十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。

味のないお茶

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第1章 前編

第一話 ~十年目で初めてした一人での登校~

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 第一話



 翌朝。
 高校生活の一日目を徹夜で迎える。と言う離れ業をやってのけた俺は、目の下にクマを作ったまま洗面台の前に立つ。

 やべぇ……こんな顔で登校なんか出来ねぇよ……

 俺は妹が使っているコンシーラーを使って目の下のクマをササッと覆い隠すと、ヘアワックスを使って軽く髪に動きをつける。

 まぁ……こんなもんだろ。

 とりあえず見れるレベルに見た目を整えると、俺は壁に掛けられた時計を確認する。

 時刻は七時半。高校へは自転車で行ける距離なので、八時半頃に家を出れば間に合う計算だ。

 本当なら凛音と一緒に登校しようと思っていたけど、あんな盛大に振られた後に誘うほど勇者ではない……
 てか、顔を合わせるのも気まずいよな……

 そう考えた俺は、小学校から続けていた凛音との登校を十年目にして初めて辞めることを決意した。

 昨日のうちから用意していたカバンを手にすると、予定より一時間ほど早くに家を出ることにした。

 遅刻するのは問題だが、早く行く分にはなんの問題も無いはずだ!!

「あれ。お兄ちゃん、こんな時間に登校するの??」
「美鈴(みすず)か」

 今年中学三年になる俺の妹の美鈴が、後ろから話しかけてきた。

「朝が苦手な凛音ちゃんがこんな時間に起きれるとは思えないし、誰かと約束でもしてるの?」
「いや、誰とも約束なんかしてないよ。……一人で登校する予定だよ」
「ええええええええええええ!!!!???」

 俺のその台詞に、美鈴は盛大に驚く。

「な、なんで……?」
「昨日、凛音に告白したら、振られたからだよ……」

 振られた翌日に一緒に登校しよう。なんて言える程、神経太くないよ、俺。

 俺がそう言うと、美鈴は頭を抱えた。

「ツンデレこじらせ過ぎでしょ凛音ちゃん……」

 何かを言っていたように思えたが、俺には聞き取れなかった。
 難聴系主人公にはなりたくないけど、聞こえないものは聞こえない……

「という訳でさ、俺は一人で登校することにした。あと、昨日はショックで寝れなかったからさ、勝手に美鈴のコンシーラーで目の下のクマを消したから、使ってごめんな」
「そ、そんなのは別にいいよ……」

「じゃあ俺はそろそろ登校するよ。十年目にして初めての一人での登校。こう言っちゃなんだけど、少しだけ楽しみなのもあるんだよ!!」

 なんて強がりを言う俺。

「うん。わかったよ。凛音ちゃんが後でめちゃくちゃ後悔しそうだけど、自業自得だよね……」

 玄関へと歩いて行くと、美鈴が後ろから着いてきた。

「じゃあ行ってくるよ、美鈴!!」
「うん。行ってらっしゃい、お兄ちゃん」

 俺は玄関の扉を開けると、外は快晴だった。

 俺の新しい門出を祝福しているかのような天気だな!!

 無理矢理ポジティブな思考回路に持っていき、俺は玄関の横に置いてあるママチャリの鍵を外す。

 チラリと隣の家を見る。二階にある凛音の部屋のカーテンは閉まったままだった。

 きっとまだ寝てるだろうな……

 俺は頭を軽く振って凛音のことを思考から追い出す。

 未練がましいぞ!!もう振られたんだ!!諦めて次の恋を探せよ!!

 ……無理だよなぁ。だって十年も好きだったんだから。

 俺は溜息をひとつ吐いてから、一人で通学路を自転車で走っていった。
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