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第1章 後編
第一話 ~凛音との新しい関係性を話すことになりました~
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第一話
「さて、霧都くん。君が私に持ってきた『最善』の答えを教えてもらおうか」
「……はい。雅紀(まさき)さん」
凛音の部屋で眠りこけて数時間。
気が付いたら辺りは真っ暗だった。
「ぐはぁ……やっちまった」
と俺は身体を起こすの、隣の凛音はまだスヤスヤと眠りこけていた。
「おい、起きろ、凛音。もう夕方どころか夜だぞ」
俺がそう言って凛音の身体を揺すると、
「私の睡眠を邪魔するとはいい度胸ね……」
と言いながら目を開ける。
「もう十九時だよ」
「はぁ……?そんな訳……あったわね」
凛音は枕元のスマホで時刻を確認すると、少しだけため息をついた。
すると、ちょうどそのタイミングで、部屋の扉がガチャリと開いた。
「あら、ようやく起きたのね。二人ともぐっすりだったから放っておいたのよ。まさかこんな時間まで寝てるのは思わなかったわ」
そう言って部屋の中を覗いてきたのは静流さん。
「霧都くん。夕飯はどうする?うちで食べてく?」
「……あーどうしよう」
俺は少しだけ思案したあとに、スマホを見る。
そこには、
『無断欠席にはならないように話はしてあります。解決したら電話をください。待ってます』
と言う北島さんからのメッセージと、
『お兄ちゃんが学校を休んだのは知ってるよ。何処にいるかもね。全部終わったら連絡ください』
と言う美鈴からのメッセージがあった。
俺は、
『とりあえず凛音と仲直りは出来ました。彼女の家でご飯を食べることになりそうです。夜遅くになるかもしれませんが、電話をさせてください』
というメッセージを北島さんへ
『凛音とは話が出来たよ。お互いに誤解してた部分があった。美鈴が良ければ凛音の家で夕飯を食べないか?』
と言うメッセージを美鈴に送った。
すると、
『どんなに遅くても待ってます。あなたが出した答えを聞かせてください』
と言う北島さんからの返信と、
『はぁ……わかったよ。とりあえず、言いたいことは全部我慢して、凛音ちゃんの家に行くよ』
と言う美鈴からの返信があった。
それを確認した俺は、部屋の前で待っていてくれた静流さんに、
「ご相伴にあずからせていただきます。急なお願いですが、美鈴も一緒してもいいですか?」
「ふふふ。今日は『昨日作った』カレーだから多少増えても大丈夫よ。凛音ちゃんには食べて貰えなかったから」
そう言って静流さんはイタズラっぽく笑った。
凛音は少しだけ申し訳なさそうにしながら、
「ご、ごめんなさい。お母さん」
と謝っていた。
「ふふふ。それじゃあ二人とも、下まで来てね」
そう言って静流さんは踵を返したあと、俺に向かって思い出したかのように言った。
「あぁ……そうそう。霧都くん」
「はい。なんですか、静流さん?」
疑問符を浮かべる俺に、彼女は笑って言った。
「下には雅紀さんが居るからね?楽しみにしてるみたいよ、あなたの出した『最善』の答えを」
「……はい」
や、やはり帰ってきていたよなぁ。
俺は少しだけ憂鬱な気持ちになりながらも、どうせ話さなきゃならないんだ!!と気合いを入れることにした。
そして、下に降りて行くと、居間のテーブルには厳つい表情の男性が既に座っていた。
「こんばんは、雅紀さん。お久しぶりです」
俺がそう言って彼に頭を上げると、
「こんばんは、霧都くん。ははは。高校生になっても凛音と同衾出来るとは、私も少し驚いたよ」
笑いながらそんなことを言うが、
め、目が笑ってない……
「きょ、今日はたまたまというか……その……」
「ほらほらあなた。あまり霧都くんをイジメ無いの。話はこの後するんでしょ?」
カレーのお皿を持った静流さんが、雅紀さんを窘めた。
「そうだったね。霧都くん、少し先走ってしまったようだ、すまない」
「い、いえ。お気になさらずに……」
俺がそう言うと、
ピンポーン
とインターホンが鳴った。
画面を見ると、部屋着に着替えていた美鈴の姿があった。
良かった。来てくれたんだな。
俺は少しだけ安堵の息を吐くと、玄関へと歩いていく。
そして、扉の鍵をガチャリと開ける。
玄関を開けると、
「こんばんは、お兄ちゃん。良く寝れた?」
「あぁ、ぐっすり寝こけてたらこんな時間だよ」
俺がそう返事をすると、美鈴はため息を吐いた。
「はぁ……こんな時間まで凛音ちゃんと寝れた。ってことの理由を後で聞かせてね。今は何も聞かずに静流さんの料理を楽しむことにするよ」
「あはは。ごめん。絶対に話すから。包み隠さず、全部」
俺の言葉に美鈴は首を縦に振ると、中へと進んで行った。
そして、居間へと入ると、
「突然お邪魔してすみません。ご相伴にあずからてもらいます」
と頭を下げた。
「ふふふ。いいのよ美鈴ちゃん。だってあなたは私たちの『血の繋がった家族』じゃない」
「……え?それって」
驚く美鈴に、静流さんはまたもやイタズラっぽく笑う。
「ふふふ。凛音ちゃんの言ってた言葉。とても気に入っちゃった」
そう言って台所の奥へと戻る静流さん。
美鈴は俺に耳打ちをしてきた。
「ねぇ、どういう事?」
「……これも後で説明するよ」
俺がそう返すと、美鈴はため息をついた。
「はぁ……私の知らないところで何があったのよ……」
ごめんな、美鈴。あとでキチンと話すから。
そして、南野家での夕飯は、雑談混じりで『表向きは』平穏無事に終わった。
桜井家の両親は今日も缶詰なので、一応の連絡は入れておいた。
そして、夕飯が終わって、お腹も落ち着いた頃。
俺は雅紀さんの部屋へと呼び出された。
「雅紀さんは、どこまで知ってますか?」
「そうだね。君がうちの凛音に告白をして、それを突っぱねられた。理由としては、凛音は君のことを『弟』のように思っていて、『男』としては見ていなかったからだ。という所までだな」
鋭い視線を飛ばす雅紀さん。
俺は雅紀さんの視線から逃げずに答える。
「そうです。そして俺が持ってくる『最高』の答えは、凛音と仲直りをした後に、結婚を前提としたお付き合いをすること。でした」
「ふむ。だが君は言ったね?『最高』では無く、『最善』の答えを持ってくる。と」
その言葉に、俺は首を縦に振った。
「そうです。理由としては、俺の心には既に凛音では無く、違う女性と結婚を前提としたお付き合いをしたい。そう思う女性が居るからです。『最善』の答えは、凛音としっかりと仲直りをした上で、自分のこの気持ちを雅紀さんに伝えることです」
「なるほどね。凛音と結婚を前提とした付き合いが出来ない以上、『私にとっては』最高の答えでは無い。そういう事だね」
雅紀さんが凛音の過去を包み隠さず俺に話した理由は、
『俺ならば、凛音を幸せに出来ると信じていたから』
それ程までに雅紀さんは俺に対して大きな期待と信頼を預けていた。
そして、俺はその信頼に応えることがもう出来ない。
『最高』の答えを持って彼に会うことが出来ない以上、
『最善』の答えとして、これからも凛音の傍に『新しい形』として居よう。
そう考えている。
「それ程までの決意を君にさせた女性。北島永久さんに、私も会ってみたくなったよ」
「もちろん。雅紀さんにも、静流さんにも会っていただきます。だって、『血の繋がった両親』に結婚相手を紹介するのは当然じゃないですか」
俺がそう言うと、雅紀さんは大きく笑った。
「ははは。なるほどね、たとえ『結婚』と言う家族の形は取れなくても、私達は『血の繋がった家族』だと言いたいんだね」
「はい、そうですよ『お父さん』」
俺のその言葉に、
「君にお父さんと呼ばれる筋合いはないぞ!!」
と嬉しそうに返した。
「あ、それ。雅紀さんが言ってみたいセリフだって昔話してましたね?」
「良く覚えていたね。まぁ、いい。君と凛音が『結婚』する可能性はまだゼロじゃない」
雅紀さんはそう言うと、俺の肩に手を置いた。
「『お父さん』では無く『お義父さん』と呼ばれる日を諦めずに待っているよ」
「あはは……漢字にならないとわかんないですよ、それ」
言いたいことは、わかるけどね。
俺はそんなことを思いながら、この後は家で美鈴に説明しないとなぁ……
と想いをめぐらせていた。
「さて、霧都くん。君が私に持ってきた『最善』の答えを教えてもらおうか」
「……はい。雅紀(まさき)さん」
凛音の部屋で眠りこけて数時間。
気が付いたら辺りは真っ暗だった。
「ぐはぁ……やっちまった」
と俺は身体を起こすの、隣の凛音はまだスヤスヤと眠りこけていた。
「おい、起きろ、凛音。もう夕方どころか夜だぞ」
俺がそう言って凛音の身体を揺すると、
「私の睡眠を邪魔するとはいい度胸ね……」
と言いながら目を開ける。
「もう十九時だよ」
「はぁ……?そんな訳……あったわね」
凛音は枕元のスマホで時刻を確認すると、少しだけため息をついた。
すると、ちょうどそのタイミングで、部屋の扉がガチャリと開いた。
「あら、ようやく起きたのね。二人ともぐっすりだったから放っておいたのよ。まさかこんな時間まで寝てるのは思わなかったわ」
そう言って部屋の中を覗いてきたのは静流さん。
「霧都くん。夕飯はどうする?うちで食べてく?」
「……あーどうしよう」
俺は少しだけ思案したあとに、スマホを見る。
そこには、
『無断欠席にはならないように話はしてあります。解決したら電話をください。待ってます』
と言う北島さんからのメッセージと、
『お兄ちゃんが学校を休んだのは知ってるよ。何処にいるかもね。全部終わったら連絡ください』
と言う美鈴からのメッセージがあった。
俺は、
『とりあえず凛音と仲直りは出来ました。彼女の家でご飯を食べることになりそうです。夜遅くになるかもしれませんが、電話をさせてください』
というメッセージを北島さんへ
『凛音とは話が出来たよ。お互いに誤解してた部分があった。美鈴が良ければ凛音の家で夕飯を食べないか?』
と言うメッセージを美鈴に送った。
すると、
『どんなに遅くても待ってます。あなたが出した答えを聞かせてください』
と言う北島さんからの返信と、
『はぁ……わかったよ。とりあえず、言いたいことは全部我慢して、凛音ちゃんの家に行くよ』
と言う美鈴からの返信があった。
それを確認した俺は、部屋の前で待っていてくれた静流さんに、
「ご相伴にあずからせていただきます。急なお願いですが、美鈴も一緒してもいいですか?」
「ふふふ。今日は『昨日作った』カレーだから多少増えても大丈夫よ。凛音ちゃんには食べて貰えなかったから」
そう言って静流さんはイタズラっぽく笑った。
凛音は少しだけ申し訳なさそうにしながら、
「ご、ごめんなさい。お母さん」
と謝っていた。
「ふふふ。それじゃあ二人とも、下まで来てね」
そう言って静流さんは踵を返したあと、俺に向かって思い出したかのように言った。
「あぁ……そうそう。霧都くん」
「はい。なんですか、静流さん?」
疑問符を浮かべる俺に、彼女は笑って言った。
「下には雅紀さんが居るからね?楽しみにしてるみたいよ、あなたの出した『最善』の答えを」
「……はい」
や、やはり帰ってきていたよなぁ。
俺は少しだけ憂鬱な気持ちになりながらも、どうせ話さなきゃならないんだ!!と気合いを入れることにした。
そして、下に降りて行くと、居間のテーブルには厳つい表情の男性が既に座っていた。
「こんばんは、雅紀さん。お久しぶりです」
俺がそう言って彼に頭を上げると、
「こんばんは、霧都くん。ははは。高校生になっても凛音と同衾出来るとは、私も少し驚いたよ」
笑いながらそんなことを言うが、
め、目が笑ってない……
「きょ、今日はたまたまというか……その……」
「ほらほらあなた。あまり霧都くんをイジメ無いの。話はこの後するんでしょ?」
カレーのお皿を持った静流さんが、雅紀さんを窘めた。
「そうだったね。霧都くん、少し先走ってしまったようだ、すまない」
「い、いえ。お気になさらずに……」
俺がそう言うと、
ピンポーン
とインターホンが鳴った。
画面を見ると、部屋着に着替えていた美鈴の姿があった。
良かった。来てくれたんだな。
俺は少しだけ安堵の息を吐くと、玄関へと歩いていく。
そして、扉の鍵をガチャリと開ける。
玄関を開けると、
「こんばんは、お兄ちゃん。良く寝れた?」
「あぁ、ぐっすり寝こけてたらこんな時間だよ」
俺がそう返事をすると、美鈴はため息を吐いた。
「はぁ……こんな時間まで凛音ちゃんと寝れた。ってことの理由を後で聞かせてね。今は何も聞かずに静流さんの料理を楽しむことにするよ」
「あはは。ごめん。絶対に話すから。包み隠さず、全部」
俺の言葉に美鈴は首を縦に振ると、中へと進んで行った。
そして、居間へと入ると、
「突然お邪魔してすみません。ご相伴にあずからてもらいます」
と頭を下げた。
「ふふふ。いいのよ美鈴ちゃん。だってあなたは私たちの『血の繋がった家族』じゃない」
「……え?それって」
驚く美鈴に、静流さんはまたもやイタズラっぽく笑う。
「ふふふ。凛音ちゃんの言ってた言葉。とても気に入っちゃった」
そう言って台所の奥へと戻る静流さん。
美鈴は俺に耳打ちをしてきた。
「ねぇ、どういう事?」
「……これも後で説明するよ」
俺がそう返すと、美鈴はため息をついた。
「はぁ……私の知らないところで何があったのよ……」
ごめんな、美鈴。あとでキチンと話すから。
そして、南野家での夕飯は、雑談混じりで『表向きは』平穏無事に終わった。
桜井家の両親は今日も缶詰なので、一応の連絡は入れておいた。
そして、夕飯が終わって、お腹も落ち着いた頃。
俺は雅紀さんの部屋へと呼び出された。
「雅紀さんは、どこまで知ってますか?」
「そうだね。君がうちの凛音に告白をして、それを突っぱねられた。理由としては、凛音は君のことを『弟』のように思っていて、『男』としては見ていなかったからだ。という所までだな」
鋭い視線を飛ばす雅紀さん。
俺は雅紀さんの視線から逃げずに答える。
「そうです。そして俺が持ってくる『最高』の答えは、凛音と仲直りをした後に、結婚を前提としたお付き合いをすること。でした」
「ふむ。だが君は言ったね?『最高』では無く、『最善』の答えを持ってくる。と」
その言葉に、俺は首を縦に振った。
「そうです。理由としては、俺の心には既に凛音では無く、違う女性と結婚を前提としたお付き合いをしたい。そう思う女性が居るからです。『最善』の答えは、凛音としっかりと仲直りをした上で、自分のこの気持ちを雅紀さんに伝えることです」
「なるほどね。凛音と結婚を前提とした付き合いが出来ない以上、『私にとっては』最高の答えでは無い。そういう事だね」
雅紀さんが凛音の過去を包み隠さず俺に話した理由は、
『俺ならば、凛音を幸せに出来ると信じていたから』
それ程までに雅紀さんは俺に対して大きな期待と信頼を預けていた。
そして、俺はその信頼に応えることがもう出来ない。
『最高』の答えを持って彼に会うことが出来ない以上、
『最善』の答えとして、これからも凛音の傍に『新しい形』として居よう。
そう考えている。
「それ程までの決意を君にさせた女性。北島永久さんに、私も会ってみたくなったよ」
「もちろん。雅紀さんにも、静流さんにも会っていただきます。だって、『血の繋がった両親』に結婚相手を紹介するのは当然じゃないですか」
俺がそう言うと、雅紀さんは大きく笑った。
「ははは。なるほどね、たとえ『結婚』と言う家族の形は取れなくても、私達は『血の繋がった家族』だと言いたいんだね」
「はい、そうですよ『お父さん』」
俺のその言葉に、
「君にお父さんと呼ばれる筋合いはないぞ!!」
と嬉しそうに返した。
「あ、それ。雅紀さんが言ってみたいセリフだって昔話してましたね?」
「良く覚えていたね。まぁ、いい。君と凛音が『結婚』する可能性はまだゼロじゃない」
雅紀さんはそう言うと、俺の肩に手を置いた。
「『お父さん』では無く『お義父さん』と呼ばれる日を諦めずに待っているよ」
「あはは……漢字にならないとわかんないですよ、それ」
言いたいことは、わかるけどね。
俺はそんなことを思いながら、この後は家で美鈴に説明しないとなぁ……
と想いをめぐらせていた。
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