49 / 164
第1章 後編
凛音side ①
しおりを挟む
凛音side ①
霧都と夕飯を終えた私は、お母さんと一緒に食器の洗い物を手伝っていたわ。
今の時間。霧都はお父さんと話をしてるはずね。
「昨日はごめんなさい。せっかくのお母さんの料理を食べなかったわ」
私は皿についたカレーの汚れを落としながら話をすることにした。
「ふふふ。良いのよ。こうしてキチンと食べてくれてるし、アレがあったから今があると思えるわ」
お母さんはそう言うと、優しく微笑んで言ったわ。
「それに、凛音ちゃんに『血の繋がったお母さん』って言われたの、すごく嬉しかったんだから」
ありがとう、凛音ちゃん。
「お礼を言いたいのは私の方だわ。お母さんが居なかったら、今の私は無いわ。ありがとうお母さん」
そんな話をして洗い物を終え、軽くシャワーを浴びて汗を落とした私は自室へと戻る。
ベッドに顔を乗せると、霧都の匂いがした。
高校生になってまで、添い寝をするとは思ってなかった。あの時は少し頭のネジが緩んでいたわね。でも、アイツが私を『他人』として扱うなら、それを最大限に活かしてやろう。
そんなことを考えていると、
コンコン
と部屋の扉がノックされた。
お母さん?いや違うわね。さっき下でお父さんとお酒を飲んでるのを見たわ。
誰かしら?
「空いてるわよ」
私がそう言うと、部屋の扉が開く。
「こんばんは、凛音ちゃん」
「……美鈴」
先日のことがあってか、さっきの夕食の時間も私とは目を合わせてくれなかったわね。
「どうしたのよ、こんな時間に」
私がそう言うと、美鈴は頭を下げた。
「ごめんね、凛音ちゃん。私が間違ってたよ」
「……美鈴」
多分、先日のことでしょうね。それにこの様子。霧都が『あのこと』を話したのは決定ね。
はぁ……まぁ、美鈴になら知られても構わないかしら。
「その様子ってことは、霧都から聞いたのかしら?私の昔話」
「うん。聞いたよ」
「はぁ……その事で私を『同情』してるって言うのならお門違いも良いところよ?」
「……え?」
私は笑いながら言う。
「確かに、あの時の私は人生に絶望してたし、毎日毎日死にたいと思ってたわ。でも今は違うわ!!」
「……凛音ちゃん」
「だって!!嫌だった期間の二倍の時間をお母さんやお父さん、あなたたちと過ごしてきたわ!!あんなものはもう過去の話よ!!そうね……どうしてもと言うなら聞いてあげるわ。美鈴……あなたはわたしの『何』かしら?」
私はそう言うと、美鈴にニヤリと笑って問いかける。
その問いに、美鈴は一瞬キョトンとした後、笑って言った。
「そうだね!!凛音ちゃんは私の『血の繋がったお姉ちゃん』だよ!!」
「あなたを許すわ、美鈴!!『妹』の謝罪を受け入れるのは『姉』の務めよ!!」
そう言った私に、美鈴は言ってきた。
「でもね、凛音ちゃん。私は一個だけ納得いかないことがある!!」
「……な、なにかしら」
あまりの迫力に、私は一瞬たじろいだわ。
「お兄ちゃんと結婚しても離婚するから姉になるってバカだと思う!!」
「な、な、な、な……ば、バカって……」
「だってバカでしょ!!お兄ちゃんが凛音ちゃんと結婚したら死ぬまで夫婦どころか、あの世の世界でも夫婦だよ!!」
美鈴のその言葉に私は少しだけため息を吐いた。
「……そうね。確かに霧都にはなんの問題も無かったと思うわ。問題は私にあったのよ」
「……どういう意味?」
「私を産んだ女はクズだったわ」
「……うん」
「そして、そのクズの血が私にも流れてるわ」
「……だから、結婚生活が上手くいかないって思ったの?」
「そうよ。もしかしたら、自分が産んだ子供を虐待してしまうかもしれない。そんな女の血が流れてる以上、結婚や出産と言うものに、忌避感を持っていたのも事実よ」
「……凛音ちゃん」
「でも、今はそれも無いわね!!」
「……え?」
「よく良く考えてみればわかることよ。あの女の血が流れていても私は私だもの。あんなクズとは違うわ。はぁ、そんなこともわかってなかったなんて、確かに美鈴の言うように、バカだったわ」
私はそこまで言ったあとに、美鈴に続けたわ。
「まぁでも過去を悔やんでも仕方ないわ。大切なのはこれからよ。こうして美鈴と仲直り出来て、心強い仲間が出来たのだから、北島永久なんかに負けないわよ」
「……え、凛音ちゃん。何言ってるの?」
キョトンとした表情で首を傾げる美鈴。
……え?どういう事よ。
「な、仲直りしたのよね、私たち」
「うん。そうだよ。前よりも仲良くなれたかも知れないね?」
ニコリと笑う美鈴。この子はホントに笑顔が可愛いわね。
でも、確認したいのは違うことよ!!
「だ、だったら美鈴は私の味方よね?」
「え?違うよ」
「嘘でしょ!!!!」
私は夜中にも関わらず叫んでしまったわ!!
「美鈴……あなた、北島永久の味方をするつもり!!??」
「いや、まだ会ったこともない北島永久さんの味方。と言うよりは、『お兄ちゃんの味方』だよ?」
だって、私はお兄ちゃんの幸せのために生きてるの。
お兄ちゃんが北島永久さんと結婚するって言うなら、そっちを応援するよ。当然じゃーん。
「こ、このブラコン妹め……」
「えへへーそれはね、凛音ちゃん。褒め言葉だよ」
そうしていると、美鈴は私の方へと歩いて来てベッドに腰をかけて話した。
「まぁ、この続きはベッドの中で話そうよ。今日はここで寝る予定だし」
「あら、私はさっきまで寝てたからまだそこまで眠くないわよ?」
「明日は学校休みだし、私も遅くまで付き合えるよ?久しぶりに二人で夜更かししようよ、凛音ちゃん」
「良いわよ。あなたを私の味方に出来るように説き伏せてやるわよ」
なんて話をしながら、私と美鈴の夜は更けていったわ。
霧都と夕飯を終えた私は、お母さんと一緒に食器の洗い物を手伝っていたわ。
今の時間。霧都はお父さんと話をしてるはずね。
「昨日はごめんなさい。せっかくのお母さんの料理を食べなかったわ」
私は皿についたカレーの汚れを落としながら話をすることにした。
「ふふふ。良いのよ。こうしてキチンと食べてくれてるし、アレがあったから今があると思えるわ」
お母さんはそう言うと、優しく微笑んで言ったわ。
「それに、凛音ちゃんに『血の繋がったお母さん』って言われたの、すごく嬉しかったんだから」
ありがとう、凛音ちゃん。
「お礼を言いたいのは私の方だわ。お母さんが居なかったら、今の私は無いわ。ありがとうお母さん」
そんな話をして洗い物を終え、軽くシャワーを浴びて汗を落とした私は自室へと戻る。
ベッドに顔を乗せると、霧都の匂いがした。
高校生になってまで、添い寝をするとは思ってなかった。あの時は少し頭のネジが緩んでいたわね。でも、アイツが私を『他人』として扱うなら、それを最大限に活かしてやろう。
そんなことを考えていると、
コンコン
と部屋の扉がノックされた。
お母さん?いや違うわね。さっき下でお父さんとお酒を飲んでるのを見たわ。
誰かしら?
「空いてるわよ」
私がそう言うと、部屋の扉が開く。
「こんばんは、凛音ちゃん」
「……美鈴」
先日のことがあってか、さっきの夕食の時間も私とは目を合わせてくれなかったわね。
「どうしたのよ、こんな時間に」
私がそう言うと、美鈴は頭を下げた。
「ごめんね、凛音ちゃん。私が間違ってたよ」
「……美鈴」
多分、先日のことでしょうね。それにこの様子。霧都が『あのこと』を話したのは決定ね。
はぁ……まぁ、美鈴になら知られても構わないかしら。
「その様子ってことは、霧都から聞いたのかしら?私の昔話」
「うん。聞いたよ」
「はぁ……その事で私を『同情』してるって言うのならお門違いも良いところよ?」
「……え?」
私は笑いながら言う。
「確かに、あの時の私は人生に絶望してたし、毎日毎日死にたいと思ってたわ。でも今は違うわ!!」
「……凛音ちゃん」
「だって!!嫌だった期間の二倍の時間をお母さんやお父さん、あなたたちと過ごしてきたわ!!あんなものはもう過去の話よ!!そうね……どうしてもと言うなら聞いてあげるわ。美鈴……あなたはわたしの『何』かしら?」
私はそう言うと、美鈴にニヤリと笑って問いかける。
その問いに、美鈴は一瞬キョトンとした後、笑って言った。
「そうだね!!凛音ちゃんは私の『血の繋がったお姉ちゃん』だよ!!」
「あなたを許すわ、美鈴!!『妹』の謝罪を受け入れるのは『姉』の務めよ!!」
そう言った私に、美鈴は言ってきた。
「でもね、凛音ちゃん。私は一個だけ納得いかないことがある!!」
「……な、なにかしら」
あまりの迫力に、私は一瞬たじろいだわ。
「お兄ちゃんと結婚しても離婚するから姉になるってバカだと思う!!」
「な、な、な、な……ば、バカって……」
「だってバカでしょ!!お兄ちゃんが凛音ちゃんと結婚したら死ぬまで夫婦どころか、あの世の世界でも夫婦だよ!!」
美鈴のその言葉に私は少しだけため息を吐いた。
「……そうね。確かに霧都にはなんの問題も無かったと思うわ。問題は私にあったのよ」
「……どういう意味?」
「私を産んだ女はクズだったわ」
「……うん」
「そして、そのクズの血が私にも流れてるわ」
「……だから、結婚生活が上手くいかないって思ったの?」
「そうよ。もしかしたら、自分が産んだ子供を虐待してしまうかもしれない。そんな女の血が流れてる以上、結婚や出産と言うものに、忌避感を持っていたのも事実よ」
「……凛音ちゃん」
「でも、今はそれも無いわね!!」
「……え?」
「よく良く考えてみればわかることよ。あの女の血が流れていても私は私だもの。あんなクズとは違うわ。はぁ、そんなこともわかってなかったなんて、確かに美鈴の言うように、バカだったわ」
私はそこまで言ったあとに、美鈴に続けたわ。
「まぁでも過去を悔やんでも仕方ないわ。大切なのはこれからよ。こうして美鈴と仲直り出来て、心強い仲間が出来たのだから、北島永久なんかに負けないわよ」
「……え、凛音ちゃん。何言ってるの?」
キョトンとした表情で首を傾げる美鈴。
……え?どういう事よ。
「な、仲直りしたのよね、私たち」
「うん。そうだよ。前よりも仲良くなれたかも知れないね?」
ニコリと笑う美鈴。この子はホントに笑顔が可愛いわね。
でも、確認したいのは違うことよ!!
「だ、だったら美鈴は私の味方よね?」
「え?違うよ」
「嘘でしょ!!!!」
私は夜中にも関わらず叫んでしまったわ!!
「美鈴……あなた、北島永久の味方をするつもり!!??」
「いや、まだ会ったこともない北島永久さんの味方。と言うよりは、『お兄ちゃんの味方』だよ?」
だって、私はお兄ちゃんの幸せのために生きてるの。
お兄ちゃんが北島永久さんと結婚するって言うなら、そっちを応援するよ。当然じゃーん。
「こ、このブラコン妹め……」
「えへへーそれはね、凛音ちゃん。褒め言葉だよ」
そうしていると、美鈴は私の方へと歩いて来てベッドに腰をかけて話した。
「まぁ、この続きはベッドの中で話そうよ。今日はここで寝る予定だし」
「あら、私はさっきまで寝てたからまだそこまで眠くないわよ?」
「明日は学校休みだし、私も遅くまで付き合えるよ?久しぶりに二人で夜更かししようよ、凛音ちゃん」
「良いわよ。あなたを私の味方に出来るように説き伏せてやるわよ」
なんて話をしながら、私と美鈴の夜は更けていったわ。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
君と僕の一周年記念日に君がラブホテルで寝取らていた件について~ドロドロの日々~
ねんごろ
恋愛
一周年記念は地獄へと変わった。
僕はどうしていけばいいんだろう。
どうやってこの日々を生きていけばいいんだろう。
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
悲しいことがあった。そんなときに3年間続いていた彼女を寝取られた。僕はもう何を信じたらいいのか分からなくなってしまいそうだ。
ねんごろ
恋愛
大学生の主人公の両親と兄弟が交通事故で亡くなった。電話で死を知らされても、主人公には実感がわかない。3日が過ぎ、やっと現実を受け入れ始める。家族の追悼や手続きに追われる中で、日常生活にも少しずつ戻っていく。大切な家族を失った主人公は、今までの大学生活を後悔し、人生の有限性と無常性を自覚するようになる。そんな折、久しぶりに連絡をとった恋人の部屋を心配して訪ねてみると、そこには予期せぬ光景が待っていた。家族の死に直面し、人生の意味を問い直す青年の姿が描かれる。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる