社畜冒険者の異世界変態記

ぐうたら怪人Z

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第二十三話 決戦

①! リア・ヴィーナ

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 黒田誠一という男性を、気になりだしたのは何時の頃からだっただろうか。

 ローラは昔を思い出す。
 最初は、その他大勢の一人だったはずだ。
 彼女の身体を求める男達。
 その中の一人が、黒田だった。

 毎日のように複数の男達と関係を結んだローラにとって、黒田は然程特別な相手では無かった。
 当時の彼女は、一人一人の男の顔を気にする余裕なんてなかったから。
 身体を徹底的に穢され、その上最愛の夫を失ったローラは、ひたすら享楽に耽るしか心を保つ術が無かったのだ。

 だから、“黒田の存在に気付く”まで、何度彼に抱かれたか、実は覚えていない。

 黒田のことをはっきりと意識したのは――
 あれは、そう。
 なんてことはない、朝の出来事。


(……今、何時でしょう)

 ベッドの上で気だるげに身を起こすローラ。
 外から日が差し込むので、夜が明けたのは確かなようだ。

「……身体、だるい」

 ぼそっと呟く。
 昨夜の男はやたらとしつこいヤツだった。
 何度も何度も、膣に精を吐きだされ、それでもなお責め立てられる。
 幾度絶頂したのか、とても数えられたものでは無かった。

「別に、いいんですけどね」

 むしろ、助かる位だ。
 頭がぶっ飛んでしまえば、その分嫌なことを考えないで済む。

(いっそ、壊れてしまっても)

 そう思ってみても、まだローラは正気でいる。
 とっかえひっかえ男に抱かれている彼女を、正気だとみなせるのであれば、だが。

「……シャワー、浴びなきゃ」

 散々男の精を浴びたのだ。
 別に精液をかけられることに抵抗はないが、あのガビガビとひっつく感触は好きでない。

 重い体を引きずって、ベッドから降りるローラ。

「……あれ?」

 ようやく気付いた。
 自分の身体は、ほとんど汚れていない。
 昨日、あれ程汚されたというのに、だ。

「……ベッドも」

 男の精液があちこちに飛び散っているはずのベッドも、綺麗な様子だった。
 ここだけを見れば、昨日のアレが夢だったようにも思える。

(私の身体をタオルで拭いて、ベッドも整えた人がいる――?)

 そういえば、前にも同じことがあった気がする。
 あった気がするが――いつのことだったか、誰を相手にしていた時だったか思い出せない。
 そもそも、ここ最近物事を記憶するという行為もほとんどやっていないのだから仕方ない。
 何もかも、惰性で生きている。

「まあ、別にいいか」

 その言葉で、ローラはこの件を忘れることにした。
 どうだっていいことなのだ。
 朝、ザーメン塗れになっていようと、綺麗な体でいようと。
 男に抱かれればまた汚れるだけ。

「朝食、食べますか」

 のろのろと、リビングに向かう。
 食事をとるのもおっくうだ。
 でも、欠かす訳にはいかなかった。
 朝、ちゃんと食べないと、その日の仕事ができない。

 仕事。
 夫と一緒に始めた、マジックアイテム屋。
 ローラは、この店の経営だけは止めなかった。
 どれだけ男に求められても。
 どれだけ精根尽き果てても。
 この、最後の思い出を維持することだけが、自分が生きている意義とすら考えている。

「――――えっ!?」

 突然、ローラは叫ぶ。
 リビングから香りが漂ってきたのだ。

 それは、コーヒーの香り。
 余人からすれば、ただそれだけのモノだった。
 驚くほどのものではない。

 だが、ローラにとっては違う。
 そのコーヒーの香りは、違うのだ。
 何故なら、それは――

(ウィリスさんの、コーヒー……!?)

 亡き夫がよく煎れてくれた、コーヒーの匂い。
 それが、リビングから漂ってきたのだ。

 夫のウィリスが、いつも作ってくれたコーヒー。
 ローラが不機嫌な時、ご機嫌取りに使われたコーヒー。
 疲れた時に、差し出してくれたコーヒー。
 その香が、鼻孔を満たしてくる。

「あ、あ――」

 ローラは、駆け出した。

(ウィリスさん――!
 ウィリスさん、ウィリスさん、ウィリスさんウィリスさん――!!)

 心の中で、夫の名を連呼しながら、彼女はリビングのドアを開けた。
 そこには――

「おはようございます、ローラさん。
 今、お目覚めですか?
 勝手をして申し訳ないのですが、ありあわせのもので朝食を作らせて頂きました」

「――え?」

 そこに居たのは、夫ではなかった。
 夫とは似ても似つかぬ、黒髪の男。
 昨夜、自分を抱きに来た男だ。

 ――でも。

「どうかされましたか?
 何やら不思議そうな顔をしておられますが?」

 微動だにしないローラを見て、夫ではない男が話しかけてくる。

 夫のコーヒーと同じ匂いがしたのは、材料が同じだからだろう。
 おそらくこの男はキッチンにある物を適当に使って料理したのだ。
 だから、偶々夫が使っていたコーヒー豆を使って、偶然夫と同じようにコーヒーを煎れただけ。

 ――でも。
 目の前にあるのは、夫のコーヒーなのだ。
 ローラが、ずっと忘れられなかった、夫の思い出なのだ。

 何故か分からないが、視界が潤んできた。
 上手く、相手の顔が見えない。

「え? え? ど、どうしました?
 あ、勝手に使ったのはまずかったですかね!?
 申し訳ありません、材料費はきちんと払いますし、何でしたら同じ物をすぐ買ってきますので!」

 ローラの顔を見た男が戸惑いだす。
 昨日は彼女がどれだけ泣き叫んでも責めを緩めなかったくせに、こんなちょっとした涙で動転するとは。
 そのことが、少し、おかしかった。

 瞳から涙をこぼし、口にわずかな笑みを浮かべて、ローラは口を開く。

「――あの」

「な、何でしょう?」

 どぎまぎして、男が答えた。

「貴方の、お名前を教えて貰えませんか?」

「名前、ですか?
 最初にお会いしたとき名乗った気もしますが――私の記憶違いですかね。
 黒田です。
 黒田誠一と申します」

「クロダ・セイイチ……」

 口の中で彼の名を反芻する。
 この瞬間から、ローラにとって黒田はその他大勢で無くなった。



 ……誰かに聞かれたら、きっと笑われる。
 蔑まれることすらあるだろう。

 “彼の煎れたコーヒーが、夫のそれと同じ匂いがしたから、気になってしまった”だなんて。






 そんな回想はよそに。

「~~♪ ~~~~♪」

 ローラは上機嫌に街を歩いていた。
 手には、つい先ほど市場で買った食材が抱かれている。

(今日は、クロダさんが夕飯を食べにくる予定、と)

 頭でスケジュールをチェック。
 つい数日前、黒田と一緒に夕飯を食べる約束をしていたのだ。
 最近、どうにも彼は忙しいようで、プライベートで一緒する機会がなかなか少なくなっていた。
 その分、お仕事ではほぼ毎日一緒なわけだが、流石に<次元迷宮>内では黒田もローラへ手をだしてこない。
 いや、白色区域や緑色区域では割と頻繁に弄られていたのだが、黄色区域に入ってからはずっと真剣モードなのだ。

(……まあ、真面目にしているクロダさんも格好いいんですけど)

 というより、日中はずっと真面目な状態でいて欲しい。
 変態になるのは夜だけ、というわけにはいかないのだろうか。

「そうはいかないんでしょうね……」

 諦め半分に呟く。
 彼の変態を直すのは、あのキョウヤでさえ手を焼いているというのだから、並大抵のことでは無いのだろう。

「……んん?」

 歩いていて、ふと気づく。
 前から見知った人物が歩いてきた。
 セドリックだ。

「おお、ローラさん。
 こんなところで奇遇だね。
 夕飯の買い物かい?」

「こんにちは、セドリックさん。
 ええ、そうです。
 今日はクロダさんがうちに来るので」

「おっと、そうだったか!
 通りでたくさんの荷物を持っているわけだ。
 すまないね、呼びかけてしまって」

「いえ、別に急ぎというわけでもありませんから」

 セドリックが頭を下げようとするのを止める。

 セドリック・ジェラード。
 この街有数の資産家にして――ローラを性人形に堕とした人物。
 だが、その件に関して彼女はもう言及しないことにしていた。
 別に許したわけではない。
 許したわけでは無いが、言ったところで過去が変わるわけでもない。
 壊したのは彼だが、彼女が現状に回復するまでアレコレと世話をしたのも彼なのだ。
 それこそ、店の経営から、ローラの治療法模索、周囲の人間関係構築に至るまで。
 憔悴しきった様子で毎日ローラのために駆けずり回る……そんな姿を見せられてまで憎しみを維持できるほど、ローラの心は強くなかった。
 それに、夫が死んだのはセドリックが原因ではない、ただの事故、偶然だ。

 だから、彼女はもう何も口にしない。
 憎悪についても、感謝についても。
 ただ、店に通う常連として彼を扱っていた。

「……おや?」

「どうしました?」

 急にセドリックが怪訝な顔をしだす。

「いや、今日はなんだか街が騒がしいな、と思ってね」

「……そうでしょうか?」

 そうは言われても、ローラにはさっぱり分からなかった。
 いつも通りの街並み、いつも通りの人の流れだ。
 だが、セドリックは前言を翻さなかった。

「昔取った杵柄というかなんというか。
 これでも鼻が利くんだよ、私はね。
 ローラさん、今日は早めに帰った方がいい。
 なんなら、私が送っていこう」

「そ、そうですか?」

 彼がここまで強硬に主張するというのならば、何かあるのだろう。
 商売の関係で色々危険な橋を渡ってきた人物だ。
 ローラよりも、そういうことについて敏感なのも頷ける。

「では、お願いします」

 ローラは素直に従うことにした。
 半信半疑ではあるが、どちらにせよ今は帰宅する途中なのだ。
 どこかへ寄り道するつもりもない。

 それに、勢い余ってかなりに食材を買ってしまった。
 ちょうど、荷物持ちも欲しかったところなのである。













「ヒナタ、早く! 急いで!」

「わ、分かってるって!」

 家の中で、2人の少女が慌ただしく動いていた。
 ……失礼、1人は少年だったか。

「で、でもいきなりケセドのとこ行くって、大丈夫なのか!?」

「分からない!
 分からないけど、やるしかないでしょ!!」

「――だ、だよな」

 不安げな表情をする少年――室坂陽葵に、魔族の少女――リア・ヴィーナが一喝する。
 ……言っては何だが、彼は本当に少年なんだろうか。
 遠目から見ると、完全に少女の容貌にしか見えない。
 ショートカットの金髪に蒼色の双眸。
 “魔王を幼くしたら”こんな容姿になるのだろう。

「……よし、終わった!
 いけるぞ、リア!」

「うん、それじゃ、早く『青の証』を起動して!」

 <次元迷宮>へと赴く準備が完了したようだ。
 2人とも冒険者用の装備に身を包み、いつでも探索が行える格好だ。


「それは、よくないな」


 “デュスト”は、そこで声をかけた。

「え?」
「あ!!」

 2人の声が重なる。
 少年は戸惑い、少女は緊迫と、その意味合いは違っていたが。
 扉を無理やりこじ開け、デュストは彼らの家の中へと入る。

「……でゅ、デュスト!!」

「こ、こいつが!?」

 リアの言葉に陽葵もまた驚きの声をあげ、顔を強張らせた。
 自分が何者で、何をしに来たか、理解しているのだろう。

 こちらを凝視するばかりで動こうとしない2人に対し、デュストは声をかけた。

「ムロサカ・ヒナタ。
 君をどうこうするつもりは今のところないのだけれど。
 しかし、これから君の命運が決まる一戦が行われようとしているのに、一人そこから逃げ出すのは感心しない」

 陽葵の顔を見据えて、そう言う。

「お、オレの、命運?」

「そうだよ。
 僕がクロダ・セイイチに勝てば、“君の所有権”は僕に移る。
 そういう『ルール』なんだ。
 知らなかったかな?」

 恐怖で固まりながら質問してくる陽葵に答えてやる。
 どうやら、彼は黒田やキョウヤから何も説明されていないようだ。

「君はこの戦いの勝者が手に入れるトロフィーのようなものだからね。
 これから僕と黒田が一戦交えるところで、肝心の『景品』がその場に無いのでは、ちょっと物足りない。
 そうだろう?」

「そ、そんな勝手な――!」

「勝手をしてるのは君の方だよ?
 この『ルール』があるから、今まで自由に行動できていたというのに。
 別に、すぐ君を拘束しても良かったんだから」

 憤る陽葵を、デュストは呆れながら諫める。

 勇者達は、いつだって陽葵を手に入れることができた。
 それをしなかったのは、“室坂陽葵の初期所有権はキョウヤが持つものとする”というルールがあったからだ。

(まあ、ムロサカ・ヒナタを手元に置いたところで、何かあるわけでもないのだけれど)

 彼の役割は、龍の力の容器であること以外、何もない。
 最後に陽葵を所有することに意味はあるが、途中所有する者に特にメリットはないのだ。
 だからこそ、勇者達はその『ルール』を受け入れた。

 ……彼の容姿を鑑みるに、ガルム辺りは喜んだかもしれないが。

「うん、ムロサカ・ヒナタの方はそれでいいとして、だ。
 ――リア・ヴィーナ。
 君はどうしようか?」

「――!!」

 彼女の身体がびくっと震えた。
 それを気にも留めず、デュストは言葉を続ける。

「本当はね、前に一回斬ってるから、今回は別にいいかとも思っていたんだけれど。
 でも会っちゃったからなぁ。
 それに――彼を逃がそうともしてたみたいだし」

「……どうするつもり?」

 気丈にも睨み付けてくるリア。

 ちなみにだが、彼らが本当に“逃げる”つもりだったとは、デュストも考えていない。
 大方、今すぐにケセドのもとへ赴き、キョウヤを召喚する心づもりなのだろう。

(もっと早くその判断をすべきだったね)

 遅すぎたと断じざるを得ない。
 デュストが来る前に、彼らはケセドと遭わなければならなかったのだ。
 そうすれば、また話は違っただろうに。
 もっとも、今更それを指摘したところで、どうにもなるまい。
 嫌がらせ程度にはなるだろうが、そこまでする気はデュストにも無かった。

「――うん、そうだね。
 ムロサカ・ヒナタの件に関する罰も込めて。
 嬲り殺しにしてあげようか」

 言うと同時に、デュストはリアの腹へ蹴りを放った。

「お、ご――っ!?」

 水平に吹き飛ばされ、彼女は部屋に壁に激突する。

「がはっ!? げほっ!?」

 崩れ落ちて咳き込むリア。
 それなりに力を込めたつもりだが、流石に魔族。
 一撃で致命傷とはいかなかい。
 いや、そうなるように力を調節したのだけれど。

「り、リア―――!?
 くそっ!! お前っ!!」

 陽葵が激高し、殴りかかってきた。
 軽く流し、その力を利用してほいっと投げ飛ばしてやる。

「こふっ!?」

 背中から床に落ち、ろくに受け身もとれなかった陽葵の口から空気が漏れた。
 そんな彼の腹部に、デュストは足を叩きつけた。

「がっ――!?」

 痛みにのたうち回る陽葵。
 これで当分動けないだろう。

「彼が立ち直る前に、君を処理しておこうか」

 倒れているリアに詰め寄り、胸に拳を叩き込む。

「が、ごはっ!?」

 そのまま、適当に彼女を蹴りつけていく。

「あっ!! いぎっ!! ひっ!! あぐっ!!」

 蹴られる度に悲鳴を上げる。
 ろくに身体を動かせないのか、避けることも受けることもできず、ただ為すがままだ。

「……んん?」

 ある程度ヤったところでデュストは気付いた。
 まさかとは思ったが、もう一度彼女の様子を見て確信を持つ。

「は、はははは!
 これは驚いた!!」

 思わず笑いだしてしまう。
 リアは――この魔族の女は、こんな状況で――

「君、気持ち良くなっちゃってるのか!?」

 リアの顔が、先程とは打って変わっていた。
 痛みに歪んでいるのではない。
 快楽に、蕩けているのだ。

 着物のような衣装が乱れ、彼女の股間も露わになっていた。
 そこに見える白いショーツには、うっすらと液体が滲んでいる。
 失禁とは違う――愛液の染みだ。

「いや、魔族は変な“歪み”を持っている連中は多いが――その中でも君は格別だな!
 痛めつけられることに快感を感じるだなんて!!」

「――はっ――はっ――え?」

 痛みを堪えて、彼女が聞き返してきた。
 ――痛みに堪えているつもりなのだろう、彼女は。
 傍から見れば、快感を堪能しているようにしか見えない。

「な、何言ってんのよ。
 あたしが、そんなわけ――」

「なんだ、自覚が無かったのかい?
 ほら、あそこの鏡を見てみなよ。
 今の滑稽な君の姿が確認できるから」

 デュストは部屋に設置してある鏡を指さす。
 指し示されるまま、そちらを見るリアだが――

「――う、そ」

 絶句した。
 彼女に自覚がないのは本当だったようだ。
 デュストに嬲られ、悦びの笑みを浮かべた自分を見て、リアは言葉も出ないようだった。

「いやいや、僕は罰のつもりで殴りつけたというのに。
 君にとっては、ご褒美だったわけだ!」

 さらに蹴りを2,3発入れてやる。

「あっ!――あっ!――あっ――!!」

 リアは悲鳴を上げるが、その声には明らかに艶があった。

「――ぐ、うぅ……う、嘘。
 嘘よ! あたしが、そんな――!!」

 ここに至ってまだ、彼女は現実を受け入れられないようだ。

「嘘? それはこちらの台詞だよ。
 こんなことをされて悦んでしまうとか、とんだ計算違いだ!
 ははは、ほら、ほらほらほら――!!」

 蹴る、踏みつける、蹴り飛ばす。
 痛々しい痣があちこちにできるが――

「あっ!! あぅっ!! あぁあああんっ!!」

 完全に嬌声を上げ出す、リア。

「はぁっ! あぁっ! あぁんっ!」

 身体に走る痛みに、歓喜の表情を浮かべる。
 デュストはおかしくておかしくて仕方がなかった。

「いやはや、さっきの3人組といい、この街の住人は、僕を驚かすのが得意なようだ!!
 もっとも、君と彼らはまるで方向性が違うけれどね!
 はははは、こんなに笑ったのは久々だよ!!」

 嗤うデュストだが、一方でリアはショックを隠せないでいた。

「……そ、そんな。
 あたし――悦んでる、なんて――」

 鏡に映った自分の姿を――デュストに嬲られる度に艶声を出す自分の姿を見て、愕然としている。
 ただ、身体の方はもっと痛みが欲しいのか、おねだりをするようにくねくねと淫らに動いていた。

「うーん、だけどなぁ、これじゃあ罰にならないんだよね。
 そぉらっ!!」

 デュストは彼女の股間を蹴りあげた。
 狙いは過たず、つま先がリアの女性器に下着ごとめりっと沈み込む。

「――んおっ!!?
 あ、あぁあああああっ!!?」

 快楽に喘ぎだすリア。
 今、デュストは金属製のブーツを履いている。
 こんなのがぶち込まれたなら、普通の女性であれば痛みで悶絶してもおかしくないというのに。

「そらっ!! そらそら!!
 こんなのが気持ちいいのかいっ!?」

「あっ!!? あっ!! あっ!! あっ!! あっ!!」

 ぐりぐりとつま先を動かすと、それに応じてリアは淫らな鳴き声を上げた。
 まったく、とんだ予想外だった。
 こんな面白い無様を晒してくるとは。

 デュストは一旦彼女の膣から足を抜き去ってから、

「せぇのっと!」

 掛け声と共に、今度は思い切りリアの股をつま先で痛打した。

「あひぃいいいいいいいっ!!!?」

 彼女は絶叫した。
 デュストのつま先から踵の手前まで、リアの中に埋め込まれた。
 だらだらと、血と愛液が混ざった液体が流れ出てくる。

「あっっ!! あっっ!! あっっ!! あっっ!!!
 あぁあああああああああ……」

 大きな嬌声の後、リアの身体から力が抜ける。
 股間からはさらに黄金色の液体まで漏れ始めた。
 今度こそ、失禁したか。

「はっははははは!!
 いや、いい見世物だった!!
 面白かったよ、リア・ヴィーナ!!
 これに免じて、君の命は見逃してあげよう!!」

 ひとしきり笑うと、デュストは足を彼女から取り出す。
 当のリアはというと、失神した上に泡まで吐いていた。

 ブーツについた血と愛液を拭ってから、部屋を立ち去ろうとする。
 だが、その前に。

「そうそう、ムロサカ・ヒナタ。
 今からついて来いとは言わないけれど、僕とクロダ・セイイチとの戦いの場には顔を出すように。
 ローラ・リヴェリの店は知っているだろう?
 おそらく、あそこで僕達は戦い合うはずだ」

 未だ苦しみに悶える陽葵へそう告げる。
 彼からの返事は無いが、間違いなく聞こえてはいるだろう。

(もし来なかったとしても――相応のペナルティを課すだけだしね)

 それで用事は済んだとばかりに、デュストは彼らの家を後にした。













 葵さんの張った結界の中で、私は途方に暮れていた。

「はぁっ!…はぁっ!…はぁっ!…はぁっ!」

 荒く息を吐く。

 周りは建物の残骸だらけ。
 いや、結界に取り込まれた初期は街の風景が広がる空間だったのだが。

「はぁっ!…はぁっ!……周りを徹底的に破壊すれば、結界が破れると踏んだのだけれども!」

 結界は綻びすら見せる様子が無かった。
 仮にも五勇者が展開した結界。
 私如きが破るのは無理があったか。

 ミサキさん直伝の結界突破法が無理となると、いよいよ後がなくなってきた。
 爆縮雷光アトミックプラズマを連続して使ったため、精神力も大分削れている。

「葵さん……」

 呟く。

 まさか、彼女がこんな手段を取ってくるとは。
 悪意が無いだけに性質が悪い。
 純粋に私を想ってしてくれているのだろうけれども、しかしこうしている間にもデュストは――

「くそっ!」

 友人達が奴の手にかかる光景を想像して、思わず愚痴が零れる。
 最悪な未来の妄想が、胃をキリキリと軋ませ、手を震えさせた。
 これだけ時間が経って何のアクションも無いということは、ミサキさんの方も足止めを食らっている可能性が高い。

 どうすればいい?
 どう動けばいいんだ?

 ……私はただ、途方に暮れるしかなかった。



 第二十三話②へ続く
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