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第三十話 最近の進捗報告を
②! ティファレトに助力を頼んでみたものの
しおりを挟む「あら、クロダさん。
ヒナタさんの様子を見に来たんですか?」
「はい、そうです。
どうですか、容態は?」
扉をくぐった私に声をかけてきたのは、長い黒髪の美女――ローラさんだ。
ここはセレンソン商会にある宿泊部屋の一つ。
陽葵さんはここに運び込まれ、彼女の治療を受けているのである。
「特に問題はないですね。
元気なものですよ」
ローラさんは私の質問を受けてにこやかに答える、が。
「いやいや、問題ある! 問題あるよ!?」
そこにツッコミが入った。
ベッドでうつ伏せに寝ている金髪の少年――もとい美少女――ではなくて美少年の陽葵さんだ。
短めに切られた美しいブロンズヘアは、施術中に大分暴れたのか、かなり乱れていた。
しかもちょうど治療の直後だったのだろう、お尻が丸出しになっている。
相変わらず、男のモノとは思えないプリプリの尻肉だ。
思わずむしゃぶりつきたくなる。
「問題、ありましたか?
経過は良好ですよ?」
「あんだけケツからポンポコ卵が出て、平気なわけ無いだろ!?」
不思議そうな顔をするローラさんに、陽葵さんが食いつく。
ぱっちりとした彼の瞳には涙の粒が溜まり、それがとてつもなく可愛らしかった。
言われて見てみれば、確かに彼の尻穴はパクパクと引くついている。
早く“棒”を突っ込んでくれと言わんばかりに。
「……確かに。
普通、あれだけの量の卵を排出すれば、直腸が傷ついても不思議はないんですよね。
括約筋が切れて肛門が閉じなくなったり、最悪脱肛してしまったりも……」
「ごめん。
オレから振っといてなんだけど、そういう生々しい話はちょっと――」
「だというのに、ヒナタさんの身体は至って健康です。
薬で処置しているとはいえ、凄い丈夫な身体ですね」
「……なんだか嬉しくないなぁ」
せっかくローラさんが褒めているというのに、陽葵さんは複雑そうな顔だ。
ちなみにだが、陽葵さんが産んだ卵は、アンナさんが回収している。
なんでも好事家に高く売れるんだとか。
それはともかく、私はそんな2人の会話へ割って入る。
「あー、それはアレじゃないですかね。
陽葵さんは魔王の息子であり、かつ六龍の完全な器であるわけですから、その副産物として強靭な肉体となっているのでは?」
「……むむぅ」
その言葉に、美少年は浮かない表情。
「オレ、そういうんじゃなくてもっと分かりやすい強さが欲しかったなぁ。
だいたい、強靭とか言われても、そんなに体力あるわけでも防御力あるわけでもないし……」
「正直に申し上げて――性的なこと限定な強靭さですよね」
「言うなぁ!
なんか薄々勘付いてたけども!!」
指摘を受けて激昂する陽葵さん。
ちょっと弄ればすぐに感じてしまう敏感さを持つ上に、壮絶な責めにも耐えられる彼の肢体。
まあ間違いなく六龍の力によるものなのだろうけれども、こんな肉体にしてしまう辺り、龍の歪みっぷりが分かる。
「前々から言いたかったんだけどこーゆーのってさぁ! なんかもっと凄いスキルが身に付くもんなんじゃねぇの!?
異世界に行ったらチートスキルで無双だろ、普通!?」
いや何が普通なのかは分からないが。
迷宮探索でストレスが溜まって、自分でも訳の分からない愚痴を吐いてしまっているのだろう。
「何を言ってるんですか、陽葵さん。
貴方は<盗賊><僧侶>の“適性”が最高クラスじゃないですか。
加えて、<多重発動>なんていう強力な特性まで持ってるんですよ?
十分、チートと言って差し支えない能力ではないかと」
「うぐっ!? そ、それはまあ、そうなんだけど」
紅顔の美少年は言葉を詰まらせる。
最初の職業選択で<勇者>を選んでしまったのは、彼にとって忘れたい過去であるらしい。
私にとっても頭の痛い案件ではあるのだが。
と、そこで会話を聞いていたローラさんが話しだした。
「でも、もうヒナタさんは大分強くなりましたよね。
そろそろ転職ができるランクになったんじゃないですか?」
「…………」
「…………」
私と陽葵さんが揃って押し黙る。
「あ、あら?
違いました?」
そんな私達を見て、慌てるローラさん。
気が重いが、説明せざるを得ないか。
「……これは完全に私の誤算でした。
冒険者のランクを上げるには幾つか条件があるのですが、その一つに冒険者レベルがあります。
ギルド長のジェラルドさんが協力してくれている現状、陽葵さんにとってはそのレベルだけがハードルなわけですが――」
他の条件は、ギルドへの貢献度や探索した階層の深さなど、ギルド側の都合によって設定されたもの。
一定のレベルに到達しさえすれば――つまり、転職に耐えうるキャパシティを獲得できさえすれば、職業の変更は可能なのである。
「陽葵さん、かなり極端にレベルが上がりにくかったんですよね」
以前説明したような気もするが、冒険者レベルとは強さの指標ではなく、その者の潜在能力がどれだけ発現できてかを示すものである。
おそらくだが、陽葵さんは途方もなく潜在能力が高いのだろう。
本来なら喜ぶべきことなのだが、ここで重要なのは、陽葵さんの能力の向上速度が普通の冒険者と大して変わらない、ということ。
限界能力は非常に高いのに、成長は人並み――これが意味することはつまり、レベルアップ頻度の遅さ、である。
実のところ単純な強さならば陽葵さんはBランクに限りなく近くなっているのだが、冒険者レベルはまだ28しかない。
Dランク程度の数値である。
転職には最低でもCランクが必要であり、基本職を変更する転職にはBランクが必須。
これでは<勇者>から脱却してくてもできない。
「でも実力がBランク相当あるのであれば、転職してもよいのではないでしょうか?」
「いや、それがそう単純な話でも無く――」
ローラさんの疑問も御尤も。
転職に関しては、少々複雑な事情があるのだ。
転職とはすなわち、それまで自分の身体に“インストール”していた冒険者システムを一新することに他ならない。
ただこの時、自分の能力に応じた“負荷”がその身にかかるのだ。
能力が高ければ高い程その負荷が大きくなるわけで、実力があるから低レベルでも転職可能、ということにはならないのである。
レベルを上げ――つまり己の潜在能力を開発して、自分の“器”を高めることでしか、この負荷を耐える術はない、とされている。
ただこの辺りの事情はまだ研究の真っ最中であるらしく、ひょっとしたら近い将来別の理論が確立するかもしれない。
「――とまあ、そんなわけです」
「なるほど。
全て把握できたわけでもないのですが、とにかく陽葵さんが転職するのはかなり絶望的なわけですね」
「その通りで」
彼女の言葉に深く頷く。
そんなわけで陽葵さんには、なんとか頑張って<勇者>のまま赤色区域を踏破して貰うしかない。
「あーあ、簡単にレベルが上がる方法とかねーのかなぁ」
「それがあったら皆さん苦労していませんよ。
地道にコツコツ頑張りましょう。
大丈夫です、必ず道は開けます」
とはいえ、陽葵さんに残された時間は短い。
実を言えば内心私にも焦りが出始めているのだが――それを彼に悟らせるわけにはいかなかった。
限られた期限で最善を尽くすよう、励ましの言葉をかけていた――その時。
「何を言ってるんですか、クロダさん。
あるじゃないですか、簡単にレベルを上げる方法が」
きょとんとした顔で、ローラさんがそんなことを言いだした。
……まさか。
「あの、ローラさん?
それは、ひょっとして――」
「はい。ティファレトです」
「――やはり」
そのことだったか。
確かに、私やローラさんは黄龍ティファレトにレベルを上げて貰ったことがある。
「しかし、そのためにはティファレトに――」
こう、色々ヤられてしまうわけで。
ぶっちゃけた話、滅茶苦茶に犯されてしまうわけで。
だがそのことを指摘しても彼女はどこ吹く風。
「今更じゃないですか?
そうでなくてもヒナタさん、毎日のように酷い目にあっているんですから。
一度我慢すればそれで済むなら、安いものですよ」
「……あー、確かに」
現状、陽葵さんは探索の度に魔物に犯されてボロボロにされている。
一回ティファレトに犯されるだけで、その後の探索の安全が保障されるのであれば、悪くない話、かも。
「しかし、協力してくれますかね。
奴には何の利益も無い話ですよ?」
いや、陽葵さんとのアナルセックスは素晴らしい気持ちの良さなのだが、果たしてティファレトをそれで釣れるかどうか。
だが私の疑問に、ローラさんは気軽な口調で答える。
「そこは大丈夫ですよ。
クロダさんがお願いすれば一発です。
息子の頼みを無碍に断らないでしょう」
「そうですかね?」
「ええ、そうです」
やたら自信あり気なローラさん。
彼女がここまで言うからには、何かしら確信めいたものがあるのだろう。
「ただ問題は、ティファレトが今どこにいるか、なんですけど」
「――いえ、それについてなら、私に心当たりがあります」
ティファレトの居場所は知らないが、奴が憑依しているガルムさんがこの街で拠点にしている宿屋なら、以前話に聞いている。
その辺りを散策すれば、遭遇できる可能性が高いはず。
思い立ったが吉日。
私達は、早速そこへ向かって移動を開始した。
「おーい、2人で話進めんなー。
ちっとも分かんねぇぞ、オレ」
状況に付いていけていない陽葵さんには、道すがら説明を行う予定だ。
さて、珍しいことに私の目論見は当たった。
件の宿屋に来てみれば、ちょうど“ガルムさんの姿”があったのだ。
しかし、どうも彼は別の客人と応対中のようで――
「やっぱ悪ぃよ、こんな色々してくれてるなんてさ」
「なぁに、気にすんなよ、ジャン……殿。
金は天下の周りものって言うだろ?……でござるよ」
――しかも、相手はジャンさんだった。
あとなんか口調がおかしい。
「でもさ、同じ冒険者のよしみったって――俺、アンタと一緒に冒険したことはおろか、大して話すら――」
「袖振り合うも他生の縁ってヤツよ……でござる。
何かと入用なんだろ? 遠慮すんなって……でござる」
この怪しいにも程がある語尾――さてはアイツ、中身はティファレト!?
ジャンさん相手に何してんだあの龍!?
「いや、しかしホント、これ以上援助してもらう訳にはいかねぇんだよ!
クロダさん――って言ってもアンタは知らないか。
その、親しくしてる先輩冒険者からも、お祝いってことで滅茶苦茶な大金渡されちゃっててさ。
恋人に子供ができたって報告したら、もう自分のことのようにアレコレ世話してくれて。
この上、アンタからまでなんて――」
…………。
まあ、自分のことだったりしますからね。
なお、この2人の会話は<感覚強化>の魔法によってかなり遠くから視聴していたりする。
そのため、ティファレトはともかくジャンさんには気づかれていないはずだ。
「子育てを甘くみんじゃねぇぞ……でござる。
飯代やら病気や怪我の治療代やらで何かと金はかかるんだ……でござる。
金は幾らあっても困るもんじゃねぇ……それに俺様にとっても孫になるわけだし」
――むう、ティファレトの奴め。
イルマさんが産む子供の世話をしてやろうという魂胆らしい。
余計な真似を。
ジャンさん達夫婦の第一子については、私が全力で養育費を渡す予定だというのに。
しかし赤ちゃんを育てるにはとかくお金が必要という指摘にも一理ある。
邪魔をするわけにもいかないか。
そんな私の思惑は知る由も無く、ジャンさんは涙ぐみながらガルムさんに頭を下げていた。
「ありがとよ。
この街に来てから色々あったけどさ、こんなに暖かくしてくれる人と会えるなんて。
俺、冒険者になって良かったよ……!」
「……まあ、托卵されてる時点で幸せじゃあないんだけどな」
「ん、今なんて?」
「いやいや、なんでもない、なんでもない……でござる」
つい余計な一言を零し、慌てて首を振るティファレトINガルムさんなのだった。
――とまあ、2人のそんな小芝居も終わり。
「え? いや、それ無理」
ジャンさんと別れたティファレトへ、いざ本題の話を振った結果がこの回答であった。
今、私達が居るのは宿の一室――ガルムさん(本人)が借りている部屋だそうだ。
そこで、まだ人間の姿をしているティファレトと、私・ローラさん・陽葵さんが向かい合っている。
それはさておき、私は発言の真意を確かめるため、奴を問い詰めた。
「ど、どういうことですか?
まさか、陽葵さんとセックスできないとでも!」
「まあ、それもある」
「馬鹿な!?」
信じられない返答に、絶句。
有り得ない。
こんな美しく可憐で、胸を除けばスタイルまで抜群な男の子を抱くことができないなんて。
貴様、それでも私の父親か!?
「そうは言ってもなぁ。
一応、俺様“生命”を司る龍だかんなぁ。
生産性の無い行為はNGよ?」
……言われてみれば、一緒に暮らしていた時も父は男を犯すような真似はしなかったような。
「あのね、男とヤるってのがまずおかしいんだかんね?
親友だって六龍界来るまでそんなことしてねぇだろ」
「いえいえ、何人か抱きましたよ」
「ヤったことあんのぉ!?」
結構カワイイ人が居たので。
流石に陽葵さんと比べると美少女度は劣るものの、代わりに少年特有の色気を持っていたりで、なかなか良い感じであった。
「マジか……俺様、ちょっと教育間違えたかも」
ティファレトは驚愕の表情だ。
龍が驚くなんて相当稀な状況なのだろうが、ガルムさんの顔なので新鮮味はない。
と、そこでローラさんがふと口を開く。
「あら? でもこの前クロダさんとは――」
「あああああああああああ!!!!」
「あああああああああああ!!!!」
唐突にトラウマ級の過去を指摘され、悶え苦しむ私とティファレト。
床をゴロゴロとのたうち回る私達を眺めながら彼女は、
「反応がそっくりですね、流石親子」
「この状況見てよくそんな言葉吐けるなお前!?」
無情な台詞にティファレトが食いつくものの、必要以上にローラさんへ詰め寄ったりはしない。
どうもこの龍、彼女に対してかなりの苦手意識を刷り込まれたようだ。
六龍をここまで追い詰めるとは、ローラさんの豪胆さには舌を巻くほかない。
……代償に私の括約筋は酷いことになった。
まあ、向こうも同じだが。
「くっそぉ、六龍界にまでBLの波が押し寄せてくるとは。
美咲か? 美咲が全ての元凶なのか?
お前もあの女に感化されたっていうのかよ!」
「失礼な。
私とキョウヤ様は不倶戴天の敵同士ですよ。
昨日もクロダさん×デュストさんかデュストさん×クロダさんかで深夜まで激論を交わしていた程です」
「リアルの知り合い同士で掛け算するとかレベル高すぎだろ!? ってか故人を混ぜんな、不謹慎だろ!!
普通に仲良いじゃねぇか、お前等!」
「ちなみに私はデュストさん×クロダさん派です」
「聞いてねぇけど!?」
意味が分からない会話を展開するティファレトとローラさん。
しかし何故だろう、彼女の言葉を聞いていると背筋がゾクゾクしてしまう。
と、ともあれ、気を取り直して。
「しかし、陽葵さんのプリプリしたお尻を見ても抱けない等と言えますか?
この揉み心地、最早芸術品ですよ?」
「おい黒田。
いきなり――あ――尻揉みだすな――ん、んんっ――
ただでさえオレ――あうっ――この場のノリについていけてねぇんだから――は、う――
実はお前が龍の息子だったとか――んっ――すっげぇ重要な話なんじゃないのか?――んあっ――
いいのか、さらっと流しちゃって――あ、ああ――」
ちょうど横に居た陽葵さんの尻を揉みしだきながら、ティファレトを説得する。
むっちりとして、手に吸い付いてくるようなこの感触。
ショートパンツ越しですら、これだ。
この気持ち良さに比べれば、陽葵さんがジト目で睨んできていること等、些事にすらならない。
私の言葉を聞いた黄龍は、鷹揚な風に頷きながら、
「確かに。
尻揉まれただけでその反応っつーのは、女通り越して発情した雌犬とすら言える。
正直、俺の股間もムクムクと起き上がってきちまった」
「――では!」
色よい返事に俄然期待感が増す。
ついでに陽葵さんの尻を弄る指にも力が入ってしまった。
「だ、だから、尻を揉むなって――はぅっ!?
待って! 穴っ! 穴に指入れちゃ――あぅうううっ!!?
ヤ、やりたいなら別に今じゃなくてもいいじゃ――おぉおおおおっ!!!?」
金色の髪を振り乱して陽葵さんは喘いだ。
彼の尻穴には、ずっぽりと指が2本が突っ込まれている。
ただの排泄器官であるはずのソコは、咥え込むかのように私の手を締め上げた。
まるで女性器のようだ。
陽葵さんをさらに感じさせるため、私は指を前後に動かしだした。
その途端、少年の肢体が弓なりに反る。
「お、おぉぉおおおおおおっ!!?
なんで!? なんで激しく――お、お、お、お、おぉおおおうっ!!?」
指を抜き差しする度、ジュポジュポと音が立つ。
部屋にいる他の3人に見つめられながら、陽葵さんは絶頂への階段を駆け上がっていった。
「おっ! おっ! おっ! おっ! おっ!!
イクっ! イクっ!! イクっ!! イクぅっ!!!
んおぉおおおぉおおおおおっ!!!!?」
アヘ顔を晒しながら、陽葵さんはイった。
肢体が硬直し、二度三度痙攣を起こす。
履いているショートパンツの股間部に、ジワジワと“染み”が広がっていく。
その場で崩れ落ちそうになる彼を支える。
華奢で柔らかいその身体を抱きしめながら、その顔をベロで舐めていった。
「ん、ふっ――はうっ――れろっ――ん、ぺろっ――あぅうう――」
キメ細かい肌、瑞々しい唇、繊細さの中に力強さもある舌、どれも味わい甲斐のある一品だ。
一しきりそれを堪能してから、ティファレトの方へ顔を向ける。
黄龍は私の腕の中でぐったりしている陽葵さんをじっと見つめると、
「――有り得ねぇ程敏感体質だなぁ、コイツ。
指だけでもこんだけ盛大にイかされるってのに、魔物のちんこぶっ刺されてよく今まで壊れなかったもんだ」
「腕の良い方が救護を担当されていますから。
それで、陽葵さんでしっかり興奮できるとのことでしたが、ならば彼のレベルを上げて貰えるわけですね?」
「だから、それはできねぇんだって」
頭を振るティファレト。
まだ何かあるというのか。
「まだというかだな。
認めるのも癪なんだが、ケセドの“契約”でこの“器”にゃ龍の力が干渉できなくなってんだ。
そうでもなけりゃ、他の龍がさっさとコイツを奪ってるだろ?」
「……なんと」
そうだったのか。
いや、陽葵さんは“勇者の戦い”の『景品』であるのだから、そう簡単に手出しできないプロテクトのようなものはあるのだろうと思っていたが。
力を貸すような真似もできない程、徹底した防護だったとは。
龍本人がこう断言している以上、助力を求めるのは不可能か。
私の心に諦念が湧いてきたところへ、
「案外大した力を持ってないんですね。
仮にも六龍だというのに」
唐突にローラさんが煽ってきた。
彼女、黄龍相手には攻め攻めである。
しかしティファレトはティファレトで、その態度を気にした様子も見せず。
「そうだぜ。
六龍っつってもそこまで大したもんじゃねぇんだよ。
“器”が無けりゃ、碌にこの世界へ干渉することもままならない。
地球の神話やおとぎ話に出てくる“何でもあり”な存在じゃ無いのさ」
うーむ、どうだろう。
比較対象が悪い気もする。
だいたい、地球での『神様』はあくまで想像上の存在なのに対して、六龍は実在するのだから。
「俺様としちゃ、美咲はやり過ぎだと思うがね。
六龍は揃って人の不幸が好物だが、それでも人間を絶滅させようとまでは考えてない。
この世界に危機が訪れたら、それを解決したりもしてる。
戦争を意図的に引き起こしてもいるけどな――別に龍のいない地球でも人同士の殺し合いなんて日常茶飯事だろ?
完全に排除しなけりゃならん程の存在か、俺様達は?」
「そりゃそうでしょう。
人同士の争いが不可避なものだったとしても、六龍が原因でそれが増加している可能性は高い。
第一、六龍は何のデメリットもなく楽しんでいるじゃないですか」
「お、良いコト言うじゃねぇか、親友。
美咲の言葉を借りたんでなければ、100点あげてもいいぜ」
……細かいことを指摘するのはやめて頂きたい。
「ま、今のは単なる愚痴だ、忘れてくれ。
とうの昔に六龍と美咲は交渉決裂してるからな。
ひゃはははっ、あの女がこうまで滅茶苦茶な存在だとあの時知ってりゃ、他の龍共も手の平返してたかもしれんが」
「よくよくキョウヤ様を褒めるんですね」
これはローラさんの言葉。
「……まあ、実際凄いヤツだからなぁ。
どうしてまだ人間でいられるのか俺様も理解できねぇ。
次元渡航者の領域に到達しちまってるんじゃねぇか。
その内、自分で世界創れるようになったりしてな」
「……すいません、よく理解できないです。
でも貴方がキョウヤ様を好きなのはよく分かりました」
「気にすんな、理解させようとも思っちゃいねぇ。
あと俺様があの女を好いてるとか勘違いすんな――いや、マジ勘弁」
しかし、ティファレトはここまで饒舌だったのか。
こちらが聞いてもいないのに、アレコレと話をしてくる。
「はっきり言って暇なんだよ。
話相手も大していねぇし。
楽しいイベントも大方片付いちまったからなぁ」
イベント――勇者同士の戦いのことを指しているのか。
「ま、残る関心事はアレだな。
……親友があのミサキ・キョウヤを相手に、どう戦うのかってところ位か」
っ!?
「え? 今なんて?」
「ひゃはははは、なんでもねぇ、なんでもねぇ」
ぼそっとした声でえらいこと言ってくれた。
幸い、ローラさんには聞き取れなかったようだが。
「さて――しかし、だ。
せっかく俺様のとこに来てくれたってーのに何の見返りも無しってんじゃ神としての沽券に関わるか」
お、随分と殊勝な台詞。
「そうさなぁ――よし、この“器”、今夜一杯預からせて貰おうか」
「陽葵さんに何かして頂けるのですか?」
龍の力は効かないとのことであったが……
「ああ、これからはもう男のちんこのことしか考えられない、雌ガキに堕としてやる!」
「おお!」
「“おお!”じゃないですよ!」
ローラさんが突っ込んできた。
――あ、なんだろうこのフレーズ、全身に悪寒が走る。
別にローラさんにヤられたわけでもないのだけれど。
「ひゃはははは、ジョーダンだ、ジョーダン。
うむ、俺様にいい考えがあるのだ、ダイジョーブダイジョーブ。
なんのかんのでそそる身体してやがるのも分かったし」
「うわぁ、信用できない顔……」
確かにいやらしい笑みではある。
しかし、いくら何でもこのタイミングでただ自分の性欲のみを追求するような男でも無いはず。
たぶん。
おそらく。
「ま、マジな話このまんまいったらこのガキお先真っ暗だからな。
ケセドの思惑も美咲の計画もひっくり返そうってなら、細工は幾らあっても多すぎるってこたぁねぇだろうよ」
「――ケセドも、油断できる相手でないと?」
「当たり前だろ、あいつも六龍だぞ。
まともな感覚なんざ持ってる訳がねぇ。
それでも、この“器”を助けようと思ったらあいつの考えに乗るしかねぇんだがな」
「……そうですね」
難しい。
非常に難しい案件なのだ。
六龍を倒そうとしているにも関わらず、その六龍に協力を求めざるを得ないというのは。
陽葵さんの問題に限った話では無いが。
しかしケセドとて陽葵さんの親。
裏は当然あるのだろうが、彼が助かる方向に盤面を動かしてくれる――と願うばかりだ。
「じゃ、俺様はちとこのガキと遊ぶからよ。
お前等はそろそろ帰ってくれ。
俺様は一人で愉しみたいタイプだからな」
その言葉で、この場はお開きとなる。
私はローラさんを伴って、宿を後のするのだった。
「あれ? もう話終わったんか?
俺のパワーアップは? え? 無しになった?
それってどういう――おーい、黒田、何で帰ろうとしてんだよ。
だったら俺も一緒に――あれ? あんたどうして俺を掴んでんだ?
おい。離せよ。離せって。ちょっと。なぁ。
無理! ナニ出してんだ! そんなん入るか!!
壊れる!! けつが壊れちまう!! やめろ!! やめて!!!
んんぉおおぉおおおおおおおおおおおおっ!!!?!!!?」
第三十話③へ続く
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