十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶

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第1章 後編

第二話 ~美鈴に凛音との事を話しました~

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 第二話



 雅紀さんとの話を終え、俺は部屋の外へ出る。

 すると、

「話は終わった?」
「うん。雅紀さんからの理解は貰えたかな」

 部屋の外では美鈴が待っていてくれた。

「話してくれるんだよね?」
「もちろん。その上で、もう一度美鈴には凛音との事を考えて欲しいかな」

 俺がそう言うと、美鈴は一つだけため息ついて、

「わかった」

 とだけ言った。






 凛音の家を後にした俺と美鈴は、自宅の居間で向かい合って座った。

「じゃあ話してもらえる?」

 俺は氷の入っていない麦茶を一口飲んでから、話し始めた。

「まずは、凛音が良く使っていた『血の繋がった家族』だけど、これは『血縁』について話してたわけじゃなかった」
「……うん」

「大切な思い出や、過した時間、受け取った愛情、そう言ったものをアイツは『血』と呼んでいたんだ」
「……凛音ちゃんが、静流さんと血が繋がってない。雅紀おじさんの連れ子だってのは知ってる。でも、どうしてそこまで『血の繋がった家族』に拘ってたの?」

 俺は少しだけ目を伏せて、言う。

「美鈴なら、口を割らないと信じてるから言う」
「……うん」

「凛音はな、実の母親から虐待を受けていた」
「……っ!!」

「美鈴は覚えてるかわからないけど、出会ったばかりの頃の凛音と今の凛音の性格は違うんだ」
「……うん。確か、昔はすごく大人しかったと思うよ」
「母親の影響で、感情を表に出せなくなってたんだ。そんな凛音を笑わせてやりたい。幸せにしてやりたい。それが俺の恋心の始まりだったよ」
「……そうなんだ」

「そして、俺も凛音もお互いに『家族』になりたいと思っていた。俺はアイツと結婚をして『夫婦』になりたいと思っていた。でもな、アイツは両親の離婚を見ていたから、『夫婦』では無く、一生死ぬまで切れない永遠不滅の絆。『兄妹(きょうだい)』になりたいと思っていた。だけど、妹には美鈴が居たから、『姉』になるしか道はなかった。そう話してたよ」
「…………そっか」

 バカだなぁ……凛音ちゃん。
 お兄ちゃんが離婚なんかさせるわけないのに……

 麦茶を飲んで、俺は一息をつく。

「俺も凛音も、色々考えすぎてたんだよな。だからさ、俺は言ったんだ」
「……なんて?」

「幼馴染でも、家族でも、姉でも妹でもなんでもなく、『他人』に戻ろう。そして、もう一度、最初から、俺と凛音の新しい形をこれから作っていこう。そう話した」
「……悪くないと思うよ」

 美鈴はそう言うと、俺の目を見て言った。

「今から……凛音ちゃんに、謝ってくる」
「……うん。わかった」

 本気で言ってそうだから……『止めなかった』

 美鈴は立ち上がると、玄関の方へと歩いて行った。
 俺はそれを着いていく。

「すぐに戻るかわからない」
「うん。なんなら泊まっても構わないよ。明日は土曜日だから学校も無いし」
「あはは……お兄ちゃんみたいに添い寝でもしてこようかな」

 なんてことを言って、美鈴は玄関から出て行った。

 それを見送った俺は、スマホを手にして、北島さんに電話をした。

 プルル……ピ

『はい。もしもし、北島です。桜井くんですね』

 すごく出るのが早かった。

「うん。遅くにごめんね。これからちょっと話せるかな?」

 俺は少しだけ驚きながらも、会話を紡ぐ。

『はい。大丈夫ですよ。今『家の前』に居ますから』

 家の前?電波かな?それとも家族に会話を聞かれないようにするためかな?
 ……そうだな、家の中だと電波も気になるし、俺も外出ようかな。
 北島さんと同じ夜空を見て話すのも悪くないと思うし。

「俺も家の外に出ようかな。同じ夜空を見ながら話をしようか」
『そうですね。では、お待ちしております』

 お待ちしております?

 俺は訝しげに思いながら、玄関を開けて家の外に出ると、

「こんばんは。桜井くん」
「……き、北島さん」

 姿を見せたのは、私服姿で大きなバッグを肩から下げ、スマホを片手にした美少女。

昏く、淀んだ眼差しで、ほほ笑みを浮かべる北島永久さんが、俺の目の前に佇んでいた。

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