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6.生類憐れみの佐和田怜

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 最近、八神乃希がうるさい。
「瑞木さん、かわいいなぁ……。」
「うんうんはいはい。今日、それ何回目。」
「な、何回目?」
「29回目。次は祝30だよ。」
「い、言わねぇ言わねぇ!」
「はいはい。……まぁ、瑞木さんは他の女子と違う感じするよね。」
「だろだろ!?」
すげぇ楽しそうじゃん。そんなに目で追ってたら、乃希のファンが泣くよ。どうしてそんなに無自覚なのかな。
「……あぁ、瑞木さんかわ……。」
「ん?」
「あ、い、いやいやいやいや何も言ってない何も言ってない。」
面白いな、この人。

 さて、いよいよ、遊ぶ日がやってきました。とある遊園地に、集合。
「お、やっほー。」
「やっほー、八神くん。」
シンプルだけどダサくない、さすがモテるイケメンだなって私服。
「私服って新鮮だね。瑞木さん、あの、あれみたい。」
「どれよ。」
「あのーあれだよ……あれあれ。」
「どれかな。」
何が言いたいんだろ?八神くんが唸っている間に、茉琴といのりちゃんも到着。
「やっぴ!」
「あ、お洋服のだいきくん久しぶりに見た~。」
「あーたしかに!相変わらず幼稚園生みたいだな?」
「幼稚園生……ひどい。」
八神くん、いのりちゃんの頭をなでなで。
「こら、わたしは同い年だぞぉ。」
「あはは。」
おー、本当に幼馴染なんだね。
「さて、集合時間まであと5分。佐和田くんはいつ到着するのか!」
茉琴式カウントダウンが始まった。その直後に、佐和田くん到着。
「ごめん。道の猫に気を取られてた。」
「ねこさん。」
「生類憐れみの令かよ。」
「綱吉だから僕。」
「怜だよね!?」
楽しい人たちですこと。
「よし、入るぜ!」
「ごーごー!」
遊園地に、レッツゴー!

 早乙女さんといのりが隣に並んで歩き、その後ろを俺と怜で瑞木さんを挟んで歩く。
「意外と混んでるなぁ。」
「人気ないって聞くけどね~、ここ。」
「まず何に乗る?」
「わたしあれ乗りた~い!」
いのりが指差したのは、けっこうハードな絶叫系だった。こう見えてこういうの強いからなぁ……。
「や、ちょっと、僕はこれ無理だ。」
「わ、私も。3人で行っておいでよ。」
怜と瑞木さんがすっと後ずさった。
「さやちゃん、苦手?」
「いや、これはちょっと怖そうすぎ。ね?」
「うん。無理でしょ。空中ブランコくらいなら乗れるけど。」
瑞木さんと怜がふたりで待機ってことか。……なんかなぁ。ちょっと複雑。
「じゃあ3人で行ってくるね。」
「ごめんね、ちょっと待ってて!」
「だいきくん、行くよ!」
いのりは俺の手を掴んでずんずん進んでいく。

 さて、意外なタイミングで佐和田くんとふたりきりになってしまった私。
「もしかして、ジェットコースターとか苦手?」
ベンチに座りながら、佐和田くんにそう尋ねた。
「いや、苦手ってほどではないけど、得意ってわけでもない。軽めのなら乗れると思うよ。」
「そっか……茉琴たちが遊園地って決めちゃったけど、良かったの?」
「あぁ、それは全然大丈夫。基本的に僕には決断力というものが無いからね。」
「あはは……。」
「瑞木さんだから言うけどさ、僕、本当は休みの日に外に出るの、そんなに好きじゃないんだよね。」
「えっ。」
「まぁでも、メンツが良さげだったし、今回は来てみた。……ちょっと楽しくなりそうで嬉しい。いつもは部屋にこもってばっかりだから。」
あ……笑った……。心臓が高鳴る。ちょっと微笑んだだけなのに、私が嬉しくなる。
「……でも暑い。」
「……。っ!そ、そうだね。」
「珍しいね。ぼーっとしてた。」
「あ、ご、ごめんね。」
「いや。瑞木さんも人間なんだね。僕なんて24時間中、寝てる時以外はぼーっとしてるような人生なのに、瑞木さんはいつも働いてる気がして。」
「そ、そんなことないよ!私も止まってる時あるし。」
「そうかなぁ。」
改めてよく見ると、おしゃれな私服だなぁ……空色のポロシャツに藍色のジーンズ。やっぱり好きだな、佐和田くん。


To be continued…
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