十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶

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第1章 前編

第五話 ~入学式の挨拶で何か問題発言をするのはお約束ですよね~

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 第五話



 そして少しすると、入学式が始まった。

 まずは教頭先生が開会の挨拶をしていた。

 よし。寝ないように頑張ろう。

 ………………。

 ……………………。

 …………………………。

「…………はっ!!!???」

 寝ていた!!

 立ったまま寝ていた!!

 いびきとかしてないよな!?

 どうやら大丈夫だったようで、特に俺に視線が集まっている。とかは無かった。

 あ、あぶねぇ!!徹夜しててただでさえ寝落ちしやすいから気を付けないと……

 俺は壇上に視線を向ける。

『これより、在校生代表による祝辞を行います。生徒会長 桐崎悠斗(きりさきゆうと)くん。前へお願いします』
「はい!!」

 綺麗な女性の先生に呼ばれた男子生徒が、返事をして壇上へと上がる。
 背が高く、メガネが似合い、とてもかっこいい。

 そうか、あれが桐崎さんのお兄さんか。

 そんな感想を抱いていると、生徒会長の桐崎先輩がマイクの前に立つ。

『皆さんこんにちは、生徒会長の桐崎悠斗(きりさきゆうと)です。この度は、この海皇高校にご入学おめでとうございます。在校生を代表して祝辞を述べさせてもらいます。さて、この海皇高校は今年で創立五十周年を迎える歴史と伝統のある高校です』

 へぇ、そうなんだ。
 凜音と同じ高校に行く。としか考えてなかったから、どんな高校か?なんて調べて無かったわ。

『そして、そんな歴史と伝統のある高校ではありますが、歴史と伝統に縛られている学校ではありません』

 ……ん?どういう意味だ。
 俺が疑問に思うと、桐崎先輩はニヤリと笑った。

 あれは……性格が悪い人間のする顔だ。

『去年までこの高校は、原動付き自転車。いわゆる原付と呼ばれるバイクでの登校は認められていませんでした。しかし、自分が生徒会長に就任した時に、この校則を変え、今年より原付での登校が可能となっています』

 へぇーそりゃすげぇや

『もちろん。そのための手続きはあります。原動付き自転車通学許可書へ二人以上の先生のサインが必要になります。このように、この高校は生徒の自由意志を尊重した素晴らしい高校です。ですが』

 ですが?

『自由とはなんでもやっていい。と言う意味ではございません。キチンとしたルールに則って行動する。その前提があっての自由です』

 確かに。何してもいいなんて言ったら無法地帯になるからな。

『皆さんにはこの三年間で、ルールの中でどうやって自由を謳歌するか。それをしっかりと学んでもらいたいと思います。そして、それを学ぶのに最適な高校が、この海皇高校だと確信しています』

 なるほど……

『これで祝辞は以上になります。本日はこの海皇高校にご入学おめでとうございます』

 桐崎先輩はそう言うと、一礼して壇上を降りた。

 しっかりした先輩だった。
『女たらしのハーレム王』なんて二つ名が着いてるなんて思えないような真面目で尊敬出来る人だと見えた。

 まぁ……腹に一物抱えてそうな感じは否めないけど。

『続きまして、新入生代表による挨拶を行います。新入生代表 北島永久さん、前へお願いします』
「はい!!」

 お、北島さんの番だ。

 さっきはなんだか意味深なことを言ってたけど……

 壇上へと上がる北島さん。
 遠目で見てもめちゃくちゃ可愛いな。

『本日は私たちのためにこのような入学式を開いていただき、誠にありがとうございます。新入生を代表してお礼を申し上げます』

 しっかりとした良く通る声。
 たくさん練習したんだろうな。

 俺は北島さんの努力に感銘を受けていた。

『こうして、私がここに立つことが出来たのはたくさんの幸運に恵まれたからだと感じております。一つ目の幸運は、立派な先輩方が学ぶこの海皇高校へ入学出来たことです』

 ほうほう……

『そして、二つ目の幸運はこの入学式の前。とても緊張していた私に、声を掛けてくれた先輩が居ました。それは生徒会の副会長。黒瀬先輩です』

 北島さんの視線の先を追うと、めちゃくちゃ美人な黒髪の女性が居た。
 黒瀬先輩。と呼ばれた女性は、北島さんの言葉に微笑みで返していた。

『黒瀬先輩は緊張する私に優しく語りかけてくれました。そして、先輩と話すうちに、私の緊張も無くなっていきました。このような素晴らしい先輩との出会いは、私にとって何よりも代えがたい財産です。そして、最後は三つ目の幸運です』

 ……え?なんだ。北島さんが俺を見ている。
 そして、ニコリと微笑んだ。

『私は小学生のころ、虐めにあっていました』

 ざわ……

 ざわり……

 体育館の空気が少しだけ乱れる。

『その時そんな私を助けてくれた一人の男の子が居ました。しかし、その後私は引越しをして、転校してしまい、その男の子とは離れ離れになってしまいました』

 き、北島さん……

『ですが、この高校に入学し、クラス分けの紙を見た時に、その時の男の子の名前を見つけました。その時の私の気持ちは言葉に出来ないくらいでした』

 北島さんはそう言うと、ニコリと笑った。

『私はこの高校でたくさんのことを学びたいと思います。桐崎先輩の言っていた、自由の謳歌の仕方はもちろん。勉強に運動、そして恋愛にも全力で頑張って行こうと思います!!』

 これが、彼女が言っていたアッと驚く挨拶か……

『最後になりますが、このような素晴らしい入学式を開いていただき、誠にありがとうございます!!』

 北島さんはそう言って頭を下げ……

 ゴン!!

『いた……っ!!』

 マイクに頭をぶつける北島さん

『……や、やだ……恥ずかしい……し、失礼しました』

 彼女はそう言って逃げるように壇上を降りた。

 やば、めっちゃ可愛いじゃん。

 最後の最後でやらかした北島さんを見ながら、彼女としてはまったく嬉しくないだろうけど、俺はそんなことを考えていた。
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