傍観していたい受付嬢

湖里

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探すのはモノ?ヒト?

その侍女、有能

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あれから二週間たったが、未だにハッキリとした情報が聞こえてくることはない。
シェリアとしても、王城の掃除係として様々なところを掃除しながら噂話にアンテナを張っているがピンとくる話もない。

「もしかしたら、杞憂だったのかしら?」
勇者であるカラカサ達は城下町の宿に泊まっているとリリア、もといユユから教えてもらった。
「何が?どうかしたの?」
ひょっこりと同じ掃除係のトゥーニが向こう側の掃除を終えてやって来た。
「えっと……、王城っていろいろな噂があるじゃない?巻き込まれたり、危険なことがあったりって不安だったんだけど。思いの外、平和だなぁって。」
適当に理由を考えてトゥーニに答えれば、納得したようにケラケラと笑った。
「色んな娘がいるけど、安全だしね。……あ、でも危ないところもあるからね。気をつけないと。」

危ないところ、ねぇ。
「えー、例えば?」
何も知らない純粋な少女の様に問えば、いろいろだよとはぐらかされた。
そうそううまくは行かないらしい。
やっぱり誰か一人に絶対的信頼を勝ち取るか、こっそりと侵入していくべきなのかもしれない。バレる覚悟で。
「シャリア!外交官様が呼んでいらっしゃるわ。」
柱に持たれて、一息つけば今度は違う侍女から声をかけられた。
「外交官様が?私を?」
……まずまず、と言ったところかもしれない。


「失礼いたします、外交官様。侍女のシャリアでございます。」
貴族も驚くほどの軽やかな、美しい身のこなしをすれば息を呑むような声が聞こえた。言わずもがな、この部屋の主である外交官長ヘンデル=アシュリー=モーリーである。
「……あなたが、シャリアですね?」
「はい。」
許可を得て顔を上げれば、天井に届きそうなほどの書類の山々山々。私の国のイゼフもここまでではなかった。
「なにか御用でしょうか?」
「ええ……、シャリア嬢は何処かの貴族の生まれですか?侍女の日誌の字や、言葉遣いが平民や底らの貴族のものではありません。
無きにも悪しからず。クリスタ王国最高峰の高等学校を上位で合格したのだ。当たり前である。
「そんな……、貴族の出ですが、夫の無き今。しがない未亡人でございます。」
「み、未亡人……?」
にしては、若すぎやしないか?……とぶつぶつつぶやくのを感じながら困ったように笑う。
「お気に召したのならば、心より謝罪いたします。」
「い、いいえっ!そういう訳でここに呼んだわけではないんです。書類の整理を手伝ってもらいたくて。」
来た。
でも、もし泳がせようなどと考えられているのなら。
「私ごときに……出来るでしょうか?」
「私もリード致します。……申し遅れました、外交官長のヘンデル=アシュリー=モーリーです。」













一歩進展。
心の中でニンマリ笑った。
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