十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶

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第1章 前編

第十八話 ~桐崎先輩から生徒会への勧誘を受けました~

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 第十八話


「桜井霧都くん。生徒会に入らないか?」


 桐崎先輩のその言葉に、俺は驚いて口を開けてしまった。

「本気ですか?」
「あぁ、本気だ。ちなみに……」

 先輩はそう言うと、桐崎さんと北島さんを見るら、

「雫と北島さんにも誘いをかけようと思ってる」

 その後で、先輩は凛音を見る。

「南野さんに関して言えば、朱里からバスケ部に入ってくれとアプローチがあるだろうしな」

 桐崎先輩の言葉に、凛音は「ふん」と鼻を鳴らした。

 藤崎朱里先輩。確か、桐崎先輩の『彼女』だ。

「いや、生徒会は今人手不足なんだ……」

「人手不足……」

 俺の言葉に桐崎先輩は笑う。

「生徒会長の俺と副会長の詩織さんの二人しかいないんだ。まったく、去年の空さんの二の舞だよ」

 先輩はそう言うとやれやれと手を広げる。

「詩織さん目当てのクソ野郎や俺を目当てにした女の子を弾いていたら、誰も入会出来なくなっていてね。もう今年の新入生に声を掛けるしかない。と思っていたんだ」

「でも、なんで俺なんですか?その、北島さんや桐崎さんならわかりますけど……」

 学年首席と次席の二人なら話は分かるが、滑り込みで入学したような俺が、なんで目をつけられてるかさっぱりだった。

 そんな俺の質問に、先輩は笑いながら言う。

「君は俺と同じで自己評価が低い……いや、厳しい人間だ。君は自分が思ってる以上に優秀だよ。それに、他人から『慕われる』タイプの人間だ」

「更に言わせてもらえば、君は自分のためより他人のための方が力を発揮するタイプの人間だ。そう言う人間こそ、生徒会に入って欲しいと思ってる」

 そこまで言うと、桐崎先輩は笑う。

「正直に言おう。北島永久さんや俺の妹の雫より、桜井霧都くん。君が欲しい。俺たちと一緒に生徒会に尽力してくれないか?」

 そう言って差し出された右手を見ながら俺は思った。

 ここまで言われたら、断れないよな……

 それに、野球部入りは断ってるし……

 てか、『新しいことをしたい』って言うなら、生徒会は最善に近いのでは?

 そう考えた俺は、先輩の右手を握りしめる。

「今すぐに答えは出せませんが、良い答えを持って、放課後に生徒会室へ向かわせてもらいます」

 俺の答えを聞いた先輩は嬉しそうに笑った。

「良かった!!これで生徒会は三年間は安泰だ!!」
「い、いや……まだ入るとは……」

「まずは庶務から始めてもらおう!!そして、そのうち詩織さんの下で副会長としての仕事を兼任してもらう!!あ、詩織さんに手を出したら刺すからな?そして俺が引退したら君が生徒会長だ!!よろしく頼むぞ、未来の生徒会長!!」

 先輩は一気にそう言うと、『丸テーブル』へと帰っていった。


『やったぞ!!桜井くんを手に入れた!!』


 そんな嬉しそうな声がこっちまで聞こえてきた……

「はぁ……おにぃにしてやられたね。桜井くん」
「……え?」

 桐崎さんがやれやれと言った感じで俺に話し掛けてくる。

「おにぃの『本命』は桜井くんを生徒会に入れることだったんだよ」
「え……でも、すごい熱意で桜井くんの野球部入りを語っていたように思えますが……」

 北島さんの言葉に俺も同意する。

「そ、そうだよね。俺の事をあれだけ調べてるなんて、驚いたし……」

 その言葉に桐崎さんは笑いながら言う。

「野球部に桜井くんを入れようとあれだけ熱意を見せたのは、本命の生徒会入りを決断させやすくするため。ドアインザフェイスの応用だね」

 ドアインザフェイス?なんだそりゃ?

 首を傾げる俺に、凛音がため息混じりに話す。

「ドアインザフェイスは外国で研究されてる交渉方法の一つよ。最初に断られそうな大きな要求をして、相手に断られたら、その後に本命の小さな要求をすると、相手は了承しやすくなる。ってやつよ」

「そうそう。あれの真髄はね、相手の罪悪感を利用する交渉方法なの。はぁ……桜井くんが野球部入りを断るのは織り込み済み。まぁ、入ってくれたらラッキーくらいだったと思う」

「桜井くん。君はおにぃの打診した野球部入り断った。その理由は『新しいことをしたいから』そして、生徒会入りを続けて打診された時に思ったはずだよ?『野球部入り断ったのに生徒会入りまで断るのは申し訳ないかな』『新しいことをしたいってのには生徒会は最適だ』って」

「……お、思った」

 そこまで話して桐崎さんは笑った。

「ぜーんぶおにぃの手のひらの上。ホント大人気ない!!入学したての新入生に本気出してるんだよ!!」

「ああ、そう言えば思い出したわ。あなたのお兄さん。ハーレム王以外にも二つ名があったわね。確か……『ペテン師』だったかしら?」

 その言葉に俺は少しだけショックを受ける。


「お、俺は桐崎先輩に騙されたのか?」

 その言葉に、桐崎さんは首を横に振る。

「違うよ桜井くん。おにぃはね『自分の全力を出してでも君が欲しかった』ってことだよ」

 そう言うと、彼女はめちゃくちゃ不機嫌そうな顔をする。

「見てよ、あそこ。おにぃはまだ嬉しそうに話してるよ。余程君が欲しかったんだね。おにぃがあそこまで入れ込むとか普通じゃないよ。あーあ。羨ましいなぁ。てかさ、なに?『北島永久さんや俺の妹の雫より、桜井霧都くん。君が欲しい』って!!なんかすごいムカつくよね!!それにさ、次期生徒会長を私が狙ってるの知ってるのに、桜井くんをご指名だよ!!もー許さない!!おにぃの明日のお弁当は無し!!」

「あはは……そんなに怒らないであげてよ」

 と、俺は少しだけ苦笑いをしながら、桐崎さんに言うのだった。


 はぁ……とりあえず、放課後は生徒会室に向かおう。

 俺だけだと流石に寂しいから、北島さんと桐崎さんも連れて。

 桐崎先輩からも誘われてる二人だし、きっと一緒に生徒会に入ってくれると思う。

 凛音に関しては、自己紹介の時に言ってたように、バスケ部に入るだろうし。

 生徒会か……庶務って何やるんだろ?雑用とかかな。

 体力なら自信あるからな、そういう所でカバーしていこう。

 俺はそんなことを考えながら、少しだけ冷めてしまったラーメンのスープを飲み干した。
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