十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶

文字の大きさ
上 下
101 / 164
第2章 前編

第二十一話 ~武藤先輩の諦めの悪さには少し困りものでした~

しおりを挟む
 第二十一話




『それではこれで第50回 海皇高校予算会議を閉会しようと思います。皆さんご協力ありがとうございました!!』

 そう言って俺は一礼をしたあと、マイクを置く。

 放送部の人に視線を送ると、動画の配信が終了になる。

「つ、疲れた……」

 俺はようやく気が抜けるようになったので、椅子に座って背もたれに体重をかける。

「ふふふ。お疲れ様でした、霧都くん。かっこよかったですよ?」

 永久さんがそう言いながら、常温の麦茶のペットボトルを蓋を開けた状態でくれる。

「ありがとう、永久さん。君や桐崎さんが頑張ってるのが見えたからね。俺だけ情けない姿を見せる訳にはいかなかったよ」

 少しだけ中身が減ってる麦茶。俺がそれを飲みながらそう言って彼女に笑いかけると、

「おう、桜井!!やっぱり俺は納得いかねぇぞ!!」

 武藤先輩が話に割り込んできた。

「えと……予算の件ですか?」

 金券なんてものじゃやっぱり納得出来ないぞ!!
 って話なのかな……

 なんて思っていると、どうやら違ったようで。

「金なんかどうでもいいんだよ!!なんで野球部で投手をやらないんだよ!!」

 お前ならエースになれる。来年も甲子園に行ける。
 俺と一緒にプロの世界にだって手が届くぞ!!

 そう言う武藤先輩に、俺は首を横に振る。

「武藤先輩の言葉はとても光栄です。ですが、俺が公式戦で投げることは無いと思ってください」
「……な、何でだよ」

 俺が強く否定したからだろうか。武藤先輩は少しだけたじろいでいた。

「真面目に練習をしている他の野球部の人に失礼だからですよ。俺はあくまでも『生徒会の人間』です。野球部の為に雑務を行うのは喜んでやります。球拾いでもトス出しでもバッティングピッチャーでもなんでもやりますよ」

「ですが、こんな半端な人間が、真面目に練習をしている野球部の人を差し置いて『それなりに実力があるから』なんて理由でほかの選手の背番号を奪ってまで公式戦に出るのは失礼です」

「これが、俺が武藤先輩の誘いを断る理由です。ご納得いただけましたか?」

 俺がそう言うと、武藤先輩は少しだけ思案したあと、大きなため息をついた。

「はぁ……確かに桜井の言う通りだな。他の野球部のやつに失礼だ。真面目に俺の二番手になろうとしてる奴もいる。そういう人間の気持ちを考えてなかったな」
「練習の手伝いならいくらでもやります。それで勘弁して貰えませんかね?」

「あはは。わかったよ、桜井。お前がバッティングピッチャーをしてくれたから、昨日の練習試合では、相手のエースを打ち崩せたんだ。また練習に付き合ってくれ」
「はい!!喜んで!!」

 握手を求めてきた武藤先輩に俺は応じた。

「……わわ!!」

 握手をした俺の手を引き、武藤先輩は俺の耳元で言う。

「俺はしつこいからな。これで俺が諦めたと思うなよ?」

 バン!! と背中を叩いて、武藤先輩は会議室を出て行った。

「はぁ……諦めてくれないかなぁ……」
「あはは……霧都くんも大変な人に認められてしまいましたね……」

「光栄なこと……だとは思うけどね」
「ですが、野球部の人に配慮した霧都くんの言葉。私は感銘を受けました。とても素敵な考え方だと思います」

「あはは……公式戦でチームの進退を背負って投げる覚悟が無いだけだよ……」
「ふふふ。そういうことにしてあげますよ」

 そして、そんなやり取りをした後に、俺は桐崎先輩の元へと向かう。

「武藤先輩の質問内容は、先輩の入れ知恵ですよね?」

 俺がそう聞くと、先輩はニヤリと笑う。

「まあな。あの男が金のことなんか気にする訳ないだろ?あいつが欲しいのは金なんかじゃない。 ……それはわかってるだろ?」
「まぁ……そうですね。結構強めにお断りしましたが諦めてはくれてないみたいです」

「ははは。そりゃあそうだろう。俺なんか今でも言われるぞ。野球部に入らないか?ってな」

 あと何ヶ月出来るって話だよ。

 なんて言って先輩は笑っていた。

「それで、桜井庶務。君の腹案はいつから考えていた?」

 スっと目を細めて先輩が俺に聞いてきた。


「先週末ですね。先輩から借りた予算会議の動画を穴が空くほど見ました。そこで、今年のキモになる部分にあたりを付けてました」

「ちなみにこの金券の制度ですが、国債のような使い方をしても良いと思ってます」

「仮に生徒会が資金不足になった時に、出来高の支払いを滞らせないための一手段にもなるかと考えてます」

 俺がそう言うと、先輩は軽く思案した後に俺に言う。

「なるほどな。そこまで考えていたのか。桜井庶務。やるじゃないか!!」

 笑いながら先輩は俺の肩を叩いてくれた。

「よし。明日以降はその金券のデザインや使用期限なども話し合う事にしよう」

「はい!!」


 こうして、生徒会の一員として迎えた初めての予算会議は成功のうちに収めることが出来た。


 そして、配信された動画を見た『女性の先輩方』から『桜井くん頑張ってたね!!』と、たくさんの支援金が俺宛に入り、それがまた永久さんの目のハイライトを奪う一因となっていたのは、ホント勘弁して欲しい……

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜

まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。 ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。 父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。 それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。 両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。 そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。 そんなお話。 ☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。 ☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。 ☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。 楽しんでいただけると幸いです。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

処理中です...