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第十五話 ある社畜冒険者のドキドキ・デート
③! 服屋の試着室にて
しおりを挟むそんなこんなで、ようやく本来の目的地である服屋である。
「んー、大分遠回りしちゃったねー」
「……そうですね」
おかげで色々と危険な現場を見てしまった。
――あの二人、今後も仲良くやっていけるといいのだけれど。
それはそれとして、私はお店を見やる。
「――結構大きなお店だったんですね」
「あれ、来た事ないの?」
「はい、先程申しました通りお洒落というものには本当に疎くて」
服は、もっと小さい、雑貨屋さんのようなところで今まで購入していた。
こんな大きなお店で買うのは初めてだ。
物珍しさも手伝い、なんとなく<屈折視>や<感覚強化>を使って店の周囲をぐるっと見渡してみる。
――広い、本当に広い。
まあ、流石にウィンガストで最大手であるセレンソン紹介程の大きさは無いが、扱っている商品が衣類だけであることを考えると、その規模は凄いの一言。
<来訪者>が多い分、この街では衣服への需要が多いのだろうか?
そんなことを私が考えていると――
「あっあっあっあっあっ!!
いやっ! いやですっ!
あぅっ! んんっ! あうっ! あうっ!!
あぁぁあああああっ!!」
服屋近くの路地裏から、そんな声が聞こえてきた。
改めて、そちらの方を覗いてみる。
「なに嫌がってる“フリ”してんだっ!
『あんなもん』まんこにぶっ挿しながら外歩いといてよぉっ!!
このド変態女がっ!!」
「んぁああああっ!!
違う、違うんですっ! アレは私の意思じゃっ……あぁぁあああああっ!!!」
中年の男に押し倒されている、ローラさんの姿がそこにあった。
……どうやらローラさん、前のお店で“挿れられた”棒を、あの男の前で“落として”しまったらしい。
ローラさんのような美女の股からいきなり棒が落ちてきたとあっては、男が欲情してしまったのも無理はない。
「阿保かっ!
真っ当な奴ならあんなことやるわけ無いだろうがっ!!
だいたいお前、さっきからずっと自分で腰振ってんぞ!?」
「んぅうううっ!!
あっあっあっあっあっ! 言わ、ないで……あっぁぁあぁああっ!
んぅうっんっんっんんっ! んぁぁあああああっ!!」
中年の男根を膣に挿入され、悶えるローラさん。
拒む口調に反して、その表情はうっとりとしており、身体も男を受け入れている。
その証拠に彼女の股間から愛液がぴちゃぴちゃと垂れているし、男の動きに合わせて自らも動いているのだ。
「おらおらっ! 一発目イクぞっ!!」
「いやっ! あっ! あぁぁああああああっ!!」
男がローラさんに腰を思い切り押し込む。
射精したのであろう。
「へへ、いいまんこだぜ、変態女にはもったいない名器だ。
まだまだ使ってやるからな! ほらっ、腰上げろお前っ!!」
「あっ!? だ、ダメです、こんなすぐ、続きなんてっ……
私、今イって――あぁぁあああああっ!!!」
抵抗しようとする彼女を軽く組み伏せ、男はまた腰を振り出す。
イチモツからの刺激で、ローラさんはすぐに嬌声を上げ始めるのだった。
「……ちょっと! クロダ君っ!?」
そんな光景に見入っていた私を、エレナさんの声が呼び戻す。
おっといけない、今は彼女とのデートの最中。
他の女性の痴態に心奪われてしまうとは――反省反省。
「んー、急にぼうっとしだしたけど、どうしたの?」
「いえいえ、このお店の大きさに圧倒されただけですよ。
さ、早速中へ入りましょう」
私はエレナさんの手を引いて、店の中へと入っていった。
私達が店に入った数十分が経過。
今、私の目の前では――
「ねぇねぇ、クロダ君!
この服どう!? どうかなっ!?」
――エレナさんによる、ファッションショーが繰り広げられていた。
『試着は何度でもOK』というお店のルールを知ったエレナさんが、片っ端から服を着ては私にその姿を見せてくるのだ。
ちなみに今は、ロングスカートに長袖のニットを合わせた服装。
いつものコケティッシュな色気に満ちたミニスカート姿と異なり、清楚で大人らしい印象を与える装いだ。
「いいですね、ぐっと大人っぽく見えますよ。
アダルティな魅力満載と言いますか……
……こちらにします?」
「んー。
まだまだ候補はあるし、もう少し考えようかな。
ちょっと待っててね」
言って、再び試着室に籠るエレナさん。
……ちらっと中が見えたが、数十着の服が積まれていた。
いくら店が許可しているとはいえ、これはちょっとやりすぎじゃないのだろうか?
「……さて」
額に冷や汗をかきつつ、私は店の外へと視線を向ける。
私が今立つ場所から<屈折視>を使うことで、ちょうどローラさんの様子が見れるのだ。
まあ、そういう所に私が陣取っているとも言える。
彼女は今――
「んむうっ!! んんんっ! んっんっんっんんぅうっ!!
んんんんんーーーー!!!!」
――口に、膣に、肛門に、男の棒を突っ込まれ、凌辱されていた。
最初に彼女を犯していた男が、途中から別の男を呼び出したのだ。
呼ばれた男も喜び勇んでプレイに参加し――さらに、別の男を呼び出した。
そんな風に人が増え続け、彼女の周りには10人近い男が群がっていた。
「んんっ!! んぐぅっ! んぅうううっ!!
んんぁあっ! んむっんむぅううっ! あぁあああああっ!!」
ローラさんは3つの穴だけでなく、手も使って男の相手をしていた。
ドレスも下着も破り捨てられ、彼女の豊満で美しい肢体が男たちによって揉みくちゃにされている。
苦しそうな体勢だが――彼女の顔には喜悦の表情が浮かんでいた。
「しかし、あのうわさが本当だったとはねぇ。
あのローラさんが、こんな……」
「まったくだな。
見ろよ、この顔……こんなことされても喜んでいるぞ」
「近所のアイドルだったんだがねぇ……ここまでド淫乱な雌豚だったとは思わなかったよ」
「……ん、おいっ!
手を休めるなっ!
後がつっかえてるんだぞ、きっちり扱けっ!!」
男達は勝手な言葉をローラさんに投げつける。
しかし彼女はそれに反論するでもなく、ただ肉棒を全身で味わい尽くしていた。
「ん、ん、んんんっ! あぅっ! あっあっあっあっあっ!
んぅううううっ! お、おおっおぉぉおおおおっ!!」
恍惚としたローラさんの顔は、彼女がこの行為を楽しんでしまっていることを周囲にアピールしている。
「お、お、おっ……と。
へ、いい具合だな、この女。
もうイっちまったぜ」
「おいおい、射精したんなら交代しろよ。
こっちはずっと待ってるんだぞ」
「わりぃわりぃ、すぐ代わるわ」
ローラさんへ顔射した男が、別の男と位置を交代する。
新たな男がイチモツを彼女の顔へ擦りつけると、ローラさんは自らそれに食いついていった。
「んむぅっ! んんっんっんんぁあああっ!
あっあっあぅっあっああっ! んぐぅっ!! んぅううううっ!!」
「……自分からちんこにむしゃぶりつくとはなぁ。
娼婦でもここまでの奴見たことねぇや」
「だが身体はそんじょそこらの商売女じゃ太刀打ちできないぜ。
でっけぇおっぱいにむちむちの尻――高級娼婦にだってそうそういねぇ」
ローラさんの尻を、胸を揉みながら、ある男がそう言った。
「違いないっ!
このレベルの女を買おうとしたら、あっという間に破産しちまうわぁ!」
「そんな女とこれからは無料でヤれるってんだからな!
長生きはするもんだぁっ!!」
男達は笑い合う。
「んぁあああっ!! あぁぁあああぁああああああっ!!!!」
そんな会話が耳に入っているのかいないのか。
ローラさんは身体中を男達に弄り尽くされながら、絶叫を上げる。
――路地裏に、彼女の声が響き渡った。
と、そんなところへ。
「じゃじゃーんっ!
ね、クロダ君、こんなのはどう!?」
エレナさんの声が私の耳に入る。
慌てて彼女の方を見ると、
「――おおっ!?」
思わず声を出してしまう。
「んふふふ、どうだね、クロダ君。
こういうの、エッチで好きなんじゃなーい?」
くるりと回転して、全身を私に見せつけるエレナさん。
彼女が来ているのは、白いレオタードだった。
ただのレオタードではない、エレナさんの身体にぴったりとフィットした生地は、彼女の肢体をくっきりと映し出す。
しかも女性のおっぱいを強調するかのような模様が胸の部分に描かれている。
下の方も結構なハイレグで、エレナさんのお尻は半分くらいはみ出していた。
……なんでこんなもの置いてあるんだろう、この店。
“そういう用途の服”にしか見えないのだが。
「んんー、どうしたの?
ボク、キミの感想を聞きたいなー?」
いたずらっぽい笑みを浮かべて、エレナさんが私に問いかける。
私はそれに答える代わりに、試着室へと足を踏み入れた。
「あ、あれ、クロダ君?」
私の行動に戸惑うエレナさんをしり目に、私は後ろ手で試着室のドアを閉めた。
片手でエレナさんの身体を正面から抱きしめ、もう片方で彼女の胸やお尻を撫でまわす。
「ん、ん、あっ……し、したくなっちゃったの、キミ?
ボクはいいけど――これ、お店の商品だよ?」
「購入して差し上げますよ」
短く答えると、今度は両手でエレナさんの肢体を揉みしだいていく。
掌に、プルンとしたハリの良い肉の感触が伝わってくる。
ローラさんの艶姿を延々と見せられてからの、犯してくださいと言わんばかりのエレナさんの姿。
性欲を抑えられるわけが無かった。
「あぅっ……あ、あ、あ、あ……クロダ君、まだ、スキル使ってないから……あんっ……
こ、声、聞こえちゃうっ……ああぁぁぁ……」
「別にいいじゃないですか。
エレナさんの艶声を周りの客に聞かせてあげましょう」
「んんっ! ん、ん、んぅ……そ、そんな……あぅっ!」
今更スキルの発動など待っていられない。
聞きたい人には聞かせてあげればいいのだ。
私はレオタードの上からエレナさんの乳首を抓んだ。
「あああっ! つ、強すぎっ……そこ、敏感だから、もっと……あぅううっ!!」
「――もっと?
もっと強くして欲しいんですね」
「ち、ちがっ……あっ! うっ! んんんっ!!」
彼女の要望に応えて乳首を抓む指に力を入れてやると、エレナさんは大きな嬌声を漏らした。
私の責めに感じてくれているようだ。
彼女の首筋を舌で舐めながら、空いている手をエレナさんの股間に移し、彼女のクリトリスを爪で擦ってやる。
「あっ! あっ! ああっ!!
な、なんでいきなりっ……こんな激しくっ……んぁああああっ!!」
これ以上なく私の愚息がイキリ立っているからである。
乳首と陰核を弄り続け、私はエレナさんの耳へと舌を這わせた。
「んっ! んっ! あっ! ああっ!!
も、ダメ、イクっ……あぁぁぁあああああっ!!!」
ガクガクと身体を揺らし、エレナさんは絶頂した。
倒れないように彼女を抱きながら、私は勃起した男根をズボンから顔を覗かせる。
ソレを、レオタードの生地越しに彼女の膣口へと擦り付ける。
「……エレナさん。
挿れますからね」
「――え」
一度絶頂を迎えて少し惚けていたエレナさんが、私の言葉で覚醒する。
「だ、ダメ、ダメだよっ!
言ったでしょ、もっとちゃんとした場所で――」
「――エレナさんが悪いんですよ。
そんな格好したら、犯されてしまうのは目に見えていたでしょう?」
「ん、だ、だけど、だけど――!」
なおも言いすがる彼女を無視して、私はレオタードをずらしてエレナさんの局部を露わにする。
既に濡れそぼった女性器へ、私は自分のイチモツをゆっくりと沈めていった。
――少し進んだところで、私の股間がある『行き止まり』を感じた。
「あっ! あっ! あっ! あっ!
破れちゃうっ! ボクの処女膜、破れちゃうよっ!!」
「破くんですよ!
これからエレナさんは、処女を失うんですっ!」
「こんなところで――やだっ! やだっ!!
ボク、キミにきちんと『初めて』をあげたいのにっ!
あっ! あっ! あっ!……あーーーーーーっ!!!!」
両手で彼女の肢体を固定し、腰を思い切り突き上げて。
――私のイチモツは、『行き止まり』を突破し、彼女の最奥へと到達した。
「――い、つぅ……ん、んんっ……
あ、ああ、ボクの処女――無くなっちゃったぁ……」
瞳に涙の粒をためて、エレナさんがそう零す。
その表情に罪悪感を覚えないでもなかったが――私の欲求を止めるには至らなかった。
私は血の垂れるエレナさんの膣に向かって、ピストン運動を始める。
「うあっ! あっあっああっあああっ!!
く、クロダ君、がっつきすぎだってばっ!
んぁああっあっああっあっああっ!」
……思っていたより、エレナさんは感じてくれている。
痛がったのも最初だけのようだし。
普通の『処女』と違い、エレナさんは既に膣内を開発されていたからかもしれない。
彼女が痛がってセックスが続行できなくなったらどうしようか不安だったので、私は少しほっとした。
「あっあっあっあっあっ!
うっあっあっ! あぅっおっおっおっおぉおっ!!」
安心したところで、彼女の膣を叩く動きを早める。
エレナさんの中もまた、なんだかんだと言いながらも私のイチモツを締め付けてくれた。
「あぅっ! おぅっ! おっおっおっ!
んんぅうっ! あっあっあっあっあっ!!」
私の動きによってエレナさんはヨガリ続ける。
行為の前から既に興奮していた私もまた、あっという間に絶頂へと導かれていく。
「……出しますよ、エレナさん。
貴女の中に、私の精子をっ!」
「うぁっあっあっああっあっ!
うん、出していいよっ! ボクのまんこに、クロダ君のあかちゃんの種、全部出しちゃってぇっ!
んっんっんっんっんっんっ!!」
私の確認に、悶えつつ首を縦に振るエレナさん。
それを見届けた後、私は腰に力を籠め、全力で男根を彼女の奥底へ叩きつけていく。
「あっ! あっ! ああっ! うぁああっ!」
「……ぐっ! 出るっ!!」
膣の最奥、子宮へと亀頭が届いた瞬間、私は精を放った。
「ああっ! 出てるっ! クロダ君の精液、ボクの子宮にびゅるびゅる出てるっ!
あっ! あっ! あっ! あっ! あぁぁぁあああああああっ!!!」
エレナさんも、私の射精を感じながら絶頂を迎えた。
イったことで力が抜けてしまったのか、彼女はその場で尻もちをついてしまう。
「……はぁっ…はぁっ……もう、前の方は後でって言ったのに」
荒く息をつきながら、恨みがましい目で私を見つめるエレナさん。
一度射精したことで少し冷静さを取り戻した私は、彼女に頭を下げた。
「……すみません、我慢できなかったんです」
「まあ、いいけどさ。
んー、クロダ君相手にあんな挑発しちゃったボクも悪かったかもしれないし。
――形はどうあれ、キミにボクの『初めて』、あげられたし、ね」
にっこりと、幸せそうにほほ笑むエレナさん。
私に処女を捧げられたことが、彼女にとって本当に嬉しかったようだ。
……男冥利に尽きる。
「――試着室、結構散らかしちゃいましたね。
とりあえず、片付けますか」
行為の最中に試着室のあちらこちらに服が飛び、私の精液とエレナさんの愛液による染みがところどころにできている。
出る前に、まずこれを何とかせねばと思ったのだが。
「それはボクがやるからいいよ。
クロダ君は――外を確認してきて」
部屋の扉を指すエレナさん。
今回、<遮音>を使っていないので、セックス中のアレコレは全て漏れている。
……試着室の外が、いったいどうなっているのか――想像したくない。
「……分かりました」
とはいえ、外に出ないわけにもいかない。
幾ばくかの後悔と共に、私は試着室を出るのであった。
結果だけを伝えると――
「すみません。
申し訳ありません。
二度といたしません。
何卒、ご容赦を!」
――店の人から、滅茶苦茶に怒られた。
とりあえず、二度としない旨の念書を書き、エレナさんが試着室に持ち込んだ衣服は全て買い取ることで放免となった。
「この年齢になって、衆目の前で土下座する羽目になるとは思いませんでした」
「……自業自得だよね?」
「はい、その通りです……」
エレナさんにつっこまれ、がっくり肩を落とす。
現在、購入した衣類を店員さんに包装して貰っているところだ。
私とエレナさんははそのままでいいと遠慮したのだが、店員さん曰く、過程が過程とはいえ購入品を粗末な形で渡せば店の信用に関わるとのこと。
なかなかの数だったので、時間がかかってしまっている。
時間を潰すため、私はまた店の外を見やった。
例の路地裏では――
「……あーーっ……あーーっ……あーーっ……あーーっ……」
――ローラさんが、白濁液に塗れて虚ろな目をしながら、うわ言のように意味のない声を漏らしている。
そんな、倒れた彼女を見下ろす男達。
「いやー、良かった良かった。
また頼むよ、ローラさん!」
「なんだか若返った気がしてきましたなぁ!」
「じゃ、今日はこの辺りで解散しますか」
満足げな笑みを浮かべて談笑している。
向こうは向こうで終わったらしく、ぼちぼち解散の流れなようだ。
しかし、一人の男がそれに待ったをかける。
「……なぁ、一つ提案があるんだが」
「ん、どしたい?」
「この女、囲っちまわねぇか?」
その言葉に、男達がざわつく。
「か、囲むってお前!」
「いや、人の寄り付かない、いい小屋を持ってるんだ。
そこでこいつを飼わないかっつー話さ」
「おいおい、そんなことしたら問題に――」
「――いや、そうでも無いかもしれませんぞ。
ある日突然行方不明になるなんて、そこまで珍しい話でもありません。
ちょっとローラさんに一筆『探さないで下さい』とでも書いてもらえば――」
「儂ら専用の公衆便女が出来上がるってわけか」
彼らの顔が、醜悪に歪んでいく。
「悪くねぇな。
ローラさんの店をヤリ部屋にしちまおうと思ってたが――考えてみりゃ、あそこは事情を知らねぇ客も来る」
「雌犬小屋に閉じ込めちまえば、何時でもヤリタイ放題にできる。
ま、最低限世話はしなくちゃなんねぇが」
「牛や馬の世話と似たようなもんだろ。
適当に餌やってりゃなんとかなるさ」
男達の中で、話が纏まろうとしている。
……むう、流石にそれは少々困るが、どうするべきか。
思案していると、別の男が手を上げた。
「ちょっと待ってくれ。
そういやコイツ、セドリックさんと懇意にしてなかったか。
あの人に睨まれたら、この街で商売やってけねぇぞ」
「うっ!
……それはちっと、怖いな」
セドリックさんの名前がでて、幾人かが怯んだ。
この調子で、話が流れてくれる、か?
――しかし、私の期待は淡くも消え去る。
「はっ! セドリックがなんぼのもんじゃっ!」
「とうの昔に引退したロートルに、何ができるってんだ!
だいたい、文句つけてきたらあいつも引きずり込んじまえばいいのさ!」
「あの男も大層な女好きと聞きますからね。
ローラさんの肉体を味わえるというなら、悪いようにはしないでしょうよ」
セドリックさんも、防波堤にはならなかった模様。
これは、止めに行かなくちゃまずいか。
……ローラさんのお店が使えなくなるのは困るし、それに――
「あ、待った!
クロダさんだ!」
唐突に、男から私の名前が出た。
「――んんっ!?」
「ん、どしたの?
急に大声出して?」
「ああ、いえ、支払いのお金が足りるかなと計算していただけです。
十分買えそうなので、ご心配なく」
「そう?」
不思議がるエレナさんをどうにか誤魔化し、私は男たちの雑談に耳を傾ける。
彼らの様子を見るに、別に私の存在に気付いたとかそういうことでは無さそうだが……?
「あー、クロダさんか。
確かにあの人、ローラさんを気に入ってたよなぁ」
「そうか、クロダか……」
「クロダさんか……」
次々と考え込む男達。
……貴方達にとって、私って何なんですか?
「すまない、この話、無かったことにはできないだろうか。
うちの倅、今冒険者やってんだが――ちょっと前にクロダさんに命を助けられてな」
「俺のとこのもだ。
他の奴ならともかく、クロダを裏切りたくはねぇ」
――言われてみれば。
今発言した二人の男、以前<次元迷宮>で助けた若い冒険者に面影が似ている。
「以前、店の経営に赤が出て潰れそうになったことがあるんじゃが……
クロダ君に、物資を調達して貰ってな」
「貴方もですか!
私もなんです。
こっちは、少し融資して頂いた形ですが」
――そういえばあの人達。
困っていたのでアンナさんに話を通して色々融通してもらったことがあった気がする。
「人手が足りねぇところに、手伝いを申し出てくれたことがあったな。
最初はてんで役に立たなかったが――」
「――すぐに手慣れて十馬力で動くようになった、そうだろ?」
「おお、なんだ、お前のとこにも顔出してたのか!
あいつはいい職人になれるぜ」
「まったくだ」
――そんなこともあったような。
「うちは家族がクロダさんのこと気に入っててなー。
あの人が来ると、妻の機嫌が凄くよくなるんだ」
「あー、あるな、それ。
俺のとこは娘だ。
いつもは反抗期のくせに、クロダが来るとコロッと態度を変えやがる」
「うちの場合は妹っすね。
……彼の人柄のおかげなのか」
――ごめんなさい、食べちゃったせいです。
「……ま、なんだ。
こうなっちまうと、さっきの話、無理みたいだな。
少なくとも、一旦クロダさんに話通しておかねぇと」
「そうだな、それがいい」
「あの人、かなり変態だから、あっさり了承しそうですけどね」
「はっはっは、違いない!」
一気に和やかなムードになり、男達はそれ以上ローラさんに手を出さず、帰っていった。
後に残ったのは、未だ惚けたままの彼女のみ。
……彼らの私に対する好感度の高さは何事なのだろう。
ひょっとして、私の特性『カリスマ(効果対象:変態)』のおかげだったりするのか?
あれこれ考えていると、エレナさんが私を呼ぶ。
「クロダ君、包装終わったってよー」
「はい、分かりました」
彼女に促され、私は購入した服を受け取りに行くのであった。
「毎度ありがとうございました。
もう二度としないで下さいね♪」
にこやかな顔で皮肉を言う店員さん。
100%こちらが悪いので、何も言い返せないのが辛いところだ。
「ごめんねー、こんなに服買ってもらっちゃって。
……んー、まあ、クロダ君に全部の責任があるわけだけど」
「……返す言葉もございません。
本当に申し訳ありませでした」
半ば無理やり処女を奪ってしまったことも併せ、再度謝罪する私。
「ん、“そっち”についてはもういいけどね。
一応、当初の目的は達成できたわけだから。
……自分でした時より、痛くは無かったし」
「ん? 最後になんと?」
「ん、んんっ!
なんでもないよ、こっちの話!」
エレナさんは私の腕を掴むと、店の入り口に急がせる。
何か誤魔化されたような気がしたのだが――大したことではないのだろう。
「しかし、図らずも大量に服を購入してしまいましたね。
エレナさん、使い道ありますか?」
店を出てから、エレナさんに問いかける。
彼女はニヤリと悪い笑みを浮かべると、
「んー、無くもないかな。
……ねえ、クロダ君って『コスプレ』に興味ある?」
「あります」
即答した。
コスチュームプレイに何の興味もないという男など居ないと、私は断言する。
――そうか、つまり!
「この服使ってさ、いっぱい楽しんじゃおうよ♪」
「おお、素晴らしい!」
エレナさんの提案に、ついつい叫んでしまった。
今日買った服は数十枚にもなる。
それら全ての衣装が楽しめるとあれば、意気も上がろうというものだ。
「それじゃ、早速クロダ君の家に行こっか」
「ああ、いえ。
実は、ちょっとお高いホテルを予約していたりします」
「……そういうとこだけ、きっちりしてるんだね、キミ。
デートコースは全然考えてなかったくせに」
「も、申し訳ないです」
ジト目で私を睨むエレナさんに、私は恐縮する。
もっと『デート』というモノについて、勉強する必要があるな。
「ん、クロダ君らしいといえばクロダ君らしいけど。
――で、そのホテルにはちゃんとエスコートしてくれるんだよね?」
「勿論ですよ」
私はエレナさんと腕を絡ませた。
いつの間にか、辺りは大分暗くなってしまっている。
一路、ホテルに向かって、私達は夜道を歩きだした。
――ふと。
「な、なんだこれっ!
裸の女が倒れてるぞ!?」
「本当だっ!
痴女ってやつか!?」
「うわ、めっちゃエロい身体してんな、この女!」
路地裏の方から男達の声が聞こえてきた気もしたが――
たぶん、気のせいだろう。
第十五話 完
後日談。
半日後とか数時間後とかに比べれば、次の日の話というのは十分後日談なのではないかと考えだした昨今、皆様はどうお過ごしでしょうか?
つまり、明けて次の日の朝なのである。
一晩中エレナさんとのコスチュームプレイを堪能した私は、意気揚々と帰宅した。
「――ん?」
玄関を開けると、何か違和感。
……人の気配がある。
誰もいないはず、なのだが。
忍び足で動きつつ、リビングのドアをそっと開けると――
「来たか」
「そうみたいね」
――そこには、ちょっと目が座っている陽葵さんとリアさんの姿が。
「おや、どうしたんです?
今日は迷宮探索のための調達をするご予定だったのでは?
……ああ、私に何か助言が欲しい、とかですかね?」
「昨日あんなことしといて、よくいけしゃあしゃあとそんなこと言えるな!?」
私の言葉に、陽葵さんが激高した。
何を怒っているのか――と考えて。
「ああ、昨日の朝の3Pですか。
どうです、いいものでしょう?」
「へ、平然とした顔で言うなぁ!!」
私に詰め寄ってくる陽葵さん。
怒った顔も可愛らしい。
「そんなこと言って――陽葵さん、あの後リアさんといたしたんでしょう?」
「――!!
す、するわけないだろ、そんなこと!!」
顔を真っ赤にして否定する陽葵さん。
私はリアさんの方へ顔を向けると、短く問う。
「――リアさん?」
「――え? あ、その……さ、3回くらい」
「なんで答えんの!?」
リアさんの返答に驚愕する陽葵さん。
ふむ、しかし、3回か。
「3回ですか……陽葵さんくらいの年頃ならもっとヤってていいと思うんですけどね。
体調が悪いとかそういうことは無いですか?」
「いらねぇよ、そんな気遣い!!」
がーっ!、と喚きたてる陽葵さん。
その勢いのまま、喋り続ける。
「そ、そんなことより!
リアに聞いたぞ!
黒田、お前リアのこと――あの、その、べ、便器みたいに扱ってるんだってな!!」
「――あー、聞きましたか」
私は再度リアさんへと視線をやる。
「あはは、ごめん、つい」
苦笑いをするリアさん。
まあ、いつかバラす気でいたので、それほど問題でもないのだが。
「お前な!
女の子をそんな風に扱うなんて、何考えて――」
言い終わる前に、私は陽葵さんへと顔を近づける。
至近に迫る私に対し、彼は戸惑った様子で、
「――な、なんで顔近づけるんだよ。
そ、そんなことで誤魔化せると――」
「つまり、陽葵さん」
彼の目をじっと見て、私は告げる。
「貴方も、便器になりたい、と?」
「――な、なっ!?
バカかっ! そんなわけないだろうっ!!」
「そうですか、残念です」
私は彼のお尻に手を回し、そっと撫でまわす。
「んんっ! ちょっと、黒田、こんな時に――んむっ!?」
なおも何かを言おうとする陽葵さんの口を、口づけによって無理やり閉ざす。
彼の唇の間に舌を挿し込み、口の中を舐めまわしていく。
同時に、尻を撫でていた手で陽葵さんの尻穴を突いてやる。
「……んちゅっ……んむぅっ……ま、待って黒田……んぐっ……
……あ、はぁっ……んん……れろっ……んんんぅ……」
次第に顔が蕩け、甘い声を出し始める陽葵さん。
このまま一気に責め落そうとした矢先、
「待ちなさいよクロダ!
あんたなんでいきなりそんなことし出す訳!?
ヒナタも! 少しは抵抗しなさいっ!!」
今度はリアさんが文句を言いだす。
確かに、陽葵さんは男なのに敏感過ぎると私も思う。
ただ――
「んっ……れろれろっ……ちゅっ……あ、ああぁ……あむっ……」
私は構わず陽葵さんとキスを続けた。
勿論、後ろの穴もずっと穿っている。
「――ええ、無視!?
あたしのこと、無視なの!?」
自分に対して私が無反応なことに驚くリアさん。
「あっ……んっんっ……あぅっああんっ……んぅ、んんんんっ……は、あぁぁ……」
対して、陽葵さんはだんだんと喘ぎ声を出すようになる。
つい先程まで怒っていた顔も、恍惚とした表情に変わっている。
……そんな彼の姿をみて、リアさんももじもじと身体をくねらせ始めた。
「ね、ねえ、クロダってば!
……あたし……あたし、も――」
彼女がそう発言したところで、私は陽葵さんを離す。
「――あ」
名残惜しそうな声を出す彼をいったん横に置き、リアさんへと抱き着く。
陽葵さんにしたようにキスをして、彼女の場合は股間に手をやって陰核を刺激してやる。
「……んんっ……んむぅ……はんっ……あ、あぁあ……ぺろっ……ん、んぁああ……」
あっという間に声に艶が帯びだすリアさん。
私は彼女から唇を離すと、尋ねる。
「――それで、リアさん。
貴女は私に何が言いたかったのですか?」
「ん、あ、あ……な、何でもない、何でもない、の……あっ……あ、あ、あんっ……」
「何でもないわけが無いでしょう。
……私に抱かれたいのではないのですか?」
「……んんっ……そ、それっ……あたし、あんたに抱かれ、たいの……あっあっあっ……」
うっとりとした口調で私の言葉に頷くリアさん。
それを確認してから、改めて陽葵さんへ向き直る。
「陽葵さんはどうします?」
「ど、どうしますって……お前は、リアに、ひどいことを……」
「リアさんはこんなに気持ち良さそうじゃないですか?」
私は彼女の乳首を抓ってやる。
「あ、ああぁぁああああ……」
嬉しそうに嬌声を上げるリアさん。
そんな彼女を見て陽葵さんは目を伏せた。
「そんな……リア……んっ! あぅっ!?」
再度、彼を抱きしめてお尻を揉みしだいてやる。
「――それで、私はこれからリアさんを抱くつもりですが。
陽葵さん、どうするんですか?」
もう一度、同じ質問をする私。
内容は変わっていないが、陽葵さんからの返事は違った。
「……お、オレを好きにしていいから――その、リアには手を出さないで欲しい――」
「――ま、待ってヒナタ!
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あたしになら、どんなことしてもいいから――」
彼の言葉を遮って、リアさん。
互いが互いの身を案じているようだ。
「――あ、いや、オレは大丈夫だからさ、リア」
「――ううん、あたしの方こそ平気だよ、ヒナタ」
2人がお互いに目を合わせて、言葉を交わす。
「……リア?」
「……ヒナタ?」
視線は外さず、もう一度名前を呼び合った。
……互いが互いの身を案じて――案じているのか?
「…………」
「…………」
――2人の間に、気まずい沈黙が降りた。
このまま見守っていると泥沼に嵌りそうなので、助け船を出すとしよう。
「――また昨日のように、3人でしませんか?」
その台詞に、2人がピクっと反応する。
ゆっくりと私の方へ振り返ると、
「――し、仕方ない、かな。
リアが、心配だし」
「――そ、そうね。
ヒナタに変なことしないか、見張っとかないと」
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「では、やりましょうか。
今度は、ベッドの上で」
「……お、おう」
「……うん」
2人の肩を抱き寄せ、3人一緒に寝室へ向かう。
後日談 完
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