社畜冒険者の異世界変態記

ぐうたら怪人Z

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第十八話裏 その頃イルマは……

①! 昼間のお話

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■午前


 ここは蒼の鱗亭。
 時刻はジャンが市場へ買い物に出かけた少し後。
 宿の廊下を一人の少女が歩いていた。
 栗毛色の二つのおさげを下げた、まだあどけない顔の女の子だ。
 だが幼い容貌と裏腹にその胸は大きく膨らみ、アンバランスな色気を醸し出している。
 ともすれば地味にも見えるロングスカート姿も、不思議と彼女にマッチしていた。

「さてと、お掃除頑張りますか!」

 少女――店長夫婦の一人娘であり、この宿屋の従業員でもあるイルマはそんな言葉で自らに気合いを入れる。
 彼女に任された仕事の一つである、宿泊部屋のベッドメイクの時間なのだ。

(――ジャンへの昼食を作るのもあるし、早めに終わらせましょう)

 そう決意して、イルマは各部屋の掃除を始めた。



「さてっと……次は、コナーのところですね」

 ここ最近この宿を拠点に迷宮の探索を行っている青年だ。
 ジャンとは幼馴染だそうで、もう一人の幼馴染であるエレナという少女と共に一緒にパーティーを組んでいる。

(最近、波風立っているようですけれど)

 コナーが他パーティーから引き抜きを受け、エレナは別の冒険者と恋仲になったという。
 つまりパーティー解散の危機だ。

(……エレナは、ジャンとくっつくと思ったんですけど)

 傍から見て、あの少女はジャンに気が合ったのは明らかだ。
 幼馴染同士だという2人は、まあ、お似合いのように見えた。
 だからこそ、“自分も我慢してきた”というのに。

(いやいや、何を考えていますか私)

 ぶんぶんと頭を振って今の考えを打ち消す。

(まあでも、エレナが『あいつ』とくっついたおかげで、コナー引き抜きの危機は去ったわけですが)

 引き抜きの危機が去ったというより、ジャンも一緒に引き抜かれる形になったというのが正しいのだが。
 コナーを引き抜こうとしたパーティーが、抵抗される位ならジャンも一緒に誘ってしまおうと考えたらしい。

(……そのお相手のパーティーが、女性2人というのはちょっと気に入らないですけど)

 もっとも、その女性達のお目当てはコナーのようだから、心配する必要は無さそうだ。

(いやいや、心配ってなんですか私)

 ぶんぶんと頭を振って今の考えを打ち消す。
 別にジャンのことを気になっているわけではないのだ。
 ちょっと顔が好みだったり、ああ見えて意外と優しかったり、色々手伝いをしてくれたり、話していて楽しかったりするけれど。

(好きだとか、そういう感情じゃないのです……ええ、違いますとも)

 そう自分に言い聞かせ、少しばくばくし出した心音を落ち着かせる。
 深呼吸を3回して、きっちり体勢を整えてから、イルマは部屋の扉に手をかけた。

「はーい、入りますよー」

 ノックもせずに扉を開ける。
 気の知れた相手の部屋には、ぞんざいに入っていくイルマだった。
 だが――


(――――え)


 ドアを開けてすぐ、イルマの身体は硬直してしまう。

 まず感じたのは、臭い。
 男の精の臭いが、その部屋の中に充満していたのだ。

 それを裏付けるかのように、部屋のあちこちに白濁した液体が飛び散っていた。
 床にも、壁にも、テーブルにも、シーツにも。
 ねっとりとした男の体液が、部屋中にこびりついていた。

 そんな部屋の真ん中には――

「あぅっ! あぅっ! あぅっ! あぅっ!
 おおっ! あっ! あぁぁあああっ!!」

 ――小柄ながらも豊満な肢体を持つセミショートの女性の裸姿と、

「締め付けが弱くなってますよ、シフォンさん!
 ほら、頑張って下さい!」

 ――喘ぐ彼女を立ったままバックから腰を打ち付けている、黒髪の青年の裸姿があった。

 女性の方は、シフォンだ。
 コナーを引き抜こうとした女性2人パーティーの片割れ。
 何度か食堂で彼らが話をしているのを見たことがある。

 そしてイルマは男の方にも見覚えがあった。

(な、なんで『こいつ』がここにいるんですか!?)

 驚愕に目を見開くイルマ。
 今日、『こいつ』はいるはずがないのに。
 エレナとデートをしているのではなかったのか?

 頭の中がぐるぐると混乱しながらも、イルマは男へと声をかける。

「何を、やってるんですか、“クロダ”!」

「おや、イルマさん。
 すいません、気づきませんで」

 いけしゃあしゃあと男が――ジャンと親しくしている冒険者、黒田誠一が答えてくる。
 顔はこちらを向きながらも、身体はシフォンを責め続けていた。

「あぅっ! ああぅっ! あっ! あぁああっ!」

 シフォンの方はイルマを無視し――或いは対応する余裕が無いのかもしれないが――ひたすら嬌声を漏らしている。
 焦点の合っていない彼女の目を見るに、後者が正解か。

 イルマはシフォンのことを横に置いて、クロダに話しかけることにした。
 疑問が多すぎて、何から聞けばいいのか判断つかなかったが。

「ここは、コナーの部屋ですよ!?
 何故アナタがいるのですか!」

「ああ、そのことですか。
 コナーさんはですね――」

「――コナーならあたしの部屋だよ、イルマ」

 いきなり、ベッドの方から声が聞こえる。
 イルマはそちらを振り向いて、声の主を確認した。

「ま、マリー!?
 アナタまでここに居たんですか!」

 そこにはシフォンとパーティーを組んでいる長髪の女冒険者、マリーの姿があった。
 こちらも素っ裸で、精子に塗れたベッドの上に横たわっている。
 シフォンに比べると凹凸の少ないスレンダーな肢体だが、その分無駄な肉が無く、綺麗なスタイルを誇っていた。

 マリーはイルマへと説明を続ける。

「ていうか、あたしが最初にここ来てたんだけどね。
 いやぁ、昨日の夜コナーをあたしの部屋に誘ったんだけどさ、酔ってたせいかあいつってばすぐ寝ちゃって。
 身体が疼いて引っ込みつかなくなってたところで、恋人を送り届けに来たこいつに会ってね?」

「そのままご相伴にあずかった、というわけです」

 淀みなく説明してくる2人。

「お、お2人はお知り合いだったので?」

「ええ。
 ちょくちょくこうして一緒に遊んでいます」

「最初は、あたしから手ぇ出したのよ。
 冒険者の間で凄い有名人だったから、こりゃ唾着けとけって思ってね。
 ……有名だったのは“1年近く冒険者やってるのに未だEランクだから”なんてお粗末な理由だったわけだけど」

「いや、お恥ずかしい限りで」

 黒田が照れたように頭を掻く。
 そうしているときにも、きっちり彼は腰を動かしているわけだが。

「おぅっ! おぉっ! お、おおぉっ! んぉおっ!!」

 シフォンは話に入ってくるでもなく、けたたましく喘いでいた。
 口からは涎が垂れ、白目を剥きかけているその様子は、正直かなり“やばい”ように思えた。

「でもこいつさ、万年Eランクのへなちょこ冒険者の癖に、ちんこはもう凄いのなんのって。
 あたちもシフォンも一発で虜になっちゃってさぁ」

 楽しそうに笑いながら、マリー。
 黒田もそれへ相槌を打つ。

「<次元迷宮>の中で致すのは私もアレが初めてでしたね。
 いつ魔物が襲ってくるかドキドキしてしまいました」

「その割にはあたしたちを犯し抜いてくれたけどね。
 あたしの方こそ、セックスで気を失ったのなんてアレが初めてよ」

「おや、そうでしたか」

 笑い合う2人。
 イルマは彼らの話に色んな意味でついていけなかった。
 同じ言語を使っているのに、理解がまるで追いつかない。

(ま、まあ、理解する必要もないですけどね!)

 頭を無理やり整理してから、再度イルマは黒田に問い質す。

「だ、だいたいクロダ!
 アナタ、エレナの恋人になったはずでは!?」

 イルマが黒田と面識があるのは、これが理由だ。
 エレナと彼が一緒にこの宿に泊まるのを、ここ最近何度も目撃していたのである。
 黒田が泊る度に、夜中までエレナの嬌声が絶えないので、よく覚えていた。
 時によっては、今日のように掃除の時間まで延々とセックスしていたことすらある。
 ……それがきっかけで、黒田と話をするようにもなってしまったのだが。

 だからこそ。
 イルマは、この一見すれば礼儀正しく奥ゆかしそうな外見をしている青年が、バリバリの肉食系男子であるということも分かっていた。
 とはいえ、それでも恋人以外に手を出すとは――

「ああ、エレナさん公認ですよ、コレ」

 ――そんなイルマの思いとは裏腹に、黒田はあっさりと答えた。

「公認!?」

「はい」

「他の女性と関係を持っても良いと!?」

「そうですよ」

「そんなバカな……」

 完全にイルマの理解の外であった。
 恋人が他の女と寝るのを許すなんて、彼女にはとても考えられない。

「話の分かる恋人さんで良かったわー。
 こいつのちんこを独り占めされたら溜まったもんじゃないしね」

「……下半身でしかモノを考えられないんですか、アナタは」

 ケラケラ笑うマリーを、イルマはジト目で睨む。

「別にいいじゃない、減るもんでもなし。
 なんならイルマもやってみれば?
 あいつのちんこ、ほんと病みつきになっちゃうから」

 言いながら、マリーは黒田の股間を指さす。
 イルマはつられて、ついついその方を向いてしまった。

(……うわ、おっきい)

 何度か見たことのある(エレナとセックスしながら対応されたこともあるので)黒田の性器は、改めて見てもやはり巨大であった。
 荒くれ者の多い冒険者向けの宿で働いている身として、酔っぱらって裸になった奴のモノを見たり、部屋で性交している場面に出くわしたりすることが日常茶飯事なイルマであったが――
 黒田の男根は、彼よりも図体のでかい男のソレと比べても、一回り以上大きい様に思えた。

「…………ごくんっ」

 自分でも知らぬうちに、イルマは唾を飲む。
 セックスの経験が無い彼女をして、黒田の肉棒は注目せざるを得ない代物だったのだ。
 ましてやそんなイチモツを膣で咥え込み、ひたすら悶えるシフォンの姿には、羨望にも似た視線を送り――

(って何を考えていますか!
 落ち着け、私!!)

 頭を振って、平常心を取り戻すイルマ。
 マリーや黒田に向かって言い放つ。

「け、結構です!
 そんなことより、今はベッドメイクの時間なんですよ!
 変なことしてないで、どいて下さい!!」

「あらら、結構お堅いのね、イルマってば」

 肩を竦めるマリー。
 一方で黒田はそんな彼女の手を引いて、ベッドから引っ張り出した。

「何すんのよ、クロダ?」

「掃除の邪魔になってはいけませんからね。
 マリーさん、こちらでもう一回戦行きましょうか」

「え?
 あんた、シフォンはどうしたの?」

「ああ、シフォンさんなら、あちらに――」

 黒田が視線を向ける先には。

「……あへっ……ひ、はひっ……あひっ……えへぇ……」

 完全に気をやって倒れ伏した、シフォンの姿があった。
 彼女の股間からは、大量の精液が零れ落ちている。
 大きなおっぱいが、シフォン自身の身体によって押し潰されていた。

「あー、ありゃ当分目を醒ましそうにないわね」

「ちょっとやり過ぎてしまったようです。
 そんなわけで、マリーさん」

「……仕方ないわねぇ。
 ちょっとは加減ってもん覚えなさいよ」

 文句を言いつつも黒田にしなだれかかり、自分の股を彼の股間に擦りつけるマリー。
 黒田は黒田で彼女を抱きかかえ――

「あぁああっ! あぁあぁあああああっ!!
 すっご! あんたのちんこ、固いぃっ!!」

 ――対面立位の体勢で、マリーの膣へ男根をぶち込んでいた。

「あっ! あっ! あっ! あっ! あっ!
 ひ、一晩中ヤってるってのに!
 あぅっ! あっ! あんっ! あぅっ! あぁあっ!
 どんな精力してんのよっ! あんっ! あっ! ああっ!!」

「これでも体力には少し自信があるのですよ。
 ……あ、イルマさん、私達は気にせず掃除の方をどうぞ」

「あ、え?
 ……は、はい」

 こんな状況で平然と話を振ってくる黒田に唖然としながらも、イルマは部屋の掃除を始める。

(掃除するんですから、止めてくれればいいのに)

 そう胸の内で愚痴を零すが、黒田が身体を止める気配はない。
 マリーの言葉によれば、下手すると10時間近くヤっていることになるというのに、そして部屋の様子を見るに何度も射精をしただろうに。
 彼のストライドには、一切の疲れが見えなかった。

(体力があるにも程がありますよ)

 ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てながら繋がり合う2人を、イルマはついつい見てしまう。

(……結構、筋肉ついているんですね、あいつ)

 黒田は確か<魔法使い>のはずだが、その身体に贅肉は無く、がっしりとした筋肉を纏っていた。
 とはいえマッチョというわけではなく、平均的な体型ながら筋肉質という、いわゆる細マッチョというやつだ。

(腹筋、割れてる……)

 その筋肉は飾りというわけでも無いようで、彼の腰の動きは実に力強いものであった。
 黒田が肉棒を突き上げる度に、マリーの身体が軽々と上下に揺れる程だ。

「あっ! あぅっ! 強いっ!!
 はぁっ! あぁあんっ! あたしのなか、抉れるぅっ!!」

 マリーは黒田の背中に手を回し、うっとりとした顔で彼の強烈なピストンを受け入れていた。
 恍惚とした表情は、彼女が本当に感じ入っていることが見て分かる。
 控えめなおっぱいを黒田に押し付けながら、マリーは快楽を貪っていた。

 その様子をイルマは羨ましそうにじっくりと眺め――

(――って、だから掃除しなくっちゃなんですよ!!)

 自分に喝を入れてベッドの掃除に手を付ける。
 シーツを外し、新しいシーツに取り換えようとするのだが、

「――うぁ」

 手に生暖かい感触。
 シーツに付着した精液を触ってしまったらしい。
 彼女の手には、黒田の精子がべっとり付いてしまっていた。

(……す、すごい、におい)

 精液からは、雄の臭いをぷんぷんと発せられていた。
 その薫りは否応なしにイルマの雌部分を刺激してくる。
 そしてイルマは好奇心から、つい白濁液に塗れた手を嗅いでしまった。

(う、あぁぁ……これが、男の人の……)

 鼻の奥まで黒田の匂いが充満する。
 イルマの口から、知らぬ間に声が漏れる。

「……あ、あ……うぁ……」

 身体の奥底が、疼くのを感じた。
 まだ何者の侵入も許したことのないイルマの子宮が、キュンキュンと蠢動する。

(ダメ、ダメ……こんなの、ただ汚いだけです……)

 シーツで拭うが、黒田の精はなかなか取れない。
 ねっとりとイルマの手にこびりついていた。

 イルマは、その手をじっくり眺め……

(……ちょ、ちょっと位なら)

 その“液”をぺろりと舐めた。

「……ん、うぅ……」

 またしても声が勝手に零れた。

(苦い……まずい……なのに、どうして……)

 イルマはもう一度手を舐める。
 口の中に精液の味が広がっていく。

「……は、あぁぁ……」

 三度漏れ出た声には、甘い響きが含まれていた。
 さらに精子の味を堪能しようとしたところで、

(な、何してるんですか、私は!
 こんな、こんなの、ただの変態で!!)

 なけなしの自制心を振り絞り、それを阻止する。

(掃除するんですよ、お仕事なんですよ!
 さっさとやって、こんな変なとこからはさっさと――)

 イルマがベッドに手を伸ばした、その時。

「あひっ!! あんっ! あうっ! んひぃいいいっ!!」

「―――!?」

 すぐ傍から聞こえた嬌声に、彼女は叫び声を上げそうになる。

(な、何――!?)

 振り返ると、黒田とマリーがイルマの近くにまで寄って来ていた。
 彼女の目と鼻の先で、セックスを続けていたのだ。

「あうっ! お、おおぉっ! んぅううっ!! あぁああっ!!」

 至近距離から、マリーの艶声を浴びせられる。
 手を少し伸ばせば届く距離には、膣を出入りする黒田の巨大なイチモツがあった。

(――あ)

 イルマの身体が、再び疼き出す。
 マリーの女性器に黒田のイチモツが突き刺さる度に、イルマの奥底にも衝撃が走るようだった。

(なんで、なんでこんな場所に――!)

 意図的に自分に近づいてきたのか、それとも“行為”をしていく中で偶然こうなったのか。
 どちらなのか、イルマに知る由も無い。

(に、逃げなきゃ……!)

 何から逃げるのか、どうして逃げるのか、彼女には分からなかったが。
 ともかく、このまま“ここ”に居ては取り返しのつかないことになるだろう確信がイルマにはあった。
 だが――

「――あっ!?
 ん、んんっ!? あ、あぁんっ!?」

 イルマの口から、喘ぎが零れた。
 彼女の胸の先端に、股間にある突起に、刺激が走ったのだ。
 これまでの疼きではなく、もっと直接的な感触。

(何が――!?)

 自分の身体を見渡すが、特にこれと言った異変は無い。
 黒田が触ってきたのかとも思ったが、彼はマリーを責めるのに夢中で“こちらを見ても居なかった”。
 そもそも彼はイルマの背後にいるのだ、体勢的に彼女の胸を触れるわけが無い。

 そうこうしている間にも、

「あ、ああっ!? ど、どうなって――ああぁあんっ!?
 あっ!…ああっ!…あんんっ!?」

 イルマの肢体は刺激され続けた。

(私の身体、どうしちゃったんですか……!?)

 状況がまるで理解できない。
 理解できないが、しかし身体は反応してしまう。

「んひぃいいっ!?」

 突如かけめぐる快感に、甲高い声を上げてしまう。
 イルマの両乳首が、抓られたのだ。
 いや、抓られたような感触があった――が正しいのか。

 ――種明かしをしてしまえば、黒田が<屈折視>と<念動>を駆使してイルマを弄っているのだが。
 冒険者ならぬ彼女にそれが分かるはずが無かった。

(あ……あ……何これ……何、これ……)

 乳首から、陰核から注入される快楽に、イルマの頭が朦朧としてくる。
 さらには――

「あぁああんっ!! 凄いのっ! あんたのちんこ、凄いのぉおっ!!
 もっとじゅぼじゅぼ突っ込んでぇっ!! ああっ! ああぁあっ! あぁぁあああっ!!!」

 ――マリーの叫ぶような嬌声が、耳の奥まで責め立ててくる。

「うぁあ、あぁああっ!…んぁあ、あぅううっ!…あっ! あぁああっ!」

 イルマはもう訳が分からなくなってきた。
 身体に走る刺激に、耳に響く艶声に、理性が掻き消えていく。

「……ああっ! あっ! あっ! あっ! ああぁぁぁ――」

 襲い来る快感に抗えず、イルマはとうとう膝をついてしまった。
 これまでに自慰をしただってあるが、今感じている肢体の悦びはそれとは比べ物にならない程のモノだったのだ。

(も、ダメ――我慢できないっ!)

 そして――イルマは自らの手を胸に、股間に伸ばし。
 自分で自分を責め始めた。

「あ、あぁああっ! あんっ! あんっ! あんっ! あんっ!
 あぅ、あ、あああっ! あ、あ、あ、あ、あ、あっ!!」

 謎の刺激と、自分の手による愛撫により、彼女は一気に昂っていく。
 黒田の目の前だというのに、何の躊躇もなく快楽を貪った。

「あぅっ! あっ! あぁあっ! あぅぅっ! あっ! ああっ! あぁあああっ!!」

 絶頂への階段を駆け上がるイルマ。
 さらなる快感を得ようと、自分を弄る手を激しく動かす。
 ショーツの上からまんこに指を押し込み、乳房全体を揉みしだく。

「あっあっあっあっあっあっ! んぅううっ! あ、あぅうぅうううっ!!」

 イルマは顔を恍惚とし、無心で自分を慰め続けた。

 あどけない少女が自慰に耽るその様は。
 不相応に大きな胸を持つ、幼い顔つきの少女が喘ぐその様は。
 見る者になんとも背徳的な色気を振りまいているのだが……本人にまだその自覚は無かった。

 直後――

「あ、あ、あ、あ、あ、あっ!!
 ああ、ああぁぁぁぁああああああっ!!!」

 一際大きな嬌声を上げて、イルマは絶頂した。

(あ、あ――すご、い――これ、すごい――)

 オナニーでは得られなかった絶頂感。
 頭が真っ白になり、身体が自分の意思と無関係に痙攣する。

「あ、あ、あ――――」

 しばし余韻を味わったあと、イルマは力なくその場に倒れ伏した。
 心地良い浮遊感に、このまま意識を手放してしまおうかと考えたところで。

「イルマさん」

 彼女は、黒田に声をかけられた。

「――あ、あ……?」

 気だるい身体をどうにか動かして、背後を見るイルマ。
 そこには、シフォンと同様に股から精液を垂れ流し、イキ顔を晒しながら気を失っているマリーと。

「どうしました?
 調子が悪いようですね?」

 心配そうにイルマを見る、黒田が居た。

(あ、あ、あ――)

 だが彼女の視線は、黒田の“一部分”に集中してしまう。

(勃ってる……まだ、勃起してる――!!)

 短時間にシフォンとマリーへ精を注いだにも関わらず、黒田の男性器は硬くそそり立っていた。

(――私、ヤられちゃう。
 こいつに、初めて奪われちゃう……!)

 彼の逞しい男根が自分を狙っているということは、今のイルマでも理解できた。
 自慰をしている最中に捲り上がってしまったスカートの中身を――ショーツに包まれた、まだ小さなお尻を、黒田がじっと見つめているからだ。
 だが、彼女にはソレから逃げる気力は無く。

「イルマさん」

 黒田がイルマに近づいてくる。
 そして何の躊躇もなく、彼女の股間を下着越しに指でなぞった。

「……あっ」

 思わず喘いでしまうイルマ。
 その反応に黒田はにこりと微笑み、

「随分と濡れてしまっていますね」

「あっ……んんっ……あ、んっ……」

 まだ誰にも――自分の父親にでさえ――触られたことのない部分を弄られ、イルマは甘い息を漏らす。
 黒田の指は、さらに彼女を責める。

「あぅっ……あ、ああっ……んぅっ……はぁ、んっ……」

 貞操の危機だというのに、それに対する恐怖感は無かった。
 イルマが抱えているのは、“あんなモノ”に貫かれたら自分はどうなってしまうのか、という未知への恐怖だ。

「……よっと」

 黒田がイルマに後ろから覆いかぶさってくる。
 尻に、彼の男根が当たる感触があった。

(……硬いし、熱い……こんなの、私の中に入っちゃうんですか……)

 期待と心配が、イルマの中で入り乱れる。

「ああっ! あ、あぁぁああっ!」

 突然、大きな嬌声を上げてしまう。

 黒田がイルマのおっぱいを揉んできたのだ。
 他と違って、十分に育った彼女の乳房。
 その感度もまた、他の部分以上に発達している。

「……行きますよ、イルマさん」

 黒田が呟く。
 彼の肉棒が、イルマの入り口を叩いた。

 ――挿れられる。

 そう覚悟した瞬間。

(……ジャン?)

 イルマの頭の中に、ある青年の姿が浮かんできた。

(……ダメです……私、ジャンに……ジャンに……)

 彼女に湧いた、ほんの僅かな抵抗の気持ち。
 しかしそんな物で蕩けきったイルマの身体は動かない。
 だから、イルマはほとんど諦観しつつ、口を開いた。

「……待って……わ、私、仕事の、途中で」

 こんなことを言ったところで、彼が止まるはずが無かろうが――

「おっと、それもそうでしたね。
 これは失礼しました」

 ――と思ったら、黒田はあっさり手を引っ込める。

「――え?」

 イルマは思わず、間の抜けた声を出してしまった。



「はい、部屋の掃除終了です。
 イルマさん、お疲れ様でした」

「……ほとんどアナタがやりましたけどね」

 疲れた口調で黒田へつっこむイルマ。
 あの後、黒田の手伝いもあってあっという間に部屋の掃除は終わってしまった。
 ちなみにシフォンとマリーはまだ気を失ったままだ。

(やたらと手際良かったですね、こいつ)

 昔取った杵柄とか言っていたが、冒険者となる前は宿屋の従業員でもしていたのだろうか?
 釈然としないものを感じつつ、イルマは部屋の出口へ向かう。

「では、私はこれで。
 他の部屋も掃除しなければなりませんので」

「はい、頑張ってきてください。
 ……あ、ちょっといいですか?」

 後ろから黒田に肩を掴まれる。

(――あ)

 あんなことがあった後だからか。
 それだけのことで、イルマの心音は跳ね上がってしまう。

 黒田は、イルマの耳元に顔を近づけ、囁いてきた。

「実は今晩もこの宿を利用する予定なのですが――
 イルマさん、私の部屋に“夜食を持ってきて貰えませんか?”」

「――え、え?」

 彼の言葉に、イルマは混乱した。

(それって、それってつまり――)

 夜にこの男がいる部屋を訪ねる。
 そうした時、自分がどうなるか――考えるまでも無い。

 ……だというのに。

「わ、分かりました」

 何故かイルマは、頷いてしまったのだった。






■お昼



「んん、美味いっ!」

 買い物が終わり、戻ってきたジャンが、イルマの作った特製料理を食べている。

「お前、なんだかんだで料理上手だよなぁ」

 珍しく、彼は彼女の料理を褒めてきた。
 その表情から、ジャンが本気で美味しいと感じていることが分かる。

 しかし――

「…………」

 ――イルマは、上の空だった。

(ど、どうしましょう……?
 夜になったら、私、私絶対クロダに――)

 同じテーブルにジャンが座っているというのに、彼の方を見ずぼうっと宙を見つめる。
 そんな彼女を見て、ジャンが話しかけてきた。

「どうした、イルマ?」

「……え?
 なんです?」

「いや、ずっと上の空だったから何かあったのかと思ってさ」

「い、いえいえいえ、何でもないですよ、何でもないです。
 それよりジャン、私の料理はどうです? 美味しいでしょう?」

「いや、ついさっきお前の料理美味しいって褒めてたんだが」

「……そ、そうでしたか」

 バツが悪くなって、しゅんとするイルマ。
 そんな彼女を見て、ジャンは少し慌てたように料理の感想を言ってきた。

「まあ、お世辞抜きで本気に美味いよ。
 これなら毎日でも食べたいくらいだ」

(――なっ!?)

 その言葉を聞いて、イルマの頭が一気に沸騰する。
 顔もあっという間に赤くなってしまう。

「ま、毎日ってそんな!?
 いきなり口説き出さないでくれます!?」

「く、口説いてねぇよ!!」

 しどろもどろになっているジャンを見て、イルマはなんとか心を落ち着かせた。
 どうも、本気で“そういうこと”を目的に発言したわけではないようだ。
 それに気づいて、少し残念に思う彼女。

(――だから、どうして私がジャンに対してこんな気持ちにならなくちゃならないんですか!!)

 そんな心持を悟られないよう、敢えて彼女は呆れたようにため息をついた。

「あーもう、いい加減にして欲しいですね」

「わ、悪かったって」

 とりあえず、といった形で頭を下げてくるジャン。
 ――そんな彼を見て、イルマはふと思いついた。

「……あー、ところでジャン、今日ってこの後空いてますか?」

 改まって、彼へと話題を振る。

「ん? えーと、昼過ぎにちょっとギルド行く用事があるけど、そんだけだな」

「そ、それでは、夕飯の手伝いもして下さいよ!
 また、私の料理ごちそうしますから!」

 思わず過剰な勢いで言葉を発してしまい、自分でも驚く。
 だが後には引かない。
 ここが自分の分水嶺なのだから。

「えー?」

「なんですか、その不満そうな顔は!
 私の料理が食べたくないって言うんですか!?」

 顔をしかめるジャンだが、イルマはなおも押した。

(どうせ最終的に了承するんですから、とっとと首を縦に振りなさいよ、この男は!)

 理不尽な考えすら抱きながら、彼女はジャンへと詰め寄った。

「食べたいか食べたくないかで言えば、まあ、食べたいけどさ。
 ……分かった分かった、手伝うよ」

 彼は、渋々とだが手伝うことを承諾した。
 イルマはぱぁっと顔を輝かせ、

「素直に最初からそう言えばいいんです!
 じゃ、夕方待ってますよ!
 約束、守って下さいね!」

 喜色満面という笑顔で、そう告げる。
 そんなイルマを見て、一瞬ジャンは言葉に詰まるような素振りをしてから、

「分かったっていっただろ!
 いちいちそんな念押しすんなよ!」

 ぶっきら棒にそう返事をしてきた。



 ジャンが用事を片付けに宿を出た後、イルマはにんまりとほほ笑んだ。

(これで、クロダの部屋に行かなくて済みますね。
 なんせ、ジャンに夕飯を御馳走するって約束したんですから)

 そんな理由付けをしなくても、他の従業員に黒田への夜食を頼めば済む話なのだが――彼女はそれに気づかなかった。
 それ程、イルマは黒田との“行為”に惹かれてしまっていたのだ。

(一時はどうなるかと思いましたが。
 ジャンも、偶には役に立つじゃないですか)

 顔を少し赤らめて、うんうんと頷くイルマ。

 そんな黒田との行為よりも、ジャンとの約束を優先したいと思えることは――ジャンへと自分の気持ちが大きく傾いていることの証拠でもある。
 しかし残念ながら、イルマはそのことも自覚できていないかった。
 ……もしそれを分かっていれば、この先の展開も変わったはずなのに。

(さて、私も午後の仕事に取り掛かりましょう。
 夕飯のこともあるし、早めに片付けないと!)

 様々なことをとりあえず棚に置いて。
 イルマは夕飯の献立を考えながら、軽やかな足取りで仕事に向かうのだった。






■夕方の手前


「ええっ!!
 手伝い、できなくなっちゃったんですか!?」

 蒼の鱗亭に、イルマの声が響いた。
 ギルドでの雑務を終えて帰ってきたジャンから、夕飯の手伝いはできないと告げられたからだ。

「すまん!
 どうしても外せない用事が入っちまったんだ!」

 ジャンは平謝りしているが、イルマの心が穏やかでなかった。
 彼との約束が無ければ、自分は黒田に会いに行かねばならないからだ。

「……どうしても外せない用事なんです?」

「お、おう。
 こればっかりは、ちょっとな。
 本当にすまん」

 精一杯の想いを込めてジャンを見つめるものの、彼には届かない。
 居心地悪げに頭を下げるのみだった。

「……うぅぅ」

 イルマは思わず呻いてしまった。

(このままじゃ……クロダの部屋へ行くハメに……)

 そうなれば、自分はきっと――
 心が重くなるのと同時に、身体の奥が熱くなるのを、彼女は感じた。

 顔を伏せるイルマに対して、ジャンが焦ったように告げてくる。

「そ、そんなわけなんで、俺はもう行くぞ!
 今度は――いや、明日は絶対手伝うからさ!
 じゃあ、そういうことで!」

 話を適当に切り上げ、ジャンは宿を飛び出して行った。
 ……あとに残されたイルマは、小さな声でそっと呟く。

「……これが最後かもしれないのに。
 ジャンのバカ」

 そんな彼女の声は、もう彼には届かない。



 第十八話裏②へ続く
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