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第1章 前編
第八話 ~身の上話は親睦を深めるのに必要な話題です~
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第八話
とりあえず、凛音に叩き込まれた『男として当たり前に身に付けておくべき作法』で恥をかくことは無かった。
と、俺は少しだけ安堵の息を吐いていた。
氷無しのオレンジジュースを一口飲んで俺は少しだけ思案する。
飯食って、少し話したあとはどうするかな。
解散でもいいと思うけど、近くにはゲームセンターもあるしな。
少し早めに食事を切り上げて、ゲームセンターで遊ぶってのも視野に入れて会話をするか。
何のプランも持ってなくて、成り行き任せ。
と言うのは男としてかっこ悪い。
常に何らかのプランを提案して行く姿勢は必要だと思ってる。
そうしていると、頼んでいた料理が届いた。
俺が頼んでいたのはミラノ風ドリアとカルボナーラ。
いつものようにペペロンチーノを食べたかったけど、流石に女子三人の前でニンニクの匂いをさせる趣味は無い。
凛音はいつものようにハヤシターメリックライスと青豆サラダ。豆が好きなんだよな。
桐崎さんは俺と同じミラノ風ドリアに温玉をトッピングしていた。
「それだけで足りるの?」
と聞くと
「だってポテトフライもあるからねー」
と笑っていた。
そして、驚いたのは北島さんだった。
「……サイセリアでステーキ頼む女を初めて見たわ」
「私は詩織さんで見てるから二人目だね」
女子二人が驚いているように、北島さんはリブロースステーキとライスを頼んでいた。
「お、お肉が好きなんです……」
と、北島さんは少しだけ恥ずかしそうに言う。
「なるほど……詩織さんもそうだけど、でっかいおっぱいの秘訣はお肉ぱわー……」
「サイセリアのステーキは他所のステーキ屋さんより安いからね。それに、俺も一回食べたことあるけど、かなり美味しいよね。頼みたくなる気持ちは分かるよ」
と、俺は北島さんをフォローする。
「あ、ありがとうございます。そう言っていただけると少しだけ心が晴れます」
そんなやり取りを経て、俺たちは「いただきます」と声を揃えて食べ始めた。
うん。美味しい。
やっぱり外れないよなぁ、サイセリア。
なんで思いながら食べていると、
「ねぇ、霧都。カルボナーラが食べたいわ。寄越しなさい」
「……暴君かよ」
俺はそう言うと、凛音にカルボナーラの皿を渡す。
「青豆貰うぞ」
「ち、仕方ないわね。温玉に手をつけたら許さないわよ」
「わかってるよ」
そんなやり取りをしながら俺と凛音は互いの食べ物の一部を交換する。
「ペペロンチーノも美味しいけど、カルボナーラも良いわね。やっぱり外れないわね、サイセリア」
「青豆サラダも変わったよな。ベーコンの時も美味かったけど、チーズも良いよな」
なんて会話をしてると、
「幼馴染っていつもそんな感じなの?」
と桐崎さんが聞いて来たので、
「あぁ、食べ物のシェアは良くするよね」
そう答えると、隣の凛音が良く分からないことを言い出した。
「まあ、『家族』なら普通よね」
家族?いったい何を言ってるんだ??
だが、それを聞こうとした俺に、北島さんがお肉を一切れ差し出してきた。
「さ、桜井くん!!お肉も美味しいですよ!!」
必然的に「あーん」の形になってしまっているが……仕方ない。
北島さんからお肉を一つ貰うと、やはりステーキ屋さん顔負けの肉汁溢れるステーキの味がした。
「おぉ、女同士の熱い戦い。まるで朱里ちゃんと詩織さんを見てるようだ」
なんて、他人事のように言う桐崎さん。
まぁ、他人事か。
そんな会話をしながら、俺たちはメインの食事を終えると、からの食器を下げに来た店員さんに、ポテトフライを二皿お願いします。と伝えた。
「もしお腹いっぱいなら言ってね。一人でいくらでも食べられるから」
女の子の場合。
『ダイエット』
という言葉が出たりするが、個人的には少しくらいお肉が付いてる方が好きだ。
そうしていると、出来たてのポテトフライが二皿。俺たちのテーブルの真ん中に置かれた。
俺が先陣を切って一本つまんで食べる。
万が一とんでもなく熱いなら、俺が犠牲にならねば。
アッツ!!
つまんだポテトフライはすげぇ熱かった。
「……みんなは少ししてからの方がいいかな」
俺はポテトフライをフーフーしてから食べる。
俺の指は尊い犠牲になったのだ。
「じゃあこれから親睦を深める為に身の上話でもしようかな」
なんてことを桐崎さんが言い出した。
「言い出しっぺだから私からするよー」
と桐崎さんは言うとまだ熱いポテトフライを紙で指をガードしてつまんでケチャップに付けて食べた。
「私の家はお父さんとおにぃと私の三人暮らしだよ。お母さんは六年前に他界してるんだ。あ、別に気にしないでいいからね?」
と、話し始める。
てかいきなり話が重いな……
「まぁお母さんが居ないから、料理は私がいつもやってる感じ。洗濯とか掃除はおにぃがやってる。お父さんはお金を稼ぐ係かな」
と笑いながら話す。
「あと……これは普通の人には理解出来ないだろうし、私ももう諦めてる事なんだけど……」
そう前置きしてから、桐崎さんはちょっと理解出来ないことを言い出した。
「おにぃにはね『彼女』と『とても大切な女性』の二人がいるの」
「「「はい??」」」
俺たちの疑問に、桐崎さんは大きなため息を吐いた。
「彼女は藤崎朱里ちゃん。とても大切な女性は黒瀬詩織さん。詩織さんとは永久ちゃんはもう会ってるんだよね?」
「は、はい。会ってます。とても素敵な女性でした」
その言葉に、桐崎さんは笑う。
「うん。どっちも素敵な女性だと思う。詩織さんはちょっとだけ最初の頃はやらかしちゃった事件があったけど、もう時効だよね。おにぃはどっちも『平等』や『公平』では無いけど、愛してる」
「つまり、あなたのお兄さんは『二股』をしている。そういう事よね?最低な男ね」
嫌悪するような凛音のセリフ。
俺も共感しかないかな……
「あはは。まぁ、他人から見たらそう見えるし、私にもそうとしか見えない。だけど、当人たちはそれで満足……はしてないかな。納得してるような感じがしてるよ」
諦めたような桐崎さんの言葉。
そこに至るまでにたくさんの悩みや葛藤があったんだろうな……
それを考えると……なんだかやるせないなぁ
あれだけ真面目で誠実そうな見た目や言動をしている裏では、こんなことになってたんだな、桐崎先輩って
「まぁ私の身の上話はこんな感じかな!!」
と、明るく話を締めたので俺たちは声を揃えて言った。
「「「最初から重すぎ!!」」」
「あはは、ごめんねー」
桐崎さんはそう言って苦笑いをするのだった。
とりあえず、凛音に叩き込まれた『男として当たり前に身に付けておくべき作法』で恥をかくことは無かった。
と、俺は少しだけ安堵の息を吐いていた。
氷無しのオレンジジュースを一口飲んで俺は少しだけ思案する。
飯食って、少し話したあとはどうするかな。
解散でもいいと思うけど、近くにはゲームセンターもあるしな。
少し早めに食事を切り上げて、ゲームセンターで遊ぶってのも視野に入れて会話をするか。
何のプランも持ってなくて、成り行き任せ。
と言うのは男としてかっこ悪い。
常に何らかのプランを提案して行く姿勢は必要だと思ってる。
そうしていると、頼んでいた料理が届いた。
俺が頼んでいたのはミラノ風ドリアとカルボナーラ。
いつものようにペペロンチーノを食べたかったけど、流石に女子三人の前でニンニクの匂いをさせる趣味は無い。
凛音はいつものようにハヤシターメリックライスと青豆サラダ。豆が好きなんだよな。
桐崎さんは俺と同じミラノ風ドリアに温玉をトッピングしていた。
「それだけで足りるの?」
と聞くと
「だってポテトフライもあるからねー」
と笑っていた。
そして、驚いたのは北島さんだった。
「……サイセリアでステーキ頼む女を初めて見たわ」
「私は詩織さんで見てるから二人目だね」
女子二人が驚いているように、北島さんはリブロースステーキとライスを頼んでいた。
「お、お肉が好きなんです……」
と、北島さんは少しだけ恥ずかしそうに言う。
「なるほど……詩織さんもそうだけど、でっかいおっぱいの秘訣はお肉ぱわー……」
「サイセリアのステーキは他所のステーキ屋さんより安いからね。それに、俺も一回食べたことあるけど、かなり美味しいよね。頼みたくなる気持ちは分かるよ」
と、俺は北島さんをフォローする。
「あ、ありがとうございます。そう言っていただけると少しだけ心が晴れます」
そんなやり取りを経て、俺たちは「いただきます」と声を揃えて食べ始めた。
うん。美味しい。
やっぱり外れないよなぁ、サイセリア。
なんで思いながら食べていると、
「ねぇ、霧都。カルボナーラが食べたいわ。寄越しなさい」
「……暴君かよ」
俺はそう言うと、凛音にカルボナーラの皿を渡す。
「青豆貰うぞ」
「ち、仕方ないわね。温玉に手をつけたら許さないわよ」
「わかってるよ」
そんなやり取りをしながら俺と凛音は互いの食べ物の一部を交換する。
「ペペロンチーノも美味しいけど、カルボナーラも良いわね。やっぱり外れないわね、サイセリア」
「青豆サラダも変わったよな。ベーコンの時も美味かったけど、チーズも良いよな」
なんて会話をしてると、
「幼馴染っていつもそんな感じなの?」
と桐崎さんが聞いて来たので、
「あぁ、食べ物のシェアは良くするよね」
そう答えると、隣の凛音が良く分からないことを言い出した。
「まあ、『家族』なら普通よね」
家族?いったい何を言ってるんだ??
だが、それを聞こうとした俺に、北島さんがお肉を一切れ差し出してきた。
「さ、桜井くん!!お肉も美味しいですよ!!」
必然的に「あーん」の形になってしまっているが……仕方ない。
北島さんからお肉を一つ貰うと、やはりステーキ屋さん顔負けの肉汁溢れるステーキの味がした。
「おぉ、女同士の熱い戦い。まるで朱里ちゃんと詩織さんを見てるようだ」
なんて、他人事のように言う桐崎さん。
まぁ、他人事か。
そんな会話をしながら、俺たちはメインの食事を終えると、からの食器を下げに来た店員さんに、ポテトフライを二皿お願いします。と伝えた。
「もしお腹いっぱいなら言ってね。一人でいくらでも食べられるから」
女の子の場合。
『ダイエット』
という言葉が出たりするが、個人的には少しくらいお肉が付いてる方が好きだ。
そうしていると、出来たてのポテトフライが二皿。俺たちのテーブルの真ん中に置かれた。
俺が先陣を切って一本つまんで食べる。
万が一とんでもなく熱いなら、俺が犠牲にならねば。
アッツ!!
つまんだポテトフライはすげぇ熱かった。
「……みんなは少ししてからの方がいいかな」
俺はポテトフライをフーフーしてから食べる。
俺の指は尊い犠牲になったのだ。
「じゃあこれから親睦を深める為に身の上話でもしようかな」
なんてことを桐崎さんが言い出した。
「言い出しっぺだから私からするよー」
と桐崎さんは言うとまだ熱いポテトフライを紙で指をガードしてつまんでケチャップに付けて食べた。
「私の家はお父さんとおにぃと私の三人暮らしだよ。お母さんは六年前に他界してるんだ。あ、別に気にしないでいいからね?」
と、話し始める。
てかいきなり話が重いな……
「まぁお母さんが居ないから、料理は私がいつもやってる感じ。洗濯とか掃除はおにぃがやってる。お父さんはお金を稼ぐ係かな」
と笑いながら話す。
「あと……これは普通の人には理解出来ないだろうし、私ももう諦めてる事なんだけど……」
そう前置きしてから、桐崎さんはちょっと理解出来ないことを言い出した。
「おにぃにはね『彼女』と『とても大切な女性』の二人がいるの」
「「「はい??」」」
俺たちの疑問に、桐崎さんは大きなため息を吐いた。
「彼女は藤崎朱里ちゃん。とても大切な女性は黒瀬詩織さん。詩織さんとは永久ちゃんはもう会ってるんだよね?」
「は、はい。会ってます。とても素敵な女性でした」
その言葉に、桐崎さんは笑う。
「うん。どっちも素敵な女性だと思う。詩織さんはちょっとだけ最初の頃はやらかしちゃった事件があったけど、もう時効だよね。おにぃはどっちも『平等』や『公平』では無いけど、愛してる」
「つまり、あなたのお兄さんは『二股』をしている。そういう事よね?最低な男ね」
嫌悪するような凛音のセリフ。
俺も共感しかないかな……
「あはは。まぁ、他人から見たらそう見えるし、私にもそうとしか見えない。だけど、当人たちはそれで満足……はしてないかな。納得してるような感じがしてるよ」
諦めたような桐崎さんの言葉。
そこに至るまでにたくさんの悩みや葛藤があったんだろうな……
それを考えると……なんだかやるせないなぁ
あれだけ真面目で誠実そうな見た目や言動をしている裏では、こんなことになってたんだな、桐崎先輩って
「まぁ私の身の上話はこんな感じかな!!」
と、明るく話を締めたので俺たちは声を揃えて言った。
「「「最初から重すぎ!!」」」
「あはは、ごめんねー」
桐崎さんはそう言って苦笑いをするのだった。
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