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第3話『俺といい勝負って、嫌味かよ』
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目覚めると、21時だった。目の前には、右手で何かを書きながら、左手で焼き鳥を持って食べる神吉さんがいた。ここは事務所か。っていうか神吉さん、充分器用じゃん。
「おはようございます、奏太くん。よく寝られましたか?」
「おかげさまで……。」
起き上がろうとして、頭がクラっとした。あ、そうだった。俺は腹が減っているんだった。
「はい、どうぞ!」
神吉さんは、俺に麦茶と焼き鳥と白米をすすめた。
「ありがとうございます……。」
麦茶を飲み、焼き鳥を口に運んだ俺は、思わず声が出た。
「う、うまっ。」
「美味しいでしょ?ここの焼き鳥屋、国産鶏しか使わないんです。」
これは、単にこの焼き鳥が美味しいってだけのおいしさじゃない……。
「それに、しっかりしたものを食べるのは、久しぶりでしょ?」
そう、それだ。白米も食べた。美味い。ふっくらしていてツヤがあって。何より、白米を食べるのは3週間ぶりくらいだ。昼の弁当も、自分で作るかコンビニで買って学校行くか、だったもんな……。
「さてと、本題です。食べながら聞いて結構ですからね。」
俺はコクコクとうなずいた。口に鶏が入ってるからな。
「未来に行くには、色々と下準備が必要です。まず、その姿のまま未来に行って大人版奏太くんと接触すると、さすがに過去の自分にそっくり過ぎですので、怪しまれます。怪しまれてしまっては意味がありません。そこで、僕の父が開発した、この粉薬を飲んで、顔を変えなければいけません。」
顔を変える!?
「信じられないとは思いますが、顔が変わります。」
そうなのか……。まぁ、たしかに過去の自分が目の前にいたら誰でもビビるだろう。
「それと、後々この時代に戻ってくることに備えて、お昼は僕とお勉強ですので、教科書類を忘れないように。」
マジかよ……。あっちでも体育はあるのだろうか……。
「心配しなくても、体育はありませんよ。僕が教えられませんからね!まぁ、奏太君よりはできますけどぉ?」
なんか突然偉そうだな。でも良かった。ってまた透視!?食べ終わった俺は、さっきから気になっていることを素直に聞いてみた。
「普通、未来を変えるなら過去に行きません?」
「奏太くん。やはりそうきましたか。では、幼き今の奏太くんが、2月の頃やその前の奏太くんのお母さんや昔の奏太くんのお父さんを説得するのと、未来の奏太くんを説得するのと、どちらが効率が良いと思いますか?」
たしかに……未来の方が効率が良いな。
「分かっていただけました?これが最善の手なんです!」
「分かりました。いつ決行ですか?」
「いつでも結構ですよ、決行だけに。なんつって。」
オヤジだ……。
「オヤジじゃないですよ。奏太くんさえ良ければ、今にでも未来には行けますよ。」
まただ。
「そ、そうなんですか!?じゃあ、明日の放課後でいいですか?色々準備しないといけないらしいし。」
「了解しました。お試しコースですか?それとも、本格的なコースですか?」
俺の中ではもう決まっている。
「本格的なコースで、お願いします。」
俺が神吉さんの目を見ると、神吉さんは相変わらずニコニコしながら俺を見つめていた。
「了解しました。では、お家に帰りましょうか。お送りしますよ。」
「大丈夫ですよ、どうせすぐそこなんだし。」
「そうですか?では、明日の放課後、改めて奏太くん家に行きますからね!待ってますよ!」
「はい。では。」
ドアを開けた俺は、
「焼き鳥……美味しかったです……。」
と呟いた。
「それは良かった!」
さすが神吉さんだ……。聞き逃さなかった。もしかすると神吉さんは、すごい人なのかもしれない、と俺は感じた。
どうしよう……。腹が減った……。ついにお金も今日の朝ごはん分で底を突き、冷蔵庫の食料も残りわずか。昼ごはんくらい無くても生きていけると油断していた……腹が……減った……。今家に帰っているところだが、正直道があっているかすら分からない。壁に手をついて歩いても、座ってしまいたい。あぁ……もうダメだ……神吉さん……さよなら……。
「奏太くん。」
あれ、体が倒れない。この感じ、昨日もあったような……。
「奏太くん?」
あ……神吉さんか……。
「家までもうちょっとだからね。」
「も……ある……ませ……。」
「ん?歩けない?おんぶしようか?」
おんぶ……おんぶって何だっけ。
「ほら!背中に乗って!」
背中に乗る……あ、はい……。
「よいしょっ。あ、軽っ。」
もう、なんでもいいや……。
ん……ここは……俺の部屋。起き上が……れない。
「おはよう奏太くん。」
神吉さんが部屋に入ってきた。
「はい、とりあえずこれをどうぞ。」
近づいてくるなり、神吉さんは俺の口に何かを突っ込んだ。ん……いちご……。甘い。
「空きっ腹に突然刺激的なものは良くないのでね。あ、ご飯は作ってありますよ。こう見えて、料理は得意分野なんですよ!さぁ、食べましょう!」
俺はゆたぁーっと起き上がると、フラフラしながらダイニングに向かった。
「どうですか?美味しそうでしょ!奏太くんといい勝負!」
神吉さん、俺が料理なら出来るということまで調査済みなのか……。
「う、うまそうっす。」
「良かった!どうぞ!」
「い、いただきます……。」
あ、俺喋れる……!とりあえずスープを……って美味しい……美味しすぎる……俺といい勝負って、嫌味かよ……美味い……。
「どうです?お味は!」
「めっちゃ美味しいっす。」
続く!
次回 第4話『楽しい人だな』
「おはようございます、奏太くん。よく寝られましたか?」
「おかげさまで……。」
起き上がろうとして、頭がクラっとした。あ、そうだった。俺は腹が減っているんだった。
「はい、どうぞ!」
神吉さんは、俺に麦茶と焼き鳥と白米をすすめた。
「ありがとうございます……。」
麦茶を飲み、焼き鳥を口に運んだ俺は、思わず声が出た。
「う、うまっ。」
「美味しいでしょ?ここの焼き鳥屋、国産鶏しか使わないんです。」
これは、単にこの焼き鳥が美味しいってだけのおいしさじゃない……。
「それに、しっかりしたものを食べるのは、久しぶりでしょ?」
そう、それだ。白米も食べた。美味い。ふっくらしていてツヤがあって。何より、白米を食べるのは3週間ぶりくらいだ。昼の弁当も、自分で作るかコンビニで買って学校行くか、だったもんな……。
「さてと、本題です。食べながら聞いて結構ですからね。」
俺はコクコクとうなずいた。口に鶏が入ってるからな。
「未来に行くには、色々と下準備が必要です。まず、その姿のまま未来に行って大人版奏太くんと接触すると、さすがに過去の自分にそっくり過ぎですので、怪しまれます。怪しまれてしまっては意味がありません。そこで、僕の父が開発した、この粉薬を飲んで、顔を変えなければいけません。」
顔を変える!?
「信じられないとは思いますが、顔が変わります。」
そうなのか……。まぁ、たしかに過去の自分が目の前にいたら誰でもビビるだろう。
「それと、後々この時代に戻ってくることに備えて、お昼は僕とお勉強ですので、教科書類を忘れないように。」
マジかよ……。あっちでも体育はあるのだろうか……。
「心配しなくても、体育はありませんよ。僕が教えられませんからね!まぁ、奏太君よりはできますけどぉ?」
なんか突然偉そうだな。でも良かった。ってまた透視!?食べ終わった俺は、さっきから気になっていることを素直に聞いてみた。
「普通、未来を変えるなら過去に行きません?」
「奏太くん。やはりそうきましたか。では、幼き今の奏太くんが、2月の頃やその前の奏太くんのお母さんや昔の奏太くんのお父さんを説得するのと、未来の奏太くんを説得するのと、どちらが効率が良いと思いますか?」
たしかに……未来の方が効率が良いな。
「分かっていただけました?これが最善の手なんです!」
「分かりました。いつ決行ですか?」
「いつでも結構ですよ、決行だけに。なんつって。」
オヤジだ……。
「オヤジじゃないですよ。奏太くんさえ良ければ、今にでも未来には行けますよ。」
まただ。
「そ、そうなんですか!?じゃあ、明日の放課後でいいですか?色々準備しないといけないらしいし。」
「了解しました。お試しコースですか?それとも、本格的なコースですか?」
俺の中ではもう決まっている。
「本格的なコースで、お願いします。」
俺が神吉さんの目を見ると、神吉さんは相変わらずニコニコしながら俺を見つめていた。
「了解しました。では、お家に帰りましょうか。お送りしますよ。」
「大丈夫ですよ、どうせすぐそこなんだし。」
「そうですか?では、明日の放課後、改めて奏太くん家に行きますからね!待ってますよ!」
「はい。では。」
ドアを開けた俺は、
「焼き鳥……美味しかったです……。」
と呟いた。
「それは良かった!」
さすが神吉さんだ……。聞き逃さなかった。もしかすると神吉さんは、すごい人なのかもしれない、と俺は感じた。
どうしよう……。腹が減った……。ついにお金も今日の朝ごはん分で底を突き、冷蔵庫の食料も残りわずか。昼ごはんくらい無くても生きていけると油断していた……腹が……減った……。今家に帰っているところだが、正直道があっているかすら分からない。壁に手をついて歩いても、座ってしまいたい。あぁ……もうダメだ……神吉さん……さよなら……。
「奏太くん。」
あれ、体が倒れない。この感じ、昨日もあったような……。
「奏太くん?」
あ……神吉さんか……。
「家までもうちょっとだからね。」
「も……ある……ませ……。」
「ん?歩けない?おんぶしようか?」
おんぶ……おんぶって何だっけ。
「ほら!背中に乗って!」
背中に乗る……あ、はい……。
「よいしょっ。あ、軽っ。」
もう、なんでもいいや……。
ん……ここは……俺の部屋。起き上が……れない。
「おはよう奏太くん。」
神吉さんが部屋に入ってきた。
「はい、とりあえずこれをどうぞ。」
近づいてくるなり、神吉さんは俺の口に何かを突っ込んだ。ん……いちご……。甘い。
「空きっ腹に突然刺激的なものは良くないのでね。あ、ご飯は作ってありますよ。こう見えて、料理は得意分野なんですよ!さぁ、食べましょう!」
俺はゆたぁーっと起き上がると、フラフラしながらダイニングに向かった。
「どうですか?美味しそうでしょ!奏太くんといい勝負!」
神吉さん、俺が料理なら出来るということまで調査済みなのか……。
「う、うまそうっす。」
「良かった!どうぞ!」
「い、いただきます……。」
あ、俺喋れる……!とりあえずスープを……って美味しい……美味しすぎる……俺といい勝負って、嫌味かよ……美味い……。
「どうです?お味は!」
「めっちゃ美味しいっす。」
続く!
次回 第4話『楽しい人だな』
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