十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶

文字の大きさ
上 下
19 / 164
第1章 前編

第十三話 ~最愛の妹に感謝と愛を伝えました~

しおりを挟む
 第十三話




「…………人間の身体って奴は素直なんだな」

 なんて事を呟きながら、俺は制服を着て洗面台の前に立っていた。

 びしょ濡れだった制服は昨日のうちに美鈴が丁寧に洗濯して、乾燥機に掛けてくれた。
 そして、アイロンまでしてくれている。
 本当に、妹には頭が上がらない。

 凛音に二回振られ、傷心のまま家に帰った俺を救ってくれたのは、最愛の妹だ。
 本当に、美鈴が居なかったら、俺は死んでたかもしれない。命の恩人だ。

 そして、凛音に振られた翌日に、すぐに北島永久さんと恋愛をするのは不誠実だと思っていた俺の考えを、否定してくれた。

『絶対に不誠実じゃない!!もし今のお兄ちゃんに対してそんなことを言うやつがいるなら、私は絶対に許さない!!』

 その言葉が無ければ、俺は北島さんにあんなメッセージは送っていないだろう。

 昨晩。俺は凛音と北島さんにメッセージを送った。

 凛音には『決別』を告げるために。

 北島さんにはこれからの事を。

 北島さんからは、良い返事が貰えて本当に良かった。

 俺の事を『好きだ』と言ってくれている彼女のことだから、悪い返事は来ない。とは思っていても、やはり不安だった。今は告白を『保留』にしているような状態だ。

 いつ、彼女に愛想を尽かされても仕方ない。

 もし、俺が彼女を好きになったとしても、その時に彼女が俺を好きな保証なんて何処にもない。

 だったら俺の事を好きな今のうちに彼女にしてしまった方が良いのでは?

 そんな最低な考え方が一瞬だけ頭をよぎった。だけど、それは北島さんに対してとても失礼だ。

 俺は、彼女を本気で好きになったら、その時は『俺から告白しよう』そう考えている。

 その時まで、北島さんに俺を好きでい続けて貰えるように努力する。そして、その時に彼女から万が一愛想を尽かされているのなら、もう一度俺を好きになってもらう努力をする。

 そのくらいの覚悟でいる。

 そして、彼女とのメッセージが終わった時には、俺は泥のように眠っていた。

 睡眠を欲していた俺の身体は、とても素直だったんだな。

 睡眠時間はいつも通りだが、一日徹夜していたのを感じさせないくらいに疲れが取れていた。

「おはよう、お兄ちゃん。昨日は良く寝れた?」
「おはよう、美鈴。お前のお陰で良く寝れたよ。ありがとう」

 後ろからやって来た美鈴に、俺は笑いかける。

「それなら良かったよ。家に帰ってきたばかりのお兄ちゃん。正直なところ、このまま死んじゃうかと思ってた」
「あはは……あながち間違いでも無いかも」

 そういう俺を見た美鈴は、形の良い眉を寄せた。

「私は……凛音ちゃんを許せない」
「うん。許す許さないは美鈴の気持ちだから良いよ。でも、嫌いにはならないで欲しい」

 俺は、凛音に振られたけど、『嫌いだから』と言う理由で振られたわけじゃない。
 あはは……嫌われてないのに振られるってなかなか珍しいよな。

「はぁ……まぁ、良いよ。それで、これから駅に行くんでしょ?」
「うん。北島さんを迎えに行く」

 美鈴の言葉に俺は首を縦に振る。

「気を付けて行ってきてね。身体の疲れは取れてるかもしれないけど、心の疲れはなかなか取れないよ?」
「うん。心配してくれてありがとう、美鈴」

 俺はそう言うと、妹の身体を抱きしめる。

「お、お兄ちゃん!!??」

 顔を赤くして、動揺する美鈴に俺は言う。

「俺も、お前と血が繋がって無かったら、結婚してたな」
「……っ!!??」
「そのくらい。昨日のお前には助けられたし、心を救ってもらった。本当にありがとう。美鈴。俺はお前を心から愛してる」


「…………ばか。そんなん言われたら諦めらんないじゃん」


 美鈴は俺の胸に顔を押し当てて、何かを呟いた。

 そして、そっと俺の身体を押し返した。

「ほら、早く行きなよ。未来の嫁が待ってるぞ」
「あはは。そうだね、約束しておきながら初日から遅刻なんて軽蔑されちまう」

 俺はそう言うと、カバンを掴んで、玄関へと向かう。

 その後ろを、美鈴が着いてきてくれる。

 雨に濡れていた俺の革靴は、美鈴が前の日のうちに新聞紙を入れておいてくれたおかげで、きちんと乾いている。

 それを履いて俺は美鈴に向き合った。

「じゃあ、行ってくるよ」

「うん。行ってらっしゃい、お兄ちゃん」


 俺はそう言って玄関の扉を開ける。

 すると、

「…………待ってたわよ」
「……え、凛音」
「り、凛音ちゃん!?」


 玄関の前にはもう既に制服に身を包み、不機嫌そうな顔をした凛音が、腕を組んで立っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

幼馴染は何故か俺の顔を隠したがる

れおん
恋愛
世間一般に陰キャと呼ばれる主人公、齋藤晴翔こと高校2年生。幼馴染の西城香織とは十数年来の付き合いである。 そんな幼馴染は、昔から俺の顔をやたらと隠したがる。髪の毛は基本伸ばしたままにされ、四六時中一緒に居るせいで、友達もろくに居なかった。 一夫多妻が許されるこの世界で、徐々に晴翔の魅力に気づき始める周囲と、なんとか隠し通そうとする幼馴染の攻防が続いていく。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

処理中です...