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第2章 前編
凛音side ①
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凛音side ①
昼休み。私は購買でパンと飲み物を買ってからある場所へと向かったわ。
霧都たちには用事があるからと言ってある。
この昼休みの時間を使って会いたい人物が居た。
その人からは、この時間と場所を指定された。
なんでも、放課後は『この部屋を使用する予定がある』とのことだからだ。
まぁ、私にはあまり関係の無い事ね。
『生徒会室』
私はしばらく歩くと目的の場所へと辿り着く。
コンコンとノックをすると、中からは
「どうぞ」
と声が聞こえてきた。
「お邪魔するわ」
私はガチャリと扉を開けると、中に入る。
「ふふふ。こんにちは、南野さん。こうしてお会いして、話をするのは初めてかしらね」
「そうね、こんにちは。黒瀬詩織先輩」
私は部屋の中にいた長く伸ばした黒髪が美しい年上の女性。黒瀬詩織先輩に挨拶をした。
黒瀬詩織。生徒会長 桐崎悠斗の『一番大切な女性』と言う唯一無二の地位を得ている女。
『彼女』の藤崎朱里もそれは了承している。
実質的には桐崎悠斗の『二番目の女』
「朱里さんから聞いているわ。貴女から先輩と呼ばれるなんて嬉しいわ」
「あらそう?私は尊敬出来ると思えたのなら先輩と呼ぶことにしているわ」
ただ年上と言うだけでは、私は先輩だなんて呼ばない。
この女は、藤崎朱里という彼女がいる状況で、特別な地位を得た。その手腕は尊敬に値するわ。
「ふふふ。そう、ありがとう。じゃあご飯を食べながらお話しをしましょう」
「そうね。時間も限られてるわ」
そう言って黒瀬詩織は『生徒会長』と書かれた席に座ったわ。
……深くツッコミは入れないでおくわ。
私は『会計』と書かれた席に座ったわ。
「それで、南野さんは何を聞きたいのかしら?」
「どうやったら彼女が居る男に、自分の存在をねじこめるのか?その手腕をご教授願いたいわ」
私はパンをかじりながらそう聞いたわ。
すると、先輩は軽く思案した後に私に聞いてきたわ。
「そうね。じゃあまずは南野さんに質問するわよ。貴方は桜井霧都くんにとって『何番目』の女の子だと思ってるかしら?」
「な、何番目……」
そ、そうね。悔しいけど『一番目』は北島永久だと言えるわ。
だとするならば、現状は
「に、二番目だと思ってるわ」
悔しい!!悔しい!!悔しい!!
だけど、現実を受け入れることからがスタートだと思ってるわ!!
だけど、私のその言葉を、先輩は笑って否定したわ。
「ふふふ。南野さん。まずはその認識が間違ってますよ?」
「……え?」
「南野さん。今の貴女は桜井霧都くんにとって『対象外』の女の子です」
「は、はぁ!!!!????」
バン!!
私は感情に任せて机を叩いてしまったわ。
た、対象外ですって!!
ふざけんじゃないわよ!!
「ば、馬鹿な事を言わないでちょうだい!!この私が対象外のはずないでしょ!!ふざけんじゃないわよ!!」
私のその言葉も、黒瀬詩織には柳に風。
特に気にした風も無く、話を続けてきたわ。
「では、南野さん。もし、北島永久さんがこの世から居なくなった時。貴女は桜井霧都くんと彼氏彼女の関係になれると思うかしら?」
「……え?」
ど、どう言う意味よ……
「私は悠斗くんにとっての『とても大切な女性』です。朱里さんがこの世から居なくなったとき、私は悠斗くんの『彼女』になれます。そのくらいの位置にいます」
「ですが、南野さん。あなたはどうかしら?」
「き、北島永久が消えれば私が霧都の彼女になれると思ってるわ」
私がそう答えると、黒瀬詩織はため息をついた。
「はぁ。それが間違いですよ?そして、それこそが私が貴女を『対象外』と話した理由です」
「……理由を聞いてあげるわ」
「南野さん。北島永久さんがこの世から居なくなった時。桜井霧都くんは『一人で生きる』そういう選択肢を取りますよ」
「……っ!!」
た、確かに……
あいつの考え方ならそうなる可能性が高い……
「南野さんがいくら彼にアプローチを掛けても『俺は永久さんを思って生きていくよ』みたいな事を言われると思いませんか?」
「……お、思うわ」
「つまり、今の貴女は桜井霧都くんにとって『恋愛をしようと思う相手』ですらない。という訳です。二番目の女の子?笑わせないでください。貴女はそんな大層な地位にいませんよ」
「…………な、ならどうすればいいのよ」
机を叩きたくなる衝動を抑えて、私は先輩に助言を求める。
そうよ。もとより私はこの女に『助言』を求めに来たのよ。
「ふふふ。私は生徒会の副会長です。北島永久さんは私の可愛い後輩です。こんな私を慕ってくれる可愛い女の子です。そんな女の子の敵に、塩を送ると思いますか?」
「……っ!!だ、だったらなんでこの場を設けたのよ!!何か話しをしてくれるからじゃないの!?」
私のその言葉に、先輩は笑ったわ。
「ふふふ。そうね。好きな人に対して大失敗を犯してしまった。貴女と私はとても良く似ています。ですので、その点を鑑みて、アドバイスを送りますよ?」
「さ、最初からそう言いなさいよ……」
せ、性格の悪い女ね……
「まずは本気で『告白』をしてください」
「……え?」
こ、告白ぅ!!??
「南野さん。貴女は桜井霧都君が好きなんですよね?」
「そ、そうよ!!何度も回り道をしたけど、ようやく気が付いたわ!!」
「でも、そのことを桜井霧都くんは知りませんよ?」
「……え?」
「ふふふ。彼の中では貴女に振られたところで時間は止まっています。つまり『南野凛音は俺に対して恋愛感情を抱いていない』そう思われています」
「そ、そう言われると、確かにそうね」
「だからこそ、告白する必要があるんですよ。私は貴方に恋愛感情を持ってます。それを伝えない限りは何も始まりませんよ?」
「で、でも!!振られるに決まってるわ!!」
「振られても良いでは無いですか?」
「……え?」
「私は本気の告白を悠斗くんにしました。そして、振られましたよ?」
「ふ、振られたのに……なんでそんな地位に居るのよ……」
「ふふふ。それは、悠斗くんが『私を手放すのが惜しい』と思ってくれていたからですよ」
「さ、最低の男ね……」
「ふふふ。でも、南野さん。どうでも良い男の一番より、一番好きな人の二番目の方が、幸せだと思いませんか?」
「…………そ、そんな考え方が」
「それに、何かの間違いで朱里さんが居なくなれば、私はその瞬間に悠斗くんの一番です。五年でも十年でも死ぬまで待ちますよ?一日でも、一時間でも、一秒でも、彼の一番に私がなれる時が来るのなら、その瞬間まで諦めません。それが、私の覚悟です」
「…………覚悟」
「南野さん。自分が思う、最高のタイミングで桜井霧都くんに告白をしなさい。そして、しっかりと振られてきなさい。そこからが貴女の勝負の始まりですよ?」
「まずは桜井霧都くんの心の中に『南野凛音に告白されて、それを振った』その記憶を刻み付けなさい。そこから先は、貴女の頑張り次第です」
黒瀬詩織はそう言うと、椅子から立ち上がる。
「では、私はここで。出る時も鍵は空けておいて良いですよ?」
放課後に悠斗くんとの逢瀬に使いますので。
そう言い残して生徒会室から出て行ったわ。
「霧都に……告白する……」
私は先輩から言われたことの難易度の高さに、頭が痛くなる。
だけど、やるしかない。
あいつの中に、もう一度『南野凛音』の存在を刻み付けてやる!!
私は生徒会室でそう決意した。
昼休み。私は購買でパンと飲み物を買ってからある場所へと向かったわ。
霧都たちには用事があるからと言ってある。
この昼休みの時間を使って会いたい人物が居た。
その人からは、この時間と場所を指定された。
なんでも、放課後は『この部屋を使用する予定がある』とのことだからだ。
まぁ、私にはあまり関係の無い事ね。
『生徒会室』
私はしばらく歩くと目的の場所へと辿り着く。
コンコンとノックをすると、中からは
「どうぞ」
と声が聞こえてきた。
「お邪魔するわ」
私はガチャリと扉を開けると、中に入る。
「ふふふ。こんにちは、南野さん。こうしてお会いして、話をするのは初めてかしらね」
「そうね、こんにちは。黒瀬詩織先輩」
私は部屋の中にいた長く伸ばした黒髪が美しい年上の女性。黒瀬詩織先輩に挨拶をした。
黒瀬詩織。生徒会長 桐崎悠斗の『一番大切な女性』と言う唯一無二の地位を得ている女。
『彼女』の藤崎朱里もそれは了承している。
実質的には桐崎悠斗の『二番目の女』
「朱里さんから聞いているわ。貴女から先輩と呼ばれるなんて嬉しいわ」
「あらそう?私は尊敬出来ると思えたのなら先輩と呼ぶことにしているわ」
ただ年上と言うだけでは、私は先輩だなんて呼ばない。
この女は、藤崎朱里という彼女がいる状況で、特別な地位を得た。その手腕は尊敬に値するわ。
「ふふふ。そう、ありがとう。じゃあご飯を食べながらお話しをしましょう」
「そうね。時間も限られてるわ」
そう言って黒瀬詩織は『生徒会長』と書かれた席に座ったわ。
……深くツッコミは入れないでおくわ。
私は『会計』と書かれた席に座ったわ。
「それで、南野さんは何を聞きたいのかしら?」
「どうやったら彼女が居る男に、自分の存在をねじこめるのか?その手腕をご教授願いたいわ」
私はパンをかじりながらそう聞いたわ。
すると、先輩は軽く思案した後に私に聞いてきたわ。
「そうね。じゃあまずは南野さんに質問するわよ。貴方は桜井霧都くんにとって『何番目』の女の子だと思ってるかしら?」
「な、何番目……」
そ、そうね。悔しいけど『一番目』は北島永久だと言えるわ。
だとするならば、現状は
「に、二番目だと思ってるわ」
悔しい!!悔しい!!悔しい!!
だけど、現実を受け入れることからがスタートだと思ってるわ!!
だけど、私のその言葉を、先輩は笑って否定したわ。
「ふふふ。南野さん。まずはその認識が間違ってますよ?」
「……え?」
「南野さん。今の貴女は桜井霧都くんにとって『対象外』の女の子です」
「は、はぁ!!!!????」
バン!!
私は感情に任せて机を叩いてしまったわ。
た、対象外ですって!!
ふざけんじゃないわよ!!
「ば、馬鹿な事を言わないでちょうだい!!この私が対象外のはずないでしょ!!ふざけんじゃないわよ!!」
私のその言葉も、黒瀬詩織には柳に風。
特に気にした風も無く、話を続けてきたわ。
「では、南野さん。もし、北島永久さんがこの世から居なくなった時。貴女は桜井霧都くんと彼氏彼女の関係になれると思うかしら?」
「……え?」
ど、どう言う意味よ……
「私は悠斗くんにとっての『とても大切な女性』です。朱里さんがこの世から居なくなったとき、私は悠斗くんの『彼女』になれます。そのくらいの位置にいます」
「ですが、南野さん。あなたはどうかしら?」
「き、北島永久が消えれば私が霧都の彼女になれると思ってるわ」
私がそう答えると、黒瀬詩織はため息をついた。
「はぁ。それが間違いですよ?そして、それこそが私が貴女を『対象外』と話した理由です」
「……理由を聞いてあげるわ」
「南野さん。北島永久さんがこの世から居なくなった時。桜井霧都くんは『一人で生きる』そういう選択肢を取りますよ」
「……っ!!」
た、確かに……
あいつの考え方ならそうなる可能性が高い……
「南野さんがいくら彼にアプローチを掛けても『俺は永久さんを思って生きていくよ』みたいな事を言われると思いませんか?」
「……お、思うわ」
「つまり、今の貴女は桜井霧都くんにとって『恋愛をしようと思う相手』ですらない。という訳です。二番目の女の子?笑わせないでください。貴女はそんな大層な地位にいませんよ」
「…………な、ならどうすればいいのよ」
机を叩きたくなる衝動を抑えて、私は先輩に助言を求める。
そうよ。もとより私はこの女に『助言』を求めに来たのよ。
「ふふふ。私は生徒会の副会長です。北島永久さんは私の可愛い後輩です。こんな私を慕ってくれる可愛い女の子です。そんな女の子の敵に、塩を送ると思いますか?」
「……っ!!だ、だったらなんでこの場を設けたのよ!!何か話しをしてくれるからじゃないの!?」
私のその言葉に、先輩は笑ったわ。
「ふふふ。そうね。好きな人に対して大失敗を犯してしまった。貴女と私はとても良く似ています。ですので、その点を鑑みて、アドバイスを送りますよ?」
「さ、最初からそう言いなさいよ……」
せ、性格の悪い女ね……
「まずは本気で『告白』をしてください」
「……え?」
こ、告白ぅ!!??
「南野さん。貴女は桜井霧都君が好きなんですよね?」
「そ、そうよ!!何度も回り道をしたけど、ようやく気が付いたわ!!」
「でも、そのことを桜井霧都くんは知りませんよ?」
「……え?」
「ふふふ。彼の中では貴女に振られたところで時間は止まっています。つまり『南野凛音は俺に対して恋愛感情を抱いていない』そう思われています」
「そ、そう言われると、確かにそうね」
「だからこそ、告白する必要があるんですよ。私は貴方に恋愛感情を持ってます。それを伝えない限りは何も始まりませんよ?」
「で、でも!!振られるに決まってるわ!!」
「振られても良いでは無いですか?」
「……え?」
「私は本気の告白を悠斗くんにしました。そして、振られましたよ?」
「ふ、振られたのに……なんでそんな地位に居るのよ……」
「ふふふ。それは、悠斗くんが『私を手放すのが惜しい』と思ってくれていたからですよ」
「さ、最低の男ね……」
「ふふふ。でも、南野さん。どうでも良い男の一番より、一番好きな人の二番目の方が、幸せだと思いませんか?」
「…………そ、そんな考え方が」
「それに、何かの間違いで朱里さんが居なくなれば、私はその瞬間に悠斗くんの一番です。五年でも十年でも死ぬまで待ちますよ?一日でも、一時間でも、一秒でも、彼の一番に私がなれる時が来るのなら、その瞬間まで諦めません。それが、私の覚悟です」
「…………覚悟」
「南野さん。自分が思う、最高のタイミングで桜井霧都くんに告白をしなさい。そして、しっかりと振られてきなさい。そこからが貴女の勝負の始まりですよ?」
「まずは桜井霧都くんの心の中に『南野凛音に告白されて、それを振った』その記憶を刻み付けなさい。そこから先は、貴女の頑張り次第です」
黒瀬詩織はそう言うと、椅子から立ち上がる。
「では、私はここで。出る時も鍵は空けておいて良いですよ?」
放課後に悠斗くんとの逢瀬に使いますので。
そう言い残して生徒会室から出て行ったわ。
「霧都に……告白する……」
私は先輩から言われたことの難易度の高さに、頭が痛くなる。
だけど、やるしかない。
あいつの中に、もう一度『南野凛音』の存在を刻み付けてやる!!
私は生徒会室でそう決意した。
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