十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶

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第1章 前編

第十三話 ~最愛の妹に感謝と愛を伝えました~

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 第十三話




「…………人間の身体って奴は素直なんだな」

 なんて事を呟きながら、俺は制服を着て洗面台の前に立っていた。

 びしょ濡れだった制服は昨日のうちに美鈴が丁寧に洗濯して、乾燥機に掛けてくれた。
 そして、アイロンまでしてくれている。
 本当に、妹には頭が上がらない。

 凛音に二回振られ、傷心のまま家に帰った俺を救ってくれたのは、最愛の妹だ。
 本当に、美鈴が居なかったら、俺は死んでたかもしれない。命の恩人だ。

 そして、凛音に振られた翌日に、すぐに北島永久さんと恋愛をするのは不誠実だと思っていた俺の考えを、否定してくれた。

『絶対に不誠実じゃない!!もし今のお兄ちゃんに対してそんなことを言うやつがいるなら、私は絶対に許さない!!』

 その言葉が無ければ、俺は北島さんにあんなメッセージは送っていないだろう。

 昨晩。俺は凛音と北島さんにメッセージを送った。

 凛音には『決別』を告げるために。

 北島さんにはこれからの事を。

 北島さんからは、良い返事が貰えて本当に良かった。

 俺の事を『好きだ』と言ってくれている彼女のことだから、悪い返事は来ない。とは思っていても、やはり不安だった。今は告白を『保留』にしているような状態だ。

 いつ、彼女に愛想を尽かされても仕方ない。

 もし、俺が彼女を好きになったとしても、その時に彼女が俺を好きな保証なんて何処にもない。

 だったら俺の事を好きな今のうちに彼女にしてしまった方が良いのでは?

 そんな最低な考え方が一瞬だけ頭をよぎった。だけど、それは北島さんに対してとても失礼だ。

 俺は、彼女を本気で好きになったら、その時は『俺から告白しよう』そう考えている。

 その時まで、北島さんに俺を好きでい続けて貰えるように努力する。そして、その時に彼女から万が一愛想を尽かされているのなら、もう一度俺を好きになってもらう努力をする。

 そのくらいの覚悟でいる。

 そして、彼女とのメッセージが終わった時には、俺は泥のように眠っていた。

 睡眠を欲していた俺の身体は、とても素直だったんだな。

 睡眠時間はいつも通りだが、一日徹夜していたのを感じさせないくらいに疲れが取れていた。

「おはよう、お兄ちゃん。昨日は良く寝れた?」
「おはよう、美鈴。お前のお陰で良く寝れたよ。ありがとう」

 後ろからやって来た美鈴に、俺は笑いかける。

「それなら良かったよ。家に帰ってきたばかりのお兄ちゃん。正直なところ、このまま死んじゃうかと思ってた」
「あはは……あながち間違いでも無いかも」

 そういう俺を見た美鈴は、形の良い眉を寄せた。

「私は……凛音ちゃんを許せない」
「うん。許す許さないは美鈴の気持ちだから良いよ。でも、嫌いにはならないで欲しい」

 俺は、凛音に振られたけど、『嫌いだから』と言う理由で振られたわけじゃない。
 あはは……嫌われてないのに振られるってなかなか珍しいよな。

「はぁ……まぁ、良いよ。それで、これから駅に行くんでしょ?」
「うん。北島さんを迎えに行く」

 美鈴の言葉に俺は首を縦に振る。

「気を付けて行ってきてね。身体の疲れは取れてるかもしれないけど、心の疲れはなかなか取れないよ?」
「うん。心配してくれてありがとう、美鈴」

 俺はそう言うと、妹の身体を抱きしめる。

「お、お兄ちゃん!!??」

 顔を赤くして、動揺する美鈴に俺は言う。

「俺も、お前と血が繋がって無かったら、結婚してたな」
「……っ!!??」
「そのくらい。昨日のお前には助けられたし、心を救ってもらった。本当にありがとう。美鈴。俺はお前を心から愛してる」


「…………ばか。そんなん言われたら諦めらんないじゃん」


 美鈴は俺の胸に顔を押し当てて、何かを呟いた。

 そして、そっと俺の身体を押し返した。

「ほら、早く行きなよ。未来の嫁が待ってるぞ」
「あはは。そうだね、約束しておきながら初日から遅刻なんて軽蔑されちまう」

 俺はそう言うと、カバンを掴んで、玄関へと向かう。

 その後ろを、美鈴が着いてきてくれる。

 雨に濡れていた俺の革靴は、美鈴が前の日のうちに新聞紙を入れておいてくれたおかげで、きちんと乾いている。

 それを履いて俺は美鈴に向き合った。

「じゃあ、行ってくるよ」

「うん。行ってらっしゃい、お兄ちゃん」


 俺はそう言って玄関の扉を開ける。

 すると、

「…………待ってたわよ」
「……え、凛音」
「り、凛音ちゃん!?」


 玄関の前にはもう既に制服に身を包み、不機嫌そうな顔をした凛音が、腕を組んで立っていた。
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