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第2章 前編
第二十六話 ~雅紀さんに自分の気持ちと覚悟を話しました~
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第二十六話
食事を終えた俺は台所で洗い物の手伝いをした後に雅紀さんの部屋にやって来た。
話す内容は、永久さんのこと。
それはきっと雅紀さんもわかってるはずだ。
静流さんが優美さんを訪ねている。という事は、雅紀さんも一緒に行っている可能性も高い。
雄平さんとも話してることも頭に入れておこう。
よし。行くぞ。
コンコンと俺は部屋の扉をノックする。
入りなさい。と中から声が聞こえてきた。
俺は「失礼します」と言いながら扉を開ける。
ガラスのテーブルを挟んで、椅子に座って雅紀さんが俺を待っていた。
「座りなさい」
「はい」
俺は雅紀さんの対面の椅子に腰をかける。
「さて。まずは先に祝いの言葉を君に言わせてくれ。おめでとう、霧都くん。とても素敵な女性を彼女にしたようだね」
「はい。俺にはもったいないくらいの彼女です。彼女に釣り合う自分になるための努力が必要だと痛感する毎日です」
「北島永久さん。彼女の自宅に静流さんと一緒に挨拶に行ったよ。突然の来訪にも関わらず、私たちとも打ち解けてくれた。とても良いご両親だと思ったよ」
やはり雅紀さんも会っていたんだな。
予想はしてたのでそこまでの驚きは無い。
「はい。大切な一人娘の彼氏。という嫌われてもおかしくない立場ですが、自分のことも快く受け入れてくれました」
「小学生の時に、君がいじめから助けた娘だと聞いたね。私も『父親』として、君の行動を誇らしく思うよ」
『父親』の部分を強く言われたと感じた。
雅紀さんの意図が掴めないが、とりあえずは祝福はしてくれているのだろうとは思う。
「人として当然の行動をしたまでです。ですが、以前自分も凛音に対して酷いことをしたと思っています。反省するべきだと感じています」
「ふむ。正直な話をすれば、以前の君がした行為よりも『今の現状の方が凛音には辛い状態』だと思うがね?」
雅紀さんの鋭い視線が俺を突き刺す。
…………そう来たか。
きっと雅紀さんは言ってるんだ。
『最愛の娘の凛音を傷つけてでも、北島永久さんと一緒になる覚悟がお前にあるのか?』と。
答えは……
「そうですね。凛音がもし俺に対して『異性としての好意』を持ってるのでしたら辛い状態かも知れません。ですが、自分はもう北島永久さんと共に歩くと決めた人間です。そこに関してはもう揺れません」
「…………そうか」
雅紀さんはそう言うと『辞めたと言っていた』タバコを取り出した。
「……タバコは辞めたのでは?」
「吸いたくなる気持ちを理解して欲しいな」
雅紀さんはそう言うと、タバコに火をつけて吸い込んだ。
そして、むせることなく煙を吐き出した。
「……静流さんと凛音に隠れて吸ってましたね?」
「ははは……バレたか」
雅紀さんは携帯灰皿に灰を落としながらそう言って苦笑いを浮かべた。
「君が凛音ではなく北島永久さんを選んだことに対して、私が何かを言うことはもう無い。君の覚悟はきちんと聞かせてもらったからね」
「……はい」
「あちらの両親とも話したよ。その……とても怖かったよ」
「こ、怖かった……?」
雅紀さんは少しだけ遠くを見ながらその時のことを話してくれた。
「うちの静流さんとあちらのお母さん、優美さんがね。その……表面上は穏やかに話していたけど、水面下ではかなり火花を散らしてるのがわかったからね……」
「……そ、そうですか」
「私と雄平さんは遠巻きに見てることしか出来なかったよ……」
雅紀さんがここまで言うとは、一体どんなやり取りが静流さんと優美さんの間であったのだろうか……
興味はあるけど、首を突っ込むのも恐ろしい気はする。
「さて、霧都くん。君はこの後凛音に呼ばれていたね?」
「はい。そうですね。何を話されるのかは見当もつきませんが……」
俺がそう言うと、雅紀さんが笑いながら言ってきた。
「うちの凛音は諦めの悪い女の子だ。君を北島永久さんに盗られたとかなり荒れて居たからね。覚悟をしておいた方がいいよ」
「まぁ……それはわかってますよ」
「それとは別に、うちの静流さんも君を諦めていない」
「……え?」
「静流さんは君以外の男を『息子』と呼ぶつもりは無い。そう言っていたよ」
「……そうですか」
「君と北島永久さんに対して何かをする。ということは無いと思うよ。でも凛音に何かしらのアドバイスをしたりとかはあるだろうね」
「あはは……凛音よりも静流さんの方が脅威ですね……」
「まぁ、私としても君から『お義父さん』と呼ばれることを諦めて無いからね」
「大変光栄な話ですが、その未来は諦めてください」
俺はそう言って椅子から立ち上がる。
「では、失礼します」
「あぁ。またいつでも来なさい。お義父さんは諦めるけど、私と君は血の繋がった家族だからね」
「あはは。そうですね。では失礼します『お父さん』」
俺はそう言って部屋を出た。
「さて、次は凛音の部屋だな」
俺は二階にある凛音の部屋へ向かうため、階段を上っていった。
食事を終えた俺は台所で洗い物の手伝いをした後に雅紀さんの部屋にやって来た。
話す内容は、永久さんのこと。
それはきっと雅紀さんもわかってるはずだ。
静流さんが優美さんを訪ねている。という事は、雅紀さんも一緒に行っている可能性も高い。
雄平さんとも話してることも頭に入れておこう。
よし。行くぞ。
コンコンと俺は部屋の扉をノックする。
入りなさい。と中から声が聞こえてきた。
俺は「失礼します」と言いながら扉を開ける。
ガラスのテーブルを挟んで、椅子に座って雅紀さんが俺を待っていた。
「座りなさい」
「はい」
俺は雅紀さんの対面の椅子に腰をかける。
「さて。まずは先に祝いの言葉を君に言わせてくれ。おめでとう、霧都くん。とても素敵な女性を彼女にしたようだね」
「はい。俺にはもったいないくらいの彼女です。彼女に釣り合う自分になるための努力が必要だと痛感する毎日です」
「北島永久さん。彼女の自宅に静流さんと一緒に挨拶に行ったよ。突然の来訪にも関わらず、私たちとも打ち解けてくれた。とても良いご両親だと思ったよ」
やはり雅紀さんも会っていたんだな。
予想はしてたのでそこまでの驚きは無い。
「はい。大切な一人娘の彼氏。という嫌われてもおかしくない立場ですが、自分のことも快く受け入れてくれました」
「小学生の時に、君がいじめから助けた娘だと聞いたね。私も『父親』として、君の行動を誇らしく思うよ」
『父親』の部分を強く言われたと感じた。
雅紀さんの意図が掴めないが、とりあえずは祝福はしてくれているのだろうとは思う。
「人として当然の行動をしたまでです。ですが、以前自分も凛音に対して酷いことをしたと思っています。反省するべきだと感じています」
「ふむ。正直な話をすれば、以前の君がした行為よりも『今の現状の方が凛音には辛い状態』だと思うがね?」
雅紀さんの鋭い視線が俺を突き刺す。
…………そう来たか。
きっと雅紀さんは言ってるんだ。
『最愛の娘の凛音を傷つけてでも、北島永久さんと一緒になる覚悟がお前にあるのか?』と。
答えは……
「そうですね。凛音がもし俺に対して『異性としての好意』を持ってるのでしたら辛い状態かも知れません。ですが、自分はもう北島永久さんと共に歩くと決めた人間です。そこに関してはもう揺れません」
「…………そうか」
雅紀さんはそう言うと『辞めたと言っていた』タバコを取り出した。
「……タバコは辞めたのでは?」
「吸いたくなる気持ちを理解して欲しいな」
雅紀さんはそう言うと、タバコに火をつけて吸い込んだ。
そして、むせることなく煙を吐き出した。
「……静流さんと凛音に隠れて吸ってましたね?」
「ははは……バレたか」
雅紀さんは携帯灰皿に灰を落としながらそう言って苦笑いを浮かべた。
「君が凛音ではなく北島永久さんを選んだことに対して、私が何かを言うことはもう無い。君の覚悟はきちんと聞かせてもらったからね」
「……はい」
「あちらの両親とも話したよ。その……とても怖かったよ」
「こ、怖かった……?」
雅紀さんは少しだけ遠くを見ながらその時のことを話してくれた。
「うちの静流さんとあちらのお母さん、優美さんがね。その……表面上は穏やかに話していたけど、水面下ではかなり火花を散らしてるのがわかったからね……」
「……そ、そうですか」
「私と雄平さんは遠巻きに見てることしか出来なかったよ……」
雅紀さんがここまで言うとは、一体どんなやり取りが静流さんと優美さんの間であったのだろうか……
興味はあるけど、首を突っ込むのも恐ろしい気はする。
「さて、霧都くん。君はこの後凛音に呼ばれていたね?」
「はい。そうですね。何を話されるのかは見当もつきませんが……」
俺がそう言うと、雅紀さんが笑いながら言ってきた。
「うちの凛音は諦めの悪い女の子だ。君を北島永久さんに盗られたとかなり荒れて居たからね。覚悟をしておいた方がいいよ」
「まぁ……それはわかってますよ」
「それとは別に、うちの静流さんも君を諦めていない」
「……え?」
「静流さんは君以外の男を『息子』と呼ぶつもりは無い。そう言っていたよ」
「……そうですか」
「君と北島永久さんに対して何かをする。ということは無いと思うよ。でも凛音に何かしらのアドバイスをしたりとかはあるだろうね」
「あはは……凛音よりも静流さんの方が脅威ですね……」
「まぁ、私としても君から『お義父さん』と呼ばれることを諦めて無いからね」
「大変光栄な話ですが、その未来は諦めてください」
俺はそう言って椅子から立ち上がる。
「では、失礼します」
「あぁ。またいつでも来なさい。お義父さんは諦めるけど、私と君は血の繋がった家族だからね」
「あはは。そうですね。では失礼します『お父さん』」
俺はそう言って部屋を出た。
「さて、次は凛音の部屋だな」
俺は二階にある凛音の部屋へ向かうため、階段を上っていった。
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