48 / 164
第1章 後編
第三話 ~北島さんを家に泊めることになりました~
しおりを挟む
第三話
「ど、どうして……ここに?」
俺はスマホに話したらいいのか、目の前の彼女に話したらいいのか、わからないまま声を出す。
ピッ。という音と共に、通話が切れると、北島さんは小首を傾げ、俺の方へと歩いて来た。
「先程。メッセージを送ったと思いますが?」
「……メッセージ」
「はい。『待ってます』と『どんなに遅くても待ってます』と。それに、先程『家の前』に居ます。とお伝えしましたが?」
そ、それは『電話』を『自宅の前』で待ってるんじゃなかったんですか……
「ふふふ……私は電話では無く、桜井くんの口からお話を聞きたいと思ってましたので。それに……」
「……っ!!」
スッと近づいて来た北島さんは、俺の身体に身を寄せる。
「こんなに南野さんの匂いをさせてるあなたをそのままにはしておけませんよ?」
ニコリと嗤う北島さんは、俺に続けた。
「家に上がっても平気ですか?」
「う、うん。大丈夫だよ」
俺は彼女を家の中へと案内した。
「突然で申し訳ないのですが、今日は桜井くんのお家に泊まろうと思ってます」
「え!?」
居間へと案内して、麦茶を彼女に出す。そして、それを一口飲んだ北島さんからそんなセリフが聞こえてきた。
そ、その荷物は『泊まり』を想定しての荷物なのか!?
な、なんで!!??
「南野さんとは、たっぷりとお楽しみだったんですよね?」
「…………」
ニコリと笑う北島さん。目だけが笑ってない。
「ずっと……ずっと……ずっと……あなたからの連絡をお待ちしておりました。なかなか連絡をいただけないので、こうしてお伺いをした次第です」
「す、すみません……」
「何に対しての謝罪でしょうか?ふふふ。仲良直りしたことでしたら、謝らなくて良いですよ?だって、南野さんとのことは私がお願いしたことですから。問題はその後ですね」
「そ、その後……」
「仲直りをしたあと、桜井くんは南野さんと『何をしていましたか?』」
「……っ!!」
い、今の状態の彼女に、凛音と添い寝してました。なんて言えるのか!?下心なんか無いし、変なこともしてない。でも、これを話すには……
「あぁ……桜井くん。隠さないでくださいね?私、嘘は嫌いです」
「…………添い寝を……してました」
俺のその言葉を聞いた北島さんは、怒るどころかほほ笑みを浮かべた。
な、なんで……
「本当に……本当に、仲がよろしいんですね?十年来の幼馴染だと、そのくらいは日常茶飯事なのですね。羨ましいです」
「……い、いや日常茶飯事では……」
「桜井くん?」
「は、はい!!」
北島さんは薄く嗤いながら俺に言う。
「私には、幼馴染なんて居ませんし、あなた以外に仲の良い異性なんて居ません。ですが、もしあなたが学校で勉学に励んでるときに、私が異性と添い寝をしていました。なんて言われたらどう思いますか?」
「……っ!!!!」
そ、そいつを亡き者にしてやりたいと思ってしまう。
「……ふふふ、桜井くん。自分がどれだけ罪深いことをしたか、おわかりですか?」
「……す、すみません……」
か、考えが甘かった……
あの時は、何がなんでも凛音からの誘いは断るべきだったんだ……
そして、すぐにでも彼女に連絡をするべきだった……
「でも、ですね。桜井くん。私はあなたの事が大大だーい好きですから『一度だけ』なら許してあげますよ」
「……あ、ありがとう……ございます」
「ですが、タダでは許してあげませんよ?これでも私はとても怒っているんですから」
彼女はニコリと嗤いながらそう言うと、持ってきたバックを指さした。
「二日分の荷物を用意してきました。あなたが南野さんと添い寝をした時間の二倍の時間。私と寝てくださいね?」
ま、マジかよ……凛音ならともかく、北島さんとベッドを共にして理性を保つとか……
そんな俺に、彼女は笑みを浮かべる。
「桜井くんの心配してることはわかります。ですので、私はこちらを用意してあります」
そう言って彼女は紙袋を渡してきた。
中身を見ると、
『0.01mm』
「……っ!!」
「ふふふ。少しだけ買うのは恥ずかしかったんですよ?」
少しだけ頬を赤く染めながら、彼女は恥ずかしそうにそう言った。
これの『使い道』がわからないような子供じゃない。
彼女からこれを渡されることの意味……
「あぁ、そうです。桜井くん。私個人としてはそれを使わなくても良いと思ってます」
「つ、使わなくても……良い」
つまり、そういう事を望んではいない。という意味……では無かった……
「出来てしまっても構いませんよ?」
「……っ!!」
驚く俺を、彼女は笑った。
「ふふふ。冗談ですよ?驚きましたか?」
「……はい」
彼女は満足したように、麦茶をもう一口飲んでから言う。
「シャワーをお借りしても良いですか?」
「……え?」
い、今の話題の後に、それを持ってくるのか……
「学校から帰宅して、その後すぐに支度をしてこちらに来ました。多少汗もかいています。身体を清めたいと思ってます」
「あ……はい」
そ、そうだ。泊まるってのは本気なんだ……
そして、今夜はこの子と俺は……寝るのか……
俺は彼女をお風呂場へと案内する。
毎日掃除をしてるから綺麗だと思ってる。
「案内ありがとうございます。それではお借りします」
「……その、美鈴が使ってるやつは見ればわかると思うから、それを使ってもらって構わないよ。多分、男性用より肌には合うと思うから」
「お気遣いありがとうございます。明日、妹さんにはご挨拶と一緒にお借りしました。とお話をさせてもらいますね」
「そ、そうだね。まぁ、勝手に使っても怒られたりとかはないんだけどね……」
そう言って脱衣所を後にしようとする俺に、彼女はパチンとウインクを飛ばして言った。
「覗いてもいいですよ?」
「そこは覗いちゃダメですよ?じゃないんですかね!?」
俺のその言葉に、彼女は笑っていた。
「ふふふ。楽しいですね、桜井くん」
「……はい」
そして、居間へと戻った俺の耳には、北島さんの鼻歌と、シャワーの音がしっかりと届いていたのだった。
「ど、どうして……ここに?」
俺はスマホに話したらいいのか、目の前の彼女に話したらいいのか、わからないまま声を出す。
ピッ。という音と共に、通話が切れると、北島さんは小首を傾げ、俺の方へと歩いて来た。
「先程。メッセージを送ったと思いますが?」
「……メッセージ」
「はい。『待ってます』と『どんなに遅くても待ってます』と。それに、先程『家の前』に居ます。とお伝えしましたが?」
そ、それは『電話』を『自宅の前』で待ってるんじゃなかったんですか……
「ふふふ……私は電話では無く、桜井くんの口からお話を聞きたいと思ってましたので。それに……」
「……っ!!」
スッと近づいて来た北島さんは、俺の身体に身を寄せる。
「こんなに南野さんの匂いをさせてるあなたをそのままにはしておけませんよ?」
ニコリと嗤う北島さんは、俺に続けた。
「家に上がっても平気ですか?」
「う、うん。大丈夫だよ」
俺は彼女を家の中へと案内した。
「突然で申し訳ないのですが、今日は桜井くんのお家に泊まろうと思ってます」
「え!?」
居間へと案内して、麦茶を彼女に出す。そして、それを一口飲んだ北島さんからそんなセリフが聞こえてきた。
そ、その荷物は『泊まり』を想定しての荷物なのか!?
な、なんで!!??
「南野さんとは、たっぷりとお楽しみだったんですよね?」
「…………」
ニコリと笑う北島さん。目だけが笑ってない。
「ずっと……ずっと……ずっと……あなたからの連絡をお待ちしておりました。なかなか連絡をいただけないので、こうしてお伺いをした次第です」
「す、すみません……」
「何に対しての謝罪でしょうか?ふふふ。仲良直りしたことでしたら、謝らなくて良いですよ?だって、南野さんとのことは私がお願いしたことですから。問題はその後ですね」
「そ、その後……」
「仲直りをしたあと、桜井くんは南野さんと『何をしていましたか?』」
「……っ!!」
い、今の状態の彼女に、凛音と添い寝してました。なんて言えるのか!?下心なんか無いし、変なこともしてない。でも、これを話すには……
「あぁ……桜井くん。隠さないでくださいね?私、嘘は嫌いです」
「…………添い寝を……してました」
俺のその言葉を聞いた北島さんは、怒るどころかほほ笑みを浮かべた。
な、なんで……
「本当に……本当に、仲がよろしいんですね?十年来の幼馴染だと、そのくらいは日常茶飯事なのですね。羨ましいです」
「……い、いや日常茶飯事では……」
「桜井くん?」
「は、はい!!」
北島さんは薄く嗤いながら俺に言う。
「私には、幼馴染なんて居ませんし、あなた以外に仲の良い異性なんて居ません。ですが、もしあなたが学校で勉学に励んでるときに、私が異性と添い寝をしていました。なんて言われたらどう思いますか?」
「……っ!!!!」
そ、そいつを亡き者にしてやりたいと思ってしまう。
「……ふふふ、桜井くん。自分がどれだけ罪深いことをしたか、おわかりですか?」
「……す、すみません……」
か、考えが甘かった……
あの時は、何がなんでも凛音からの誘いは断るべきだったんだ……
そして、すぐにでも彼女に連絡をするべきだった……
「でも、ですね。桜井くん。私はあなたの事が大大だーい好きですから『一度だけ』なら許してあげますよ」
「……あ、ありがとう……ございます」
「ですが、タダでは許してあげませんよ?これでも私はとても怒っているんですから」
彼女はニコリと嗤いながらそう言うと、持ってきたバックを指さした。
「二日分の荷物を用意してきました。あなたが南野さんと添い寝をした時間の二倍の時間。私と寝てくださいね?」
ま、マジかよ……凛音ならともかく、北島さんとベッドを共にして理性を保つとか……
そんな俺に、彼女は笑みを浮かべる。
「桜井くんの心配してることはわかります。ですので、私はこちらを用意してあります」
そう言って彼女は紙袋を渡してきた。
中身を見ると、
『0.01mm』
「……っ!!」
「ふふふ。少しだけ買うのは恥ずかしかったんですよ?」
少しだけ頬を赤く染めながら、彼女は恥ずかしそうにそう言った。
これの『使い道』がわからないような子供じゃない。
彼女からこれを渡されることの意味……
「あぁ、そうです。桜井くん。私個人としてはそれを使わなくても良いと思ってます」
「つ、使わなくても……良い」
つまり、そういう事を望んではいない。という意味……では無かった……
「出来てしまっても構いませんよ?」
「……っ!!」
驚く俺を、彼女は笑った。
「ふふふ。冗談ですよ?驚きましたか?」
「……はい」
彼女は満足したように、麦茶をもう一口飲んでから言う。
「シャワーをお借りしても良いですか?」
「……え?」
い、今の話題の後に、それを持ってくるのか……
「学校から帰宅して、その後すぐに支度をしてこちらに来ました。多少汗もかいています。身体を清めたいと思ってます」
「あ……はい」
そ、そうだ。泊まるってのは本気なんだ……
そして、今夜はこの子と俺は……寝るのか……
俺は彼女をお風呂場へと案内する。
毎日掃除をしてるから綺麗だと思ってる。
「案内ありがとうございます。それではお借りします」
「……その、美鈴が使ってるやつは見ればわかると思うから、それを使ってもらって構わないよ。多分、男性用より肌には合うと思うから」
「お気遣いありがとうございます。明日、妹さんにはご挨拶と一緒にお借りしました。とお話をさせてもらいますね」
「そ、そうだね。まぁ、勝手に使っても怒られたりとかはないんだけどね……」
そう言って脱衣所を後にしようとする俺に、彼女はパチンとウインクを飛ばして言った。
「覗いてもいいですよ?」
「そこは覗いちゃダメですよ?じゃないんですかね!?」
俺のその言葉に、彼女は笑っていた。
「ふふふ。楽しいですね、桜井くん」
「……はい」
そして、居間へと戻った俺の耳には、北島さんの鼻歌と、シャワーの音がしっかりと届いていたのだった。
11
お気に入りに追加
187
あなたにおすすめの小説


転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

妖精の取り替え子として平民に転落した元王女ですが、努力チートで幸せになります。
haru.
恋愛
「今ここに、17年間偽られ続けた真実を証すッ! ここにいるアクリアーナは本物の王女ではないッ! 妖精の取り替え子によって偽られた偽物だッ!」
17年間マルヴィーア王国の第二王女として生きてきた人生を否定された。王家が主催する夜会会場で、自分の婚約者と本物の王女だと名乗る少女に……
家族とは見た目も才能も似ておらず、肩身の狭い思いをしてきたアクリアーナ。
王女から平民に身を落とす事になり、辛い人生が待ち受けていると思っていたが、王族として恥じぬように生きてきた17年間の足掻きは無駄ではなかった。
「あれ? 何だか王女でいるよりも楽しいかもしれない!」
自身の努力でチートを手に入れていたアクリアーナ。
そんな王女を秘かに想っていた騎士団の第三師団長が騎士を辞めて私を追ってきた!?
アクリアーナの知らぬ所で彼女を愛し、幸せを願う者達。
王女ではなくなった筈が染み付いた王族としての秩序で困っている民を見捨てられないアクリアーナの人生は一体どうなる!?
※ ヨーロッパの伝承にある取り替え子(チェンジリング)とは違う話となっております。
異世界の創作小説として見て頂けたら嬉しいです。
(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾ペコ

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる