社畜冒険者の異世界変態記

ぐうたら怪人Z

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第十四話 説明会開催

② 便器は正しく使いましょう

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 おずおずとリアさんは立ち上がる。
 壁に手を突くと、お尻を私の方へ突き出した。

 今日のリアさんは、パーカーにスパッツという、いつも通りラフな出で立ち。
 重要な『会議』には似合わない格好だが、部外秘であることも考えれば、いつもと違う姿をして却って怪しまれることを危惧したのかもしれない。
 ただ、頭髪はいつもより念入りに梳かされており、セミショートの茶色い髪が一段と美しく映えていた。

 そんな、スパッツに包まれた健康的で形の良い臀部が私の前に曝される。
 生地が薄いからか、パンツラインまでくっきり分かった。

 試しに私は彼女の尻肉を鷲掴みにしてみる。

「――んっ」

 リアさんが小さく喘ぐ。

 私の手のひらが、ハリのある彼女の尻に押し返される。
 流石はリアさんのけつ、いい弾力である。

「はっ……あっ…あっ…あっ…」

 ぐにぐにと揉んでやると、彼女は気持ち良さそうに息を漏らした。
 快感に腰をくねらせている。

「…あっ…あっ…あっ…あんっ…」

 リアさんの尻肉を堪能しながら、彼女に尋ねる。

「ところでリアさん、貴女は私に尻を揉まれるためにここに居るのですかね?」

「…あっ…あっ……ん、違う……あっ…あんっ……今、用意するから……あっ…」

 悶えながら、リアさんはスパッツを、ショーツを自分でずり下げていく。
 邪魔しないよう、私は一旦手をけつから離した。

「――ん、んんっ」

 そして現れるリアさんの局部。
 そこは既に蒸れ蒸れに濡れていた。

「……クロダ。
 あたしのまんこ、いっぱい使ってちょうだい……」

 言って、自らの指で割れ目を開き、なかを私に見せつける彼女。
 膣口の準備は既に完了しているようで、私のモノを欲しがってひくひくと震えている。

「今さっき濡れたようには見えませんね。
 リアさん、貴女会議中から既に愛液を漏らしていたんですか?」

「あ、あんたが近くにいたし……
 ――いつ求められても、大丈夫なように」

 いつ挿入されてもいいように、調子を整えていたわけか。
 健気なものだ。

「陽葵さんの身の上や、魔王の出生についてミサキさんが話していた時も、そんなのお構いなく私のイチモツのことばかり考えていた、と」

「……そ、そんなことは――あぁんっ!?」

 反論を口にするよりも早く、私はリアさんの膣内に指を突っ込んだ。
 ぬるぬるになっているそこを、ぐちょぐちょとかき混ぜてやる。

「嘘をつくのは止めて頂きたいものです。
 リアさん、肉便器の自覚が無いのですか?」

「あっ!…あっ!…あっ!……ごめ、んなさいっ……んんっ!
 あたしっ……あっ!…ああっ!……ずっと、あんたのちんぽのこと考えてたの……あんっ!」

 私は肩を竦める。

「まったく、人のことを変態扱いしておいて。
 貴女の方が、ずっと変態ではないですか」

「あっ!…あぅっ!……だ、だって、あたし、肉便器だもんっ!……あっ!…あっ!
 肉便器なんだから……あっ!…あ、ああっ!……仕方ないじゃないっ……あっ!…あっ!…あっ!」

 リアさんの女性器からは止めどなく女の汁が流れ出てくる。
 私の手はもう彼女の液でずぶ濡れだ。
 床にもぽたぽたと愛液が落ち、周囲には雌の匂いが充満している。

 ――そろそろ股間でも味わうか。

 私はズボンのチャックを下ろし、自分の肉棒を取り出す。
 それを一気にリアさんの膣へと突っ込んだ。
 ……彼女への確認など、当然取らない。

「あっあぁあぁああああっ!?
 いき、なり、そんなっ……あぁぁああぁあああっ!!」

 突然の刺激に戸惑いを見せるものの、リアさんは喜びの声を上げた。
 私の愚息を今か今かと待ち構えていた彼女の膣は、挿し込まれた棒にすぐさま食らいついてくる。
 ぎゅうぎゅうと締め付けてイチモツに快楽を与えるリアさんの女性器。
 相変わらず、良い雌っぷりだ。

 私はより快感を味わうため、腰を振り出した。

「あっあっあっあっあっ!
 あぅううっ! ああっ! あっあっあっあっあっ!」

 瞳を閉じ、私の男根から得られる快楽に身をゆだねるリアさん。
 私のピストンに合わせて、自分からも腰を動かし始めている。

「これ程して欲しかったのなら、あの場でさっさと犯してあげればよかったですね」

「あっあっあっ! そ、そんな……あっ! あっ! ああっ!
 ヒナタも、ジェラルドさんも、居る場所でなんてっ……あっあっあっああっあっ!」

「まさか拒むのですか?」

 ぐいっと腰を突き入れ、亀頭でリアさんの子宮口をトントンと突いてやる。

「あひぃいいいいっ!?
 ……ご、ごめんなさっ……あぅうっ! あっあっああっあっ!
 見せるっ! あっあっあんっあっ! 今すぐ、戻って……あぁぁあああっ!
 あの二人に、あたしの姿、見せるぅっ! あっあぅっあぅっああっ!」

 前言を訂正するリアさん。
 肉便器になっても、なかなか素直になれない人である。

「まあ、今すぐで無くともいいでしょう。
 こんな時に貴女の痴態を見せられては、陽葵さんにもいい迷惑でしょうからね。
 とはいえ、近いうちにお披露目しなければ」

「う、うんっ……あっあっあっ! あたしが、あんたの肉便器だってことっ……あぁあぁああっ!
 みんなに、教えてあげるのっ! あっあっあっあっあっあっ! あぅうううっ!!」

 私が言葉で責めれば責める程、リアさんはより強い快感を味わっているようだった。
 膣内はさらに強く私のイチモツに巻き付き、腰の動きなど、彼女の方が私より激しいくらいだ。

 彼女のその貪りっぷりに、私は早々に昂ってきた。
 ――なので、さっさと射精することにする。

「――!?
 あっああっ! で、出てる!? あぁああっあっあっ!
 あたしの中で、出してるのっ!? あぁああぁああっ!!!」

「ええ、気持ち良かったので。
 なかなかよい具合ですよ」

 精液を迸らせながらも、私は腰を前後に振り続けた。
 小休止の時間はそう長くないので、やれるだけやっておかねばならない。

「んぁああああっ!? 精液が、あたしの子宮叩いてるぅっ!!
 おおっおっおぉおおおっ!?  な、のに、なんであんた、止まんないのっ!? おっおっおおっおおおっ!
 あっ! イクっ! イっちゃぅうううっ!!」

 がくがくと身体を震わせるリアさん。
 絶頂を迎えたらしい。

 しかし勿論、私はそんなことを考慮してやるつもりはない。
 依然変わらず、ピストンを続ける。

「おぉおああああっ!! イった! イったの!!
 ああっ! あっ! あっ! あっ! 今イったから、敏感なのっ!!
 あっ! あっ! おっ! あっ! おおっ! お願い、止めてぇっ!!」

「……五月蠅い便器ですね」

 私は肉便器リアさんの腰を両手でがっしり掴むと、全力で彼女の尻に股間を打ちつけてやる。

「んぉおおおおおおっ!!? あぁあああっ! ダメェっ!?
 またイっちゃぅううううっ!!!」

 ガクン、ガクン、と先程より大きく肢体を揺らして、再度リアさんは絶頂した。
 同時に、彼女の中も大きくうねり、私のイチモツを強く締めてくる。
 ……これだけの刺激があれば、私もすぐにイケそうだ。

 あらん限りに腰を振った。
 ペニスがじゅぼじゅぼと音を立てながら、リアさんの中を行き来する。

「あぅぅうううううっ!! おぉぉおおおおおっ!
 んおおっ! おおっ! おおぉおおおおおおっ!!」

 獣のような雄叫びを上げるリアさん。
 彼女の股間からは、お漏らしでもしたように淫液が流れ出ていた。

「ああぁぁぁぁあああっ! クロダのちんぽしゅごいぃいいっ!
 あ、あ、あっ! あぁっおっおおおおっ! もうダメなのっ! もう何も分かんないのぉおっ!
 おぉおぉおおっ!! イってるぅっ! あぁぁああぁぁぁああっ!!! あたし、ずっとイってるぅうっ!!」

 口から涎を垂らし、白目を剥きかけながら、リアさんは叫び続けた。
 身体にはまともの力が入らないようで、私が腰を掴んでいてやらなければ今にも倒れるだろう。

 そうこうしているうちに、私にも二度目の射精感が襲う。
 それを堪える必要も無いので、高揚に身を任せて、私は再度彼女へ精を注いだ。

「んぁあああぁぁぁああああっ!!? またザーメンんんんっ!!
 あ、あ、あぁぁぁあぁぁあっ!! もう、いっぱいっ! あたしの子宮、いっぱいぃいっ!!
 あぁぁぁあああぁぁああああっ!!!!」

 抑えつけるのも大変な程に大きく、リアさんの身体は痙攣した。
 それと同時に彼女お尿道から、透明な液体が噴出する。
 潮を吹いたのだ。

「……ふぅ。
 少しはすっきりできましたね」

 軽く運動して、額に汗が浮かんでしまった。
 私は手でそれを拭いながら、リアさんから手を離す。

「――あ、ううぅぅ……」

 支えを失った彼女は、床にごろんと転がる。
 私達が立っているところはリアさんの愛液で水たまりができており、彼女はちょうどその上に倒れこむ形となった。
 膣口からは、ドロドロとした私の精液が垂れてきている。

「あーっ…あーっ…あーっ…あーっ…」

 うわ言を呟くような調子で、なお喘ぐリアさん。
 完全に気をやっているようで、自分の衣服が淫液で汚れるのをまるで気にしていない。

 そんな彼女の頬を、私はぺちぺちと叩く。

「ほら、リアさん、起きて下さい!
 そろそろ休憩が終わってしまいますよ!」

 余りだらだらと休むわけにはいかないのだ。
 私達は、ミサキさんから説明を受けている最中なのだから。

「あーっ…あーっ…………ん、んんっ……く、クロダ……?」

 気付けが功を奏したのか、リアさんは割とすぐに正気を取り戻した。
 私は彼女の状態を確認すると、

「……ふむ、大丈夫そうですね。
 戻りますよ、リアさん」

「……う、うん。
 ありがと……」

 私はリアさんの手を引っ張り、彼女を立たせる。
 部屋の片付けは後でやるとして、今は最初の部屋に戻らなければ。

 ――と、思っていた私に、ある感覚が浮かび上がった。

「……どうしたの、クロダ?」

 私の変化に気付いたのか、リアさんが声をかけてくる。

「あー、申し訳ありません。
 リアさん、もう少しお付き合い頂けますか?」

「な、何?
 ……また、するの?」

 困ったように眉をひそめ――口元は嬉しそうに笑みを浮かべるリアさん。
 なかなか器用な表情をするものだ。
 しかし、私の申し出は彼女の期待に応えるものではなく。

「ちょっと、本当に催してきてしまいましてね。
 もう一度使わせて下さい」

「……え、え?」

 射精した後に小便を出したくなるとき、無いだろうか?
 今の私は、ちょうどそんな感じになっていた。

「つ、使うって、あたしを、何に…?」

「何って、リアさんは便器でしょう?
 本来の使い方をするだけじゃないですか」

 今一つ状況を理解していない彼女へ、説明をする私。
 問答している時間も惜しいので、リアさんの頭を掴み、私の股間へと運ぶ。

「――あぅうっ!
 待って……あたしに、飲ませる気なの?
 あんたの、その、おしっこを?」

「そうですよ?」

 当然と言わんばかりに返事をする私。

 普通、便器と言ったら排泄物を処理するために使う物だろう。
 寧ろ、精液を出すのに使う方が特殊だと思う。

「や、やだ、嫌よ、あたし。
 そんなの、本当にただの便器じゃ――んぐっ!?」

 あだぶつぶつ言ってくるリアさんの口に、イチモツを突っ込む。
 万一にも小便が溢れないように、できるだけ奥へ――喉の方にまで挿入してやる。

「……おごぉっ……うぐ、ぐぅう……」

「便器は便器でしょう?
 ほら、いきますよ」

 苦しそうに息をする彼女へと、私は尿を注いてやった。

「んごぉおおお……がふっげぼっ……んぐ、ぐっ……ご、おぉおおお……」

 苦悶しながらも、リアさんは私の小便を飲み込んでいく。
 流石は肉便器である。

「げほっ……お、おぉおおお……がふっ……んご、あぁぁあああ……」

 ……少し長いな。
 余り気にならなかったのだが、尿の方も結構溜まってしまっていたらしい。
 それから数秒程、彼女に飲ませ続け、

「――ふぅ。
 いや、やはり便器が近くにあると助かりますね」

 清々しい気持ちで、私は排尿を終えた。
 リアさんの口から愚息を取り出してから、

「それでは、改めて戻りましょう、リアさん。
 ――――リアさん?」

 彼女から返事がなかった。
 というより、こちらに対して何の反応も示さない。

「……リアさん?」

 訝しんだ私は、もう一度彼女の名を呼びつつ、肩を叩く。
 ――するとリアさんは、恍惚の笑みを浮かべながら力なく床に倒れ伏してしまった。

「……リアさん、リアさーん!」

 肩を揺さぶっても、頬を叩いても効果なし。
 瞳孔は開いているものの、焦点が定まっていない。
 ……完全に、失神してしまったようだ。

「……仕方ありませんね」

 私は少し悩んでから、居住まいを正す。
 そして、目を醒ます気配がまるで無い彼女へと声をかける。

「すみません、私は先に行っていますね。
 適当に言い訳しておきますので、リアさんは後から来て下さい」

 ――まあ、気を失っている彼女にそんなことを言っても仕方ないかもしれないのだが。
 皆さんを待たせるわけにもいかないので、リアさんを残し、私は部屋を出るのだった。






 そんな出来事があった少し後。

「さて、では始めようか」

 そんなミサキさんの号令の下、説明会は再開した。
 幸いなことにリアさんも間に合い、部屋のテーブルには最初と同じメンバーが席についている。

「……なあ、その前に少しいいか?」

「なんだ、室坂陽葵」

 陽葵さんが手を上げて、ミサキさんに質問する。
 彼は私を指さして、言った。

「……なんで黒田は逆さ吊りになってるんだ?」

「それはな、この男が馬鹿だからだ」

 ――はい、馬鹿です。
 今、私は部屋の隅の方で逆さ吊りにされていた。
 やったのは勿論ミサキさんである。

 ……なんというか、色々と“バレて”いたらしい。
 はっはっは、失敗失敗。

「そっか、馬鹿じゃ仕方ないな」

「ああ、仕方ないんだ。
 ――もっと利口になって欲しいものだが」

 あっさりと納得する陽葵さん。
 もう少し粘ってもいいのではないだろうか。
 彼だけでなく、他の面子も――リアさんも含めて――私の処遇に異論はないようだ。

 ……実のところ、私もそれほど文句はない。
 いや、頭に血が上って――この場合、下って、がいいのだろうか――大分意識はくらくらしてくるが。
 それほど天井が高くない部屋で無理やり吊らされているので、視点がかなり低くなっているのだ。
 そこから見える世界はなかなかワンダフル。
 皆さんの腰から下の肢体が、凄くよく見える。

 特に、ちょうど視界の真ん中に位置するミサキさん――いや、エレナさんの場合、ミニスカートを履いているものだから下着だってチラチラと視界に入る。
 今日は、アダルティな黒いショーツだ。
 小柄な彼女が着ると少しアンバランスさも醸し出すが、いやしかしそれが良い。
 しっかりとしたハリを持つ魅惑の太ももと併せて、少女と大人、両方の色気を放っていた。

 視線を横に移せば、リアさんや陽葵さんの美脚がある。
 残念ながら二人ともパンツルックなので、下着は見えないが……しかし、スパッツとショートパンツは、彼らのお尻の美しい曲線をくっきりと映し出していた。

 ……しかもリアさん、“何故か”ノーパンになっているようで、スパッツの上から彼女の『すじ』も確認できてしまう。
 先程のプレイによるものか、彼女の股間はまだ濡れているようだ。

 陽葵さんは陽葵さんで、柔らかくてむっちりとした、それでいて弾力もちゃんとある、見る者を魅了する下半身を曝している。
 男のモノとはとても思えない、理想的な雌の肉付きだ。
 そりゃバールだって、コレを自分の物にしようとやっきになるだろう。

「おい、誠一」

「はい?」

 パラダイスを鑑賞していた私に、ミサキさんから冷たい声がかかった。

「――お前、目を潰されたいか?」

「の、ノー、サー!!」

 慌てて私は視線を逸らす。
 どれだけ目敏く見ておられるのか、この人は。

「では改めて始めるぞ。
 魔王と室坂陽葵、そして私の関係については理解できたな?
 その後の話は世間に伝聞されているものと大差ない。
 私は4人の勇者を率いて、魔王と戦った」

 『共に』ではなく『率いて』という言葉を使うあたり、ミサキさんの精神性を現していると思う。

「最終的に、六龍の内4体を魔王から解放し、私以外の4人がその六龍の力をそれぞれ借り受けることで魔王を討伐したわけだ。
 めでたしめでたし、となるところだった。
 ――4人の勇者が、六龍の力に魅入られなければ」

「――は?」

「――え、何?
 ちょっと待って、え、何それ?」

 陽葵さんとリアさんが驚きの声を上げる。
 ジェラルドさんもまた、声こそ出さないものの目を見開いていた。

「驚く気持ちもわかるが、情けないことに事実だ。
 4人の勇者は龍の力に魅了され――自らが新たな“魔王”となり、己の野心を満たそうと画策し始めた。
 まず手始めに、私を裏切りこの世界から追放した。
 私がこの世界に戻ってこれないよう、『呪縛』をかけた上で」

 …………。
 苦々しい顔で語るミサキさん。
 それは、信じていた仲間に裏切られたことが理由なのか、それとも――

「だが、彼らには六龍全ての力を扱うことができなかった。
 如何に勇者といえど、魔王と同じ所業をするのはそう容易いことではなかったのさ。
 ――そこで目をつけられたのが、君だ」

「……オレか」

 ミサキさんに指さされた陽葵さん。
 もう今日一日で驚き慣れたのか、それとも予想していたのか、彼は驚いた様子を見せなかった。

「かつて魔王は、六龍を己の身体に宿すことでその力を自在に操っていた。
 室坂陽葵自身に何の力も無いとはいえ、君の身体が魔王の『代替品』である以上、同じことは可能だと考えられる。
 ――それを知った勇者達は、君の身体へ六龍の力を収納し、君を操ることで間接的に六龍の力を扱うことを企てた。
 そのために利用されたのがバール・レンシュタットだ。
 いくら勇者と言えど、異世界にまで手は伸ばせないからからな――私を除いて」

 最後のところは、少し胸を張って誇らしげに言っている。
 実際問題、次元を超えて交信するなんてこと、『全能』のエゼルミアとて不可能だろう。

「勇者達は適度に魔族を追い詰めて危機感を煽り、適度に泳がせることで機会を伺った。
 新たな魔王として、連中が『室坂陽葵』をこちらの世界へ召喚する機会を」

「……う」

「……むぅ」

『全ては勇者達の掌の上だった』と宣言され、リアさんとジェラルドさんが呻いた。
 私としては、どうしようも無かったことだと思う。
 彼らと勇者達とでは、持っている情報量からして根本的に違ったからだ。
 魔族は、今日ミサキさんが語ったことのほとんどを把握していなかった。

「――そこからは単純な話だ。
 バール・レンシュタットは思惑通り君をこの世界へと転移させた。
 後は、君の意思を奪ったうえで、六龍の力を君へと注ぎ込めばいい。
 どうだ、室坂陽葵。
 君の置かれた状況が、少しは分かったか?」

「……勇者全員が、オレを殺そうとしてんのか」

「殺すのは君の人格だけで、君の身体はなるべく無事な状態で手に入れようとはしているだろうがな」

 細かいところの訂正をするミサキさん。
 そんなことは分かっているとばかりに陽葵さんは声を荒げた。

「オレにとっては似たようなもんだろ!
 ……確認したいんだけどさ、今、この世界で勇者達ってどんだけ力を持ってるんだ?」

 周囲を見渡して、陽葵さんが問いかける。
 その質問に対して答えたのはジェラルドさんだ。

「……勇者達は、各国で非常に強い発言力を持っておる。
 それこそ、国王ですら勇者の意見に異を唱えることは難しい有様じゃ。
 つまり、やろうと思えばヒナタ様を捕えるために国を動かすことも可能、じゃろう」

「ま、マジかよ!
 ……あのさ、魔族の手を借りたり、できないかな?」

 リアさんとジェラルドさん――魔族である二人の様子を伺いながら、陽葵さんはそう尋ねた。
 しかし、二人が答えるよりも先にミサキさんが口を開く。

「無理に決まっているだろう。
 魔族は、このままでは勇者に滅ぼされるからと、君を頼って来たんだぞ。
 君を勇者から守ることなぞ不可能だ」

 無慈悲な現実を突きつける。
 たじろぐ陽葵さんへ、さらにミサキさんは畳みかけた。

「さらに言うなら、勇者達は国を動かさずとも今の魔族程度ならば蹴散らせるぞ。
 ――精鋭を集めたとかいう、バール・レンシュタットの部下があの有様ではな。
 残っている連中もたかが知れている」

「……クロダが居なかったら本気でやばかったんだけど」

 あんまりなミサキさんの言い分に、リアさんが弱々しく抗議した。

「誠一にまとめて殺される程度の連中を、どうやって驚異とみなせと言うんだ?
 ――まさかお前達、勇者が誠一より弱いと思っているんじゃないだろうな?」

「……つ、強いのかよ、黒田より」

 いや、それは当たり前だろう。
 幾ら私がミサキさんにみっちり鍛えられたといえ、世界を救った勇者より強くなれるわけがない。
 陽葵さんはここ数日の騒動か、或いは今日の事実暴露の混乱で、そんな当然のことも失念してしまったようだ。

「当たり前だ。
 ――流石に、エレナの身体を借りている今の私よりかは強いだろうが、単純な強さで誠一は勇者に遥か及ばない」

「う、嘘だろ……」

 愕然とする陽葵さん。
 その横で、リアさんも同じような表情をしている。
 それほど驚くべき事実だろうか?

 ……ちなみに私は別のところで驚いていた。
 今のミサキさん、私よりも弱いのか?
 その割に、私はボコボコにされていた気がするのだが。

「じゃ、じゃあ、どうしようもねぇじゃん……」

「そう結論を急ぐな。
 ――それを阻止するために、私は誠一をこの世界へ送り込んだんだ」

 陽葵さんの力ない呟きを、ミサキさんが即否定した。

「で、でもさっき、黒田じゃ勇者に勝てないって」

「そう、誠一では勝てない。
 魔族でも勝てない。
 ――だが、私にならできる」

 言いよどむことなく、ミサキさんは断言した。

「私は今、六龍界にほとんど干渉できない状態だが、この呪縛を解く方法がある。
 一つは、呪縛をかけた当人――つまり勇者を倒すこと。
 もう一つは、呪縛の力と同等、或いはそれ以上の力をもって強制的に呪縛を破壊すること。
 前者は不可能だが、後者であれば可能だ」

「……勇者より力がある奴なんているのかよ?」

「いるだろう、六龍が」

「――あ」

 陽葵さんがはっとする。
 ミサキさんはニヤリと笑って、続ける。

「今、4体の龍は各勇者の手の内にあるが、2体は手中に無い。
 こいつらの力を使う」

「……龍の力で呪縛を解けば、キョウヤはこっちの世界に来れようになるってことか!
 でも、残りの龍はどこに居るんだよ?」

 彼の顔に僅かに希望が灯った。
 そしてこの疑問に対しても、ミサキさんは流暢に答えを返す。

「場所も分かっている。
 1体は<次元迷宮>の中を彷徨い、そしてもう1体は――今もなお、魔王と共に居る」

「ちょっとタンマぁっ!!」

 そこで、リアさんが大声を上げる。

「今、魔王様と龍が一緒にいるって言った!?」

「言ったよ」

「じゃあ何、魔王様、生きてるの!?
 あんたさっき討伐したって!!」

「討伐したとは言ったが、殺したとは言ってない。
 彼女はまだ生きている――<次元迷宮>の最奥でな。
 生きているというか、封印に近い形か。
 龍の力を借りてもなお、止めを刺すには至らなかったのでね」

「そういう洒落じゃ済まされない事実をさらっと流さないでよ!!」

「厳かに宣言しようと軽く話そうと、大した差ではないだろう。
 そんなに気を昂らせるな。
 まだまだ話は終わっていないのだから」

「……ご、ごめんなさい」

 自分が話の腰を折ってしまったことに気付き、リアさんは謝罪した。
 ミサキさんはふうっとため息を一つついて、

「つまり、室坂陽葵、君がやるべきことは、この龍――青龍ケセドと黒龍ビナーの少なくともどちらかに会い、彼らの協力を取り付けることだ。
 君の身体が龍の力に耐えられる以上、同意さえ得てしまえば、君は六龍の力を扱えるようになる」

「それで、キョウヤを召喚すればいいんだな!
 おお、なんだかやれそうな気がしてきた!」

「そうだろうそうだろう。
 ――まあ、今の君が龍の力を扱おうものなら、心は壊れるだろうが」

「―――!?」

 その一言に、陽葵さんの動きが止まる。
 ……ああ、そのこと、今教えてしまうのですか。

「勇者をして1体が精一杯の六龍だ。
 君がその力を使おうとすれば、ほぼ確実に精神が消し飛ぶ。
 室坂陽葵の『身体』は龍に耐えられても、心はただの一般人なのだから。
 ――絶対不可能とまでは言わないが」

「……あの。
 それ、オレもうどうしようも無いんじゃ……」

 おずおずと、事実確認をする陽葵さん。
 先程、示された希望に明るくなった顔が、一瞬にして曇ってしまった。

「こんなことでそこまでショックを受けるな。
 “今の君では”と言っただろう。
 今は無理でも、耐えられるまで強くなればいい。
 『冒険者』という丁度いいシステムもあるのだから」

「そ、そっか!」

 再び陽葵さんの顔に喜色が現れる。
 冒険者としてレベルを上げることで、龍の力を受け入られるまで強くなることができる、とミサキさんは言っているのだ。

「だから室坂陽葵、これから先は誠一の力は借りるな。
 君には青龍ケセドとの接触を試みてもらうことになるが、それは君が単独でやり遂げるんだ。
 誰かに頼っていては、龍の力に耐えられる程の心身強化は望めない」

「うっ!?」

 また表情が陰った。
 ころころと顔色が変わる人である。
 でもそこが可愛い。
 どの表情も、陽葵さんの別の魅力を映し出してくれる。

「……クロダちゃんと一緒だと成長が捗らないのは、“別の理由”もあると思うんだがにゃあ」

 それまで沈黙を保っていたアンナさんがぼそっと呟いた。
 ……そこら辺は触れないで頂きたい。
 私だって、探索のたびにアレコレ“ちょっかい”を出しているわけでは無いのである――偶には、彼の身体を弄らない日もあったはず。

 私の内面は置いておいて、ミサキさんのお話に戻ろう。

「――といっても、“さあ龍に会ってこい”では無理難題にも程がある。
 こちらもそれが実行できるよう、サポートはしてやろう。
 アンナ、室坂陽葵にアレを渡してやれ」

「分かったにゃあ」

 ミサキさんの指示で、アンナさんは一つの小箱――かなり厳重に封が施された小箱を机の上に置く。
 彼女はその封を一つずつ丁寧に開錠していくと、陽葵さんの前で蓋を開いた。
 中には、蒼い輝きを放つ宝石――冒険証に似ているが、形状が異なる――と、一枚の呪符が入っている。

 アンナさんが、そのアイテムの説明を始めた。

「この宝石は、冒険証と同じ機能を持ったアイテムだにゃ。
 というかまあぶっちゃけちゃうと、冒険証はこれをコピーして作られたモノだったりするんにゃけど。
 でも、冒険証とは違う機能が4つあるんだにゃあ。
 一つ目は“<次元迷宮>全域からの帰還機能”。
 冒険証と違って、これはそれ以外の場所からでも帰還ができるんだにゃあ。
 二つ目は“『ゲート』へのワープ機能”。
 最後に自分が使用した『ゲート』に、転移することができるにゃあ。
 三つ目は“案内機能”。
<次元迷宮>にいる龍――青龍ケセドの場所を指し示してくれるにゃ。
 四つ目は、“緊急脱出機能”。
 これを持ってる人が意識を失うと、このアイテムが勝手に<次元迷宮>の外へ戻してくれるんにゃ」

「何それ、超便利!?
 要するに途中セーブ機能+全滅してもゲームオーバーにならないってことか!
 ――あれ、でもそう考えると割と普通なことのようにも」

 説明を聞いて、陽葵さんが驚く。
 最後にちょっとクールダウンしたが。

 まあ、<次元迷宮>を現代社会のゲームに例えるなら『帰還アイテムは序盤だけしか使えない、再度潜る時は最初から、全滅したらそこで終わり』というなかなかのシビアっぷり。
 このアイテムを使うことで、ようやく今風の難易度に落ち着く、といったところか。
 ……現実とゲームを一緒くたにすることの是非は置いておいて。

「うーん、大体合っているけど、少し違うにゃあ。
 脱出機能が働くのは、あくまで意識を失ったときだけ。
 その前に致命傷を負っちゃった場合、助からないにゃ」

「……それもそうか」

「そこで、こっちの呪符の登場にゃ!」

 高らかにそう宣言し、アンナさんはもう一つのアイテムを手に取った。

「これは、所有者に『魔物を発情させる呪い』をかけるお札!
 その呪いによって、所有者は魔物に命まで取られることは無くなるんだにゃ!
 ……代わりに、もし負けたら容赦なく種付けされちゃうわけなんにゃけど。
 男でも女でもお構いなく」

「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」

 場が静まり返った。
 誰もが無表情になる。

「アンナさん、それ流石に酷くないですか」

 私が代表して口を開いた。
 ――陽葵さんが魔物にボロボロになるまで犯される未来が目に見えるんですが。

「よりにもよってクロダちゃんが言う!?
 仕方ないにゃ、目的に合致するアイテムがこれ位しかなかったんだから!!
 魔物が近寄ってこなくなるアイテムとかならあるけど、それじゃヒナタちゃんのレベルアップができなくなるでしょ!?」

 魔物とちゃんと戦闘を行えつつ、かつ負けても魔物に殺されないようにするアイテム。
 指摘されてみれば確かに、かなり条件が厳しい。

「酷な話だが、コレを持っていかないというのであれば、私は君が龍の下へ行くことを許可できない。
 君の生存は、我々の生命線でもある」

「で、でも、オレが龍に会わないとキョウヤがこっち来れないんじゃ?」

「そうだ。
 だから君がこのアイテムを拒否する場合は、誠一に龍のもとへ君を運んでもらい、君の人格が壊れること承知で龍の力を行使してもらう。
 ――君は死ぬが、勇者が新たな魔王となるという最悪の事態は避けられるからな」

「そ、そうか……そうだよな……」

 俯く陽葵さん。
 彼はしばし葛藤すると、

「――悩んだところで、やるしかないんだよな。
 要は、魔物に負けなければいいんだろ!
 やるよ!
 やってやる!!」

 やけくそ気味にそう宣言した。

 ――まあ、彼に選択肢が無いのは間違いない。
 逃げ出したところで他の勇者に捕まってしまう。
 ならば、多少危険でも前に進むしかない。

「その意気だ。
 それと誤解しないよう補足しておくが、一人で成し遂げろというのは、単独で<次元迷宮>に潜れというわけでは無いからな。
 迷宮探索にはしっかりとパーティーを組んで臨め。
 余りに自分と実力がかけ離れた相手はまずいが――例えばそう、リア・ヴィーナ位なら構わない」

「え、いいの?
 あたしがついていっても」

「いいよ、別に。
 君程度なら」

「……なんかムカつく言い方ね」

 ミサキさんを睨み付けるリアさんだが、ヒナタさんに協力すること自体に異論はなさそうだ。
 陽葵さんとリアさんの間には相当の実力差があるのだが、それでも比較対象が私であればそう大きな違いではない、ということか?
 勿論、私が射式格闘術シュート・アーツを使っていること前提だと思うが。

 しかし、彼女がOKとなると、Bランク位の冒険者には助力してもらっても構わないということになる。
 存外、そう難しい課題というわけでは無く感じるが――それで本当に陽葵さんは十分な成長を遂げられるのか、疑問はある。
 ミサキさんのことだから、そのあたりも考慮してあるのだろうけれど。

「うっしゃ!!
 目標も定まったことだし、明日からバリバリ探索すっぞ!!
 レベルをガンガン上げて、龍の力なんざあっさり使いこなしてやる!!」

 そんな意気込みを陽葵さんが叫んだところで。
 この『説明会』はお開きとなった。



 第十四話③へ続く
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