都くんがどれだけ南野さんと仲良く過ごしてきたかの昔話をしてきたわ」
この十年の思い出話をしてきたわよ。
「……へぇ。そうなんだ」
わかった。これは向こうの家からされた『宣戦布告』だと。
「あなたと付き合ってることに対しても、お祝いの言葉をくれたわよ。『霧都くんと付き合ってくれてありがとうございます。私も血の繋がった母親として嬉しく思います。この経験は彼の人生にとって、とても良いものとなるでしょう』ってね」
「……そうなんだ。まるで『私と霧都くんがそのうち別れる』そんな言い方してるんだね?」
私がそう言うと、お母さんが笑いながら首を縦に振った。
「そうよ。向こうからしたら、最終的にくっつくのは自分の娘。あなたはその繋ぎ。そういう認識でいる。そんなことを言ってきたのよ」
「あはは……これは……宣戦布告だね?」
「わかってるわね?負けるんじゃないわよ」
「もちろんだよ。それと、お母さんはそこまで言われて何も言い返さなかったの?」
私のその言葉に、お母さんはニヤリと笑った。
「言い返したに決まってるじゃない?『こちらこそ静流さんには感謝してますよ。霧都くんはとても礼儀正しい立派な男の子に育っています。ですが年相応な部分もあって可愛いですね。この間は私の作ったオムライスやハンバーグをとても美味しそうに食べてましたから』って言っておいたわ」
「あはは!!お母さんも言うんだね!!」
「もちろんよ。そう言い返した時の静流さんの表情は悔しそうだったわよ」
お母さんはそう言うと、私の目を見て言う。
「前も言ったけど、私は霧都くん以外の男を息子とは認めないわよ。そして、きっと向こうもそのつもりよ」
「うん」
「今はあなたが一歩リードしてる状態よ。でもそのリードはほんのわずかよ。何かの間違いですぐに無くなってしまうものと思いなさい。十年来の幼馴染と言うのはそのくらい強力なものよ」
「うん。わかってるよ」
「……そして、何があっても彼を信じてあげなさい」
「……うん。わかった」
私がそう言って首を縦に振ると、お母さんは笑いながら
「話はこれで終わりよ。寝るところを邪魔して悪かったわね」
と言ってきた。
「ううん。大切な話だったから大丈夫だよ」
私はそう言って椅子から立ち上がる。
「おやすみ、お母さん」
「おやすみなさい、永久」
そう言って私は居間を後にしました。
自室に戻った私は布団に潜り込んで電気を消しました。
オレンジ色の光に部屋が染まります。
「明日。きっと南野さんは何かをしかけてくると思います」
油断はしません。ですが、なにか大きなことをしてくる予感があります。
あちらは味方を作るのが上手な方ですから。
ですが、私は負けません。
桜井霧都の彼女はこの私です。
結婚して家族になるのもこの私です。
正妻の座は誰にも渡しません!!
「……北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています」
私はいつものようにそう呟いて、意識を手放して夢の世界へと向かいました。
『おやすみ、永久さん』
「おやすみなさい、霧都くん」
私はそう言って霧都くんとの通話を終えて、電話を切りました。
『捉え方によるけど、凛音が俺に対して恋愛感情を持ってるようにも聞こえる。でも、そんなことはもう俺には関係の無い話で、響かない。俺とあいつが恋人になって夫婦になる。そういう未来は存在しないよ』
『まぁ、別に凛音が嫌いな訳じゃない。『恋愛感情』はもう無い。そうは言っても十年来の幼馴染だ。それなりの仲の良さは残ってると思う。そこは永久さんにもしかしたら心配をかけてしまう部分かも知れない』
『でも、俺はもう君と未来を共にすると決めた人間だ。今更凛音が何を言ってきたとしても『幼馴染』以上の何かになることは今後一切無いと断言出来るよ』
彼から貰ったこの言葉は、私の胸にあった不安な気持ちを溶かしていってくれました。
私が怖かったのは、南野さんが彼を好きだという気持ちを伝えた時に、霧都くんの気持ちが揺れるのではないか?と思ってしまったことです。
ですが、今の言葉で彼は私に言ってくれました。
そんなことがあっても揺れないよ。と。
幼馴染しての仲の良さは残ってしまう。と言うのも、私を信じてるから言ってくれた言葉です。
嫌いだよ。とか、今後一切口も聞かないから。なんて言われたら私は逆に疑ってしまいます。
それでも私を選んで道を歩んでくれる。そう断言をしてくれました。
本当に……本当に……嬉しかったです。
彼の信頼に応えられるように、私も頑張らないといけませんね。
そう思いながら、私は寝る支度をするために洗面所へ向かいました。
歯を磨いて寝ましょう。そう思っていました。
「永久。ちょっと話があるからこっちに来なさい」
「……え?お母さん、どうしたの?」
歯を磨き終わった私を、お母さんが呼び止めました。
私はお母さんの居る居間へと向かいました。
「お父さんはもう寝てるわ。ちょっと話があるから座りなさい」
「う、うん……」
ど、どうしたんだろう。なんかすごい剣幕をしてる。
椅子に座った私。対面にはお母さんが座った。
「今日。南野凛音さんのご両親が家に来たわ」
「えぇ!!??」
こ、こんな平日になんで!!??
「そこで少しお話をしたのよ。雄平さんは南野さんのお父さんの雅紀さんと。そして、私はお母さんの静流さんとお話をしたわ」
「ど、どうしてそんなことになってるの?」
「血の繋がった家族の息子に出来た彼女の両親に挨拶に行くのは当然のことですよ。と言われたわ」
「……そう、なんだ。それで、何を話したの?」
私がそう聞くと、お母さんは少しだけ視線を空に向ける。
「そうね。霧都くんがどれだけ南野さんと仲良く過ごしてきたかの昔話をしてきたわ」
この十年の思い出話をしてきたわよ。
「……へぇ。そうなんだ」
わかった。これは向こうの家からされた『宣戦布告』だと。
「あなたと付き合ってることに対しても、お祝いの言葉をくれたわよ。『霧都くんと付き合ってくれてありがとうございます。私も血の繋がった母親として嬉しく思います。この経験は彼の人生にとって、とても良いものとなるでしょう』ってね」
「……そうなんだ。まるで『私と霧都くんがそのうち別れる』そんな言い方してるんだね?」
私がそう言うと、お母さんが笑いながら首を縦に振った。
「そうよ。向こうからしたら、最終的にくっつくのは自分の娘。あなたはその繋ぎ。そういう認識でいる。そんなことを言ってきたのよ」
「あはは……これは……宣戦布告だね?」
「わかってるわね?負けるんじゃないわよ」
「もちろんだよ。それと、お母さんはそこまで言われて何も言い返さなかったの?」
私のその言葉に、お母さんはニヤリと笑った。
「言い返したに決まってるじゃない?『こちらこそ静流さんには感謝してますよ。霧都くんはとても礼儀正しい立派な男の子に育っています。ですが年相応な部分もあって可愛いですね。この間は私の作ったオムライスやハンバーグをとても美味しそうに食べてましたから』って言っておいたわ」
「あはは!!お母さんも言うんだね!!」
「もちろんよ。そう言い返した時の静流さんの表情は悔しそうだったわよ」
お母さんはそう言うと、私の目を見て言う。
「前も言ったけど、私は霧都くん以外の男を息子とは認めないわよ。そして、きっと向こうもそのつもりよ」
「うん」
「今はあなたが一歩リードしてる状態よ。でもそのリードはほんのわずかよ。何かの間違いですぐに無くなってしまうものと思いなさい。十年来の幼馴染と言うのはそのくらい強力なものよ」
「うん。わかってるよ」
「……そして、何があっても彼を信じてあげなさい」
「……うん。わかった」
私がそう言って首を縦に振ると、お母さんは笑いながら
「話はこれで終わりよ。寝るところを邪魔して悪かったわね」
と言ってきた。
「ううん。大切な話だったから大丈夫だよ」
私はそう言って椅子から立ち上がる。
「おやすみ、お母さん」
「おやすみなさい、永久」
そう言って私は居間を後にしました。
自室に戻った私は布団に潜り込んで電気を消しました。
オレンジ色の光に部屋が染まります。
「明日。きっと南野さんは何かをしかけてくると思います」
油断はしません。ですが、なにか大きなことをしてくる予感があります。
あちらは味方を作るのが上手な方ですから。
ですが、私は負けません。
桜井霧都の彼女はこの私です。
結婚して家族になるのもこの私です。
正妻の座は誰にも渡しません!!
「……北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています」
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