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第六話 ある社畜冒険者の新人教育 三日目
① 陽葵さん、初めての探索
しおりを挟む前回から明けて、次の日。
「おはようございます、ローラさん。
今日もいい天気ですね」
「…………」
リビングで朝食を用意していたところに、ローラさんがやって来た。
挨拶をしたのだが、どうにもご機嫌斜めな様子。
ちなみに、今起きたばかりの彼女は、既にいつもの黒いロングドレス姿へ着替え済み。
髪もしっかり梳かしており、サラサラな黒のロングヘアを披露している。
……昨日散々味わったばかりとはいえ、やはり彼女の豊満な肢体は男の欲情をそそってしまう。
「……あの、ローラさん?」
「………昨日」
ローラさんが喋りだした。
「昨日、あんなに止めてって言ったのに…!」
涙目であった。
「こ、今度こそ、今度こそ本当におかしくなっちゃうかと…!」
「あー……いえ、すみません…」
素直に頭を下げる。
実際問題として、昨日は私も焦った。
本気で焦った。
微動だにしなくなったローラさんを見て、治療所への緊急搬送、並びに官憲への出頭を覚悟したほどだ。
お店にあった知る限りの治療薬を施したところで意識が回復したので、最悪の結末には至らなかったが。
……無論のこと、使用した薬の代金は払っている。
「……いーえ、許しません。
今回は、本当に許しませんから!」
「………分かりました」
ローラさんが怒るのも当然だろう。
さすがに今回は私も悪乗りがし過ぎた。
もう一度彼女へ首を垂れてから、告げる。
「大丈夫です、もうローラさんに手をだすような真似は決してしません」
「…え?」
拒否されたのであれば、是非もない。
いくら私でも、それ位の分別はある。
「ローラさんが望むのであれば、二度と目の前に現れ――」
「や、違っ、違うんです、そういうのじゃなくて!」
ローラさんが慌てて否定してきた。
はて…?
「昨日のはちょっとやり過ぎかなって思っただけで、クロダさんに、その……抱かれ…るのは、嫌いじゃ…無いですし」
後半かなり口籠っており、上手く聞き取れなかったが、どうやら私を拒絶したいわけでは無いようだ。
ほっと胸を撫で下ろす。
「昨日みたいのも、あの、週に一回くらいなら…」
「大丈夫なんですか?」
「ちゃ、ちゃんと心構えしておけば、たぶん…」
私が言ってはいけない言葉なんだろうが、ローラさん、それは自分を安売りしすぎではなかろうか。
「ともかく!
私が言いたいのは、クロダさんに罰を受けてほしいってことなんです!」
「罰……と申しますと?」
彼女は少し思案顔になって、
「……とりあえず、今日の朝は私を抱いちゃダメです!」
「そんなのでいいんですか?」
流石に私も、あんなことがあってすぐにローラさんとセックスしようとは思わ――いや、思うけれど我慢しようと心がけるつもりであった。
……なるほど、確かに私にとっては重い罰かもしれない。
「ち、違いますよ、これは罰のうちの一つで……
他にもいっぱい、罰はあるんですから!」
「そ、そうですか」
彼女の剣幕に、少したじろいでしまう。
それ程沢山の罰を考えてくるとは、余程腹に据えかねたのだろう。
「……罰の前に、一先ず朝食にしませんか。
せっかくの食事が冷めてしまいます」
「――そうですね、そうしましょう」
ローラさんの承諾を得たので、私は席に座った。
そしてそんな私の上に彼女が座る。
「………あの」
「…な、なんですか…!」
「そこは、私の脚の上なんですが」
「…そ、それに何か問題でも!?」
「いえ……なんでもないです」
ローラさんがそれでいいというのであれば。
顔を真っ赤にしているあたり、かなり無理をしている気がしないでもないのだけれども。
それとも、これはローラさんの言う罰の一環であろうか。
ローラさんのお尻の柔らかさを脚で思い切り堪能できているので、罰というよりご褒美なのだが。
「―――ん、美味しいですね、これ」
「お口に合ったのなら、何よりです」
その状態で、食事を始めるローラさん。
ただしまだ顔は赤かった。
これだと私は朝食を食べられないのだが、文句を言える筋合いでも無いので我慢する。
「……あの、クロダさん」
「はい」
「このままだと、食べにくい…ですよね?」
「……まあ、そうですね」
「口、開けてください」
「はい?」
不思議な指令がローラさんより下される。
訳が分からないまま、とりあえず口を開けてみた。
「……はい、あーん」
「――!!」
ローラさんが、私の口元に料理を持ってきてくれた。
こ、これは、恋人同士がやるとかいう伝説の…!?
「く、クロダさん?
……食べて、貰えないでしょうか…?」
「た、食べます。
すぐ食べます」
差し出してくれた料理を口に含む。
自分で作った料理なのに、なんだかいつも美味しく感じるのは気のせいなのか。
「……そ、それでは、次はこれを……あーん」
「い、頂きます」
何だろう、ローラさんとはアレやコレまでした仲だというのに、妙に気恥ずかしい。
それは彼女も同じのようで、ちょっと手が震えていたりする。
そんな、不思議なやりとりを幾度か繰り返した後、ローラさんはさらに私へ話しかける。
「……く、クロダさん、この体勢だと少しバランスが悪いので……だ、抱いて…く、くれませんか?」
「……ああ、はい――――は?」
思いがけない提案に、頭がついていけなかった。
「か、勘違いしないでください!?
ただ、抱き締めるだけなんですからね!
へ、変なことは無しで…!」
さらに顔が赤くなっているけれど、大丈夫なんだろうかローラさん。
いや、抱くこと自体は単純に嬉しいので、いくらでもやるのだが!
「で、では――」
「……んんっ」
抱きつかれてくすぐったかったのか、ローラさんが小さく声を上げる。
私はといえば、彼女に密着したことにより全身でローラさんの肢体を味わうことができ、内心歓喜の声を上げていたのであった。
鼻腔は、ローラさんから漂う女性特有のいい匂いで充満している。
――こういうのも、悪くない。
「…………」
「…………」
どちらとも何をするでもない、無言の時間が流れる。
ただ、ローラさんは嬉しそうな表情をしている。
気まずい空気が流れているわけでもなく、私もこの心地よさに身を任せていた。
「……クロダさん」
不意に、ローラさんが話しかけてくる。
「……私と……その……ずっと、ずっと……一緒、に……」
少しずつ声が小さくなって、またしても後半が上手く聞こえなかった。
しかし、ローラさんの表情が先程までと異なり、凄く辛そうな顔になっている。
……こんなことをして何になるのか分からないが、私は彼女を抱き締める力を強める。
気のせいかもしれないが、ローラさんの表情が和らいだように見えた。
「……ローラさん?」
「な、何でもないです!
その……今日も、お店に来て頂けませんか?」
「それはまあ、いいですけれど。
……手を出してはいけないのは、朝だけでしたよね?」
「――!」
言って気づいたが、凄く無粋なことを口にしてしまった気がする。
しかしそんな私の言葉にもローラさんは気を悪くした様子は無く。
「……そ、そうですね。
で、でも昨日みたいのじゃなくて……今夜は、もっと優しく抱いて下さい…」
「分かりました。大丈夫です、任せて下さい」
私のそんな返事に、彼女は恥ずかし気に頷いたのであった。
――そんなやり取りをしたのが、大体2時間前。
今、私は<次元迷宮>の中にいた。
「と、いうわけで、今日はいよいよ実戦です」
「おうっ!」
威勢よく返事をするのは陽葵さん。
朝食後、リアさんの家まで迎えに行って彼と合流し、今に至るというわけだ。
「魔物と戦う前に最後の確認を。
冒険証はしっかりと付けていますね」
「ああ、ボーさんに腕輪へ取り付けてもらったからな。
ちゃんと装備してるぜ」
「結構です。
これを無くすと<次元迷宮>では色々と『詰み』ますからね。
何かの拍子で落としたりしないよう、十分注意して下さい」
「はいよー」
何せ、冒険証が無ければ階層間の移動すらできない。
ゲートの起動は、冒険証によって行っているのだから。
「……お、ちゃんと白色に光ってんな」
「問題なく作動しているようですね」
陽葵さんは冒険証で、この階層の区域を確認しているようだ。
「白い区域なら、冒険証使ってすぐ帰還できる…んだよな?」
「はい、その通りです」
白色区域――初心者区域に限り、仮に危険に陥ったとしても冒険証を起動させる時間さえあれば、帰ることができる。
ある意味一番重要な機能だ。
――先程からずっと実に説明チックなやり取りをしている私達だが、実際に事前説明を振り返ってるところなので大目に見て頂きたい。
「でも、白・緑・黄・赤か…」
陽葵さんが思案顔になっている。
どんな表情をしても可愛いなこの人。
「どうしました?」
「ひょっとしてこれ、六龍から取ってたりするのかな?」
「おお、よく気づきましたね。
なんでも、六龍の内、最後の決戦で勇者に力を貸した4体から付けているそうです」
そんな由来なものだから、<次元迷宮>にはさらに青色区域・黒色区域が存在する、という噂も実しやかに流れている。
その区域に、行方不明になった勇者ミサキ・キョウヤや魔王が封じられているのだ、とも。
―――まあ、当たらずとも遠からずといったところか。
「おや、さっそく魔物が現れたようですよ」
前方から、一体の魔物がこちらへ向かってくる。
白色迷宮でも最も弱い魔物として有名な、溝色ねずみだ。
「うっしゃ、腕が鳴るぜ!」
「一先ず私は後ろで見守っていますので、存分に戦ってみてください」
「応よ!」
陽葵さんが剣を抜き、魔物に向かっていく。
この剣も、ボーさんが見繕ってくれた高級品。
初心者でも扱いやすいショートソードで、鋼を丹念に研ぎあげた名剣だそうである。
作った本人が名剣とか言ってしまうのは如何なものかと思うが、実際素晴らしい切れ味を誇る。
「食らえ、<強撃>!」
力を溜めるような構えから、陽葵さんがスキルを発動した。
<強撃>は<戦士>のスキル――武技の中で基本中の基本と呼ばれている。
効果もそのものずばり、敵に通常よりも強い一撃を叩き込む、というもの。
「――あ、あれ?」
しかし、結果は空振り。
「いくら弱い魔物といっても、いきなり大技を出したら早々当たりませんよ」
「分かってるよ! くそっ…!」
悪態をつきつつ、改めて魔物との交戦を開始する陽葵さん。
溝色ねずみも体当たりや噛付きで攻撃してくるが――すべて、彼の装備する防具によって阻まれる。
私の貯金が崩れる程の高級防具は、伊達ではないのっだ。
陽葵さんはボーさんと私にちゃんと感謝して欲しい。
とはいったものの、陽葵さんの攻撃も魔物はひょいひょいと躱してしまう。
「……でやっ!……おりゃっ!」
魔物の攻撃は陽葵さんにダメージを与えられず、陽葵さんに攻撃は魔物に当たらず。
ある意味、一進一退の攻防が繰り広げられる。
この間に、少し解説を。
スキルは職業毎に呼ばれ方が違う。
<戦士>なら武技、<盗賊>なら暗技、<僧侶>なら加護、<魔法使い>なら魔法といった具合に。
これは冒険者というシステムが構築される前の呼び名が未だ定着しているため、らしい。
つまり、武技・暗技・加護・魔法が昔からの呼び方であり、勇者達によってそれらが取り纏められ、総称として『スキル』と名付けられたとのことである。
――と、そうこうしている内に、
「……うおりゃっ! と、当たった!」
陽葵さんの攻撃がとうとう魔物を捉えた。
当たってしまえば、高級装備がものをいう。
魔物は一撃で深手を負ったようだ。
そして、ダメージで動きが鈍くなった魔物に対し、
「トドメだ、<強撃>!」
もう一度、武技を繰り出す陽葵さん。
今度こそ狙い過たず、強力な一撃が魔物を一刀両断する。
「勝ったぁっ!」
勝利の叫びをあげる陽葵さん。
「おめでとうございます!」
そんな彼を拍手で称える。
正直なところ、初戦はもっと手こずると思っていた。
戦いなんて経験したことがない現代社会の人間は、弱い魔物相手でも気後れしたりだとか動きについていけなかったりだとかで、なかなか攻撃が当てられないことが多い。
そんな中、陽葵さんは最初こそ翻弄されたものの、比較的あっさりと敵を捉えた。
戦闘センスはなかなか良いものを持っているようだ。
……A適性のある<僧侶>や<盗賊>を選んでいれば、もっと楽だったろうに。
「へへ、この調子でドンドン行くぜ!」
やる気に満ち溢れている陽葵さん。
そんな彼に応えて――というわけでも無いのだろうが、魔物が現れる。
「お、新手が来ましたね………5体」
「5体!?」
<次元迷宮>の入り口付近で、こんな数の魔物に遭遇するのは珍しい。
陽葵さん、遭遇運も結構なものを持っているのではなかろうか。
「あ、あいつらって今のやつより弱かったりする?」
「さっき戦った魔物がこの<次元迷宮>で一番弱い奴です」
「………無理だ!!」
どうだろう、普通の新人冒険者ならまず無理だが、今の陽葵さんには新人にはまず手が出せない高級装備がある。
あの程度の魔物達ならなんとかなるように思える。
とはいえ、最初からスパルタは良くないか?
「では、初回サービスということで」
私はそこらに転がっていた小石を手に取り、<射出>で魔物に対して撃ち出す。
都合4つの石が、過たず4体の魔物を貫いた。
残りの魔物は1体。
「さあ、1対1です。
先程と同じ要領で戦って下さい」
「…………」
むむ?
陽葵さんが、私を呆然と見ている。
「どうしました?
魔物が来ますよ、早く構えた方がよろしいかと」
「……い、いや、お前、やっぱ凄いのな」
魔物を4体同時に倒したことに驚いているようだ。
……とはいえ、初心者用区域の中でも最弱クラスの魔物を倒したことに驚かれるのは、かなり気恥ずかしい。
自慢のようにも聞こえてしまうかもしれないので、口には出さないが。
「あの程度であれば、すぐに陽葵さんにもできるようになりますよ。
今は鍛錬あるのみです。
さ、頑張ってください」
「お、おう!」
気を取り直した陽葵さんは魔物へと駆けていく。
――そんなことを繰り返しながら、時は過ぎ。
時刻はそろそろお昼。
私達は次の階層へと到達した。
人工的な構造材で作られた無機質な回廊が続く場所だ。
「……ぜぇー……ぜぇー……ぜぇー……」
陽葵さんが肩で息をしている。
まだレベルが低い時にこれだけ連戦すれば仕方がない。
「……ぜぇー……ぜぇー……あ、あれだけ戦ったのに、まだ1レベルしか上がってない……」
冒険証のステータス画面を見て嘆く陽葵さん。
「まだ慣れていませんからね。
まずは戦闘を含め、この<次元迷宮>の探索に慣れることです。
そうすれば、もっと楽にレベル上げができます」
「……そ、そっか。
まあ、初めてなんだからこんなもんだよな」
私のフォローに笑顔を見せる。
こういう頭の切り替えが早いのは、彼の長所だ。
……1日に1レベル上がるのは最初の内だけで、これから先どんどんレベルは上げ難くなる、という事実はまだ伏せておこう。
ウィンガストにおけるレベル上げは、一昔前のMMO並みに厳しいのだ。
ついでに、<勇者>以外の<戦士>職ならば――さらに言えば<盗賊>や<僧侶>ならば、1レベル上がるだけでステータスが結構上がっていたであろう事実も。
「とりあえず切りのいいところまで来ましたので、そろそろ休憩にしましょうか。
この階層は魔物も出現しませんし」
「あ、そうなの?」
魔物の種類やその出現率は階層によって異なる。
なので、魔物がほとんど出現しない場所もあるのだ。
そういうところは、大抵冒険者達の良い休憩場所となっている。
前に話した、私がいつも休憩に使っている階層もその一つだ。
「もっとも、この階層は入り口に近すぎるので、休憩に使う冒険者はあまりいないんですけどね」
「悪かったな、こんな所で休憩が必要で」
これは失言をしてしまった。
「すみません、そういうつもりで言ったわけでは…」
「いいよ別に。
すぐこんなとこすっ飛ばせるようになってやるから、見てろよ…!」
頼もしいことだ。
私達は休憩に適した場所を求めて移動を始める。
「ところで、ここってどういう階層なんだ?」
「基本的に魔物は出現せず、その代わり――というわけでもないのでしょうが、トラップの多い階層です」
少し歩くと、直方体状のそこそこ広い部屋に出る。
この階層における最初の部屋であり、休憩場所に最適な所だ。
「そのトラップに関しても致命的なものはないので、駆け出しの冒険者がトラップへの対処を練習するのによく使われていますね」
「へー………あ、こんなのか?」
陽葵さんは部屋の壁に設置してあるレバーを引いた―――って、え!?
「――ちょっと、何してるんですか!?」
「……そこに、レバーがあったから」
「『そこに山があったから』みたいな言い方しないで下さい!」
「はっはっは、いやごめんごめん――ってうわ!?」
レバー近くにある穴から、陽葵さんに向けてガスが吹き付けられる。
当然ながら、レバーに仕掛けられたトラップ(こんな露骨なモノをトラップと形容していいのだろうか?)である。
「げほっ…げほっ…げほっ…何だこれ!?」
「確かそれは……麻痺を引き起こすガスだったはずです」
巻き添えを食らわないように少し離れたところから解説をする。
薄情者などと言わないで欲しい。
いくら致死性のものではないとはいえ、二人とも動けなくなっては流石にまずいのだ。
「お、おお、体が、動かなく…?」
「麻痺ガスですからね。
それはそうでしょう」
ガスが十分霧散し、危険性が無くなったところで陽葵さんに近づく。
手足が痺れて倒れる前に、彼を支える。
「ご、ごめん…」
「謝るのであれば、次からはこういう軽率な行動は取らないで下さいね」
陽葵さんを抱き上げて部屋の端へと移し、床に布を敷いてその上に寝転ばせる。
「症状は手足が動かなくなる程度と軽いものですけど、治るのには1,2時間程度かかります」
「……軽いのか、それ?」
勿論軽い。
この部屋には他の危険な魔物やらトラップやらは無く、ここで数時間動けなくなっても死ぬことはおろか怪我をすることもない。
総合的に見て危険度の低いトラップと言えよう。
「魔法で治したりできねえの?」
「できますよ。
私は覚えてないだけで」
「……そうなのか」
まあ、麻痺の治療薬は持っているのだが。
反省させる意味もあるので、その事実を明かす気はない。
「まあ、麻痺している間しっかり休憩して下さい」
「こんな状態じゃゆっくり休めないって…」
「そこは自業自得ですので。
自省して下さい」
「うう……はぁい」
私も陽葵さんの隣に座り、休憩に入る。
――ところで詳細説明をしていなかったが、あのガスは麻痺は麻痺でも運動麻痺を引き起こす類のもの。
手足の筋肉が麻痺するだけで神経には影響が出ないため、感覚は残る。
つまりどういうことかと言うと。
「……んんっ!?」
陽葵さんの口から艶っぽい声が出る。
<念動>を使って、陽葵さんの乳首を刺激してあげたからだ。
さて、改めて今の陽葵さんの様子を見てみよう。
いつも通り美しく整い過ぎている顔に、それに相応しいきめ細かさを持ったショートカットの金髪。
現在その顔には、突如訪れた刺激に戸惑いの表情が浮かべられている。
「急にどうしました、陽葵さん」
「……へ、いや、何でもない」
不自然にならない仕草で、私の手の位置を陽葵さんに見せる。
私は身体に触れていないということを彼に分からせるためだ。
陽葵さんの格好は、ボーさんの店で購入したものそのまま。
ピッチピチの極薄ボディスーツの上に、胸だけ隠せる丈のタンクトップと際どいローライズのホットパンツ、そこへ薄手のジャケットを羽織っている。
とんでもない価格の装備だけあって、午前中魔物と戦い続けても傷らしい傷は一切見られない。
今度は両方の乳首を刺激してみる。
「……あうぅっ!?」
再び艶声が聞こえる。
私はさも心配している風を装って陽葵さんに質問する。
「一体どうしたんですか?」
「……いや本当になんでもないから……あんっ!」
話している最中も刺激は続けている。
陽葵さんが敏感な身体をしていることは先日の朝確認済み。
これはなかなか耐え辛かろう。
「陽葵さん、私は貴方の教育係であり、パーティーの仲間なんです。
不調はしっかりと伝えて下さい」
「……なんか、さっきから体が変で……んぅっ」
私の説得に、やや躊躇いながらも応えてくれる陽葵さん。
「変? どのように体がおかしいのですか?」
「あぅっ…胸に、何かが触ってるみたいな……あんっ」
「胸……胸のどの部分ですか?」
<念動>の強さをさらに大きくする。
「はぅううっ!…胸の、乳首が何かに挟まれているみたいで…んんんっ」
「…ふむ」
「……お、おい!?」
私は陽葵さんのタンクトップを捲る。
ボディスーツ越しに、彼の乳首が勃っていることが容易に見て取れた。
「乳首、大きくなってますね」
「なんでそういうこと言うかな!?…はんっ…
しょうがないだろ、ずっと触られてるみたいな感じで!…んくぅっ!」
話している最中にも、陽葵さんは顔を色っぽく歪ませる。
「これはひょっとしてあれですかね、ガスに催淫効果が含まれていたとか?」
「…んんっ…そんなのあるのかよ…あんんっ!」
陽葵さんの顔は上気して少し赤く染まり、なんともエロい。
そんな表情でこうも喘がれては、私の方まで興奮してきてしまう。
「<次元迷宮>は分からないことばかりですからね。
いつもとは違うトラップ効果が発生してもおかしくはありません」
実際そういう事例はある。
今回は100%私のせいだが。
「…あぅうっ……そ、そんなのって……あぁあっ……」
悶え続ける陽葵さん。
彼が男であることを忘れてしまいそうだ。
……そろそろお尻の方もいってみようか。
「……んおっ!」
陽葵さんが今までと異なる反応を示す。
「今度はどうしました?」
「……んあっ!……尻が、いきなり……おっおぉっ!」
陽葵さんの履いているホットパンツは、お尻の上半分がほぼ露出するようなローライズっぷりなので、彼の尻穴の位置を探るのはそう難しいことではなかった。
私の位置から直接は見えないので<屈折視>を活用しているが、いや、やはり陽葵さんのお尻はいい。
女性でもここまで美しい曲線を描いてはいないであろうと思える程、綺麗な形をしている。
その肉付きの良さ、感触の類稀さは先日堪能した通りである。
「…おっ…あ、あぁっ…んおぉおっ!」
「お尻というと、どの辺りでしょう?」
「…おぉっ…どこって、その…んぉおっ…あ、そこだよっほらっ…あぅうっ」
その部分の名前を言うのが恥ずかしいのだろうか、陽葵さんは言葉を濁す。
「あそこ……ああ、肛門ですか」
「ストレートに言うな!……んぅううっ」
「別に男同士なんですから、恥ずかしがる必要は無いのでは?」
「うぅうっ……そうかも、しれないけど……んぁあっ」
陽葵さんの顔は押し寄せる快感の波にどんどんだらしなくなっている。
手足が麻痺しているから、身じろぎして刺激を分散することもできないため、彼の味わう快楽は相当なものなのだろう。
今すぐ襲いたくなる位に色っぽい顔だ。
「んぉおおっ…あっやば、い…おおぉおっ…これ、やばいって」
「何がやばいと?」
「お、おぉおおっ…い、く…あ、あぁぁあっ…イク、かも…んおっ!」
そろそろ射精しそうらしい。
見れば、ボディスーツの股間部分が不自然に盛り上がっている。
陽葵さんの男根が勃起し、ホットパンツからはみ出ているのだろう。
私は<念動>の出力を上げ、乳首と肛門を激しく責め立てた。
「お、おぉおおおっ!? やっばい…おっおっおっおっ…我慢、できなっ……」
「いいんじゃないですか。
ここには私達以外いませんし。
一度出してしまえば楽になるかもしれませんよ」
私の言葉は陽葵さんに届いているのかどうか。
もう彼に余裕は無いように見える。
「ああぁぁあああっ!!…出る、出ちゃう!…んぉお、お、おぉおおっ!…出るぅっ!…んあぁぁあああああっ!!!」
身体を反らしながら、陽葵さんは絶頂した。
「お、おぉおお……んぉ……は、ぁぁあああ……」
「思い切りいきましたね。
すっきりしましたか?」
余韻に浸る陽葵さんに声をかける。
だが、彼からの返事は無く。
「……はーっ……はーっ……はーっ……」
「……陽葵さん?」
彼の体を揺さぶってみるが、反応無し。
中空をぼんやり見つめながら、荒く息を吐くだけだ。
完全に気をやってしまった模様。
……やりすぎたかもしれない。
「……はーっ……はーっ……はーっ……んむっ」
その表情が余りに淫猥だったので、思わず口づけしてしまった。
陽葵さんの唇は瑞々しく、舐めるとプルプルと震える。
「んむぅっ…れろっ…んんぅっ…あむっ…れろ…」
そのまま、口内を舐め回った。
舌は女性のように繊細な感触ながら、男性のような力強さも感じる。
女としての魅力を持ちつつも、男であることの主張もある。
女性では到底味わえない感触。
……これはこれで良いものだ。
しばしの間、陽葵さんの口の中を堪能した。
「…はむっ…んんっ…れろれろ…んぅっ…ぷはっ」
十分舐め尽くしたところで、陽葵さんの口から離れる。
「…ご馳走様でした」
意識のない彼に礼を言っておく。
「…これからどうしようか」
休憩の時間といっても、実のところ私は全然疲れていない。
寧ろ陽葵さんの痴態を見せつけられて、私の愚息は元気いっぱいだ。
私は陽葵さんのお尻をじっと見た。
まだまだきついだろうが、無理にでも挿れてしまおうか?
そんな考えを巡らしていると突如、天井の中央部がぱかっと開く。
そして――
「キャァァアアアアアアッ!!」
甲高い悲鳴とともに、開いた穴から人が落ちてくる。
「むっ!!」
咄嗟に身を投げ出し、落下地点へ体を滑り込ませた。
「アアアアア―――あれ?」
そして落ちてきた人をできるだけ優しく受け止める。
この階層を進んだ先にある落とし穴が、この部屋に繋がっていることは把握済み。
前にエレナさんが落ちてきた件では何の役にも立たなかったので、ちゃんと注意するようにしていたのだ。
同じ過ちは二度犯さない男、黒田誠一です。
「大丈夫ですか?
災難でしたね」
抱きかかえた人物に問いかけながら、姿を確認すると――
「く、クロダ君?」
「え、エレナさん?」
その人は、以前に迷宮で出会ったコケティッシュな美少女――エレナさんであった。
第六話②へ続く
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