92 / 164
第2章 前編
第十三話 ~永久さんとの二回目のデート・彼女からの魅惑の誘いには乗らない決意をしました~
しおりを挟む
第十三話
「お風呂をありがとうございました」
「どういたしまして。まぁ……永久さんの家の風呂には負けちゃうけどね」
俺の部屋の扉を開けて、パジャマ姿の永久さんが姿を現す。
お風呂上がりの彼女は、顔がほんのりと赤く色付き、身体からは湯気が出ている。
男を惑わす色気が漂っている……
ホント『グローブを磨いていなかったら』危なかった……
精神を統一するために、俺はグローブを丹念に磨いていた。
硬球を扱うことが増えた。とは言え、何年も共に過ごしてきたこの相棒を粗末に扱うつもりは無い。
このグローブは俺の宝物だ。
「そんな事ないですよ?霧都くんのお風呂もとても清潔感があって気持ち良く入れました」
「あはは。掃除はこまめにしっかりとやってるからね」
俺はそう言うと、グローブを机の上に置く。
「ちょっと手を洗ってくるね」
「はい」
部屋を後にした俺は洗面所で手を洗う。
「無理だろ……」
破壊力が……破壊力が凄すぎる……
勝てる気がしない……
武藤先輩を打席で抑えろって言われた方がまだ勝算があると思えるくらいの絶望感を味わっている。
「と、とりあえず……すぐに寝よう……」
そうだよ!!寝てしまえば大丈夫!!
どっかのトラブル体質の主人公は寝ている時ほどヤバいけど、俺はそんなことは無いはずだ!!
手を綺麗にした俺は部屋へと戻る。
そして、永久さんはやはり、俺のベッドの中に入っていた。
「ふふふ。お待ちしておりました」
「う、うん……」
掛け布団の隙間から顔をのぞかせる彼女に、俺の心臓がうるさい位に跳ねる。
「明日は学校だから早めに寝ようね」
「私は夜更かししても良いと思ってますよ?」
「わ、悪い子だね……」
「ふふふ。霧都くんは私にどんな『おしおき』をしてくれるんですか?」
そう言ってイタズラっぽく笑う彼女。どうやら何を言っても俺に勝ち目は無い……
「布団の中を温めて起きました。どうぞ」
「お、お邪魔します……」
俺はそう言って、永久さんの待つ布団の中に入る。
無理!!無理!!無理!!
なんかすごく良い匂いがする!!
理性がガリガリ削られてるよ!!
「ふふふ。霧都くん。そんなところに居たら落ちちゃいますよ?」
「……っ!!??」
むにゅん。という感触が背中に訪れる。
永久さんが俺の身体を抱きしめていた。
「……その、永久さん」
「はい……」
「お、俺も男だからさ……その……」
「…………良いですよ?しても」
………………。
俺は彼女の方に振り向き、キスをした。
「……んぅ」
舌を入れる深いキス。彼女の柔らかい身体を抱きしめながら、これまでで一番長く、唇を重ね合う。
唇を離した俺と永久さんは熱っぽい視線で見つめ合う。
「…………霧都くん、好きです」
「うん。俺も好きだよ……」
「でも、今はしない」
「……っ!!!!!」
俺ははっきりと彼女に告げた。
「ねぇ、永久さん。何か『焦って』無いかな?」
そう、これは俺がずっと感じていた『違和感』
俺と身体を重ねることを焦っているように思えた。
「…………そうですね。私は少しだけ焦っていたと思います」
永久さんは瞳を伏せると、そう呟いた。
「原因はやっぱり……凛……っん!?」
凛音。と言おうとした俺の唇を永久さんがキスでふさいできた。
「……その名前を呼ばないでください」
「…………わかった」
昏く淀んだ瞳。永久さんが見せる深い愛の部分。
「原因は彼女です。ですがその理由を話したくありません」
「そうか……」
「その事を話すこと自体が、彼女にとっての利益になってしまうからです」
「…………そんなことがあるんだね」
俺がそう言うと、永久さんは俺の身体を抱きしめる。
「貴方とひとつになりたい。その気持ちは嘘じゃありません。焦っている。そういう所もありますが、求められたいという気持ちもあります」
「俺も健全な男子高校生だから、そういうことをしたい。という気持ちはたくさんあるよ」
俺がそう言うと、永久さんは少しだけ寂しそうに笑う。
「でも、しないんですよね?」
「うん。今日はしない」
俺がそう言うと、永久さんは納得してくれたのか身体を横にした。
「貴方の身体を抱きしめながら寝かせてください」
「うん。いいよ」
そう答えて、俺と永久さんは抱きしめ合いながら横になる。
「もし、貴方が我慢出来なくなったら、私は受け入れますからね?」
「あはは……とても魅惑的なお誘いに心が折れそうだよ……」
俺はそう言うと、手元のスイッチで部屋の明かりを落とす。
オレンジ色の明かりに照らされて、永久さんの表情もまた一段と魅惑的に見えた。
我慢するって決めただろ。少なくとも、俺と彼女の最初は今じゃない。
俺はそう決意して、目を閉じる。
「おやすみ。永久さん」
「はい。おやすみなさい、霧都くん」
そう言って俺と永久さんは眠りについた。
あれほどの愛の深さを胸に抱いている永久さんにしては、今夜はしない。と言ったことに対して随分と『聞き分け』が良かったよな。
そんなことを思いながら、俺は意識を手放した。
「お風呂をありがとうございました」
「どういたしまして。まぁ……永久さんの家の風呂には負けちゃうけどね」
俺の部屋の扉を開けて、パジャマ姿の永久さんが姿を現す。
お風呂上がりの彼女は、顔がほんのりと赤く色付き、身体からは湯気が出ている。
男を惑わす色気が漂っている……
ホント『グローブを磨いていなかったら』危なかった……
精神を統一するために、俺はグローブを丹念に磨いていた。
硬球を扱うことが増えた。とは言え、何年も共に過ごしてきたこの相棒を粗末に扱うつもりは無い。
このグローブは俺の宝物だ。
「そんな事ないですよ?霧都くんのお風呂もとても清潔感があって気持ち良く入れました」
「あはは。掃除はこまめにしっかりとやってるからね」
俺はそう言うと、グローブを机の上に置く。
「ちょっと手を洗ってくるね」
「はい」
部屋を後にした俺は洗面所で手を洗う。
「無理だろ……」
破壊力が……破壊力が凄すぎる……
勝てる気がしない……
武藤先輩を打席で抑えろって言われた方がまだ勝算があると思えるくらいの絶望感を味わっている。
「と、とりあえず……すぐに寝よう……」
そうだよ!!寝てしまえば大丈夫!!
どっかのトラブル体質の主人公は寝ている時ほどヤバいけど、俺はそんなことは無いはずだ!!
手を綺麗にした俺は部屋へと戻る。
そして、永久さんはやはり、俺のベッドの中に入っていた。
「ふふふ。お待ちしておりました」
「う、うん……」
掛け布団の隙間から顔をのぞかせる彼女に、俺の心臓がうるさい位に跳ねる。
「明日は学校だから早めに寝ようね」
「私は夜更かししても良いと思ってますよ?」
「わ、悪い子だね……」
「ふふふ。霧都くんは私にどんな『おしおき』をしてくれるんですか?」
そう言ってイタズラっぽく笑う彼女。どうやら何を言っても俺に勝ち目は無い……
「布団の中を温めて起きました。どうぞ」
「お、お邪魔します……」
俺はそう言って、永久さんの待つ布団の中に入る。
無理!!無理!!無理!!
なんかすごく良い匂いがする!!
理性がガリガリ削られてるよ!!
「ふふふ。霧都くん。そんなところに居たら落ちちゃいますよ?」
「……っ!!??」
むにゅん。という感触が背中に訪れる。
永久さんが俺の身体を抱きしめていた。
「……その、永久さん」
「はい……」
「お、俺も男だからさ……その……」
「…………良いですよ?しても」
………………。
俺は彼女の方に振り向き、キスをした。
「……んぅ」
舌を入れる深いキス。彼女の柔らかい身体を抱きしめながら、これまでで一番長く、唇を重ね合う。
唇を離した俺と永久さんは熱っぽい視線で見つめ合う。
「…………霧都くん、好きです」
「うん。俺も好きだよ……」
「でも、今はしない」
「……っ!!!!!」
俺ははっきりと彼女に告げた。
「ねぇ、永久さん。何か『焦って』無いかな?」
そう、これは俺がずっと感じていた『違和感』
俺と身体を重ねることを焦っているように思えた。
「…………そうですね。私は少しだけ焦っていたと思います」
永久さんは瞳を伏せると、そう呟いた。
「原因はやっぱり……凛……っん!?」
凛音。と言おうとした俺の唇を永久さんがキスでふさいできた。
「……その名前を呼ばないでください」
「…………わかった」
昏く淀んだ瞳。永久さんが見せる深い愛の部分。
「原因は彼女です。ですがその理由を話したくありません」
「そうか……」
「その事を話すこと自体が、彼女にとっての利益になってしまうからです」
「…………そんなことがあるんだね」
俺がそう言うと、永久さんは俺の身体を抱きしめる。
「貴方とひとつになりたい。その気持ちは嘘じゃありません。焦っている。そういう所もありますが、求められたいという気持ちもあります」
「俺も健全な男子高校生だから、そういうことをしたい。という気持ちはたくさんあるよ」
俺がそう言うと、永久さんは少しだけ寂しそうに笑う。
「でも、しないんですよね?」
「うん。今日はしない」
俺がそう言うと、永久さんは納得してくれたのか身体を横にした。
「貴方の身体を抱きしめながら寝かせてください」
「うん。いいよ」
そう答えて、俺と永久さんは抱きしめ合いながら横になる。
「もし、貴方が我慢出来なくなったら、私は受け入れますからね?」
「あはは……とても魅惑的なお誘いに心が折れそうだよ……」
俺はそう言うと、手元のスイッチで部屋の明かりを落とす。
オレンジ色の明かりに照らされて、永久さんの表情もまた一段と魅惑的に見えた。
我慢するって決めただろ。少なくとも、俺と彼女の最初は今じゃない。
俺はそう決意して、目を閉じる。
「おやすみ。永久さん」
「はい。おやすみなさい、霧都くん」
そう言って俺と永久さんは眠りについた。
あれほどの愛の深さを胸に抱いている永久さんにしては、今夜はしない。と言ったことに対して随分と『聞き分け』が良かったよな。
そんなことを思いながら、俺は意識を手放した。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
愛しい彼女に浮気され、絶望で川に飛び込んだ俺~死に損なった時に初めて激しい怒りが込み上げて来た~
こまの ととと
恋愛
休日の土曜日、高岡悠は前々から楽しみにしていた恋人である水木桃子とのデートを突然キャンセルされる。
仕方なく街中を歩いていた時、ホテルから出て来る一組のカップルを発見。その片方は最愛の彼女、桃子だった。
問い詰めるも悪びれる事なく別れを告げ、浮気相手と一緒に街中へと消えて行く。
人生を掛けて愛すると誓った相手に裏切られ、絶望した悠は橋の上から川へと身投げするが、助かってしまう。
その時になり、何故自分がこれ程苦しい思いをしてあの二人は幸せなんだと激しい怒りを燃やす。
復讐を決意した悠は二人を追い込む為に人鬼へと変貌する。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
どうして隣の家で僕の妻が喘いでいるんですか?
ヘロディア
恋愛
壁が薄いマンションに住んでいる主人公と妻。彼らは新婚で、ヤりたいこともできない状態にあった。
しかし、隣の家から喘ぎ声が聞こえてきて、自分たちが我慢せずともよいのではと思い始め、実行に移そうとする。
しかし、何故か隣の家からは妻の喘ぎ声が聞こえてきて…
浮気したけど『ざまぁ』されなかった女の慟哭
Raccoon
恋愛
ある日夫——正樹が死んでしまった。
失意の中私——亜衣が見つけたのは一冊の黒い日記帳。
そこに書かれてあったのは私の罪。もう許されることのない罪。消えることのない罪。
この日記を最後まで読んだ時、私はどうなっているのだろうか。
浮気した妻が死んだ夫の10年分の日記読むお話。
悲しいことがあった。そんなときに3年間続いていた彼女を寝取られた。僕はもう何を信じたらいいのか分からなくなってしまいそうだ。
ねんごろ
恋愛
大学生の主人公の両親と兄弟が交通事故で亡くなった。電話で死を知らされても、主人公には実感がわかない。3日が過ぎ、やっと現実を受け入れ始める。家族の追悼や手続きに追われる中で、日常生活にも少しずつ戻っていく。大切な家族を失った主人公は、今までの大学生活を後悔し、人生の有限性と無常性を自覚するようになる。そんな折、久しぶりに連絡をとった恋人の部屋を心配して訪ねてみると、そこには予期せぬ光景が待っていた。家族の死に直面し、人生の意味を問い直す青年の姿が描かれる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる