十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶

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第2章 前編

第一話 ~恋人同士として、初めての登校。駅前では彼女の愛の深さを感じました~

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 第一話



 月曜日の早朝。俺は洗面台の前で身だしなみを整えていた。

 昨日は思い出の公園で永久さんに告白をした。

 俺の告白を受け入れてくれた彼女。晴れて俺と永久さんは恋人同士になった。

 す、すげぇ嬉しい!!あんなに可愛い女の子が俺の彼女とか、テンションが上がる!!

 昨日の夜のメッセージでも、

『今でもまだ夢の中にいるようです。霧都くんと恋人同士になれたのが信じられません』
『俺も同じかな。永久さん。君を愛してるよ』
『ありがとうございます。私も霧都くんを愛してます』

 なんてやり取りをしてから眠りに着いた。

 寝坊なんかしないようにきっちりと目を覚ますことも出来た。

「おはよう、お兄ちゃん。今日から永久さんと恋人同士だね!!」
「うん。こうして永久さんと付き合うことが出来るのは、美鈴のお陰だよ。ありがとう」

 後ろからやって来た最愛の妹に、俺は笑いかける。

 昨日はあの後夕方近くまで永久さんの家に居たようだ。
 お昼ご飯もいただいていたようで、雄平さんと優美さんにはお礼をしておいた。

 お二人には昨日のうちに交際を始めたことを伝えてある。

 その話を聞いて二人とも、すごく喜んでくれていた。

『霧都くん!!君はもう僕の息子だ!!』
『あはは。これからもよろしくお願いします、雄平お義父さん』
『ふふふ。霧都くん。私のことも呼んでくれるのかしら?』
『はい。優美お義母さん』

 俺がそう言うと、雄平も優美さんも笑ってくれた。

「さて、そろそろ駅前に行こうかな」

 俺はそう言うと、用意していたカバンを手に取る。

 玄関に着いた俺に、美鈴が笑い掛けてくれる。

「行ってらっしゃいお兄ちゃん」
「うん。行ってきます」

 俺はそう言って外に出る。

 外は快晴。俺と永久さんの新しい関係性のスタートを祝福してくれてるようだった。

 玄関の扉を閉めて、自転車の鍵を外す。

 隣の凛音の家を見る。

 あいつの部屋のカーテンは閉められていた。

 あいつと俺の関係は、もう。終わったこと。
 これから先の未来は、永久さんと紡いで行く。

「今までありがとう、凛音」

 俺はそう呟いて、自転車を駅へと走らせた。





 駅へと到着するも、永久さんの姿はまだ無かった。

 彼女を待たせることがなくて良かったと思って、自転車を近くに停めて、駅口で待つ。
 時刻は早朝。まだ誰もいない時間だった。

 そして、スマホに入れてあるゲームのログインボーナスを受け取っていると、階段を降りてくる美少女の姿が見えた。

「おはよう、永久さん」
「おはようございます、霧都くん」

 俺は彼女に朝の挨拶をする。

 恋人同士になってからの初めての朝の挨拶。

 永久さんは笑顔を浮かべながら、俺の前まで歩いてくる。

 ……あれ?近くない??

 そう思う俺の身体を、永久さんが抱きしめてくる。

 柔らかい彼女の身体の一部がお腹に当たる。

 あ、朝から刺激が強いです!!

「霧都くんに会えない時間が長くて……寂しかったです……」
「そ、そうか……」

 別れてから数時間しか経ってないのにと思うけど、彼女にはとても寂しい思いをさせていたようだ。

 俺は周りを見る。人の気配はまだない。
 誰にも見られてなくて良かった。

「キスしてください」
「……え?」

 じっと俺を上目遣いで見る永久さん。

「……嫌ですか?」
「い、嫌じゃないよ。むしろ光栄かな」

 そう言って俺は彼女と唇を重ね合わせる。

 朝から彼女の愛の深さを感じる。

 ほんと、誰にも見られてなくて良かった。

 こんな、早朝の駅前で、高校生の男女がキスをしてる。

 他人から見たらどうな風に思われるんだろうか……

 そんなこと、簡単に想像出来るよ。


 でも、こうして彼女から求められるのは男としては嬉しいこと。

 俺はそんなことを思いながら、彼女の愛を感じていた。



 誰にも見つかることなくキスをした俺と永久さんは、早朝の通学路を自転車で走る。

 学校が近づくにつれて、段々と朝練を控えた生徒たちの姿が増えてきた。

「学校では俺との関係は話をするのかな?」

 と、永久さんに聞いてみた。

「ふふふ。当然しますよ?だって、そうしないとあなたに悪い虫がついてしまいますから」
「そ、そうか。まぁ俺よりも君の方がそういうのに悩まされそうだけど」
「はい。ですので私と霧都くんが交際をしてる。というのを公言するのは一石二鳥だと思ってます」

 そんな話をしながら自転車を漕いでいると、学校へと到着した。

 駐輪場に自転車を停めて、鍵をかける。

「どんな感じで公言するつもりかな?」

 永久さんと手を繋ぎながら、教室へと向かう。

「朝のSHRの連絡事項で話をしようと思います」
「…………なるほど」

 かなり朝から荒れるSHRになることは請け合いだな。

 なんて思いながら、一年一組の教室へと辿り着く。


『一年一組』


「手は離す?」
「離したくないです……」
「あはは。じゃあ繋いでようか」

 俺は少しだけ恥ずかしさを覚えながら、教室の扉を開ける。

 ガラリと開けると中には学級委員の二人が既に居た。

 二人は教室の隅でスマホを片手にゲームをしていた。

 あはは。昨日見かけたけど、二人が随分と仲良くなったのはそれが原因かな?

「おはよう、桐崎さん」

 俺は彼女に朝の挨拶をする。

「おはよう、桜井くん」

 彼女は俺と永久さんの繋がれた手を見て笑った。

「おめでとう。でいいのかな?」
「うん。そうだね。昨日から、かな」

 俺がそう言うと、桐崎さんは嬉しそうに両手を合わせてくれた。

 そして、俺は彼女の隣にいるもう一人に声をかける。

「よう。『スター』!!現実でもよろしくって言った言葉。遅くなって悪かったな」

 俺のその言葉に『スター』星流くんの顔が驚きに染った。

「ま、まさか……桜井くんが『ブラザー』なのか!?」
「そうだよ。『✝︎キリト✝︎』って名前だっただろ?」

 俺がニヤリと笑ってそう言うと、

「『✝︎キリト✝︎』なんてどこにでも有り触れた名前で分かるわけないだろ!!」

 なんて彼の言葉が教室に木霊した。

 こうして俺は、ネット上の親友とリアルで会うことがようやく出来た。
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