十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶

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第2章 前編

凛音side ①

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 凛音side  ①



 昼休み。私は購買でパンと飲み物を買ってからある場所へと向かったわ。

 霧都たちには用事があるからと言ってある。
 この昼休みの時間を使って会いたい人物が居た。

 その人からは、この時間と場所を指定された。

 なんでも、放課後は『この部屋を使用する予定がある』とのことだからだ。

 まぁ、私にはあまり関係の無い事ね。



『生徒会室』


 私はしばらく歩くと目的の場所へと辿り着く。

 コンコンとノックをすると、中からは
「どうぞ」
 と声が聞こえてきた。

「お邪魔するわ」

 私はガチャリと扉を開けると、中に入る。

「ふふふ。こんにちは、南野さん。こうしてお会いして、話をするのは初めてかしらね」
「そうね、こんにちは。黒瀬詩織先輩」

 私は部屋の中にいた長く伸ばした黒髪が美しい年上の女性。黒瀬詩織先輩に挨拶をした。

 黒瀬詩織。生徒会長 桐崎悠斗の『一番大切な女性』と言う唯一無二の地位を得ている女。
『彼女』の藤崎朱里もそれは了承している。
 実質的には桐崎悠斗の『二番目の女』

「朱里さんから聞いているわ。貴女から先輩と呼ばれるなんて嬉しいわ」
「あらそう?私は尊敬出来ると思えたのなら先輩と呼ぶことにしているわ」

 ただ年上と言うだけでは、私は先輩だなんて呼ばない。
 この女は、藤崎朱里という彼女がいる状況で、特別な地位を得た。その手腕は尊敬に値するわ。

「ふふふ。そう、ありがとう。じゃあご飯を食べながらお話しをしましょう」
「そうね。時間も限られてるわ」

 そう言って黒瀬詩織は『生徒会長』と書かれた席に座ったわ。

 ……深くツッコミは入れないでおくわ。

 私は『会計』と書かれた席に座ったわ。

「それで、南野さんは何を聞きたいのかしら?」
「どうやったら彼女が居る男に、自分の存在をねじこめるのか?その手腕をご教授願いたいわ」

 私はパンをかじりながらそう聞いたわ。
 すると、先輩は軽く思案した後に私に聞いてきたわ。

「そうね。じゃあまずは南野さんに質問するわよ。貴方は桜井霧都くんにとって『何番目』の女の子だと思ってるかしら?」
「な、何番目……」

 そ、そうね。悔しいけど『一番目』は北島永久だと言えるわ。
 だとするならば、現状は

「に、二番目だと思ってるわ」

 悔しい!!悔しい!!悔しい!!
 だけど、現実を受け入れることからがスタートだと思ってるわ!!

 だけど、私のその言葉を、先輩は笑って否定したわ。

「ふふふ。南野さん。まずはその認識が間違ってますよ?」
「……え?」

「南野さん。今の貴女は桜井霧都くんにとって『対象外』の女の子です」
「は、はぁ!!!!????」

 バン!!

 私は感情に任せて机を叩いてしまったわ。
 た、対象外ですって!!
 ふざけんじゃないわよ!!

「ば、馬鹿な事を言わないでちょうだい!!この私が対象外のはずないでしょ!!ふざけんじゃないわよ!!」

 私のその言葉も、黒瀬詩織には柳に風。
 特に気にした風も無く、話を続けてきたわ。

「では、南野さん。もし、北島永久さんがこの世から居なくなった時。貴女は桜井霧都くんと彼氏彼女の関係になれると思うかしら?」
「……え?」

 ど、どう言う意味よ……

「私は悠斗くんにとっての『とても大切な女性』です。朱里さんがこの世から居なくなったとき、私は悠斗くんの『彼女』になれます。そのくらいの位置にいます」

「ですが、南野さん。あなたはどうかしら?」

「き、北島永久が消えれば私が霧都の彼女になれると思ってるわ」

 私がそう答えると、黒瀬詩織はため息をついた。

「はぁ。それが間違いですよ?そして、それこそが私が貴女を『対象外』と話した理由です」
「……理由を聞いてあげるわ」

「南野さん。北島永久さんがこの世から居なくなった時。桜井霧都くんは『一人で生きる』そういう選択肢を取りますよ」
「……っ!!」

 た、確かに……
 あいつの考え方ならそうなる可能性が高い……

「南野さんがいくら彼にアプローチを掛けても『俺は永久さんを思って生きていくよ』みたいな事を言われると思いませんか?」
「……お、思うわ」

「つまり、今の貴女は桜井霧都くんにとって『恋愛をしようと思う相手』ですらない。という訳です。二番目の女の子?笑わせないでください。貴女はそんな大層な地位にいませんよ」
「…………な、ならどうすればいいのよ」

 机を叩きたくなる衝動を抑えて、私は先輩に助言を求める。

 そうよ。もとより私はこの女に『助言』を求めに来たのよ。

「ふふふ。私は生徒会の副会長です。北島永久さんは私の可愛い後輩です。こんな私を慕ってくれる可愛い女の子です。そんな女の子の敵に、塩を送ると思いますか?」
「……っ!!だ、だったらなんでこの場を設けたのよ!!何か話しをしてくれるからじゃないの!?」

 私のその言葉に、先輩は笑ったわ。

「ふふふ。そうね。好きな人に対して大失敗を犯してしまった。貴女と私はとても良く似ています。ですので、その点を鑑みて、アドバイスを送りますよ?」
「さ、最初からそう言いなさいよ……」

 せ、性格の悪い女ね……

「まずは本気で『告白』をしてください」
「……え?」

 こ、告白ぅ!!??

「南野さん。貴女は桜井霧都君が好きなんですよね?」
「そ、そうよ!!何度も回り道をしたけど、ようやく気が付いたわ!!」

「でも、そのことを桜井霧都くんは知りませんよ?」
「……え?」

「ふふふ。彼の中では貴女に振られたところで時間は止まっています。つまり『南野凛音は俺に対して恋愛感情を抱いていない』そう思われています」
「そ、そう言われると、確かにそうね」

「だからこそ、告白する必要があるんですよ。私は貴方に恋愛感情を持ってます。それを伝えない限りは何も始まりませんよ?」
「で、でも!!振られるに決まってるわ!!」

「振られても良いでは無いですか?」
「……え?」

「私は本気の告白を悠斗くんにしました。そして、振られましたよ?」
「ふ、振られたのに……なんでそんな地位に居るのよ……」

「ふふふ。それは、悠斗くんが『私を手放すのが惜しい』と思ってくれていたからですよ」
「さ、最低の男ね……」

「ふふふ。でも、南野さん。どうでも良い男の一番より、一番好きな人の二番目の方が、幸せだと思いませんか?」
「…………そ、そんな考え方が」

「それに、何かの間違いで朱里さんが居なくなれば、私はその瞬間に悠斗くんの一番です。五年でも十年でも死ぬまで待ちますよ?一日でも、一時間でも、一秒でも、彼の一番に私がなれる時が来るのなら、その瞬間まで諦めません。それが、私の覚悟です」
「…………覚悟」

「南野さん。自分が思う、最高のタイミングで桜井霧都くんに告白をしなさい。そして、しっかりと振られてきなさい。そこからが貴女の勝負の始まりですよ?」

「まずは桜井霧都くんの心の中に『南野凛音に告白されて、それを振った』その記憶を刻み付けなさい。そこから先は、貴女の頑張り次第です」

 黒瀬詩織はそう言うと、椅子から立ち上がる。

「では、私はここで。出る時も鍵は空けておいて良いですよ?」

 放課後に悠斗くんとの逢瀬に使いますので。

 そう言い残して生徒会室から出て行ったわ。

「霧都に……告白する……」

 私は先輩から言われたことの難易度の高さに、頭が痛くなる。

 だけど、やるしかない。

 あいつの中に、もう一度『南野凛音』の存在を刻み付けてやる!!

 私は生徒会室でそう決意した。
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