社畜冒険者の異世界変態記

ぐうたら怪人Z

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第十八話 ジャン・フェルグソンの幸運な一日

②! 夕方までのお話

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■お昼



「んん、美味いっ!」

 買い物が終わり、蒼の鱗亭へと戻ってきたジャンは、早速昼飯を食べていた。
 イルマの作った特製料理である。

「お前、なんだかんだで料理上手だよなぁ」

 素直にイルマの腕を褒める。

 普段、この店の料理はイルマの両親が作っており、イルマが調理を担当することは稀である。
 ただ、贔屓目が入っているかもしれないが、彼女の料理は両親のそれと比べてもなお美味しいように感じた。

「…………」

 だが、言われた彼女は上の空。
 同じテーブルに居るというのにジャンの方を見ず、ただぼうっとしている。

「どうした、イルマ?」

「……え?
 なんです?」

「いや、ずっと上の空だったから何かあったのかと思ってさ」

「い、いえいえいえ、何でもないですよ、何でもないです。
 それよりジャン、私の料理はどうです? 美味しいでしょう?」

「いや、ついさっきお前の料理美味しいって褒めてたんだが」

「……そ、そうでしたか」

 バツが悪そうに、しゅんとなるイルマ。
 その姿を見て何故か罪悪感を感じたジャンは、再度料理への感想を述べた。

「まあ、お世辞抜きで本気に美味いよ。
 これなら毎日でも食べたいくらいだ」

「うぇっ!?
 ま、毎日ってそんな!?
 いきなり口説き出さないでくれます!?」

「く、口説いてねぇよ!!」

 指摘されてみれば、今のはそう受け取られても仕方ない台詞だった。
 そのことに気付き、ジャンはしどろもどろになる。

 ……しどろもどろになってしまったので、イルマが満更でもなさそうな顔をしていることに彼は気付かない。

「あーもう、いい加減にして欲しいですね」

「わ、悪かったって」

 自分が責められることに釈然としないものの、とりあえず頭を下げるジャン。
 そんな彼を見たイルマは溜飲が下がったのか一度落ち着き、

「……あー、ところでジャン、今日ってこの後空いてますか?」

 急に話題を変えてきた。

「ん? えーと、昼過ぎにちょっとギルド行く用事があるけど、そんだけだな」

「そ、それでは、夕飯の手伝いもして下さいよ!
 また、私の料理ごちそうしますから!」

 身を乗り出すほどの勢いで、ジャンにまた宿の手伝いを要請してくる。

「えー?」

「なんですか、その不満そうな顔は!
 私の料理が食べたくないって言うんですか!?」

 顔をしかめるジャンだが、イルマは意に介さない。

(そんなに忙しいのか、この宿?)

 いつもと客数はそう変わらないし、敢えて自分が手伝わなければならないほど繁忙しているようにも見えない。
 断るのは簡単だが――ジャンが暇であることは、揺るがしようが無い事実でもあった。

「食べたいか食べたくないかで言えば、まあ、食べたいけどさ。
 ……分かった分かった、手伝うよ」

 渋々と手伝うことを承諾する。
 イルマはぱぁっと顔を輝かせ、

「素直に最初からそう言えばいいんです!
 じゃ、夕方待ってますよ!
 約束、守って下さいね!」

 喜色満面という笑顔で、そう告げてきた。

(うっ! か、可愛いな、おい)

 そんな彼女の笑みに一瞬ドキっと心が揺さぶられたジャンだが。

「分かったっていっただろ!
 いちいちそんな念押しすんなよ!」

 その動揺を気取られないように、敢えてぶっきらぼうな口調で返事をするのだった。
 ……とことん、素直になれない男である。






 ■お昼過ぎ



 ここは冒険者ギルド。
 雑用(ちょっとした荷物の運搬だった)をこなしたジャンは今……

「おいおい、聞いてんのかぁ、ジャン君よぉ?」

 ……面倒な奴に絡まれているのだった。

「あー、はいはい、聞いてますよ、三下さん」

「……あれ、今お前、あっしのことを三下とか呼んだ?
 呼んじゃったのか、おい!?」

「そんなこと無いですよ、三下さん」

「ほら呼んだぁっ!?
 確かに呼んだよねっ!
 今、あっしのことを、尊敬すべき冒険者の先達たるあっしのことを、三下とか言ったよね!?」

「うっせぇよ、三下」

「“さん”付すら抜けたぁっ!!!」

 目の前で喧しく吠えているのは、サンという冒険者。
 チンピラめいた外見に、小物臭い言動をする、<盗賊>の男である。
 こんなんでも、ジャンより遥か格上であるBランク冒険者なのだ。

(納得いかねぇけどな)

 相手に気取られないよう、心で吐き捨てる。
 こんなふざけた男が自分よりも実力のあるとは、俄かに信じられないのだ。

「だぁかぁらぁよぉ!
 お前はたらたらし過ぎなだっつーの!
 <盗賊>やってるくせに注意力がねぇっつーか!
 あっしら<盗賊>はパーティーで一番クールじゃなくちゃいけないんだぜ、くぅ~~るに!!
 これは親切で言ってやってるんですよ?」

「余計なお世話って単語知らないんですかね」

「やだこの子!
 口調は丁寧でも言葉が辛辣!!
 どういう風に育てられたらこんな子になっちゃうのかしら!?」

 ショックを受けて泣き崩れるような“フリ”をする三下。
 うざい。
 本気でうざい。

(こっちは敬語で接してやってんだから、文句言うなよ、ったく!)

 抑えきれないイライラがジャンから湧き出てくる。

「お前はほんと、冒険者になった頃から変わってないなぁっ!?
 あっし、懐かしさで涙がこみ上げてきちまうぜ!
 でも変わらな過ぎて成長もしてないってーのはどうなのよ!?」

「……レベルアップはしてるっすよ、これでも」

「上がってるのレベルだけジャーン!
 探索への姿勢とか心構えとか、初心者のままジャーン!!
 だから未だにDランクにも上がれて無いんジャン?」

「あー、はいはい、すいませんすいません」

 適当に頭を下げて聞き流す。

 三下との邂逅は、まだジャンが冒険者になったばかりの頃に遡る。
 ちょっとした失敗から迷宮探索中に仲間からはぐれ四苦八苦していた彼を、偶々そこへ通りすがったこの三下っぽい冒険者が助けてくれたのだ。
 その時は心から感謝もしたものだが……それから顔を合わすたびに付き纏われ、いい加減嫌気がさしてきていた。

 ……もっとも。
 冷静に聞けばこの三下の指摘は核心を突いてもいるのだが。
 そのことをジャンが理解するには、まだ時間がかかりそうだ。

「そんなんだから今日もあっしにあっさり財布すられるんだよぉ?
 あっしは親切だから返してあげるけど、普通はこのままパクられちゃうんだよぉ?」

「親切な人なら、そもそも財布すったりしませんけどね。
 衛兵呼びましょうか?」

「か、かかかか、返したんだから泥棒じゃないもん!!
 あっしはお前を諭すために敢えて泥を被ったっていうのに、もうジャン君ったら!!
 感謝の印に女の一人や二人紹介してくれてもいいってもんだぜぇ?
 聞いたところによると、お前のパーティーに結構可愛い子いるって話じゃねぇか!!」

「絶対いやっす」

 この三下、これ程小物臭い言動のくせして女癖は悪いと聞く。
 婦女暴行で衛兵に捕まったこともあるという噂だ。
 そんな奴に、エレナを紹介することなどできるわけが無かった。

「あぁあん!? 嫌だぁっ!?
 あっしの提案をさくっと拒否しやがったかてめぇ!!
 いいじゃねぇかよぉ、ちょっとお互い気持ち良くなるだけなんだからさぁ!
 減るもんじゃねぇし、ちゃんと避妊もするからぁ!」

 「――サン」

「……あん?」

 突然、後ろから声をかけられて三下の動きが止まった。

「あ、ミーシャさん、ちわっす」

「うん、こんにちは、ジャン君」

 三下の後ろにいる人物へ、ジャンは挨拶する。
 そこには、ミーシャという名の女冒険者が立っていた。

「……み、ミーシャさん、いつからそちらに?」

「君が、女を紹介しろって言ってたところからだよ?」

「あ、ああ、そうでしたかー」

 三下の顔を一瞬で強張る。

「あの、違うんでやんすよ?
 あっしはあくまでお礼の一例としてそういうのを挙げただけでして」

「ふぅん?」

「ホント、マジで。
 あっしはミーシャさん一筋だから!
 ちょっと他の子に手を出したりすることもあるけど、最終的にはミーシャさんにとこに帰ってくるから!!」

(手を出すことは否定しないんかいっ!)

 心の声で突っ込みを入れた。

 ジャンは改めて女冒険者ミーシャの姿をちらりと見る。
 歳の頃は知らないが、女性としても大分小柄。
 身体の凹凸は少ないものの、整った容貌をした美少女だ。
 銀色の髪を短く揃えていることもあって、中性的な魅力がある。

(なんでこんな子があんな三下とパーティー組んでるんだか)

 このミーシャ、三下とパーティーを組んでいるらしい。
 先に述べた通り、三下はこれでも凄腕の<盗賊>なので、それが理由なのだとは思うが。

 ミーシャは三下の台詞を聞いて、長くため息を吐く。

「はぁ……どうでもいいから早く用事を済ませようよ。
 僕は夕方から予定が入ってるって言ったよね?」

「え、そうでしたっけ!?
 じゃあ、あっしと一緒にディナーに行く約束は!?」

「それはまた今度だね」

 ばっさりと切り捨てるミーシャ。
 しかし三下は一切へこたれる素振りを見せず。

「今度!? 今度って言ったね、今!!
 じゃあ、次の休みにはあっしに付き合ってくれると!?」

「はいはい、わかったわかった。
 だから早く用事を片付けようね」

「うぉおおおおっ! よっしゃああっ!!
 言質取ったかんな!!
 もう絶対忘れないかんな!?」

「恥ずかしいから大声を出さないで。
 ほら、行くよ」

「あいあいさー!
 じゃあな、あばよぉ、ジャン!!」

 最後に自分の方へ手を振ると、三下はミーシャと共に去っていった。
 その後姿を呆然と見送るジャン。
 彼が気になったのは、三下ではなんくミーシャの方だ。

(……ミーシャさん、最後の方少し照れてた、よな)

 ディナーの下りで、ミーシャは少し顔を赤らめ――嬉しそうな表情をしていた。
 それはジャンの勘違いであるかもしれないが、しかし少なくとも“迷惑そうな顔”“嫌そうな顔”はしていなかった。

(ま、マジか……)

 ひょっとしてあの2人、付き合っているのかもしれない。
 そうでなくとも遠くないうちに恋人同士になってしまいそうな雰囲気が漂っていた。

(うあぁぁぁ……)

 今朝のコナーの件といい、ジャンは男としての自信を喪失しかけていた。
 何故彼らには相手ができて、自分にはできないのか。

(俺に何が足りないってんだよ……)

 がっくりと肩を下げるジャン。
 だがまさにその時、彼に声をかけてくる人影が現れた。

「あれ、ジャンじゃないか。
 どうしたんだよ、こんなとこで」

「ん? お、おおっ!」

 ――声をかけてきた人物。
 それは、以前にクロダから紹介された<訪問者>室坂陽葵だった。






 ■夕方の手前



 場所は変わって、再び“蒼の鱗亭”。

「ええっ!!
 手伝い、できなくなっちゃったんですか!?」

「すまん!
 どうしても外せない用事が入っちまったんだ!」

 驚くイルマへ、ジャンは平謝りした。
 夕飯を手伝うという彼女との約束が、果たせなくなってしまったからだ。

「……どうしても外せない用事なんです?」

「お、おう。
 こればっかりは、ちょっとな。
 本当にすまん」

 上目遣いで悲しそうにこちらを見るイルマに心がズキズキと痛むが、それでもジャンは意思を変えなかった。
 とはいえ――

「……うぅぅ」

 ――どんどん陰っていくイルマの表情を見ると、その決心も揺らいでいくのだが。

(た、たかが夕飯の手伝いで、そこまで哀しまなくたっていいだろ……)

 チクチクと罪悪感が刺激されていく。
 ジャンはそれに耐えきれず、

「そ、そんなわけなんで、俺はもう行くぞ!
 今度は――いや、明日は絶対手伝うからさ!
 じゃあ、そういうことで!」

 話を適当に切り上げると、ジャンは宿を飛び出して行ってしまった。
 ……あとに残されたイルマは、小さな声でそっと呟く。

 「……これが最後かもしれないのに。
 ジャンのバカ」

 そんな彼女の声は、もう彼には届かない。






 ■夕方



 勢いで宿を出てしまったものの、待ち合わせの時間にはまだ大分早かった。
 本当なら宿でもう少し時間を潰すつもりだったのだが。

(イルマのあんな姿見ちまったら、宿にはいられねぇっつうの)

 彼女が明日まで引きずらなければいいのだが。

 それはそれとして、ジャンは余った時間を使って少し早い夕飯を取ることにした。
 待ち合わせ場所の近くで目に入った飲食店――“黒の焔亭”という名の店へ入る。

(ふぅん、そんなに大きくは無いけど、結構綺麗にしてる店だな。
 夕飯時からは外れた時間帯なのに人がぼちぼちいるし……有名なところだったのか?)

 そういえば、どこかで名前を聞いたような気もする。

 まあ何はともあれ適当に空いてる席へ座り、メニューを広げた。
 そこには、幾つかの料理が掲載されているのだが……
 はっきり言って、他の料理店に比べると大分数が少ない。

(あー、でもこういう料理の種類が少ない店って美味い場合が多いんだよな)

 人の多さを鑑みるに、味には期待できるかもしれない。
 ジャンは注文するメニューを見繕うと、店内を見渡して店員さんを探す。

(――――ええっ!!?)

 そこで、驚愕の光景を目にした。
 寧ろ店に入ってから今まで、どうしてコレに気付かなかったのか数分前の自分を殴りたいくらいだ。
 そこまでのドリームワールドがそこにあった。

(制服っ!
 この店の制服がっ!
 やべぇっ!!!)

 ジャンが驚いたのは、この店の店員――ウェイトレスの格好だった。
 おっぱいが上半分見えてしまう程開いた胸元に、まるで隠れていない背中。
 これだけでも生唾モノだというのに、スカートの丈も短い短い。
 彼女がただ歩いているだけで、チラチラと下着が見え隠れしてしまう短さ。

(白だ!
 間違いない、白のショーツだ!)

 声に出さず喝采を上げるジョン。

 しかもその制服を着ているウェイトレスがまた可愛いこと!
 うなじが隠れる程に伸ばした茶髪はさらさらと靡き、顔には快活な笑みを浮かべている。
 とてもではないが、こんなエロい格好をしている女の子とは思えない美少女っぷりだ。
 それにスタイルも良い。
 午前中に見かけたローラさん程ではないが、程よい大きさで全体的に均整の取れたプロポーションはジャンの目を引き付けて止まなかった。

(……イルマよりも大きそうだ。
 マリーとは比べ物にならないな)

 本人達に聞かれたらボコボコに殴られても文句言えないような比較をしてしまう。
 ついついそんなことを思い浮かべてしまう程、衝撃的な姿だったのだ。

 だが、直後にこれはまだ序の口であったことを、ジャンは思い知らされる。

(え、えぇぇええええっ!!!)

 声にならない絶叫を上げた。
 そのウェイトレスの近くに居た客が、彼女の尻を揉みだしたのだ。
 おかげで、丸くて綺麗な尻がジャンの目にも入ってきた。

 そしてウェイトレスの方は、それを拒む様子がまるで無い。

(ちょ、ちょっと待って!
 ここ、“そういう店”なのか!?)

 しかし、メニューに載っている金額はごく一般的なもの。
 そういう店にありがちな、いやらしいムードもまるでない。
 まさか外に出ると怖いお兄さんが――とも思ったが、それにしては普通に客が出入りしている。

 考えているうちに、ウェイトレスの状況が変化していた。

(――って、今度は胸っ!!?
 胸揉んじゃってるぞ、おいっ!!)

 しかも制服の上から、ではない。
 開けた胸元をさらにずり下げ、完全におっぱいを露出させた上で、それを揉んでいるのだ。

 「んんっ!……あ、あぁぁっ!……」

 女の子は、嫌がるどころが気持ち良さそうに喘ぎ声を漏らしている。

(な、なんなんだここは……!?
 俺はよく分からない異世界にでも飛ばされたのか!?
 貞操観念が逆転した世界っ!?)

 混乱のあまり、意味不明な単語が頭に浮かんできたりもしたが。
 何はともあれ、ここは料理店であり、自分は飯を食べにきた以上、注文をしなければならない。
 ウェイトレスが客の責めから解放されたところを見計らい、意を決してジャンは声をかけた。

「ちゅ、注文お願いします」

「はーい」

 拍子抜けする程あっさり、彼女はジャンへと近づいてきた。

「注文は何にするの?」

「え、えーと」

 かなりフランクに話しかけてくる。
 露出過多な制服以外は、まるで普通のウェイトレスのようだ。
 ……その制服が、余りに異質なのだが。

「何、まだ迷ってるわけ?」

「い、いや、すぐ決める。
 ちょっと待ってくれ!」

 頭がパニックになって、頼もうとした料理を本気で度忘れしてしまう。
 何せ、すぐそこにおっぱいがあるのだ。
 ちょっと身を屈めば、下着が見えちゃうのだ。
 その上、ウェイトレスは美人なのだ。
 これで動じるなという方が難しい。

(…………ちょっとだけなら、やれる、かな)

 同時に、ジャンの胸に助平心も湧き上がってきた。
 他の客が全然問題なく触っていたのだ、自分だって触っていいはず。
 彼はそう考え――メニュー表を見るふりをしながら、そっと手をウェイトレスの尻へと伸ばした。

(――や、柔らけぇ!)

 ジャンの掌に、なんとも柔らかい感触が伝わってくる。

「……んっ」

 女の子の口から小さく息が漏れた。
 ……ただ、それだけだ。
 手を振り払われることも、怒られることも、睨まれることすらない。

(い、いいのか!
 このまま触ってていいのか!)

 ジャンは手を動かし、今度は尻を揉んでみた。
 尻に食い込んだジャンの手を、尻肉が押し返してくる。
 柔らかいだけでなくハリもある媚肉だった。

「……あっ……んんっ」

 ウェイトレスの息に、甘い色が混じる。

(感じてんのか?
 俺の手で、気持ち良くなってきてんのか、この子!?)

 調子に乗って、ジャンは彼女の尻を揉み続けた。
 今まで味わったことのない感覚が彼を楽しませる。

(これか!
 これが女の身体なのか!
 すげぇっ! すげぇっ!!)

 世の男が金を払って女を抱く気持ちがよく分かった。
 これは、金を払うに値する感触だ。

「はぁぁ……あ、んん……あっ……」

 女の子はジャンをまるで妨げない。
 ただ、その責めに喘いでいた。

(……こ、こっちもいいってことだよな)

 もう片方の手を使い、ウェイトレスの胸元をさらに開けさせる。
 ジャンの目の前で彼女のおっぱいが露わになった。

(うぁあ……綺麗だ)

 ウェイトレスの胸が描く曲線に、ジャンは感動すら覚えた。
 その先端にある突起も、綺麗な桜色。
 理想的な形状を誇る彼女の乳房は、この上ない色気もまた発している。

 鑑賞もそこそこに、ジャンはそれを揉み始めた。

(柔らかいっ!
 こっちはもっと柔らかいっ!
 柔らかくて、プルプル震えて、うああ、なんだこれっ!!)

 歓喜の感情がジャンの身体を震わせる。
 プニプニと形を変える彼女のおっぱいは、視覚と触覚で彼を昂らせていった。

「は、あっ……あぅっ……ん、んんぅっ……あ、あぁっ」

 ウェイトレスもまた、目を閉じてジャンの動きを受け入れている。
 上気したその顔は、それだけで男の欲情を掻き立てる。

(つ、次は……次は、ここだ!)

 尻を揉む手を離し、それをウェイトレスの股の間へ差し入れていく。

「……あっ!」

 びくっと彼女の肢体が揺れた。
 今までとは違う反応だ。

(……濡れてる。
 びちょびちょに濡れてるぞ)

 女の子の股間を触った最初の感想はそれだった。
 彼女のアソコは既に蕩けきっていたのだ。

(愛液なんだよな、これ)

 他の客にも散々弄られていたのだから、こうなっているのも当たり前と言える。

「……ごくり」

 思わず唾を飲む。
 昂っているせいか、自分が立てたその音はやけに大きく聞こえた。
 ジャンは、股間に当てた手を動かし始める。

「あっ!……あっあっ!……んぁああっ!……あぁんっ!」

 ウェイトレスの嬌声が大きくなった。

(気持ちいいんだ!
 俺の手が、この人を気持ちよくさせてるんだ!)

 女を支配する悦びとでもいうのか。
 ジャンは女の子が喘ぐ度に、自分が高揚していくのを感じていた。
 さらに強く、強く、彼女の股間を擦っていく。

 ……女を知らない彼は、酷く乱暴にウェイトレスの性器を弄っていた。
 指を無理やり割れ目の中へ押し込んだり、膣口のあちこちに爪を立ててしまったり。
 彼女の陰核を爪で引?いたりもしてしまった。
 普通の女性であれば、快感よりも痛みを感じてしまったことだろう。

「あ、あああっ! あぅっ! あっ! あっ! ああっ! んぁあっ!」

 ただ彼にとって幸いだったのは、このウェイトレスが“乱暴にされる”ことを好む性癖を持っていたことだった。
 真っ当な感覚を持っている女にとっては激痛が走るようなジャンの無茶な責めも、この女の子にとっては極上の快楽だったのである。

「あっ! あっ! あんっ! あぅっ! あっ! あぁあっ!!」

 指で股を擦りあげる度に、ビクンっと痙攣を繰り返すウェイトレス。
 くちゅくちゅと愛液が音を鳴らし、雌の匂いがむんむんと辺りに漂いだす。

(どうだっ! どうだっ!
 気持ちいいんだろ!
 もっと気持ち良くなっちまえ!!
 ……へへ、俺もなかなかやるじゃないか!!)

 ジャンの責め方が上手いのではなく、単に彼女が淫乱なだけなのだが。
 そのことを彼は最後まで察せないでいた。

 そしてついに――

「ああっ! ああぁぁぁぁぁああああっ!!!!」

 ――ウェイトレスは大きな嬌声と共に、身体を硬直させる。
 絶頂したのだ。

「――あっ――う、あっ――あ、あぁっ――あっ――」

 ジャンの座るテーブルへと倒れ込み、女の子は身体を小刻みに震えさせた。

(い、イった?
 俺が、彼女をイかせたのか?)

 その様子を見ていると、ジャンの中に満足感とでもいうべき感情が溢れてくる。
 一人の雌を屈服させた、雄としての充足。

(……別に、コナーや三下が特別なわけじゃねぇ。
 俺だってヤればできるんだ!)

 客観的に見れば勘違いであるのだが、それを指摘する人間は誰もいない。
 ジャンはぐったりしているウェイトレスに手を伸ばす。

(――まだ、ヤれるよな)

 テーブルの上に上半身を横たえている彼女に対し、“責め”を再開した。

「う、ああっ……あぅっ!……あ、ああ……あぁぁあああっ!」

 女の子が、再び喘ぎ始める。
 周囲の目を気にもせず、ジャンはそのまま彼女を揉み、擦り、弄り続けた。

 ……結局ジャンが料理の注文をしたのは、さらに10分程彼女の肢体を味わった後であった。



 三十分ほど時間が経ち。

「ほい、勘定」

「……うん、きっかりちょうどね」

 食事を終えたジャンは、ウェイトレスに支払いをしていた。
 どうやらこの店、キャッシャーは無く各テーブルで会計を行うシステムのようだ。

「いやぁ、美味しかったよ!」

「そりゃ良かったわ。
 一応うちの店長、腕はいいからね」

 ウェイトレス云々関係なく、この店の料理は美味しかった。
 掛け値なしの称賛である。
 それに対してウェイトレスも笑顔で応じてくれる。
 さっきまであんな淫猥な顔をしていたとは思えない、元気で可愛らしい笑みだった。

(“当たり”だな、“大当たり”だ、この店!
 料理も美味いし、ウェイトレスさんは可愛いしエロいし!!)

 変な割り増し料金を取られないか心配もあったのだが、それも無し。
 つまり“アレ”は、ウェイトレスの無料サービスということか。
 ――もしくは、彼女の趣味なのかもしれない。

 ジャンは店を去る前にもう一度ウェイトレスの尻を弄った。

「……ん、あぁっ」

 彼女が身を小さく捩るのを確認してから、顔を近づけて耳元で囁く。

「また、来るからな」

「……そ、そう」

 ウェイトレスの女の子は、顔をほんのり赤くして頷いてくれた。
 その反応は、ジャンの雄を刺激するものであり。

(絶対、絶対来るぞ!
 もう毎日通ってやる!!)

 そう意気込んで、彼は店を後にするのだった。
 ……結局、ウェイトレスの名前すら聞けていないわけだけれども。



 第十八話③へ続く
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