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3話 邂逅編
18 喉まで呑み込む※
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天に刃向かう紅蓮の刃先を突き立てる。ドンともザクリとも言えない音を立てて赫赤の鋼は畳に深く食い込んだ。
仰臥する刻の視線は己の頭上へ、それから火群へとじとりと合わされる。
「お前のおかげで俺の寝台は穴だらけなんだがなあ」
「へェ」
刻の下肢を跨ぐ火群は適当に頷いて、組み敷く男の頭上に突き立てた紅蓮の柄から手を離した。
今更である。穴だらけらしい畳はどうせ汚れるのだ。寝所に敷く畳は数枚を重ねており、刻が折を見て上下の畳を入れ替えてやりくりしていることも、どうにもならなければ新しいものに替えていることも、あるいは畳を突き抜けて床板にまで傷が入っていることも知っている。その度に逐一、刻が小言を投げてくるので。
刻の寝所に灯りはない。執務用の文机や房の入り口には燈台を置き火を入れていたが、几帳で仕切られた寝所からは精々天井にぼんやりと照り返す光しか見えない。代わりに半端に開かれた障子から冴え冴えとした月明かりが差していて、刻の表情ぐらいは見て取れた。別に顔を見る必要はないが、手元ぐらいは見えた方が行為を進める上で楽だった。
火群は言い含められたとおり珊瑚が置いていった寝衣を纏っている。刻も生地の厚い仕事着の直衣から薄手の寝衣へと着替えていた。見下ろす寝衣の、真白い無地が月光を照り返して眩しい。
火群はずりずりと刻の腹から腿へ、そして膝まで尻を下げ、眩さを避けるようにつむりを伏せた。ちょうど刻の股間が眼前に来る位置で、そのまま鼻先を着物の合わせへと潜らせる。重なる布の奥にはそのまま裸身が隠れている。こんなときにはいちいち下着を着けない、割り切ったところだけは刻の褒められるところだ。そのまま萎れた魔羅に鼻先を擦りつけ、茂みが薄く覆う根元を唇で食んだ。
「ん」
頭上からは何の声もせず、身体も何の反応も示さない。喧しいよりは静かな方がいい。火群は鼻から息を漏らしながら、あむあむと唇を滑らせていく。
舌先は肉棒をなぞり、未だ浮き上がらない血管を辿るようにぐにぐにと押しつける。口内に溢れる唾液をまぶしながら唇を進めれば、亀頭に辿り着く頃にはぬるぬると柔く芯を持ち始めている。
根元を指で支えながら舌を垂らし、先端へと唾液を零す。視線だけをちらりと上へ向ければ、刻は何を言うともなくただ火群を見下ろしている。
刻とまぐわうのは楽だ。余計なことを言わない、騒がない、火群のやることの邪魔をしない。火群のしたいようにさせて、火群の望んだ動きを返してくる。ただ視線だけがもの言いたげに、火群に注がれたまま留まっている。それだけが時に煩わしい。
つるりとした亀頭をひと舐めして、そのまま雁首に撓む皮を舌で抉る。街中で適当に声をかけてくる男たちと違い、濃い臭いもなければ舌先に乗る恥垢もなかった。そういえばこいつがどこの風呂を使うのか知らないな、などと無意味に考えながら、舌先で皮を伸ばしては緩ませて肉の括れの感触に浸った。左の指先では硬くなり始めた太い根元をやわやわと揉み、右手では双珠を擽りたぷりとした重みを掌に転がす。
は、と荒くも密やかな吐息が頭上から聞こえる。雁首から裏の縫い目へ舌を滑らせ、火群はまた少しずつ身体を下げた。後孔が疼いて自然ちいさく尻を揺らす格好になる。ちらりと魔羅の向こうを窺っても、少しずつ荒くなる息を漏らすだけでやはり刻は何も言わない。火群の尻が揺れる様を下卑た声で揶揄したりしないのも刻の楽なところだ。誰に何を言われようと火群は気になど留めないが、やはりうるさいよりは静かな方がいい。
刻から眼前へと視線を戻す。辿り着いた根元にぐにぐにと舌を押しつけた。転がしていた陰嚢にまで舌を滑らせ、唇で食んで吸う。ちゅっと湿った音がして、弾むようにふぐりが唇から零れ落ちる。また舌先で掬い上げる。膨らんで張った陰嚢の感触は瑞々しい果実を転がすようで、火群はそっと目を細めた。自分の唾液と、先端から垂れ流れる液体の混ざったものが甘く感じる。
陰嚢で右に左にと遊ぶことしばし、火群はべとりと広げた舌でまた幹の裏筋を、今度は逆撫でるように舐め上げた。ぬる、ぬると、浮き上がり始めた血管の僅かな凹凸を擽り、雁首をちいさく吸う。辿り着いた頂で、火群はぱかりと口を開いた。
「あ、んぅ、っむ」
口内で溢れる唾液が垂れ落ちる前に、亀頭ごとぱくりと咥え込む。つるんとした先端を唾液と絡めるように舐め回し、辿ったばかりの雁首、続けて幹の血管へと舌を撫で下ろしてゆく。
太さを確かめるように唇も滑らせれば、喉の奥へ、奥へと肉棒が入り込んでいく。舌に肉を乗せるように呑み込めばまるい亀頭が口蓋を滑り、硬いところから軟らかいところへ、やがて喉と呼べるところまで潜り込んでいく。
火群がちらりと刻を仰ぐのと、ずぞと音がするほど奥へと亀頭を吸い込んだのは同時だった。反射的に喉が蠢いて這入り込むものを締めつける。思わず濁った声が漏れる。
「お゛、ごっ」
「ぐッ」
刻の眉間にきつく皺が寄った。浮き上がる内腿を押さえつけ、火群はぐっと顔を寄せる。痛みを覚える手前まで開かれた顎と、つるつるした肉に触れる唇と、狭い中で蠢かせる舌と擦られる口蓋と。そんなものを感じながら火群は意識的に喉を開く。視界にちかちかと光が瞬いて見える。
ぞる、ぞると、時間をかけて呑み込んで、鼻先が刻の陰毛に埋まる。鼻から漏れる呼吸は自然荒くなり、獣の呻きのようだった。瞬きを残す視界が滲んで、それでも火群は喉奥を緩めては、丸ごと飲み下さんばかりに締める。奥まで、串刺し、そんな言葉が脳裏に浮かんで弾ける。
「……こ、っの、ッ!」
頭上から強く声が叩きつけられた。押さえつけていた刻の足が大きく跳ねて、火群の髪が両手で掴まれる。強さとや性急さとは裏腹にやわらかく後ろ髪を引かれる。
されるがまま、火群は時間をかけて呑み込んだ頭をじりじりと退げていく。せめてもの抵抗に喉で吸い舌で魔羅を逆撫でれば、舌打ちのような声が追加で降ってくる。最後に残った亀頭も舌で引っかけて唇で吸ったが、そのままぬるんと外へと引きずり出された。空咳をすれば口の中に唾液と濃ゆい先走りの残滓が絡み、端からでろりと零れ落ちていく。
「っに、すンだよ」
「はッ……いきなり、喉、入れンじゃ、ねぇ、よ」
していた火群よりされるがままだった刻の方が呼吸が乱れている。絶え絶えの言葉に一度上体を起こした火群は眉根を寄せた。
「イイだろォが、奥」
「……口、で」
喉、と、口は違うらしい。要求しておきながら刻は苦々しい顔をしている。
仰臥する刻の視線は己の頭上へ、それから火群へとじとりと合わされる。
「お前のおかげで俺の寝台は穴だらけなんだがなあ」
「へェ」
刻の下肢を跨ぐ火群は適当に頷いて、組み敷く男の頭上に突き立てた紅蓮の柄から手を離した。
今更である。穴だらけらしい畳はどうせ汚れるのだ。寝所に敷く畳は数枚を重ねており、刻が折を見て上下の畳を入れ替えてやりくりしていることも、どうにもならなければ新しいものに替えていることも、あるいは畳を突き抜けて床板にまで傷が入っていることも知っている。その度に逐一、刻が小言を投げてくるので。
刻の寝所に灯りはない。執務用の文机や房の入り口には燈台を置き火を入れていたが、几帳で仕切られた寝所からは精々天井にぼんやりと照り返す光しか見えない。代わりに半端に開かれた障子から冴え冴えとした月明かりが差していて、刻の表情ぐらいは見て取れた。別に顔を見る必要はないが、手元ぐらいは見えた方が行為を進める上で楽だった。
火群は言い含められたとおり珊瑚が置いていった寝衣を纏っている。刻も生地の厚い仕事着の直衣から薄手の寝衣へと着替えていた。見下ろす寝衣の、真白い無地が月光を照り返して眩しい。
火群はずりずりと刻の腹から腿へ、そして膝まで尻を下げ、眩さを避けるようにつむりを伏せた。ちょうど刻の股間が眼前に来る位置で、そのまま鼻先を着物の合わせへと潜らせる。重なる布の奥にはそのまま裸身が隠れている。こんなときにはいちいち下着を着けない、割り切ったところだけは刻の褒められるところだ。そのまま萎れた魔羅に鼻先を擦りつけ、茂みが薄く覆う根元を唇で食んだ。
「ん」
頭上からは何の声もせず、身体も何の反応も示さない。喧しいよりは静かな方がいい。火群は鼻から息を漏らしながら、あむあむと唇を滑らせていく。
舌先は肉棒をなぞり、未だ浮き上がらない血管を辿るようにぐにぐにと押しつける。口内に溢れる唾液をまぶしながら唇を進めれば、亀頭に辿り着く頃にはぬるぬると柔く芯を持ち始めている。
根元を指で支えながら舌を垂らし、先端へと唾液を零す。視線だけをちらりと上へ向ければ、刻は何を言うともなくただ火群を見下ろしている。
刻とまぐわうのは楽だ。余計なことを言わない、騒がない、火群のやることの邪魔をしない。火群のしたいようにさせて、火群の望んだ動きを返してくる。ただ視線だけがもの言いたげに、火群に注がれたまま留まっている。それだけが時に煩わしい。
つるりとした亀頭をひと舐めして、そのまま雁首に撓む皮を舌で抉る。街中で適当に声をかけてくる男たちと違い、濃い臭いもなければ舌先に乗る恥垢もなかった。そういえばこいつがどこの風呂を使うのか知らないな、などと無意味に考えながら、舌先で皮を伸ばしては緩ませて肉の括れの感触に浸った。左の指先では硬くなり始めた太い根元をやわやわと揉み、右手では双珠を擽りたぷりとした重みを掌に転がす。
は、と荒くも密やかな吐息が頭上から聞こえる。雁首から裏の縫い目へ舌を滑らせ、火群はまた少しずつ身体を下げた。後孔が疼いて自然ちいさく尻を揺らす格好になる。ちらりと魔羅の向こうを窺っても、少しずつ荒くなる息を漏らすだけでやはり刻は何も言わない。火群の尻が揺れる様を下卑た声で揶揄したりしないのも刻の楽なところだ。誰に何を言われようと火群は気になど留めないが、やはりうるさいよりは静かな方がいい。
刻から眼前へと視線を戻す。辿り着いた根元にぐにぐにと舌を押しつけた。転がしていた陰嚢にまで舌を滑らせ、唇で食んで吸う。ちゅっと湿った音がして、弾むようにふぐりが唇から零れ落ちる。また舌先で掬い上げる。膨らんで張った陰嚢の感触は瑞々しい果実を転がすようで、火群はそっと目を細めた。自分の唾液と、先端から垂れ流れる液体の混ざったものが甘く感じる。
陰嚢で右に左にと遊ぶことしばし、火群はべとりと広げた舌でまた幹の裏筋を、今度は逆撫でるように舐め上げた。ぬる、ぬると、浮き上がり始めた血管の僅かな凹凸を擽り、雁首をちいさく吸う。辿り着いた頂で、火群はぱかりと口を開いた。
「あ、んぅ、っむ」
口内で溢れる唾液が垂れ落ちる前に、亀頭ごとぱくりと咥え込む。つるんとした先端を唾液と絡めるように舐め回し、辿ったばかりの雁首、続けて幹の血管へと舌を撫で下ろしてゆく。
太さを確かめるように唇も滑らせれば、喉の奥へ、奥へと肉棒が入り込んでいく。舌に肉を乗せるように呑み込めばまるい亀頭が口蓋を滑り、硬いところから軟らかいところへ、やがて喉と呼べるところまで潜り込んでいく。
火群がちらりと刻を仰ぐのと、ずぞと音がするほど奥へと亀頭を吸い込んだのは同時だった。反射的に喉が蠢いて這入り込むものを締めつける。思わず濁った声が漏れる。
「お゛、ごっ」
「ぐッ」
刻の眉間にきつく皺が寄った。浮き上がる内腿を押さえつけ、火群はぐっと顔を寄せる。痛みを覚える手前まで開かれた顎と、つるつるした肉に触れる唇と、狭い中で蠢かせる舌と擦られる口蓋と。そんなものを感じながら火群は意識的に喉を開く。視界にちかちかと光が瞬いて見える。
ぞる、ぞると、時間をかけて呑み込んで、鼻先が刻の陰毛に埋まる。鼻から漏れる呼吸は自然荒くなり、獣の呻きのようだった。瞬きを残す視界が滲んで、それでも火群は喉奥を緩めては、丸ごと飲み下さんばかりに締める。奥まで、串刺し、そんな言葉が脳裏に浮かんで弾ける。
「……こ、っの、ッ!」
頭上から強く声が叩きつけられた。押さえつけていた刻の足が大きく跳ねて、火群の髪が両手で掴まれる。強さとや性急さとは裏腹にやわらかく後ろ髪を引かれる。
されるがまま、火群は時間をかけて呑み込んだ頭をじりじりと退げていく。せめてもの抵抗に喉で吸い舌で魔羅を逆撫でれば、舌打ちのような声が追加で降ってくる。最後に残った亀頭も舌で引っかけて唇で吸ったが、そのままぬるんと外へと引きずり出された。空咳をすれば口の中に唾液と濃ゆい先走りの残滓が絡み、端からでろりと零れ落ちていく。
「っに、すンだよ」
「はッ……いきなり、喉、入れンじゃ、ねぇ、よ」
していた火群よりされるがままだった刻の方が呼吸が乱れている。絶え絶えの言葉に一度上体を起こした火群は眉根を寄せた。
「イイだろォが、奥」
「……口、で」
喉、と、口は違うらしい。要求しておきながら刻は苦々しい顔をしている。
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