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第十六話 キョウヤ VS ローラ
② ローラさんの反撃
しおりを挟む「――ほう?
口では何とでも言えるな」
ローラさんの台詞を聞いて、ミサキさんはニヤリと挑発的な笑みを浮かべる。
「やります!
先程キョウヤ様が仰ったように、全力で拒んで、それでも駄目なら逃げます!」
「――できるのか、君に?」
「できます!
できるようになります!」
「力づくで来られたらどうする?
誘拐、拉致、監禁。
女を囲む術は幾らでもある」
「……そ、それは」
「君の身体の味を多くの男が覚えてしまった。
もう一度それを味わおうと、なりふり構わず襲ってくるかもしれんぞ」
「……うぅ」
ローラさんの勢いが削がれた。
ミサキさんの指摘に、何も言えなくなってしまう。
――しかし。
「……ふん、そういう時は助けを呼べばいいのさ。
世間には、存外お人好しが多いものだ。
君が考えている以上に、他人は君を助けようとしてくれる。
女限定でやたらとお人好しな奴だっているしな。
それに――“勇者”もだ」
「――え」
ミサキさんから出た不意の言葉に、ローラさんが思わず呟く。
……ところで私が女性限定で親切という風評は止めて頂きたい。
別に男性の手伝いだってしているんですよ!?
そんな私の心情は横にぽいっと放っておいて、ローラさんとミサキさんの会話。
「キョウヤ様、それは――」
「当然のことだろう。
誠一と共に働く以上、君もまた私の仲間なのだから」
「――あ、ありがとうございます!」
深々と頭を下げるローラさん。
ミサキさんはそれを見て――まだ少し不機嫌そうではあるが――どこか満足げな表情を浮かべていた。
頭を上げたローラさんは、私の方をじっと見る。
「……クロダさん。
私、これから貴方へ一途に尽くしますから」
「――は、はい、分かりました」
やや的外れな返答をしてしまう私。
気の利いた台詞が出てこなかったことを許してほしい。
……真摯な瞳でそう言われてしまうと、なんともむず痒いのだ。
無論、悪い気など欠片もしないが。
「………………………………………いや、それは駄目だ」
「え?」
長い“間”の後、唐突にミサキさんがそう言った。
ローラさんもその反応は予想外だったのか、再び声が漏れた。
先程の呟きとはニュアンスが大分異なっていたが。
ミサキさんが続ける――しかし、その眼は何故だかローラさんの顔を見れていない。
「いや、別に男は誠一だけじゃないんだから、他の奴でいいだろう。
こいつよりも相性のいい相手なんていくらでもいるはずだ」
……何だろう、今までの話と比べてやや無理やり感があるような?
「…………」
「…………」
2人が沈黙し出す。
「…………キョウヤ様?」
「…………」
ローラさんが話しかけるが、ミサキさんは無反応。
対してローラさんはミサキさんの顔をジロジロと確認している。
「…………」
「…………」
再度、沈黙。
とはいえ、2人の様子は対照的であったが。
視線を反らしているミサキさんに、そんなミサキさんを念入りに観察しているローラさん。
「…………あー、そうですか。
そういうことでしたか」
何か得心がいったように、ローラさんが独りごちる。
居住まいを正してから、喋り出した。
「……キョウヤ様、これからクロダさんは大変厳しい任に就かれるわけですよね。
なら、それを慰労する役目が必要なはずです。
僭越ながら、私にそれを務めさせて頂けないかと」
他人行儀な口調でミサキさんに詰めるローラさん。
「――あ、いや、そういうのいらないから。
こいつ、基本的に労働を至上の喜びにしている社畜人間なんで。
それにもし必要になったとしてもエレナに頼んであるし」
「へえ、エレナさんに?」
「――あ、ああ」
直前までと攻守が逆転している。
というか、ローラさんの目が座っていた。
「……へぇえ、エレナさんに、ねぇ」
「――う、うん」
ミサキさんは彼女の迫力に若干押され気味。
実に珍しい光景である。
――この人もこういうことになるんだなぁ。
「――エレナさんだけでは、心もとなくは無いですか?
クロダさんはほら、精力の塊のようなお方ですから。
それにエレナさんも“キョウヤ様に身体を貸している”関係上、いつでもクロダさんの相手をできるわけでもないでしょう?」
「――う、ぐっ」
「その点、私でしたらクロダさんがどんな要求をしてきても応えられる自信があります。
今までもずっと“そうして”来ましたからね。
――クロダさんはどう思います?
私の身体では、ご満足貰えないでしょうか?
もう私の身体は飽きてしまいましたか?」
私にその話題を振るのか……
いや、答えは決まっているのだけれども。
「いえ、そんなことは。
ローラさんの身体でしたら、幾ら抱いても飽きるなんてありえません」
「――!!」
ミサキさんが私を睨んできた。
その殺気はかなり怖いが、男は本能に逆らえない生き物なのだ。
「……クロダさんもこう言っておりますし?
私がクロダさんに尽くしても何ら問題ないようですね。
安心下さい、任務に支障が出ることなど無いよう“毎日”“たっぷり”と私の身体でクロダさんを慰めますので」
毎日。
たっぷり。
なんともそそるワードである。
「……如何ですか、キョウヤ様」
「――随分と、“良い”顔ができるんじゃないか、ローラ。
さっきまでのおどおどした態度よりずっと魅力的だぞ…!」
いつからか、ミサキさんとローラさんは互いに互いの顔を見つめていた。
バチバチという音が聞こえそうな程、視線がぶつかり合っている。
笑顔こそ浮かべているものの、2人とも目が全く笑っていない。
「――いいだろう、認めてやる。
ローラ、お前を私の“仲間”としてな。
……光栄に思えよ、私の感情をここまで昂らせた女はお前で3人目だ」
「ありがとうございます。
でもキョウヤ様の仲間だなんて――私には役不足です」
「――言っておくが、役不足の使い方を間違っているからな?」
「あら、そうでしたか?
浅学なので勘違いしていたようですね」
……何だろう、背筋が寒くなってきた。
「く、くくくく――
……誠一以外の男と関係持ったら、すぐ引導渡してやる」
「うふ、ふふふふ――
決してそうならないよう努めます。
“何もできない”キョウヤ様を、最大限支援できますように」
「く、く、くくく――」
「うふ、うふふふふ――」
やばいよやばいよ。
何故か冷や汗が止まらないよ。
2人から何かドス黒いオーラが滲み出ているよ。
こ、ここは一つ、私が小粋なトークでこの緊張感を解かなければ!
「……えー、話もまとまったことですし。
どうでしょう、親睦を深めるためにこの後3Pでも――」
「するかぁっ!!!」
ミサキさん渾身の右フックが、私のコメカミを撃ち貫いた。
「――はっ!?」
私はベッドの上で目が覚めた。
ここは、ローラさんのお店の寝室のようだ。
どうやらミサキさんの一撃で昏倒していたらしい。
「あ、気が付きましたか?」
傍らにはローラさんが居た。
私を看病してくれていたようだ。
「ミサキさんはどうしました?」
「怒って帰られました」
「――そうですか」
後でまた説教されるかもしれない。
まあ何はともあれ。
「上手く話が進んでよかったです。
明日からよろしくお願いします、ローラさん」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
笑顔で私に応えてくれるローラさん。
その後、寝ている私にすっと近寄り、
「そ、それで――今日はもう遅いですし、うちに泊まっていきませんか?」
「おや、いいのですか?」
「はい、もちろんです!」
外を見ると、確かにもう暗くなってしまっている。
……私はいったい何時間気絶していたんだろうか?
深く考えると怖くなるので、私はそこで思考を止めた。
ミサキさんのことだから、後遺症とかそういうのは出ないように殴ってくれたはずだ、きっと。
「では、私は夕食の用意をして――」
そこで、店のドアをノックする音が聞こえた。
「お客さんのようですね」
「そうですね。
すいません、応対してきますので、もう少し待っていて下さい」
言って、ローラさんはお店の方へ歩いていこうとする。
「…………」
「……クロダさん?」
私が黙っているのを見て、ローラさんが不思議そうに話しかけてきた。
「……ローラさんは、これから私にしか抱かれないわけですよね?」
「え? あ、はい、それはまあ……」
「ならば、それをしっかりと周知しておく必要があるかと思うんです」
「――え?」
私の意図を未だ把握できていない彼女を、私は抱き寄せた。
店内に行くと、冒険者らしき若者が一人、ポーションの棚を眺めていた。
ローラさんが彼に声をかける。
「こ、こんばんは……んっ」
「ああ、こんばんは、ローラさん。
今日はポーションを――ってぇ!?」
私達の姿を見た若者は、驚きの声を出した。
……それはそうだろう。
私とローラさんは――
「ろ、ローラさん、どうしたんですか!?
なんで、なんでそんなことを!?」
「そ、それは……あっ!?
く、クロダさん、激しい、ですっ!
――あっ! あっあっあっあっ!」
――私とローラさんは、現在進行形で“繋がって”いるのである。
「クロダ、さ――あっあっあっ!
お客さんが、いるんです――あっあっ!
これでは、何も――あうっ! あっ! ああっ!」
何とかお客と話をしようとするも、悶えてしまって言葉にならないローラさん。
彼女は今、いつもの黒ドレスを着ているのだが。
ドレスのスカートは捲りあげられ、黒タイツと下着をずり降ろされている。
そして丸出しになった女性器に向けて、私は彼女の後ろから――後背位のような姿勢で男根を挿入しているのだ。
「あっあっあっあっあああっ!
お願い、ですっ……あぅっ! ああっ! あっ! ああんっ!
少し、ゆっくり――ああぁあっ! あっ! ああっ! ああああっ!!」
彼女の腰を掴んで、自分の腰をパンパンと彼女の尻へぶつけていく。
既に愛液で濡れたローラさんの入り口は、私の愚息をスムーズに受け入れた。
膣内はイチモツに絡みつき、私自身を締め付けてくる。
股間に伝わる極上の快楽を前に、動きを緩めるなど無理な相談である。
私はさらに腰のグラインドを速める。
「あっあぁぁああっ!
ダメっ! ああっ! あぁああっ! ダメですっ! あああっ! あぁあああんっ!!」
ローラさんの嬌声が大きくなる。
それに比例して、彼女の下の口もまた私を激しく責め立ててくる。
「――ちょ、ちょっと! あんたっ!?
ローラさんになんてことしてるんだっ!!」
ここまで呆然と私達の行為を見ていた若者が、私に詰め寄ってくる。
その表情には、怒りが見て取れた。
「……見て分かりませんか?
セックスをしているんですよ」
「いやそりゃ見て分かるよ!?
なんでこんなこと彼女にやってんのかって聞いてんだ!!」
「どうしてと言われれば、私がしたかったから、と言う他ありませんが……」
「し、“したかったから”って……ふざけんなよ、お前!?
無理やり女性を――その、犯す、とか――犯罪だぞっ!!
くそっ! 今衛兵を――」
……そういう単語をどもってしまう辺り、純情な若者なのだろう。
「まあまあ、待って下さい」
憤懣やる方ないといった様子の青年に対し、私は手で待ったをかける。
その後、彼が良く見える位置にローラさんの顔を移動させた。
「彼女の顔を見て下さいよ。
どうです、淫らな表情をしているでしょう。
――これが嫌がっている顔ですか?」
「んああっ! ああっ! あんっ!
あぁあぁああっ! ああっ! あぁあああんっ!」
私はローラさんの子宮口を亀頭でつつき、彼女のヨガリっぷりを青年に見せつける。
「……ろ、ローラさん……そんな……」
若者はローラさんの姿にショックを受け、狼狽えている。
そんな彼をよそに、私は彼女の胸元を開ける。
ローラさんのプルンっとした大きなおっぱいが露出した。
そんな巨乳を両手で鷲掴みにしてやる。
「あ、あぁああっ!
む、胸、まで――あぁぁああっ!
ああ、あぁぁああっ! んぅううううっ!!」
彼女のおっぱいを掌でこねくり回し、先端の突起を指でコリコリと弄る。
――ローラさんの肢体が持つ柔らかさを、手全体で感じとれた。
上下同時の責めに、彼女は身をくねらせて快楽に悶える。
「どうです、ローラさん。
気持ちいいですか?」
「はぁぁあああっ! あ、あああぁあああっ!!
お、おっぱいも、おまんこも……ああっあぁああああっ!
凄く、気持ちいいですっ――あああぁぁああああっ!!」
恍惚とした表情で、私の質問に頷くローラさん。
その一部始終を見ていた若者は、信じられないといった面持ちで言葉を零した。
「……ろ、ローラさん、どうして……?
どうして、そんな男と……?」
我が意を射た質問に、私はニヤリと笑いながら口を開く。
「――どうして、ですか。
ローラさん、彼に教えてあげて下さいよ」
つつっとローラさんの首筋を舐めながら、彼女に返答を促す。
「ああっ!? んんっ! あぅぅ――あっああっ!
私、が――あっああっ! く、クロダさん、のっ――ああんっあっあぁぁああっ!」
溢れ出る喘ぎに妨げられ、彼女は上手く言葉を紡げない。
私は彼女の膣をガンガン突き上げながら、再度促した。
「ちゃんと言ってあげないと、彼が理解できませんよ。
ローラさん、しっかりして下さい」
「ああっ! あっ! あっ! あっ! あっ!
んんぅううううっ! イクっ!
あっあっあぅっ! イキますっ!
クロダさん、私――あっあっあっあっ!――イっちゃいますっ!」
ビクビクと、ローラさんの身体が細かく震えだす。
彼女の言う通り、絶頂が近いらしい。
「駄目ですよ、ローラさん。
イク前に、答えて下さい。
応えるまで、イってはいけませんよ」
「あっ! あっ!
――そ、そんな――あっあっあっあっ!」
私の言葉に従い、ローラさんは歯を食いしばって絶頂を我慢しだす。
そんな彼女の態度に私はつい興奮してしまい、ピストンの速度を上げてしまう。
「んんんぅううううっ!!
んんっ! んっんっんっんんんっ!!」
それでもローラさんはイカなかった。
大した精神力である。
そして快楽の波が収まる一瞬の隙をついて、彼女は答えを吐き出した。
「んっうっううっ!
――わ、私は、クロダさんの、モノだから、ですっ!
んんっ! んっ! んんっ! んっ!!
クロダさんの、おちんちんなら――んんぅっ!――いつでも、挿れて欲しいんですっ!」
そう一気に言い切るローラさん。
彼女の言葉を聞き、青年は呆然と呟く。
「……ろ、ローラさん……
そんな……この男と、そんな関係だったなんて……」
焦点が合っていない目で私達を見る若者。
十分に私とローラさんの関係を理解してくれたようだ。
――つまるところ、私の狙いはこれなのである。
ローラさんが私のモノであることを周囲に知らせることで、彼女の身体を狙う輩の手を少しでも鈍らせようという作戦だ。
私はこの結果に満足の笑みを浮かべると、ローラさんの耳元でそっと囁いた。
「よく言えましたね。
……もう、イっていいですよ」
そう言うと同時に、下半身の動きにスパートをかけた。
彼女のおっぱいを揉む手にも力を入れ、乳首を抓りあげる。
「あ、あぁぁああああああっ!!
凄いっ! 凄いですっ!
あっ! あっ! あっ! あっ!
イキますっ! イクっ! イクっ!
クロダさんっ! クロダさんっ! クロダさんっ!!
あぁぁぁぁあああああああああっ!!!」
肢体を弓なりにしならせ、ガクガクと震えながらローラさんは絶頂を迎えた。
彼女がイクと、膣内もビクビクと痙攣をおこしたように私の愚息を絞っていく。
「――ぐっ!
私も、イキますよっ!」
たまらず、私もまた射精した。
彼女の最奥に、自分の子種を注いでいく。
「――あっ!――あっ!――あっ!
クロダさんの精子がっ――私の、中に――!」
子宮内を精液が満たしていく快感に、ローラさんは再度身を震わせた。
彼女の膣は私のイチモツを締めつけ続け、最後の一滴まで精液を吐き出させる。
「――あっ!――あっ!――あっ!
……ああ、ああぁぁぁ……」
ひとしきり私の精液を堪能したローラさんの身体から力が抜けていく。
私は彼女が倒れないよう、肢体を支える。
ふと青年の方を見やると、彼は顔を青ざめさせて私とローラさんを見ていた。
私はそんな彼に話しかける。
「……ご理解頂けたでしょうか?
申し訳ありませんが、彼女はもう私だけのモノになったのです」
「――あ、あ、うぅ……」
私の台詞に、低く呻く青年。
私とローラさんの顔を交互に眺めてから、
「――うう、うぁああああああっ!!」
そんな叫び声を上げて、店から飛び出て行った。
私は彼の姿が消えるまで、その後ろ姿を見ていた。
「…………あ、あの、クロダさん?」
意識が回復し出したのか、ローラさんが声をかけてくる。
……うん、彼女が何を言いたいのか、私は大よそ理解していた。
「……今の、普通のお客さんでした、よね?」
「――どうやらそうだったようです」
てっきりローラさんの“噂”を聞いてやってきた男なのかと思ったのだが。
あの様子を見る限りにおいて、彼はただこのお店で買い物をしたかっただけの一般人だったようだ。
「……彼には酷いことをしてしまいましたね」
「本当にそう思ってます?
途中で気付いてましたよね?
気付いていて、それでも止めませんでしたよね?」
「まあ、最初が最初でしたからねぇ。
途中で止めたとしても、心象は変わらなかったのでないかと」
誤魔化し笑いを浮かべて、私はローラさんに答えた。
実際問題、彼女の身体を味わっている最中に行為を中止するなど、私には無理な話だ。
「ど、どうしましょう。
もうあの人、お店に二度来てもらえないかも――」
「……そうですね。
今度会うことがあったら、謝罪しておきます」
「それでどうにかなるんでしょうか?」
「どうにもならないかもしれませんね。
でも――」
私はローラさんの肢体を弄り始める。
「んぅっ!? あっああっ!
――く、クロダさん!?」
彼女は敏感にまた喘ぎだした。
「いけませんかね?
こんなことをしては――?」
「あっあっあっ……ず、ずるいです、そんなこと聞くなんて。
んん、んっあっあぅ……あっあっああっ……
わ、私がクロダさんの言うことを拒むわけないじゃないですか」
嬌声を口から零しながら、ローラさんは私の言葉を受け入れた。
「では、これからもこういうことをしても――?」
「ん、んっんっんっ……は、はい。
で、でも、ほどほどにして下さいね……?」
「――分かりました。
ありがとうございます」
私は舌で首筋を舐めまわす。
ローラさんの汗の味が口内に広がり、彼女の匂いが鼻孔を満たす。
「んんっ……あっあっ……あぅうっ……」
ローラさんの方も、私の責めにまた昂ってきたようだ。
いざこのまま第2ラウンドを――というところで、再び店のドアがノックされた。
「……む、またお客のようですね。
それでは――」
私は再度彼女と繋がった姿を客に見せつけようとする――が。
「ま、ままま、待って下さい!
流石に二度目は駄目です!
まず相手を確認してからでないと!」
「えー?」
「不満そうな声を出しても流されませんからね!?
お店のことなんですから、許して下さい!」
「……仕方ありませんね」
仕事の話を出されると私も辛い。
確かに仕事を阻害するのはまずかろう。
……まあ、相手次第ではまたヤれるということなのだから、今この瞬間だけは我慢するべきか。
「そ、それでは――んっ――行ってきます」
まだ彼女の中に挿入中であった私の男根を抜き取ると、ローラさんは手早く服装を整えだす。
そして服の着崩れを無くすと、店の入り口へと小走りで向かって行った。
「はい、何の御用でしょうか?」
営業スマイルで訪れた客に挨拶をする。
――その、次の瞬間。
「きゃぁあああああああっ!!?」
彼女の悲鳴が木霊した。
「ローラさん!?」
私は瞬時に頭を切り替える。
なんだ、いったい何が起こった!?
いきなり彼女のを襲うような暴漢が現れたのか。
それともまさか――“勇者”がもう姿を見せたか!?
私は<射出>を使った高速移動でローラさんの下へと向かう。
するとそこには。
「…………へ?」
思わず変な声を出してしまった。
店の玄関先には、何人もの男達が土下座していたのだ。
「……ど、どうしたんですか、皆さん?」
私と同じくその光景に驚愕していたローラさんが、どうにか声を絞り出す。
よくよく見ると、彼らは昼間――そして昨日も――彼女を輪姦していた男連中だった。
何故すぐ分からなかったかと言えば、男達は皆、揃いも揃って人相がよく分からなくなる程パンパンに顔を腫らしていたからだ。
「……あ、あの、ローラさん?」
「な、なんでしょうか?」
土下座する男の内一人が、声を出す。
彼は手に持った袋をそっとローラさんに差し出すと、
「ど、どうか……これを、受け取って頂けませんでしょうか」
「は、はい……?」
相手の意図が分からず、ローラさんは恐る恐るその袋を受け取る。
「こ、これって――!?」
その場で袋の中を確認した彼女は、絶句した。
袋には、大量の金貨が詰められていたからだ。
「ど、どうしたんですか、こんな金貨!?
受け取ってって、無理ですよ、こんなもの!!」
ローラさんは取り乱して袋を男へ返そうとする。
それはそうだろう――横からざっと見ただけだが、袋の中には数百枚の金貨が入っていた。
この世界の中流階級に属する人間が、軽く一生暮らしていける金額だ。
こんな大金をいきなりほいと渡されて、素直に受け取れる人間などそうそういない。
……だが、男の方も譲らなかった。
「お、お願いします、受け取って下さい!
ローラさんに手を出してしまった――無理やり貴女を犯してしまった詫びの金なんです!
どうか、どうかお納めください!!」
「そ、そうは言われましても!?」
示談金にしても、額がでかすぎる。
何か裏があるのではないかと躊躇してしまうのは仕方が無いだろう。
「本当に、本当にただの詫びなんです!
受け取って下さい!
それを受け取って貰えなかったら、俺達は――俺達は――!!」
「ど、どうなるんですか?」
強張った口調で問うローラさん。
「俺達は……殺さ――」
「ば、バカ!
それは言うなって言われただろう!!」
「ああっ! そ、そうだった!!」
男の返事を、別の男のが途中で遮る。
「――き、聞かなかったことにして下さい、お願いします」
「え、えーと、はい」
ローラさんは額から冷や汗を流しながら頷く。
……聞かなかったことにも何も、そこまで言われたら彼らがどういう状況にあるのか、何となく察しはついてしまうのだが。
「と、とにかく!
お願いします、何も言わずにその金を受け取って下さい!
別に変な金じゃありません!
ローラさんのお好きなようにお使いいただいて結構です!!」
必死の形相で拝み込む男。
そんな彼に他の男達も追従して、
「お願いします!」
「お願いします!」
「お願いします!」
額を摩り下ろさんばかりに地面へ擦りつけ、全力の土下座が展開された。
……周囲に彼らの懇願の声が響く。
そろそろ、怪しく思った近所の人が顔を覗かせそうである。
ローラさんもそれを危惧したのか、
「わ、分かりました!
受け取ります、受け取りますから!!
だから、そういうのは止めて下さい!!」
金貨が入った袋を受け取ることに決めたようだ。
彼女が袋を手に取ると、男達は露骨に顔を綻ばせる。
「ありがとうございます!
これで、これで俺達は――うう、良かったぁ、良かったぁ……」
涙をとうとうと流す男。
一人だけではなく、土下座している全員が同じように泣いていた。
本気で彼らにいったい何があったというのか。
――実のところ、心当たりはあるのだが。
そのままの姿勢で、さらに深々と頭を下げた。
……まあ、地面という限界がある以上、そう大きく姿勢は変わらなかったのだが。
「ローラさん、俺達は、もう二度と貴方に手出しをいたしません。
この度は、本当に申し訳ありませんでした」
「「「申し訳ありませんでした!」」」
一人の男に続いて、全員が謝罪の言葉を口にする。
「は、はぁ……」
男の言葉に、ローラさんは呆けた返事をする。
そんな彼女の言葉を着てから、男達は次々に立ち上がった。
「……で、では、俺達はこれで失礼します」
「……は、はい」
状況についていけないローラさんは、ただ無難な返事を返すのみ。
気持ちはよく分かる。
男達は私とローラさんに背を向けて帰っていった。
私は<感覚強化>を使い、道すがら零れた彼らの言葉を何となく拾ってみた。
「うぅ、虎の子のへそくりが――」
「お前はいいだろ、俺なんか店の経営資金に手を出したんだぞ」
「俺はかかぁに知られちまった。
明日から地獄の始まりだな……」
「言うなよ、命あっての物種だろうが!」
「……ローラさんの友人に、あんな怖い“女性”がいたなんてなぁ」
「悪いことはできないもんですなぁ……」
…………。
やはり、そういうことか。
「ど、どうしたんでしょう……?
本当にこのお金、大丈夫なんですかね?」
ローラさんはまだ今のやり取りが信じられないらしい。
私は彼女を安心させるため、声をかける。
「――大丈夫でしょう。
ローラさんが危惧しているような、危険なお金ではないですよ。
……あの人が、そういう配慮をしないとは思えませんし」
「……クロダさん、心当たりがあるんですか?」
彼女が私へと不思議そうな顔を向ける。
さて、どうしようか。
きちんと答えていいものかどうか?
……まあ、いいか。
別に口止めされているわけでもなし。
「なんだかんだで面倒見がいいんですよ、ミサキさんは」
第十六話 完
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