十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶

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第1章 後編

第十九話 ~彼女と過ごす二日目・おめかしをした彼女は世界で一番可愛い女の子でした~

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 第十九話



 雄平さんと優美さんと連絡先の交換をしたあと、俺は雄平さんの自室を借りて着替えをしていた。

 俺が着ていく服は、昨日美鈴が選んでくれた。

 GパンとTシャツにジャケット。というシンプルな組み合わせだ。

 美鈴に理由を聞いたところ、
『お兄ちゃんは筋肉質な身体をしてるでしょ?だからこういうシンプルな服装が似合うんだよ。筋肉も立派なファッションだよ』
 と言われた。

「よし。こんなもんかな」

 鏡を見ながら髪型を整えて、十五分ほどで身支度を整え終わる。

 俺が居間にもどると、私服に着替えた美鈴が俺の姿を見て笑顔をくれた。

「うん。お兄ちゃん、かっこいいよ!!」
「ありがとう、美鈴」

 俺は少しだけ安心して美鈴にお礼を言う。そして、視線をテーブルの上に向けると、アルバムが置いてあった。

「これはもしかして、永久さんの?」

 俺がそう言うと、奥から一冊づつアルバムを持った優美さんと雄平さんがやって来た。

「そうよ。そこにあるのが幼稚園までの永久のアルバムよ。それで、今私が持ってきたのが小学生の時のよ。そして、今お父さんには中学生の時のを持ってきてもらってるわ」
「うん。これが永久が中学生の時のだね」

 合計三冊のアルバムが机の上に並んだ。

 これだけの写真があるってことは、永久さんは本当に両親に愛されて育ったんだなと思える。

 時刻を確認するともうすぐ十時になりそうだった。
 そろそろ永久さんが戻って来るかな。

「永久さんが戻って来るまでちょっと見てもいいですかね?」
「良いわよー。みんなで楽しみましょ?まずは幼稚園から……」

 そう言って優美さんが幼稚園の頃のアルバムを開くと、

「あらやだ……永久のフルヌードだわ」
「…………いや、これは流石に写真に残したら不味いですよね」

 幼稚園の頃の家での写真だろう。

 素っ裸の永久さん(幼少期)が笑顔でビニールプールではしゃいでいた。

 この頃から永久さんは可愛いな。


 いや、俺も似たようなことを凛音と美鈴とでしてたけど、流石に写真は残ってないと思いたい……

 まじまじと写真を見ていた俺だが、あまり見続けるのもアレかと思ったので、

「ふぅ……仕方ないですね。この写真は責任を持って俺が……」
「……霧都くん……何を見てるんですか?」

 ゆらり……と現れた永久さんが、俺の後ろから声を掛けてくる。

「ふふふ。私に内緒で幼少期の恥ずかしい写真を見てるなんて……霧都くんもなかなかおちゃめなところがありますね?」

 と、笑顔で言う永久さん。
 目だけが笑ってない……


「お、俺の小さい頃の写真も見せることで……」
「当然ですよね?それ以外には?」

 そ、それ以外!?

「と、永久さんのお願いをなんでも一つ。叶えます……」

 俺がそう言うと、永久さんは笑ってくれた。

「それで手を打ちます。ふふふ。霧都くんに何をお願いしましょうかね」
「お、お手柔らかにお願いします……」

 俺のその言葉を聞いたあと、永久さんは俺の前でフワリと笑った。

「さて、霧都くん。私の格好はどうですか?」

 白いTシャツにピンクのフレアスカート。
 薄くお化粧をした永久さんは控えめに言って天使だった。

「とても可愛いし、似合ってる。君は下界に降り立った天使だったのかな?」
「もぅ、霧都くん……」

 俺のその言葉に、永久さんは頬を赤く染めた。

「もう少しアルバムを見ていたい気持ちもありましたけど、過去の写真の永久さんより、今目の前に居る永久さんの方が魅力的ですので、ここで失礼したいと思います」
「あぅ……」

「あはは。君も言うじゃないか」
「そうね。あまり引き止めてもデートの時間が短くなっちゃうわね」

 そういう二人に俺は言う。

「あまり遅くならない時間に永久さんをこちらまで送り届けます。俺の荷物はその時に回収して持って帰ります」
「じゃあ私は自分の荷物だけ持って、頃合いを見て帰るよ。永久さんの写真は、私が堪能してるね!!」

「ふふふ。また今度、美鈴さんの写真も見せてくださいね?」
「もちろんですよ、永久さん!!お兄ちゃんの素っ裸の写真も私が保管してますのでお見せします!!」
「えぇ!!??」

 初耳なんだけど!!??

「ふふふ。それは楽しみですね」
「い、いや……それって美鈴や凛音も素っ裸で写って……」
「甘いよお兄ちゃん。ビニールプールでお兄ちゃんが温泉ごっこ!!とか言いながら一人で真っ裸でくつろいでる所が写真に残っているんだよね」

 やった!!やってたよそれ!!
 まさか写真に残ってたのかよ!?

「さて、霧都くん。行きましょう」
「え!?……あ、はい」
「素っ裸の霧都くんの写真。今からとても楽しみです」

 フワリと笑う永久さんに俺は言葉を返せなかった。







『駅前』


 市内を走るバスで駅前まで移動し、そこからバスを乗り換えてショッピングモールへと向かうルートだ。

 バスの中は比較的空いていたので二人で並んで座ることが出来た。

 日曜日の昼前という事もあり、そこまで利用者が多い時間帯では無かったのかもしれない。

 まぁ、帰りの時間帯は混みそうなので、俺がしっかりと永久さんを守らないといけないな。

 そして、バスは駅前に到着した。

「さて、降りようか永久さん」
「はい」

 誰かが降車ボタンを押していたので、バスが駅前に到着した時に扉が開く。

「足元気をつけてね。オシャレなミュールを履いてるからさ」
「ふふふ。ありがとうございます」

 俺は永久さんが転ばないように、手を繋いで歩く。

 そして料金を払い終えると、先に降りて降車口で永久さんを待つ。
 バスのステップを歩く彼女に手を貸して降りる手助けをする。

「優しいですね、霧都くん」
「あはは。俺が君と手を繋ぎたいだけだよ」

 そんな会話をしながら、駅前からのバスを待つ。

 すると、

「ちょっと君たち、お時間良いかな?」

 とスーツの男性が俺たちに話しかけてきた。

「何の用ですか?」

 と俺が永久さんの前に立つ形で男性に応対する。

 道を聞きたいのかな?俺が隣に居るのに永久さんへのナンパという線は無いだろう。若者への政治の関心を調べてるのかもしれない。なんて思っていると。

「君たち。モデルに興味は無いかな?実は私はこういう者でね」

 男性は一枚の名刺を渡してきた。
 俺はその内容を確認して少しだけ驚いた。

「ファッション雑誌の編集者の佐々木哲人(ささきてつと)さんですか」

 この雑誌は美鈴が良く読んでる雑誌だ。
 そんな人がモデルにならないか?と言うってことは……

「読者モデルと言うやつですか?」
「そうだね。きちんとお給料も出るし、そこから専属モデルとかになる道もある。興味は無いかな?と思ってね。君とそちらの女性。二人に声をかけているんだ」
「なるほど。彼女だけかと思いましたが、自分もでしたか」

 俺がそう言うと、佐々木さんは少しだけ笑いながら、

「君は背も高いしかなり筋肉もある。そう言うモデルはなかなかいなくてね。希少なんだよね」

 そう言った。

 俺は佐々木さんから貰った名刺を大切に扱い、お財布の中にしまいこむ。
 後ろの永久さんに視線を送ると、フワリと笑ってくれた。

 これはきっと『あなたにおまかせしますよ』と言う意味だな。

 だったら話は決まってる。

 そして、

「大変光栄なお誘いですが、お断りさせて貰えますか?それと、これから彼女とデートなんです」

 俺はそう言って佐々木さんに頭を下げた。

「あはは。それは残念だ。でももし気が変わったらそこに書いてある電話番号に連絡をしてくれ。いつでも待ってるからね」

 佐々木は笑顔でそう言ってくれた。
 良かった。優しい人みたいだ。

「自分は桜井霧都と申します」
「私は北島永久と申します」

 名前すら教えないのは失礼かと思ったので俺たちは自己紹介をした。

「桜井くんに、北島さん。これからデートを楽しんでくれ。まぁ邪魔をした人間のセリフでは無いとは思うがね」
「あはは。気にしないでください、佐々木さん。バスを待つ時間で貴重な体験が出来て楽しかったです」
「ありがとう桜井くん。そう言ってくれると助かるよ」

 そう言うと、佐々木さんは俺たちの元から去って行った。

 そのタイミングで俺たちが乗る予定のバスがやってきた。

「このバスだね。乗ろうか」
「はい」


 こちらのバスも比較的空いていて、俺たちは並んで座ることが出来た。

 そのバスの中で永久さんが話し掛けてきた。

「少しだけびっくりしましたね」
「うん。初めての経験だから俺も驚いたよ」

「そうですか?桜井くんなら何度か体験があるかと思いましたが?」
「あはは。君のとデートの最中に他の女性の名前を出すのはどうかと思うけど、凛音と歩いてる時にアイツが誘われるってのはあったよ。まぁにべも無く断ってたけどね」

「そうなのですね。私も何度か経験はありましたが、全部断ってます。その中でもあの方はとても良い方ですね。中には酷い方もいましたので」
「そうなんだ。永久さんは可愛いし綺麗だからね、誘われるのはわかるよ。でも、失礼なのはいただけないな」

「ふふふ。ですが、これからは霧都くんがあぁして護ってくれると信じてますので安心です」
「君のボディーガードは俺が責任を持ってこなすよ」

 そんな話をしていると、ショッピングモールへとバスは到着した。

「さて、降りようか永久さん」
「はい。私は今から楽しみです」
「あはは。俺もすごい楽しみだよ」

 俺たちはそう話しながらバスを降りてショッピングモールへと歩いて行った。
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