十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶

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第1章 後編

第六話 ~彼女と過ごす一日目・彼女と寝ているところを美鈴に目撃されました~

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 第六話



 俺は意識を現実に戻すと、目覚まし時計を見る。

 時刻は七時半。八時頃には朝ご飯を食べようかな。そんなことを考えていた。

 そろそろベッドから出て、朝の支度をしてもいいと思う。美鈴はいつ帰ってくるかわからないけど、もしかしたら向こうに昼くらいまでは居るかもしれない。

 ……いや、万が一のことを考えるなら、この状況を目撃されることの方が致命的かも知れない。

 美鈴には永久さんのことは話してはいるし、俺の気持ちも伝えてはいる。

 だが、ファーストコンタクトが俺のベッドの中で眠る彼女。ってのは流石にダメだろ。

 ぴこーん。

 ……何かフラグが立ったような音が聞こえた。


 ガチャ……

 タッタッタッ……


 家の鍵が開けられた音が聞こえた。

 そして、家の中を走る音も聞こえる。

 ……フラグ回収早くないですか!!!!

 絶望的な状況を回避するような名案なんか浮かぶ間もなく、足音は俺の部屋の前で止まった。

 自室に戻るとかではなく、俺の部屋直行ですか……

 そして、ガチャっと俺の部屋の扉が開かれる。


「おはよう、お兄ちゃん!!昨日は一人にしちゃってごめんね!!でも、お陰で凛音ちゃんとは仲直り……」

「お、おはよう……美鈴……」

 俺の隣に眠る永久さんを見つけて固まる美鈴。
 俺は苦笑いを浮かべながら朝の挨拶をする。

「お兄ちゃん……その女……誰……?」

 ハイライトの消えた瞳で、美鈴はコテン……と首を傾げる。

「……北島永久さん。美鈴の義理のお姉さんになる人だよ……」

 俺は震える声で、そう答えた。





『とりあえず、下で朝ご飯の支度をしてるから。話は下で聞かせてね、お兄ちゃん』
『り、凛音は……?』
『凛音ちゃんなら今頃スヤスヤ寝てるよ。なんだかんだ言っても、先に寝ちゃったの凛音ちゃんだし』
『そ、そうか……』
『いやー……お兄ちゃんが私の不在時に女の子を連れ込むような人だとは思いませんでしたよ』
『い、いや……それは誤解』
『誤解だったらしっかりと説明をしてね、お兄ちゃん?』


 美鈴はそう言うと、下の階へと降りて行った。

「永久さん。起きて、そろそろ良い時間だよ?」

 俺はそう言って、彼女の身体に少しだけ触れて、優しく揺する。

 や、柔けぇ……し、しかも……揺れてる……

 寝る時は下着を着けていないのか……
 だからあんなに柔らかさをダイレクトに感じたのか……

 彼女の大きなアレがふよんふよんと揺れていた。

「……んぅ……ふぇ……」

 この子は……起きる瞬間まで人を惑わせるのか……

「……おはよう……ございます。霧都くん」
「おはよう、永久さん」

 少しだけまだ焦点の合ってない瞳で、彼女は俺に朝の挨拶をする。

「ぎゅー」
「ちょっと待って!!それはダメだって!!」

 寝ぼけたまま、彼女は俺に抱き着いてきた。

 柔らかい!!柔らかいよ!!
 朝から刺激が強すぎる!!

 そして、抱き締め返したい欲望を我慢して、少しすると彼女の意識が完璧に覚醒したようで……

「……す、すみません!!」
「い、いいよ……役得だよ……」

 彼女はそう言って俺から、パッと離れた。
 あぁ……少しだけ名残惜しいかな……

「えと、目が覚めたかな?」
「はい……お見苦しいところを見せてしまいました……」

 顔を赤くする永久さん。その姿は可愛いけど、さっきまでの行動は、可愛いどころか完全に殺りに来ていた……

「その、俺と君が寝ているところをね、美鈴に見られてるんだ……」
「そ、そうですか……」

 なかなか刺激的なファーストコンタクトに、永久さんは申し訳無さそうな表情をする。
 しかもそれは自分の知らないところで起きたものだし。

「とりあえず、美鈴には下で説明するって話をしてある。朝ご飯の支度をしてくれてるから、それを食べながら話をしよう」
「……はい。それで、その……妹さんには私のことは話してあるんですか?」
「うん。名前はもちろん、これまでのことも。そして、俺の気持ちとこれからのことも、全部」
「そ、そうですか……なら、気合いを入れないと行けませんね。最初の印象が最悪過ぎますけど、頑張ります!!」

 小さく両の拳を握る永久さん。

 昨日のあの様子では無い彼女なら、多分大丈夫だと思うんだよなぁ

 と俺は思っていた。




 そして、顔を洗ったあと、俺たちはパジャマのまま居間へと向かう。
 下に行くと、目玉焼きとウィンナーが用意されていた。

「ご飯は昨日の夕方から予約で炊いてあるから、好きな分だけよそってね。目玉焼きとウィンナーは今出来たばかりだから、まだ冷めてないよ」
「ありがとう、美鈴」

 俺はそう言うと、椅子に座る。

 永久さんは、台所に居る美鈴の元へと向い、頭を下げた。

「先程はお見苦しいところを見せてしまい、大変申し訳ありません。その上こうして朝食まで用意してもらえて、なんと申し上げたら良いかわかりません」
「あはは……さっきは私もかなり驚いちゃったけど、気にしないでいいですよ。それに、詳しい話はご飯を食べながらしましょ?」
「はい。ご相伴に預からせてもらいます」

 永久さんはそう言うと、俺の隣に座った。

「優しい妹さんで良かったです。本当に頭が上がりません」
「あはは。俺も美鈴が居なかったら生きて行けてないからね」



 そんな話をしてると、朝ご飯の支度が終わった。

 そして、俺たちは「いただきます」と声を揃えたあとに、ご飯を食べる。

 朝食を食べ進めて行くと、美鈴が先に声を上げた。

「お兄ちゃんからある程度の話は聞いてます。北島永久さんですよね。お会いするのは初めてですし、いずれは会って話をしたいと思ってました。こんな形になるとは思ってもいませんでしたので、多少……多少ではないかな?とても驚きました」

「す、すみません……私も霧都くんからお話をされてます。妹の美鈴さんですよね。私もお会いして話をしたいとは思ってましたが、こんな形になるとは思ってもいませんでした」

「あはは、まぁお互いにこんな形じゃなかった。とは思ってますが、後からあの時を思い出したら、良い思い出だった。って言えるようにしましょうか」
「そう言って貰えると救われます。ありがとうございます」

 そして、美鈴は笑って言った。

「なんで、北島さんはお兄ちゃんと寝ていたんですか?」


 ……初っ端からぶっ込んで来たなぁ

 俺が冷や汗をかきながらその様子を見ていると、

「霧都くんがこの私を差し置いて、南野さんとスヤスヤ寝ていたからですね」

 ニコリと笑って永久さんがそう言い返した。

「もともと私がここに来た理由をお話します。昨日の朝、霧都くんと南野さんに『何か』があったのは、すぐにわかりました。ですので、私は彼をその一件の解決のために、断腸の思いで送り出しました。そして、その際に『南野さんとの一件が全部終わったら話をする』と約束をしました。ですが、待てども待てども……ふふふ。彼から一向に何の連絡も無かったからですね。まさか、『南野さんと一緒に寝ること』までが全部に入るとは思ってもいませんでしたが」

 そう話した永久さんは笑顔のまま、俺に続ける。

「昨夜。彼とお会いして、その際にお話をさせてもらいました。霧都くんには自分の行いを反省してもらいました。ですが、私はとても怒っています。ですので、その一件を手打ちにする条件として、『南野さんと寝た時間の二倍の時間を私と寝てください』とお話をしました。そして、霧都くんには了承をいただいた形になりますね」

「なるほど。そう言う事なんですね……」

 うんうん。と首を縦に振る美鈴。
 そして、彼女は俺をキッと睨みつけた。

「全部お兄ちゃんが悪い!!」
「はい!!その通りです!!」

 俺はテーブルに頭をぶつけるような勢いで下げた。

「恋人にしたい。なんて思ってる女性に連絡をほったらかしにして、凛音ちゃんと寝てた。なんて普通の女の子だったら失望して捨てられてるよ!!」
「……はい。猛省してます」

「まぁ、妹さん。私は『一度だけ』なら許します。と話をさせて……」
「美鈴です!!」
「……はい?」

 首を傾げる永久さんに、美鈴が笑って言う。

「妹さん。なんて他人行儀な言い方しないでください!!美鈴でいいですよ」
「ふふふ。わかりました。よろしくお願いしますね、美鈴さん。後は私の事も永久と名前で呼んでください」

 二人はそう言って笑い合うと、美鈴は俺の方を指さして言った。扱いが悪くないですか……?

「お兄ちゃんは永久さんと結婚したいって言ってますけど、どう思ってますか?」
「はい。私も霧都くんと結婚したいと思ってます。南野さんのように兄妹や姉弟では無く、夫婦として家族になりたいと思ってもます」
「あ、凛音ちゃんのおバカな思考回路も知ってたんですね?」
「あはは……おバカかどうかは別として、そのお陰で霧都くんとこうして関係性を深められたと思えば、運が良かったなと思います」

 そう言って少しだけ申し訳なさそうに永久さんは笑った。



 俺は麦茶を飲みながら思案する。

 確かに、あの時凛音に振られなかったら、彼女とこうして居ることも無かったよな。

 俺は凛音と恋人になって、結婚して、夫婦になると思っていた。
 けど、実際にはこうして北島永久さんとこの先の人生を歩いて行こうと思っている。

 初志を貫徹して海を渡ったあの人のようにはなれなかったけど、愛する人を幸せにする。と言う気持ちはしっかりと貫いていこう。俺はそう決意した。
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