十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶

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第1章 後編

第八話 ~彼女と過ごす一日目・一張羅を着て、彼女の両親に会いに行きました~

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 第八話



「じゃあ美鈴、行ってくるよ」
「お邪魔しました美鈴さん。また後で来ますね」
「うん。行ってらっしゃい、お兄ちゃん、永久さん。私はおうちで待ってます!!」

 俺は美鈴の選んでくれた洋服に身を包み、玄関の前で美鈴に挨拶をする。
 白の襟付きのシャツに、灰色のジャケット。黒を基調としたスラックスに、靴は革靴を用意した。
 髪型もしっかりと整えている。

 これは全部美鈴のお陰だ。
 彼女には本当に頭が上がらない。



『電話口からもわかったけど、向こうが持ってる真面目で誠実なイメージを崩したらダメだからね?』
『忠告ありがとう、美鈴。服装もすごく良い感じだ』

 そんなやり取りをして、永久さんの着替えを待っていると、

『お待たせしました』
『わぁ……綺麗』

 薄いピンク色のワンピースに身を包んだ永久さんが居間にやって来た。
 美鈴はその姿に見蕩れていた。
 正直な話。俺もかなりヤバいと思っていた。

『制服も似合ってたけど、その姿も素敵だね』
『あ、ありがとうございます。霧都くんのその姿もとてもかっこいいです』
『あはは、ありがとう。ほとんど美鈴のお陰だけどね』

 と、俺は苦笑いを浮かべる。

『お兄ちゃんに洋服を選ばせると、プロ野球チームのロゴが入ったシャツとか帽子とか持ってくるんで、もう洋服には触らせないことにしました!!そう言うのはね、小学生かおじさんが着るものなんだよ?』
『……す、すみません』
『あはは。そういう服装の霧都くんも見てみたい気もしましたけど、あなたがおじさんになるまで我慢しますね』

 これから訪れるそんな未来までずっとあなたと一緒に居ますよ。
 みたいな事を言われて、俺は顔が熱くなった。

『はいはい。イチャイチャするのは帰って来てからでもいいでしょ?のんびりしてると遅刻するよ』

 あはは……教室の桐崎さんみたいな事を言われてしまった。

『ごめんね、美鈴。じゃあ永久さん、そろそろ行こうか』
『はい。私も準備万端です』




 そして、俺たちは二人で家を出て、永久さんの自宅へと向かった。



 自宅を出て、バスに乗って駅へと向かう。
 そして、電車で移動した後に再びバスを使って彼女の家の近くまで行く。
 そして、バス停から少し歩くと予定していた一時間ほどの時間で、

『北島』

 と書かれた表札のある白を基調とした二階建ての自宅が目の前に現れた。

 時刻は十二時十分前。
 早過ぎず、遅過ぎずの時間に来れた。

「ふぅ……緊張してきた」
「大丈夫ですよ、霧都くん。先程の様子から見ても、歓迎こそすれ、追い出されるなんてことは無いですよ?」

 胸に手を当てて呼吸を整えている俺に、永久さんが優しく微笑んでくれた。

「うん。そうだね……よし。行くか!!」
「はい!!」

 俺は意を決して、インターホンを鳴らす。

 ピンポーン


 と言う音がすると、直ぐに応答があった。

『はーい』

 優しそうな女性の声が聴こえた。
 昨晩聞いた永久さんのお母さん。優美さんの声だろう。

「お招きいただいた桜井霧都です。永久さんと一緒に来ました」

 俺はスピーカーに向かってきちんと声を発する。

『待ってたわよー、今鍵を開けるわね。居間ではお父さんが待ってるからね』
「あ、はい。わかりました」

 プッ

 と言う音と共に、会話が終わる。
 そして、少しすると玄関の扉の鍵が、ガチャリと開く。

 俺と永久さんは玄関へと歩いて行く。

「いらっしゃい、霧都くん。それと、永久はおかえりなさい」

 玄関の扉を開けて出てきたのは、明るい茶色に髪の毛を染めたロングヘアーの優しそうな女性。
 背丈は160cmくらいだろうか、高校生の娘が居るとは思えないような若作りの方だ。

「こんにちは、優美さん。本日はお招きいただきありがとうございます。お名前は雄平さんから伺いました」
「あら、そうなのね。霧都くんから『お母さん』って呼ばれるのも良かったけど、名前呼び良いわね」
「お母さん。霧都くんは私のだから、手を出したらダメだからね?」

 そんなことを言いながら、永久さんは俺の腕を抱き締める。
 や、柔らかいアレが当たってますっ!!

「ふふふ。大丈夫よー永久。私はお父さん一筋だから」

 優美さんはくるりと踵を返すと、奥の方へと歩いて行く。

「上がってちょうだい。お昼の支度は済んでるわよ。お父さんもお腹を空かせてるみたいだしね」
「はい。自分もお腹が空きました。優美さんの手料理を楽しみにしています」
「霧都くん。お母さんの料理は美味しいから期待していいからね」
「もー永久ったら、ハードルを上げないの!!」

 なんて会話をしながら、俺たち三人は居間へと向かう。

 そして、部屋の中へと入ると、テーブルには美味しそうなオムライスが人数分用意されていた。
 そして、その前には椅子に座った男性が居る。

 雄平さんで間違いないだろう。
 俺も目が合った雄平さんはニコリと微笑んだ。

 あぁ、永久さんの笑顔はお父さん譲りなんだな。

 なんて感想を抱いた。


「こんにちは、雄平さん。先程は電話口でしたので改めて挨拶をさせてください。桜井霧都です。今日はお招きいただきありがとうございます」

 俺は雄平さんにそう言って一礼した。

「こんにちは、霧都くん。こちらも君に会えて嬉しいよ。それに、随分とセンスのいい素敵な服装で来てくれたんだね」
「あはは。ありがとうございます。うちには凄腕のコーディネーターが居ますので、洋服に関しては一任してます」

「永久もお気に入りのワンピースで来るなんて、相当気合いが入ってるのね?この後は二人でどこかに行くのかしら?」

「お、お母さん!!」
 と、永久さんが顔を赤くしながら抗議をする。
 あはは、やっぱりかなり気合を入れてくれたみたいだ。


「そうですね。本格的なデートは明日の予定ですが、今日は少し永久さんを連れて行きたい所があるんです」
「……え?そんな話は聞いてないけど、何かあるんですか?」

 キョトンとした表情でこちらを見る彼女。
 そう、ちょっと彼女を紹介したい人が居るんだ。

「うん。ちょっと今はまだ内緒なんだけどね。君を紹介したい人が居るんだ」
「そ、そうなんですね……わかりました。粗相をしないように頑張ります!!」

「さて、みんな。そろそろご飯にしないか?お母さんが作ってくれたお昼ご飯が冷めてしまうよ」
「あ、はい!!すみません」
「そうだね、私もお腹空いちゃった」
「おかわりは無いけど、足らないようならパンなら直ぐに焼けるから霧都くんも遠慮なく言ってね?」
「はい!!ありがとうございます」

 そして、俺たちは「いただきます!!」と声を揃えてから食べ始めた。
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