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第9話 彼が本気になったなら

⑨ 夜の打ち合わせ(H)

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 今日一日の調査結果。

(流石にアタシ達に協力してくれるって人は居ませんでしたねー)

 イーファは軽くため息をつく。
 しかし、

(幼い少女を生贄にすることに対し、何の葛藤も抱いていない人も少ないみたいですね。
 ……エルミアさんの見立てが正しければ、ですけど)

 自分が見ると皆一律に否定的な返答をしてきただけのようだったのだが。
 聖女の見解によれば、抱えている悩みが滲み出てきている人も居たそうな。
 少々半信半疑なところもあるが、エルミアとしてはその判断にかなりの自信を持っているらしい。

(とにかく、重要なのは神獣の立場をより不利にする情報ってことですねー。
 それを探し出せれば、村長を始めとした村人達の協力が得られるかも、と)

 歩きながら頭を整理する。
 聞き込みで色々な話を聞いたものの、纏めてしまえば然程の量でもない。
 ……一日費やして、その程度の情報しか手に入らなかったともいうが。

(先生が何か良いアイディアを持っていればいいんですけど)

 そんなわけで、イーファは今ヴィルの居る部屋へと向かっている訳である。
 名目としては“夜伽”のためだが、実際のところは情報共有と相談のためだ。
 ただ、ヴィルがラティナを何とかしていないと・・・・・・・・・、会うことはできないわけだが。

(きっと先生のことだから大丈夫ですよねー)

 イーファは楽観的にそう考えていた。
 彼の性豪っぷりは身をもって知っているからだ。

 ……そう。
 この時彼女は、事態を本当に甘くみていたのである。

「到着、と」

 誰に聞かせるでもなく、そう呟く。
 彼女の前には、やたらと豪華な扉。
 目的の部屋の前に来たのである。

(こんな部屋を手配される先生って、そういえば何者なんですかね?)

 貴族でも入っていそうなドアなのだ。
 普通に考えれば、相当高い地位の人物ということになるのだが……

(……ま、いっか)

 彼女はあっさりと思考を放棄した。
 まあ、王国随一の魔法使いであり『賢者の学院』の学長である祖父の知人なのだから、生半可な人物であるはずがない。

(そもそも、先生は先生ですし)

 ヴィルという人物そのものが好きなのであって、彼の立場には興味が無い。

(と、考え込んでても仕方ないですね)

 変なところで時間を潰してしまった。
 気を取り直して、イーファは扉を開ける。

「失礼しまーす」

 中をくぐった、その瞬間。

「うっ!?」

 むせた。
 部屋の中の空気を吸った瞬間、思わず咳き込んでしまったのだ。

(な、何――?)

 慌てて探るも、中は薄暗く入り口からでは見通せない。
 ただ、その“臭い”だけがひたすらに鼻をつく。

(これって――これって――――精液?)

 そう。
 部屋は、精子の臭いで満たされていた。

(しかも、すっごく濃い・・―― )

 圧倒的な雄の臭いに、イーファの顔は意図に反して蕩け始めてしまう。
 間違いない。
 これは、“ヴィル”のものだ。
 でなければ、自分がここまで感じ入るわけがないのだから。

(あ、あ――先生――先生――)

 思考が鈍くなっていく。
 ここへ来た本来の目的を忘れかけてしまう程に。

「――はぁっ――はぁっ――はぁっ――」

 息が少し荒くなる。
 イーファは一歩、また一歩とおぼつかぬ足取りで部屋へと入っていった。
 するとすぐ、足元からびちゃっという音がたつ。
 見れば、床に白い色の液体が溜まっていた。

(これって――)

 それが何なのかはすぐ分かった。
 精液である。
 精液が、床に水たまりを作っているのだ。
 ……いや、ここだけではない。

「あ、あ――精液、いっぱい 」

 改めて周りを見回せば、床にも壁にも大量の精液がこびりついていた。
 “異臭”の正体はコレだったのだろう。

「はーっ、はーっ、はーっ、はーっ」

 呼吸の荒さが増す。
 身体の芯が熱い。

(……アタシ、発情しちゃってる )

 股間に“水気”を感じる。
 今の自分は、かなりはしたない・・・・・顔つきになっているはずだ。

(だ、ダメ、ダメダメ!
 ここには、先生と打合せしに来たんですから!!)

 パンパンッと頬を叩いた。
 頭が呆けて何もかもどうでもよくなってしまう――そんな気分を、必死で払う。

(せ、先生――先生は、どこ――?)

 震える脚で、部屋の奥へと進む。
 だんだんと目が暗さに慣れ、中の様子が把握できてきた。

「――――あ」

 そして、発見する。
 部屋の中央に置かれた大きなベッドの上。

「……ラティナ、さん」

 そこには、裸に剥かれたメイドが横たわっていた。
 褐色の肌は精液に塗れ、勝気な表情は見る影もない。

「……ひゅーっ……ひゅーっ……ひゅーっ……」

 白目を剥きかけ、涙を涎を垂れ流したまま、か細い呼吸を繰り返していた。

(あんな――あんな有様になるまで――)

 一日中、ヴィルに抱かれ続けていたのだろう。
 そのことを想像して、イーファの芯がさらに熱くなる。
 足の震えが収まらない。

「――ん、ほっ 」

 その時、ラティナの肢体がびくっと震えた。
 同時に彼女の股間から、大量の白濁液が噴き出る。

(つ、ついさっきまで、犯されてたんだ…… )

 膣に注ぎ込まれた精子を、留められなくなったのだ。
 だらしなく弛緩しながらも、幸せそうなラティナの顔を見ていると――

(ああああああああ――ダメダメダメダメ――――!)

 ――身体の疼きが止まらなくなる。
 太ももを熱い“汁”が伝い落ちた。
 ショーツはもうぐちょぐちょに濡れている。
 今すぐにでも、自分を慰めたい。

(ダメッ!! ダメッ!!
 しっかりしなきゃ!! しっかりしなきゃ!!
 でないと、サーラさんが――!!)

 精神を振り絞り、崩れ落ちそうになる肢体を支える。

「先生っ! 先生っ!!」

 早くヴィルを見つけなければ。
 このままだと、自分は思考を放棄した只の“雌”に堕ちてしまう。
 イーファはそう確信し、必死で師の姿を探す。

「ん? イーファじゃないか」

 その時、部屋に響く声。
 待望していた相手、ヴィルのものだ。

「先生――――!?」

 すぐに声の方向へ振り向くイーファ。
 ……しかしそれは失策だった。
 いや、この場合、彼女はそうするしか他になかったのだが――

「―――――あ、あ」

 目を見開く。
 身体が竦む。
 思考が止まる。
 全裸・・で部屋の片隅に立つ青年を目の当たりにして。
 ……彼女の理性はとうとう決壊した。

「どうした?」

 そんなこちらを訝しんで、ヴィルがこちらへ近づいてくる。

「――――は、ひっ 」

 嫌が応にも視界に入ってくる、彼の巨根。
 つい先ほどまで“行為”していたせいか、その肉棒は力強く起立していた。
 何時も見ているはずなのに、今日は一回り以上大きく感じる。

「あ、あ、あ、あ――」

 イーファはもう立っていられなかった。
 足にもう力が入らない。
 へたり込むように、その場でぺたんと腰を落とす。

「――あ、あ」

 力を失ったのは下半身だけではない。
 上半身までも倒れ伏してしまう。
 その姿はまるで“土下座”。
 巨大な男根へとひれ伏して・・・・・いるかのようだ。

「はーっ、はーっ、はーっ、はーっ、はーっ」

 心臓の鼓動が早い。
 股からはトロトロした液体が流れ出る。
 手足はもうまともに動かせなかった。

「あ、あ――先、生――先生――」

 不自由な身体でもがくイーファ。
 “土下座”をしたままどうにか手を動かし、自らのスカートを捲る・・・・・・・

「セン、セ――は、早く――早く――!」

 でかい尻を丸出しにして上へ突き出し、下半身を左右に振った。
 全く持って浅ましい姿だが、彼女にはもうそれしかできないのだ。
 すぐにでも、その肉棒を賜りたいと。
 思い切り嬌声をあげたいと。
 そう願い、必死にはしたない“おねだり”を繰り返す。

 ……その姿は、発情した雌犬以外の何物でもない。
 幼い少女を守るため奔走していた魔女の姿は、最早どこにも無かった。

「仕方ないな」

 果たして、その意はヴィルに伝わった。
 青年は後ろに回り込むと、こちらへと覆いかぶさってくる。
 そして何の躊躇もなく、勃起したイチモツをイーファの股座へと突き込んできた。

「あ、あひぃぃいいいいいいいいいいいっ!!!!?」

 待ち望んでいた“褒美”を受け取り。
 少女の甲高い喘ぎが、辺りに響き渡った。












 明けて、次の日。

「と、いうわけで。
 先生のアドバイスのもと、フィールドワークをしようと思いまーす」

「えええええええええ!?」

 イーファの言葉に、エルミアが盛大に驚いた。

「な、なんですか?
 アタシ、そんな変なこと言いました?」

「いえ、変なことと言うかなんというか――貴女、昨夜は一晩中ヴィルといたして・・・・ましたよね?
 いつ、助言を貰ったのですか?」

「…………」

 イーファは一拍の沈黙を置いてから、

「アハハハ、嫌ですね、エルミアさん。
 一分一秒の時間も惜しいこんな非常時に、アタシが先生に抱かれてただなんて。
 そんな非常識なこと――するわけないじゃないですかー」

「私の目を見て言って頂けませんか?」

 ジト目でこちらを見てくるエルミアの視線を、真正面から受け止められる度量がイーファにはまだ無かった。

「そもそも、ヴィルの部屋から響く貴女の喘ぎ声を、昨晩私はずっと耳にしていたのですが?」

「うっ!?」

「加えて貴女、今凄く臭って・・・いますよ?
 ヴィルの“子種”の臭いを、周囲にまき散らしています。
 フィールドワークの前にもう一度シャワーを浴びてきた方が良いでしょう」

「ううっ!?」

 痛い所(?)を突かれ、たじろぐイーファ。

「……………」
「……………」

 しばし、二人はじっと互いを見つめ合い――

「――と、いうわけで。
 先生のアドバイスのもと、フィールドワークをしようと思いまーす」

「最初に戻ってどうするのです」

 渾身の笑顔で繰り出した台詞なのだが、当然のようにエルミアには通用しなかった。
 それでも表情をキープしつつ、

「先生のアドバイスのもと、フィールドワークをしようと思いまーす」

「……分かりました。
 余り深く突っ込まれたくないわけですね」

「ありがとうございます」

 理解を示してくれた聖女に、深々とお辞儀する。

「しかしフィールドワークといっても、具体的に何を?」

「はい、この辺りの土地の“霊脈”を色々と探りたいんです」

「霊脈?」

 ここで言う霊脈とは、大地の持つ魔力の“流れ”のことを指す。
 魔力は万物に宿るものだが、それは大地も例外ではない。
 その“流れ”の具合を調べることにより、その土地の豊かさ等を把握することができるのだ。

「確かに、この土地そのものの情報を得るのは有効かもしれませんね。
 しかし、どうやって調べるのですか?
 私は霊脈調査に関する技能を習得していませんよ?」

「それなら大丈夫です。
 あたしの魔法で調べられます」

 胸を張ってそう答える。
 イーファの属性は『霊』特化。
 霊脈を調べるにはうってつけなのだ。

 エルミアは一瞬驚いたような顔をしてから、

「あら、そのような魔法も使えたのですね」

「はい、昨日先生に教わりました」

「……………」

 途端、聖女がまた押し黙った。
 彼女は眉間に皺を寄せると、

「いえですから貴女は――」

「ね、寝ずの特訓で身につけたんですよぉ!」

「寝ずに襲われていた、の間違いでは?」

「と、とにかく!
 私が霊脈を探る魔法を使えるのは事実なんですから!
 これを使って、この辺の土地をくまなく調べていきましょう!
 きっと何か良い情報が見つかりますよ!
 先生のお墨付きです!」

 一気にそうまくし立てる。
 聖女は大きくため息を吐くと、

「……偶に理不尽なことしますよね、ヴィルは」

 諦めの表情で、そう呟くのだった。


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