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第6話 賢者の孫娘

⑫ “魔女”選考

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 翌日の昼過ぎ。

「やぁあああああっ!」

 グラウンドに、少女の雄叫びが響く。

「てりゃっ!」

 貫き手。
 木製の的を容易く打ち抜く。

「せいっ!」

 回し蹴り。
 藁束を切り裂いた。

「えぃやっ!!」

 正拳突き。
 背丈程もある岩が砕け散る。

 その光景を見届けてから、ヴィルはその少女へと声をかけた。

「うむ、まあまあだな。
 よくやった、イーファ」

「はい、先生っ!」

 にこやかに微笑む女生徒。
 自分の出した“成果”にご満悦の様だ。
 青年もそれは同じで、この短期間によくぞここまで成長したものだと感心している。

 そんな彼へ、話しかけてくる女性が一人。

「え? いや、あの?
 ちょ、ちょっと、お待ち下さい?」

「どうしたんだ?」

 ヴィルはそちらへ――昨夜から今日の昼まで昏睡していた・・・・・・エルミアの方へ振り向く。
 泡を噴いて倒れていた割に元気な彼女は、疑問符を浮かべたまま、

「今の動きは、何なのでしょうか?」

「何って、明日で最終日だろう?
 期限を前にしたお披露目というか、最終調整というか……まあ、そんなところだ」

「いや、私がお聞きしたいのはそういうことでは無くてですね……」

 他にも人がいるからだろう、聖女モードのエルミアはイーファの方へ手をかざしつつ、

「イーファさんは、魔法使いでしたよね?」

「そうだが?」

「――先程は、素手で直接攻撃していたように見受けられましたが」

「……うん、それはだな」

 青年は少し視線を反らす。

「色々考えてみたんだが、やはり霊属性一本では魔法のバリエーションが余り無くて。
 結局、霊属性のみで行使できる身体能力上昇効果の魔法と治癒魔法に特化した練習をさせたんだ」

「……そうなのですか」

 霊属性は、あくまで命に根差すエネルギーを生み出すことしかできないのだ。
 そのエネルギーを応用するためには、他の属性が必須。
 霊属性しか持たないイーファには無理な相談である。
 ならば、霊属性単体での使い方――生命力の強化――に限定して技術を熟練させようとしたわけだ。

「格闘を覚えさせたのも、霊属性を極める一環だ。
 如何せん、エネルギーを“飛ばす”こと“込める”こともできないから、魔法の効果範囲は手で接触できる相手のみ。
 となれば、徒手空拳で戦うのが一番効率が良い。
 一緒に戦う前衛への補助も容易だからな」

 補足しておくと、霊属性による身体強化や治癒は、あくまで人が本来持つ力を強化する形で行われる。
 そのため、人が持ちえない能力(空を飛ぶ等)を付与することはできないし、自然治癒が絶対不可能な致命傷にも効果が無い。
 一方で、霊属性による強化は他の属性に比べると人体への負荷が少ないというメリットもある。

「……学院の生徒なわけですから、敢えて戦闘前提の鍛え方をしなくても良かったのでは?
 あの動きはもう武闘家のソレですよね。
 もう少し、こう、やり様があったような――」

 まだ納得のいっていない様子のエルミア。
 しかし、

「まあまあ、聖女殿。
 ヴィル殿にも考えがあってやったことなのじゃよ」

 そこへ、同じく見学へ来ていた学長――エゴールが割って入った。

「聖女殿の気持ちも分かるんじゃが、イーファを鍛える目的の一つとして“魔女”の選考会があるからのぅ。
 実際に“魔女”へ選別されるかどうかはともかく、“勇者の一団”となる可能性がある以上、戦いを見据えた訓練となるのも仕方がないじゃろう」

「それは――そうかもしれませんけれど」

 そもそも、エルミアとて攻撃魔法――それも広範囲殲滅系の魔法しか使えないという、スタンダードな“聖女”からは大きく外れた能力をしているのだ。
 イーファに対して、彼女はとやかく言える立場では無いだろう。
 寧ろ、前衛に立てて、かつ治癒魔法も得意とする今のイーファは、エルミアとの相性が抜群とも言える。

 ――恋人エルミアが少しでも楽になるよう、彼女を基準としてイーファを育ててしまったのはヴィルだけの秘密だ。

「……私としては、あの少女がいつの間にここまで強くなったのかという点も気になるところではあります」

 ぼそっとエルミアが、ヴィルへ呟いた。

「イーファとは今日を含めてもう6日間も付きっきりでトレーニングさせたんだぞ?
 アレ位のことはできるようになるさ」

「……ずっとイチャついてただけでしたよね?」

「い、いや!?
 いやいやいや、そんなことは無いぞぉ!?」

 聖女なエルミアに“そのこと”へ触れられ、しかも軽く睨まれてしまったので大分焦る。
 だが、しっかりとイーファへ指導していたのは間違いないのだ。
 朝から日が暮れるまでみっちり特訓していたのである。
 ――イチャついていたのも事実なのだけれども。

 動悸が上がってきたところへ、

「……イチャつくと?」

 学長にまで聞きとがめられた。

「何でもない!!
 何でもないんだ、エゴール!!
 それはあとでしっかり話す――じゃなくて、今は気にしなくていい!!」

「ふむ?
 左様ですか」

 必死の形相が効いたのか、エゴールはあっさり流してくれた。
 ほっとするヴィルだが――気を抜きすぎたのか、老人が彼の死角でにやりと笑った・・・・・・・ことに気付くことができなかった。

「えー……それで、“魔女”の選考会は明日だったな。
 確か、実技を披露するとか?」

「うむ、候補者を集め、“対戦形式”でトーナメントを開いてのぅ、それで最終選考を行う予定ですじゃ。
 これまでイーファを才能無しとして扱ってきた連中が、今のあの子を見たらどう反応するか、今から楽しみだわい!」

「――おい、かなり悪い顔してるぞ」

「おおっと、これは失礼。
 まあ、儂にも今の今まで積もってきたモノがあるのでしてな」

 しれっと言い放つ学長。
 実の孫を無能と見做され続けていたのだから、表に出していないだけで腸煮えくり返っていたのかもしれない。

(まあ、そこまで酷い扱いはされていないようにも思うが)

 ヴィルが交流を持ったこの学院の教師達は、イーファに才能は無いと思い込んではいたが、彼女の教育を放棄してはいなかった。
 魔法の才が無いなら無いで、今後どんな道を進んでいくのが良いか、真剣に考えていたのだ。
 だからこそイーファは魔法使いへの道を諦めながらも、(若干ヤケクソ気味ではあったが)前向きに学院生活を送れていたのだろう。

 ――もっとも、青年が会ったのは学長派の教師だけなので、派閥の違う教師からの扱いは違ったかもしれない。

 ヴィルがそんなことを考えている横で、エルミアがエゴールに質問を投げる。

「イーファさん、“魔女”に選ばれますでしょうか?」

「……正直な話、それは厳しかろう。
 これまで何度も行った選考を明日だけで覆すのは些か無理がある。
 選考会で優勝でもすれば話は変わるじゃろうが――今のイーファにはちと荷が重い」

「……なるほど」

 神妙に頷く聖女。
 ヴィルもほぼ・・同意見だ。

 ――しかし。

(まだ、分からんぞ)

 期待感もある。
 イーファは(教えた自分が言うのもなんだが)一般的な・・・・魔法使いからは大きくかけ離れている。
 それの良し悪しは横に置いておくとして、スタンダートから外れるということは、その分対抗策も取られ辛いということ。
 “選考会での優勝”というのも夢物語ではない。
 少なくともヴィルは、そう考えている。






 そして、選考会当日。
 学院にあるグラウンドの一つを改装し、思ったより立派な会場が設営されていた。
 やはり“魔女”の選考とあって、学院中から教師や生徒が見物に来ている。
 なかなかの盛況っぷりだ。

 ヴィルは会場の中でも、特別席的なところへ通されていた。
 学長の隣で選考会を見守ることになる。

「おや、意外と参加者少ないんだな」

 配られたトーナメント表を見て、率直な感想を述べる。
 “賢者の学院”の生徒数は数千人の規模であるのに対し、表に記載されている人物は10人程度であった。

「選考を重ねてきた結果じゃの」

「……今更だが、よくここまで残れたな、イーファは」

 “魔女”というからには女性に限定されるのであろうが、仮に生徒の半数が女性であったとしてもかなりの倍率のはずだ。
 幾ら学長の孫というコネがあるにしても、魔法の才能が無いとされていた彼女がここまで選考に残れていたというのは、考えてみれば不思議である。

「“魔女”の選考と言っても、見られるのは魔法の才だけではないからの」

「ほう、彼女の勤勉さが評価されたということか」

 イーファは、ヴィルが考案したトレーニングを1週間とはいえ最後までやりきった。
 かつて部下の半数が逃亡を企てたこともある(一人たりとも逃がしてはいないが)トレーニングに、だ。
 その真面目さは、十分評価に値するだろう。

 派閥争いだ知識の独占だと、きな臭い話ばかり聞かされていたが、流石に見るべきところはしっかり見ているということか。

「いや、評価されたのは美貌じゃな。
 ほれ、“賢者の学院”代表として世間の目に触れるわけじゃから、相応に見目が良くないと。
 今日集まった見物人の大半は、学院の綺麗どころが一堂に会するのを見たいという連中じゃし」

「……すまん。
 なんか俺、急にこの選考会の重要性について疑問が浮かび始めた」



 そんな一幕も挟みつつ、トーナメントは開始する。
 順調に試合は消化されていき――



 「う、嘘だろ」

 「まさか、そんな――」

 「彼女が優勝するだなんて――」

 会場がざわついていた。
 見物客にとって余りに意外な人物が優勝したためだ。

 「えー、今回の“魔女”選考トーナメントの優勝者は――」

 アナウンスが――彼も動揺で口が震えていた――その“人物”の名を告げる。


 「――特別参加の、“聖女”エルミア様ですっ!!」


「お前が優勝してどうするっ!!!?」

 ヴィルの絶叫は、会場のドヨメキにかき消された。



「というか、何時の間に参加登録していたんだ?
いや、それ以前の問題としてあいつを参加させちゃ駄目だろう!?」

「いや、是非にと頼まれて、ついつい許可してしまったんじゃがの。
 まさか優勝してしまうとは――」

「エゴール――お前の仕業だったか」

 青年と老人のやり取りをしり目に、会場の真ん中に設置された試合場――否、試合場ではエルミアの勝利者インタビューが始まっていた。
 ――“元”とついたのは、エルミアの攻撃魔法で試合場が吹き飛んだからだ。
 ちなみに、このインタビューも優勝者が外部の人間、それも“聖女”であるエルミアだからこそ、急遽催されたものだそうで。

 「皆さん、この度は学院の生徒ではない私をこのような場に出場させて頂き、ありがとうございました」

 エルミアが話し始めると、会場から歓声が上がる。
 思っていたより、学院の生徒たちはミーハーであるらしい。

 「ここ数日、学院に滞在させて頂いたことも、その間に様々な知識を教授頂いたことも、感謝に堪えません。
  気さくに学院をご案内して下さった方々にも、心からのお礼を」

 再度の歓声。
 “エルミア様”或いは“聖女様”のコールが湧き上がる。
 特に男連中は彼女へ熱い視線を送っていた。
 ……ヴィルとしては心穏やかでいられない。

 だがその熱気は、

 「――それらの有難さを重々承知しつつ、苦言を述べさせて頂きます。
  どうして学院の部外者である私が、このような場所・・・・・・・に立つことができたのか、ということを」

 この一言でかき消えた。
 会場がしん、と静まり返る。

 「この選考会には“賢者の学院”の中でも選抜された優秀な方々が集められたと聞きます」

 顔も選考理由に入っていたらしいけれども。

 「では何故、そんな方々の差し置いて私が優勝できてしまったのでしょう。
  そのことを“深刻さ”を、皆様に理解して頂きたいのです」

 教師達の中で、幾人かが顔を顰める。
 思い当たる節があるのだろう。

 「この原因は、技術を学院全体で共有していないことにあります。
  一人一人は素晴らしい技術と知識をお持ちでありながら、それを一部の集団でのみ秘匿したため、この学院全体での技術進歩を妨げてしまった。
  故に、教会でしか魔法を学んだことのない私に遅れを取ることになったのです」

 会場に再びどよめきが起こる。
 この選考トーナメントで優勝を飾る程の卓越した魔法技術が、“教会で身に着けたモノ”だと断言されたからだ。
 それはとりもなおさず、“賢者の学院”の技術が“教会”に後塵を拝したことに他ならない。
 ――実際のところ、エルミアは大分偏った魔法の学び方をしているので、一概に“教会”が“学院”に勝ったとは言い難いが。

「……今の台詞、儂が言おうと思っとったんじゃがのぅ」

 隣でしょんぼりとエゴール学長が呟いていた。
 しかしそんなものがエルミアに届くはずもなく、彼女はさらに言葉を続ける。

 「そして皆様に、注目して頂きたい人がおります。
  この選考会に参加していたイーファ・カシジャスさんです」

 エルミアは、参加者席にいるイーファの方へ手を向ける。
 群衆の目が少女に集中した。

 「彼女がこの“学院”で魔法の才能が無いと見做されていたことを、知っている方は多いことでしょう。
  しかし、今日の選考会で彼女は優勝こそ逃したものの、素晴らしい魔法を操っていました」

 会場に集まった人々からは“確かに”や“上手く魔法を使ってた”等の同意の声が上がる。
 中には“あんな戦い方魔法使いじゃない”という言葉も聞こえてきたが、少数だ。

 「ここ数日、“帝国”で魔法を学んでいたこともある私の守護騎士ヴィルのもとで、イーファさんが魔法を学んでいたことを聞き及んでいる方も多いかと思います。
  しかし、それは彼女が魔法を身に着けたことの一因でしかありません。
  イーファさんは、ヴィルの課した大変厳しい訓練を弱音を吐かずやりきりました。
  そして、まだこの学院で知る者のいない技術を習得するに至ったのです」

 エルミアはここで、会場中を仰ぎ見る。
 自然、人々の目は再度彼女へと集まった。

 「イーファさんの技術はまだ未熟かもしれません。
  しかし、私は彼女の真摯な勤勉さを評価して頂きたく願います。
  ――皆様、如何でしょうか?」

 反論する者は、誰もいないのを見て。
 ヴィルは、色々と突っ込みを入れたい気持ちを、ぐっと飲み込んだ。






「……どうしてこうなった」

 今日は、学院を出立する日。
 学院の入り口に立ったヴィルは、ただ茫然とそう呟く。

「ヴィル殿、孫をよろしくお願いしますじゃ」

 深々とお辞儀してくるエゴール学長。
 その横では、ニコニコ顔のイーファが居る。

「これからもよろしくお願いします、ヴィル先生。
 アタシ、立派な“魔女”になれるよう、頑張りますから!」

「――ああ。
 そうだな、一度引き受けた以上、最後まで面倒を見よう」

 観念してそう返す。

 選考会の後。
 エルミアの演説が効いたのか、はたまたエゴールが根回ししたのか分からないが、とにもかくにも“魔女”にはイーファが選ばれる運びとなった。
 ただ、まだ“魔女”に相応しい技術は身につけられていないということで、その教育を再びヴィルは依頼されたのだ。
 “魔女”に選ばれた以上イーファも王都へ出向かねばならず、ヴィル達と同行するのはそういう意味でも丁度良いという判断だった。

「“学院”の上層部はもっと頭が固いと思ったんだがな。
 よく、教会の人間に“魔女”の教育を任せるなんて判断できたものだ」

「……ヴィル殿の正体を明かしたら全会一致で承認されたんじゃがのぅ」

「ん? エゴール、今何か言ったか?」

「いやいや、何も言っておらんよ?」

 明らかに何かを誤魔化しているようだったが、それに言及する気力は今のヴィルに無かった。
 何故ならば。

「ではヴィル殿、改めてイーファを頼みます。
 ……曾孫は、3人くらい欲しいのぅ」

「…………ああ」

 ニヤニヤと笑う老人の顔を見て、つい仏頂面になってしまう。

 要するに、バレたのだ。
 イーファとアレコレしたことが。
 いや、ヤってしまった以上ヴィルも責任逃れをするつもりは無かったものの、やはり気まずいものは気まずかった。
 エゴールが2人の仲を快く了承してくれたのが、救いと言えば救いか。

 そこへ、準備の終えたエルミアも現れる。
 彼女は学長へと一礼し、

「エゴール学長、今回は大変良くお世話頂き、本当にありがとうございました」

「おお、聖女殿。
 こちらこそ、貴女にはお礼を言いたい。
 聖女殿の演説に感じ入った者がなかなか多いようでの。
 儂の仕事が、大分楽になってな」

「それは良かったです。
 ……それで、“例の件”ですけれど」

「……分かっとる分かっとる。
 ……エルミア殿が第一夫人、イーファが第二夫人。
 ……そういうことじゃな?」

「……ええ、今後もご助力お願いいたします」

「……うむ、孫のためならこのエゴール、一肌でも二肌でも脱ぐ所存じゃ」

 ぼそぼそと何やら会話している2人。

(そういえばエゴールの持つ魔法書を何冊か貰えるという話だったな。
 そのことについて相談でもしているのか?)

 そう考えて、ヴィルは軽く流した。
 一方でエルミアは、イーファの方へと話しかけ、

「イーファさん、不思議な縁となりましたね。
 王都までの旅、そして“勇者の一団”一員として、よろしくお願いいたします」

「――エルミアさん。
 はい、こちらこそよろしくお願いします。
 あの、攻撃魔法まで扱える“聖女”様に、アタシがどれだけ役に立てるか不安ですけれど」

「いえいえ。
 貴女の治癒魔法や強化魔法には期待しておりますから」

「ほ、本当ですか!?」

 にこやかに笑いかけるエルミアに、やはり笑顔で答えるイーファ。

(そりゃ、お前は攻撃魔法以外使えないからな)

 裏事情を知るヴィルとしては、少々複雑な気持ちではある。
 イーファが自分と相性が良いから“魔女”になれるよう仕向けたのではないかと勘ぐってしまう程だ。

「……マッサージも、毎日して差し上げますよ」

「……あ」

 ――決して、イーファの身体目当てだとかそういうことではない、はずだ。
 そう信じたい。
 信じていいかな。
 駄目かな。

(駄目かも)

 今日からの旅は、夜が忙しくなるかもしれない。
 それはそれで、男として喜ばしいことではあるのだが。

 何はともあれ。

「そろそろ出発するぞ、2人とも」

「ええ」

「はいっ」

 エルミアとイーファに呼びかけ、ヴィルは学院を後にする。

(……今度こそ、エルミアが寄り道をしませんように)

 そんな儚い願いと共に。



 第6話 完
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