9 / 164
第1章 前編
第五話 ~入学式の挨拶で何か問題発言をするのはお約束ですよね~
しおりを挟む
第五話
そして少しすると、入学式が始まった。
まずは教頭先生が開会の挨拶をしていた。
よし。寝ないように頑張ろう。
………………。
……………………。
…………………………。
「…………はっ!!!???」
寝ていた!!
立ったまま寝ていた!!
いびきとかしてないよな!?
どうやら大丈夫だったようで、特に俺に視線が集まっている。とかは無かった。
あ、あぶねぇ!!徹夜しててただでさえ寝落ちしやすいから気を付けないと……
俺は壇上に視線を向ける。
『これより、在校生代表による祝辞を行います。生徒会長 桐崎悠斗(きりさきゆうと)くん。前へお願いします』
「はい!!」
綺麗な女性の先生に呼ばれた男子生徒が、返事をして壇上へと上がる。
背が高く、メガネが似合い、とてもかっこいい。
そうか、あれが桐崎さんのお兄さんか。
そんな感想を抱いていると、生徒会長の桐崎先輩がマイクの前に立つ。
『皆さんこんにちは、生徒会長の桐崎悠斗(きりさきゆうと)です。この度は、この海皇高校にご入学おめでとうございます。在校生を代表して祝辞を述べさせてもらいます。さて、この海皇高校は今年で創立五十周年を迎える歴史と伝統のある高校です』
へぇ、そうなんだ。
凜音と同じ高校に行く。としか考えてなかったから、どんな高校か?なんて調べて無かったわ。
『そして、そんな歴史と伝統のある高校ではありますが、歴史と伝統に縛られている学校ではありません』
……ん?どういう意味だ。
俺が疑問に思うと、桐崎先輩はニヤリと笑った。
あれは……性格が悪い人間のする顔だ。
『去年までこの高校は、原動付き自転車。いわゆる原付と呼ばれるバイクでの登校は認められていませんでした。しかし、自分が生徒会長に就任した時に、この校則を変え、今年より原付での登校が可能となっています』
へぇーそりゃすげぇや
『もちろん。そのための手続きはあります。原動付き自転車通学許可書へ二人以上の先生のサインが必要になります。このように、この高校は生徒の自由意志を尊重した素晴らしい高校です。ですが』
ですが?
『自由とはなんでもやっていい。と言う意味ではございません。キチンとしたルールに則って行動する。その前提があっての自由です』
確かに。何してもいいなんて言ったら無法地帯になるからな。
『皆さんにはこの三年間で、ルールの中でどうやって自由を謳歌するか。それをしっかりと学んでもらいたいと思います。そして、それを学ぶのに最適な高校が、この海皇高校だと確信しています』
なるほど……
『これで祝辞は以上になります。本日はこの海皇高校にご入学おめでとうございます』
桐崎先輩はそう言うと、一礼して壇上を降りた。
しっかりした先輩だった。
『女たらしのハーレム王』なんて二つ名が着いてるなんて思えないような真面目で尊敬出来る人だと見えた。
まぁ……腹に一物抱えてそうな感じは否めないけど。
『続きまして、新入生代表による挨拶を行います。新入生代表 北島永久さん、前へお願いします』
「はい!!」
お、北島さんの番だ。
さっきはなんだか意味深なことを言ってたけど……
壇上へと上がる北島さん。
遠目で見てもめちゃくちゃ可愛いな。
『本日は私たちのためにこのような入学式を開いていただき、誠にありがとうございます。新入生を代表してお礼を申し上げます』
しっかりとした良く通る声。
たくさん練習したんだろうな。
俺は北島さんの努力に感銘を受けていた。
『こうして、私がここに立つことが出来たのはたくさんの幸運に恵まれたからだと感じております。一つ目の幸運は、立派な先輩方が学ぶこの海皇高校へ入学出来たことです』
ほうほう……
『そして、二つ目の幸運はこの入学式の前。とても緊張していた私に、声を掛けてくれた先輩が居ました。それは生徒会の副会長。黒瀬先輩です』
北島さんの視線の先を追うと、めちゃくちゃ美人な黒髪の女性が居た。
黒瀬先輩。と呼ばれた女性は、北島さんの言葉に微笑みで返していた。
『黒瀬先輩は緊張する私に優しく語りかけてくれました。そして、先輩と話すうちに、私の緊張も無くなっていきました。このような素晴らしい先輩との出会いは、私にとって何よりも代えがたい財産です。そして、最後は三つ目の幸運です』
……え?なんだ。北島さんが俺を見ている。
そして、ニコリと微笑んだ。
『私は小学生のころ、虐めにあっていました』
ざわ……
ざわり……
体育館の空気が少しだけ乱れる。
『その時そんな私を助けてくれた一人の男の子が居ました。しかし、その後私は引越しをして、転校してしまい、その男の子とは離れ離れになってしまいました』
き、北島さん……
『ですが、この高校に入学し、クラス分けの紙を見た時に、その時の男の子の名前を見つけました。その時の私の気持ちは言葉に出来ないくらいでした』
北島さんはそう言うと、ニコリと笑った。
『私はこの高校でたくさんのことを学びたいと思います。桐崎先輩の言っていた、自由の謳歌の仕方はもちろん。勉強に運動、そして恋愛にも全力で頑張って行こうと思います!!』
これが、彼女が言っていたアッと驚く挨拶か……
『最後になりますが、このような素晴らしい入学式を開いていただき、誠にありがとうございます!!』
北島さんはそう言って頭を下げ……
ゴン!!
『いた……っ!!』
マイクに頭をぶつける北島さん
『……や、やだ……恥ずかしい……し、失礼しました』
彼女はそう言って逃げるように壇上を降りた。
やば、めっちゃ可愛いじゃん。
最後の最後でやらかした北島さんを見ながら、彼女としてはまったく嬉しくないだろうけど、俺はそんなことを考えていた。
そして少しすると、入学式が始まった。
まずは教頭先生が開会の挨拶をしていた。
よし。寝ないように頑張ろう。
………………。
……………………。
…………………………。
「…………はっ!!!???」
寝ていた!!
立ったまま寝ていた!!
いびきとかしてないよな!?
どうやら大丈夫だったようで、特に俺に視線が集まっている。とかは無かった。
あ、あぶねぇ!!徹夜しててただでさえ寝落ちしやすいから気を付けないと……
俺は壇上に視線を向ける。
『これより、在校生代表による祝辞を行います。生徒会長 桐崎悠斗(きりさきゆうと)くん。前へお願いします』
「はい!!」
綺麗な女性の先生に呼ばれた男子生徒が、返事をして壇上へと上がる。
背が高く、メガネが似合い、とてもかっこいい。
そうか、あれが桐崎さんのお兄さんか。
そんな感想を抱いていると、生徒会長の桐崎先輩がマイクの前に立つ。
『皆さんこんにちは、生徒会長の桐崎悠斗(きりさきゆうと)です。この度は、この海皇高校にご入学おめでとうございます。在校生を代表して祝辞を述べさせてもらいます。さて、この海皇高校は今年で創立五十周年を迎える歴史と伝統のある高校です』
へぇ、そうなんだ。
凜音と同じ高校に行く。としか考えてなかったから、どんな高校か?なんて調べて無かったわ。
『そして、そんな歴史と伝統のある高校ではありますが、歴史と伝統に縛られている学校ではありません』
……ん?どういう意味だ。
俺が疑問に思うと、桐崎先輩はニヤリと笑った。
あれは……性格が悪い人間のする顔だ。
『去年までこの高校は、原動付き自転車。いわゆる原付と呼ばれるバイクでの登校は認められていませんでした。しかし、自分が生徒会長に就任した時に、この校則を変え、今年より原付での登校が可能となっています』
へぇーそりゃすげぇや
『もちろん。そのための手続きはあります。原動付き自転車通学許可書へ二人以上の先生のサインが必要になります。このように、この高校は生徒の自由意志を尊重した素晴らしい高校です。ですが』
ですが?
『自由とはなんでもやっていい。と言う意味ではございません。キチンとしたルールに則って行動する。その前提があっての自由です』
確かに。何してもいいなんて言ったら無法地帯になるからな。
『皆さんにはこの三年間で、ルールの中でどうやって自由を謳歌するか。それをしっかりと学んでもらいたいと思います。そして、それを学ぶのに最適な高校が、この海皇高校だと確信しています』
なるほど……
『これで祝辞は以上になります。本日はこの海皇高校にご入学おめでとうございます』
桐崎先輩はそう言うと、一礼して壇上を降りた。
しっかりした先輩だった。
『女たらしのハーレム王』なんて二つ名が着いてるなんて思えないような真面目で尊敬出来る人だと見えた。
まぁ……腹に一物抱えてそうな感じは否めないけど。
『続きまして、新入生代表による挨拶を行います。新入生代表 北島永久さん、前へお願いします』
「はい!!」
お、北島さんの番だ。
さっきはなんだか意味深なことを言ってたけど……
壇上へと上がる北島さん。
遠目で見てもめちゃくちゃ可愛いな。
『本日は私たちのためにこのような入学式を開いていただき、誠にありがとうございます。新入生を代表してお礼を申し上げます』
しっかりとした良く通る声。
たくさん練習したんだろうな。
俺は北島さんの努力に感銘を受けていた。
『こうして、私がここに立つことが出来たのはたくさんの幸運に恵まれたからだと感じております。一つ目の幸運は、立派な先輩方が学ぶこの海皇高校へ入学出来たことです』
ほうほう……
『そして、二つ目の幸運はこの入学式の前。とても緊張していた私に、声を掛けてくれた先輩が居ました。それは生徒会の副会長。黒瀬先輩です』
北島さんの視線の先を追うと、めちゃくちゃ美人な黒髪の女性が居た。
黒瀬先輩。と呼ばれた女性は、北島さんの言葉に微笑みで返していた。
『黒瀬先輩は緊張する私に優しく語りかけてくれました。そして、先輩と話すうちに、私の緊張も無くなっていきました。このような素晴らしい先輩との出会いは、私にとって何よりも代えがたい財産です。そして、最後は三つ目の幸運です』
……え?なんだ。北島さんが俺を見ている。
そして、ニコリと微笑んだ。
『私は小学生のころ、虐めにあっていました』
ざわ……
ざわり……
体育館の空気が少しだけ乱れる。
『その時そんな私を助けてくれた一人の男の子が居ました。しかし、その後私は引越しをして、転校してしまい、その男の子とは離れ離れになってしまいました』
き、北島さん……
『ですが、この高校に入学し、クラス分けの紙を見た時に、その時の男の子の名前を見つけました。その時の私の気持ちは言葉に出来ないくらいでした』
北島さんはそう言うと、ニコリと笑った。
『私はこの高校でたくさんのことを学びたいと思います。桐崎先輩の言っていた、自由の謳歌の仕方はもちろん。勉強に運動、そして恋愛にも全力で頑張って行こうと思います!!』
これが、彼女が言っていたアッと驚く挨拶か……
『最後になりますが、このような素晴らしい入学式を開いていただき、誠にありがとうございます!!』
北島さんはそう言って頭を下げ……
ゴン!!
『いた……っ!!』
マイクに頭をぶつける北島さん
『……や、やだ……恥ずかしい……し、失礼しました』
彼女はそう言って逃げるように壇上を降りた。
やば、めっちゃ可愛いじゃん。
最後の最後でやらかした北島さんを見ながら、彼女としてはまったく嬉しくないだろうけど、俺はそんなことを考えていた。
0
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説
腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~
味のないお茶
恋愛
「お腹が空きました。何か食べさせてください」
春休みの最終日。俺、海野凛太郎(うみのりんたろう)の部屋に同年代くらいの一人の女が腹を空かせてやって来た。
そいつの名前は美凪優花(みなぎゆうか)
今日。マンションの隣の部屋に母親と一緒に引っ越して来た奴だった。
「なんで初対面の人間に飯を振る舞わなきゃなんねぇんだよ?」
そう言う俺に、
「先程お母さんに言ったそうですね。『何か困り事があったら言ってください。隣人同士、助け合いで行きましょう』と」
と笑顔で言い返して来た。
「まさか、その言葉を言って数時間でこんな事になるとは思いもしなかったわ……」
「ふふーん。こんな美少女にご飯を振る舞えるのです。光栄に思ってくださ……」
パタン
俺は玄関の扉を閉めた。
すると直ぐに
バンバンバン!!!!
と扉を叩く音
『ごめんなさい!!嘘です!!お腹ぺこぺこなんです!!助けてください!!隣人さん!!』
そんな声が扉を突きぬけて聞こえて来る。
はぁ……勘弁してくれよ……
近所の人に誤解されるだろ……
俺はため息をつきながら玄関を開ける。
そう。これが俺と彼女のファーストコンタクト。
腹ぺこお嬢様の飯使いになった瞬間だった。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
貞操観念逆転世界におけるニートの日常
猫丸
恋愛
男女比1:100。
女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。
夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。
ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。
しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく……
『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』
『ないでしょw』
『ないと思うけど……え、マジ?』
これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。
貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。
My Doctor
west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生
病気系ですので、苦手な方は引き返してください。
初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです!
主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな)
妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ)
医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
学園のマドンナの渡辺さんが、なぜか毎週予定を聞いてくる
まるせい
青春
高校に入学して暫く経った頃、ナンパされている少女を助けた相川。相手は入学早々に学園のマドンナと呼ばれている渡辺美沙だった。
それ以来、彼女は学校内でも声を掛けてくるようになり、なぜか毎週「週末の御予定は?」と聞いてくるようになる。
ある趣味を持つ相川は週末の度に出掛けるのだが……。
焦れ焦れと距離を詰めようとするヒロインとの青春ラブコメディ。ここに開幕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる