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第一章
出会い
しおりを挟む「生ひとつ!」
声を張り上げないと聞こえない程の賑やかな居酒屋で4杯目を頼む。大丈夫か?と店員のおっちゃんが心配そうに話しかけてくる。意識はあるから大丈夫、明日は会社も休みだから終電までゆっくりしよう。そう思っていたが、酒自体あまり強くはない俺にとっては少し飲みすぎたかもしれない。
ガラガラっと店のドアが開く。男は目を丸くした。そこに立っていたのは男のタイプの女性だったからである。女は一人で店の奥にあるカウンターに座った。男が座っている二つ隣の席だ。一気に酔いは覚めた。男は女に話しかけた。
「隣、良いですか,…?」
「ええ。」
「今日はどちらから?」
女は脇目も振らず、淡々と答える。4杯目のビールをグビッと飲み干した。おっちゃんは頑張れよ、っと言った顔をして5杯目をくれた。頼んでもいないのに。
タイプの女性が横にいると思うとうまく話せない。恐る恐る横を向く。パッチリとした二重の目、綺麗に上を向いた睫毛、高い鼻。どこを歩いていても誰もが振り向きそうな綺麗な顔立ちをしていて見惚れてしまう。
話を進めていくうちに、彼女はこの場所から一時間弱かかるところに住んでいることがわかった。職場がこの近くなんだそう。お互い酔いも回ってきたせいか、打ち解けた会話も少しずつ出来るようになっていた。歳は俺よりも四つ上で、会社で嫌な事があって一人で飲みに来たらしい。
「隣、良い?」
女が男に問いかける。勿論良いですよ、と女は俺の隣に座った。
「こっちの方が声聞きやすいね。」
微笑んだ彼女に、俺は完全に落ちた。それからは他愛もない話で盛り上がった。終電はすぐそこに迫っている。このままもっと話していたい気持ちの方が大きいけれど、そろそろ帰るとするかな。
「沢山話せて良かった、ありがとう。おっちゃん、これで!釣りはとっといて、また来るね。」
女の方を見るとなんだか寂しそうな顔をしていた。その時グラスを持つ彼女の薬指に光るものがあった。そうか、そうだよな。あんなに綺麗な人なんだから旦那がいたっておかしくないよな。男は必死に言い聞かせた。そして店を後にした。
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