十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶

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第2章 前編

第八話 ~永久さんとの二回目のデート・待ち合わせ場所では少しだけハプニングがありました~

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 第八話



 日曜日。早朝の洗面台の前で俺は身だしなみの確認をしていた。

 この一週間は朝は永久さんと桐崎さんを誘って、流を含めた四人で公園で身体を動かして来た。

 俺の方からは永久さんを誘い、事情を話すと快諾してくれた。

『ふふふ。あの二人でしたらお似合いだと思いますし、ダブルデートとかをしても良いかもしれません』
『あはは。まだ気が早いと思うけど……』

 流の方からは桐崎さんを誘って、そちらも快諾してもらったようだ。

 聞くところによると、

『電話口だけど、桐崎先輩からいつでもいいから生徒会室に来い。そう言われたよ』
『そ、そうか……』

『と、とりあえず。俺の覚悟を話してくるよ!!』
『あはは。頑張れよ、流』

 ここを越えないとお付き合いなんて無理だからな。
 俺は心の中でエールを送った。

 そして、当然だけど授業も真面目に受けている。中間テストではそれなりの点数が取れるようにしたいと思っているからね。

 いきなり赤点なんか取って、夏休みに補習とかしたくないし。

 放課後は生徒会と野球部の『二刀流』をこなした。

 庶務としての仕事は、予算会議に向けた資料の確認。
 誤字脱字。数字のミスが無いかを確認した。
 そして、資料のホチキス留めなどもした。

 あとは桐崎先輩から、

『予算会議の案内を、桜井が各部の部長に直接伝えて来い』
『え!?紙で張り出すんじゃないですか?』

『去年から紙で張り出すのと付随して、役員が頭を下げて、直接話しをしに行くようにしているんだ。お前の顔と名前を覚えてもらえ』
『わ、わかりました!!』

 先輩からそう言われた俺は、各部の部長に頭を下げて予算会議の日程を話して回った。

 先輩の教室を訪ねるのは流石に緊張した……

 野球部ではバッティングピッチャーやトス出し、球拾いを中心に、雑用に尽力した。

 武藤先輩には毎回ホームランを浴びた。
 悔しい……



 そうして充実した一週間を過ごして、迎えた日曜日。


 俺は永久さんと選んだ洋服に身を包み、鏡の前に立つ。

 悪くない。そう思う。

 アイドルすら霞むレベルの美少女と並び立つにはまだまだ自分を磨く必要があるけど、それなりに鍛えてきた身体は俺の自信にもなっている。

「お兄ちゃん。気合い入ってるね!!」
「あはは。そりゃあそうだよ。待ちに待った二回目のデートだからな」

 後ろからやって来た美鈴に、俺は笑いかける。

「永久さんが選んだ服。悔しいけど良く似合ってるよ!!お兄ちゃんをかっこよく見せる手腕は一枚上手かも知れない」
「実はこの服は俺が選んだんだよ」

 俺が苦笑いをしながらそう話すと、美鈴は凄く驚いた。

「えー!!そうだったの!!胸に野球チームのロゴが入ってるTシャツを意気揚々と持ってきたお兄ちゃんが!?」
「……そ、その話はもういいだろ」

「このジャケットは永久さんに選んでもらったんだ。俺が選んだ服を更に良くするにはこれを着てくださいってさ」
「ふむ。なるほど……お兄ちゃんの意見を取り入れながら、しっかりと自分の意思も入れてくる。永久さんはやっぱり良い女性だね」

「あはは……俺には本当に勿体ないくらいの彼女だよ」

 俺がそう言うと、美鈴は笑いながら言う。

「世界一の男のお兄ちゃんの彼女には申し分無い。私はそう思ってるよ!!」
「ありがとう、美鈴」

 俺はそう言うと、時計を確認する。

 時刻は八時。
 九時に駅前に集合の予定だ。

 そこから二人で遊園地へと向かう予定だ。

「そろそろ家を出ようと思う」
「うん。わかった!!気を付けてね、お兄ちゃん!!」

 俺は玄関へと向かって歩く。

 靴を履いて扉を開くと、予報の通りに晴れていた。

「良かった。晴れててくれた」

 俺は空を確認して、ホッとしたように呟いた。

「じゃあ、行ってくるね」
「行ってらっしゃい、お兄ちゃん!!」

 俺は美鈴に見送られ、待ち合わせ場所へと足を進めた。


『駅前』



 待ち合わせ場所の駅前に辿り着いた俺は、時計を確認する。

 時刻は八時半。待ち合わせ時間の三十分前に到着した。

 永久さんの姿はまだ確認出来ていない。

 良かった。彼女よりも早くに来れた。

 とても可愛い永久さん。待たせることになれば、ショッピングモールの時のように、くだらないナンパなどに悩まされてしまう可能性が出てしまう。

 そうなっては折角のデートが朝からブルーな気持ちになってしまうからな。

 なんて思っていると、

「おや、君は……桜井霧都くんだったね」
「あ、えーと。佐々木さん……ですよね」

 スーツ姿の男性。確か、佐々木哲人さんが俺の目の前に居た。

「おはよう、桜井くん。とても良いオシャレをしてるね。これからあの彼女とデートかな?」
「おはようございます、佐々木さん。はい。これから永久さんと遊園地へ向かう予定です」

「なるほど。それはもしかして『夢の国』かな?」
「はい。そうです。少しベタかなと思いましたが、彼女も快諾してくれました」

 俺がそう話をすると、佐々木さんは少しだけ思案をしてから切り出した。

「もし良かったら、なんだけど。君と彼女の写真をツーショットで撮らせて貰えないかな?」
「え!?な、何でですか!!??」

 いきなりの提案に、俺は驚いてしまう。

「読者モデルの話はさせてもらったよね。今の君と同じくらいにオシャレな彼女が来るのは簡単に想像出来る。雑誌の一角を彩る一枚を撮らせて貰えないかな?」
「え、えーと……」

 悩む俺に、佐々木さんは二枚のチケットを取り出す。

「こういう仕事をしてると色々なものを貰えてね。残念ながら彼女の居ない、寂しい独り身なんだ。『夢の国』のチケットを二枚貰った時には、どうしたものかと悩んだんだよね」

 流石に妹と行くのは気まず過ぎるからね。

 と佐々木さんは苦笑いをした。

「お給料。という訳では無いけれど、もし写真を撮らせて貰えるなら、このチケットを君たちに差しあげたい。いや……違うな。撮らせて貰えなくてもあげるよ」
「え!?それは流石に申し訳ないと言うか……」

 俺がそう言うと、佐々木さんは笑って言う。

「さっきも言ったように、俺が持ってても使い道がないんだよね。金券ショップに売るのも流石に問題がある。だったら使ってもらった方がこのチケットも浮かばれるだろうしね」
「そ、そうですが……」

「ふふふ。私は構いませんよ?」
「永久さん!?」

 俺と佐々木が話をしていると、駅の入り口の方から日本で一番……いや世界で一番の美少女が歩いて来た。

「永久さん。その洋服、良く似合ってて綺麗だよ。惚れ直しちゃったよ」
「ふふふ。ありがとうございます。霧都くんも素敵ですよ」

 なんてやり取りをしていると、

「なるほど。やはり彼女も綺麗だね。北島さん。桜井くんとは撮影の話をしていたんだけど、どうかな?」
「はい。私は構いませんよ?霧都くんとのツーショット写真でしたら喜んで」

 永久さんはふわりと微笑んでそう言うと、俺の所へと歩いてくる。

 そして、小さく耳打ちをした。

『私の彼氏を自慢するチャンスです。逃したくありませんから』

 と言ってきた。

 あはは……そうか、なら俺も自分の彼女を自慢しよう。

「佐々木さん。先程の写真の件、お受けします」

 俺がそう言うと、佐々木さんは嬉しそうに笑ってくれた。

「ありがとう、二人とも!!それじゃあその駅の前に立ってもらえるかな?」

「「はい!!」」

 そして、俺と永久さんは、佐々木さんが持っていたカメラで、指定されたポーズを取りながら、何枚かの写真を撮ってもらった。


 二回目のデート。始まりから少しだけハプニングがあったけど、悪くないスタートが切れたかな?

 俺はそう思いながら、永久さんとの撮影を楽しんだ。
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