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第2章 前編

第二話 ~朝のSHRは想像していた通り……いや、以上の荒れっぷりでした……~

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 第二話



「桜井くん……いや、ブラザーと読んだ方が良いのかな?」
「いや、流石にリアルでそれは恥ずかしいから、名前で呼んでくれよ」

「そうか。じゃあ霧都って呼ばせてもらうよ!!」
「おっけー。じゃあ俺も流って呼ばせてもらうぜ!!」

 そう言うと、俺と流は握手をした。

「桐崎さん。あの二人はどうしていきなりあんなに仲が良くなったんですか?」

 俺と流のやり取りを訝しげに思った永久さんが、桐崎さんに聞いていた。

「私も少し驚いてるんだけど、星くんがやってる、ライジンオンラインってゲームでね、何年も前から親友として交流を深めてた人がいて、その人が桜井くんだったみたい」
「そうなんですね!!世の中って意外と広いように見えて狭いところがありますね」

 確かに。俺も初めてそれを知った時には、世間の狭さを感じたよね……

「ねぇねぇ。永久ちゃんもやらない?ライジンオンライン」
「え?私でも出来るんですか?」
「出来るよ。私もつい最近始めたんだー」

 そう言って桐崎さんはスマホにダウンロードされた、ライジンのアプリを見せた。

「協力プレイ?とかもあるみたいだからさ、みんなでやったら面白いと思うんだ」
「良いですね!!私だけ仲間はずれも寂しいので、早速ダウンロードしてみます!!」

 永久さんがそう言うと、流がポケットからモバイルルーターを取りだした。

「桐崎さんにはもう教えてるから、霧都と北島さんにも教えておくよ。俺のWiFiを使って構わないよ」
「マジで!?良いのかよ、流」
「そ、それって星くんのお金で契約してますよね?良いんですか」

 俺と永久さんの質問に、流が笑う。

「霧都ならわかるだろ?布教出来る喜びに比べたらこの程度のことなんか些事だよ。それに、君たちなら悪用しないだろ?」
「確かにな」
「では、ありがたく使わせてもらいます」

 俺と永久さんは、流からパスワードを教えてもらい、永久さんはさっそくライジンオンラインをスマホにダウンロードし始めた。

 ダウンロードの間に俺が永久さんに聞く。

「永久さんの部屋にはパソコンがあったけど、あれは自由に使えるのかな?」
「はい。個人的な執筆活動と調べ物くらいにしか使ってませんが、あれは私が自由に使えるパソコンです」

 個人的な執筆活動……とても気になる単語が聞こえてきたけど……

 そう思った俺の耳元で、永久さんが囁く。

『貴方との夢の生活を描いた小説を書いてます。興味があれば読んでいただいても良いですよ?』

 その言葉に俺は顔が熱くなった。

「今度お邪魔した時に読ませてもらおうかな……」
「ふふふ。お待ちしております」

 なんてやり取りをしていると、ダウンロードが終わっていた。

「スマホよりもパソコンの方がやっぱり動きも良いから、パソコンの方にも入れると良いよ」
「わかりました。霧都くん。もし良かったら今日の放課後に自宅で教えて貰っても良いですか?」
「断る理由が無いな!!喜んで行くよ」
「はい!!お待ちしております」

 そんな俺たちのやり取りを聞いていた桐崎さんと流が、

「オンラインゲームも二人にかかればイチャイチャの道具とはね……」
「あはは。仲が良くて羨ましいよ」

 なんて言って眺めていた。



 そして、少しすると教室に人が集まり始める。



 登校時間のギリギリで、凛音が教室に入ってきた。

「おはよう、凛音」
「おはよう、霧都」

 俺は凛音に朝の挨拶をする。
 別にこの程度のことは今後もする予定だ。

「おはようございます。南野さん」
「おはよう、北島さん」

 永久さんも凛音に挨拶をしていた。
 それに答える凛音も別に普通な感じがした。

 俺と永久さんが席に戻ると、根岸先生が教室に入ってくる。

「皆、おはよう。桜井と南野は体調が良くなって何よりだ。新学期で体調を崩す者も少なくない。あまり無理をしないよう、気を付けなさい」
「はい」
「はい」

 根岸先生の言葉に俺と凛音が返事をした。

「それでは朝のSHRを始める。まずは……」

 根岸先生の連絡事項を聞きながら、俺は思案していた。

 永久さんと凛音が何も無さすぎる様な気がする。

 なんか……嵐の前の静けさ。みたいな感じがするんだよなぁ……

 なんて思ってると、

「今日の連絡事項は以上だ。皆からは何か連絡事項はあるか?」

 根岸先生のその言葉に隣の永久さんが手を挙げる。

「北島。何かあるか?」
「はい。私事ではありますが皆さんにお話があります」

 ……マジか。やっぱりこのタイミングで言うのか。

 永久さんは椅子から立ち上がると、クラスメイト全員に聞こえるように話し始めた。

「昨日より、私。北島永久と桜井霧都くんは結婚を前提としたお付き合いを始めました」

 ……ざわ
 …………ざわ

 クラスがざわめきに包まれる。

 根岸先生は珍しく、目を見開いていた。

 あ、あの先生があんな表情をするのか……

「ねぇ、北島さん。その話は今必要な話かしら?」

 なんて言って食いついてきたのは、やはりと言うか、凛音だった。

 凛音のその言葉に、永久さんはフワリと笑う。

「連絡事項でございますので。こういうのは早めに話しておいた方が良いと思いました。でないと霧都くんに悪い虫が付いてしまいますので」
「ふーん?こういう場でわざわざ明言しないと霧都が奪われる。そんな風に思うくらいにアンタには余裕が無い訳ね?」
「…………なんですって」

 い、一触即発……どころじゃない。

 ヤバい雰囲気が教室にたちこめる。

 パンパーン!!

「「っ!!??」」

 教室に柏手が打ち鳴らされる。

 音の出処は……桐崎さんだった。

「はい。ここは教室。今はSHRの時間。女の戦いをする場所でも時間でも無いよ?」

 桐崎さんのその言葉に、永久さんと凛音が頭を下げた。

「す、すみません……」
「はぁ……悪かったわ」

 そして、それを合図にしたのかSHRの終わりを告げるチャイムが鳴った。

「……連絡事項は以上だな。北島。今回は大目に見るが、以後は認めない。気を付けるように」
「はい……」

 根岸先生はそう言うと、教室から出て行った。

「少し、熱くなってしまいました。反省です」
「あはは。凛音もかなり煽ってたからね」

 なんて話をしながら俺は思った。

 やっぱりこの二人が何も無い。

 なんてことはありえないんだな……って……
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