傍観していたい受付嬢

湖里

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始まり

現実がテンプレートだと誰が言った!

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「【暗闇の彼方、太陽のない国、命のない地面、人々はもがき苦しみ、自らの事を憐れみ、不幸であると考えた】」

両手を前で握りしめ、前世でキリストの神様にお祈りをするような格好をして、詠唱を唱え始める。

「【人々は願った、光ある国を、太陽のある国を、命が宿る地面を、人々が豊かだと思い、幸せだと感じる世界を、自らの桃源郷を考えた】」

四分の一詠唱を唱えれば、ようやく魔法陣が淡く、淡く光り始める。それと比例して、私の魔力も少しずつ減り始める。
あー、ヤバイ。魔力足りるかな?

「【神々の長ゼウシ様よ、世界を繋ぐリンク様よ、それを支える五種の神々よ、我の魔力を持ってして勇者となるべく人を呼び、この世界へといざないたまへ。】」

ふと、頭の中に知らない風景が見えてきた。車が通って、目の前に誰かいる?

もしかして、勇者の感覚が私と繋がり始めてる?
「【勇者とは、この国の宝となるべく、盾となるべく、矛となるべき人であり、この世界に幸せをもたらす鍵となる人】」

半分の詠唱が読み終われば、魔法陣は本文を発揮し始めたようで、溢れんばかりの光が出始めた。

「【あまたの命を救い出し、あまたの国を平和へと導く、者を呼ぶなり、力を持ち、国を守ろうと正義と秩序を持ってして、我らの目の前に現れるべきにある】」

「【世界の道に乗っ取り、今ここに、神々と契約する、アラバンスの一国、ラビリンスの平和をもたらしたまへ】」

身体から目一杯の魔力がとられているのを感じながら、なんとか踏ん張り最後の言葉を言う。

「【契約に答えよ、神級魔法第二節、勇者召喚】」
真っ白な光と吹いてくる風に耐えながら目をつぶり、落ち着いた頃2つの人影が見えた。


「……こ、ここは?」
一人は、茶髪に薄茶の瞳の優しげな顔をしている青年。モデルでもやっていたのかと思うぐらいのイケメンである。

「うわぁ、サイアク。ほんっと、サイアク。」
もう一人は、黒目黒髪の冷たい印象を受ける顔立ちをした青年。茶髪の人に比べればやや劣るが、クールイケメンである。

ふらつく身体にムチを打って近くに行けば、二人は私の存在に気がついたが生かせん、態度の違いがハッキリしてる。

「あ!すいません、お姉さん。…ここは何処ですか?」
申し訳なさそうに聞く一人と。

「アンタ、王女だろ?どうして俺まで連れてきた?」
眼力を全力で使って威嚇してくる一人。

まず私は、王女ではないことを言わなければならないかな。
「はじめまして、勇者であられるお二人方。あるギルドの受付嬢をやっています。ミッシェル=ニルと申しますわ。」

受付嬢でお手の物となったお辞儀をすれば、二人がめをパチパチと瞬いた。
「え?幽樹、定番は王女だよね?」

「ああ、テンプレだと…な。」
私のことを怪しみながら、魔法陣から出てくる。

「ミッシェル!大丈夫か?」
勇者達を案内しようと一歩踏み出せば、膝がガクンとなった。
膝カックンされたみたいに。

崩れ落ちる途中でレオディオになんとか支えてもらう。ヤバイ、気持ち悪い。
吐きたくなるわけではないが、視界がぐるぐるしてる気がする。

「ミッシェルや、あとはわっちらがやっておくでやんす。レオディオとお帰んなさいな?」
フルールにも言われて、レオディオに担がれる。
お姫様抱っこだと思った奴いるだろ?残念ながらレオディオにそんな優しさはない。
片手でお尻を持ち上げられて、抱っこの容量で持たれるだけです。

「えっと……あの人は大丈夫なんですか?」
心配そうに聞いてくる勇者その一の茶髪君は、私の事を気にかけてくれている様だ。

「……。」
勇者その二も口には出さないが、自分たちのせいでああなった事がなんとなく分かるようだった。

「心配しなくても大丈夫じゃよ。ミッシェルは、あれでも最強の魔法使いのトップ5には入っておる。」

ふぉふぉふぉ、と笑っているダン。お前は、もうちょっと心配するべきだと私は感じるぞ。

恨みがましい目で見てやれば、分かっているのか私の方を見て笑っている。

「ダン、フルール、コーリド、お前ら主体となって、あとは頼んだ。ミッシェルを寝かしてくる。【転移】」

そのまま、私の部屋へと連れてかれて、ベットに入れられた。


「ゆっくり寝ておけよ。明後日は、勇者達に今後について話すことになるからな。」

その言葉を最後に私の記憶は飛んでいった。

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