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時、来たれり

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ブラホードの放った魔法は、上空で派手に音を鳴らし、良く人々の目に留まった。これはとある者達への信号弾であったため、攻撃用ではなくとにかく人の目に留まるように構築された火炎魔法だった。


「・・・おい、あの合図だ!」


「まさか・・・本当にこんな時が来るなんてな」


それを見ていたある男達は、すぐに行動に出た。

男達は黒の騎士団でもブラホードを心酔する者達だ。
常にブラホードと行動を共にしているが、基本的には近くではなく一定の距離を保って行動している。
それは何故かと言うと、彼らはブラホードの身に異変が起きたときに対応するためなのである。ブラホードが保身のために組織した護衛の一種なのだ。


「行くぞっ!」


男達はその場から駆け出し、先ほどブラホードが放ったのと同じ信号弾代わりの火炎魔法を上空に放った。


ドーン


立て続けに音がする魔法を使えば、嫌でも周囲は反応する。
ブラホード達を確保するために押しかけていた教団の騎士達は、今度は不審な動きを見せる男達を見つけて確保しようと動き出す。


「止まれ!我々は--」


「うるせぇ!」


男達は動きやすい身軽な恰好をしていたが、それでも腰元に通常よりはやや短い剣を携帯していた。
有事の際に迅速に行動できるようにするための装いだが、剣は短く耐久性が低い代わりに切れ味を極限まで高められて作られている。
その剣は、男達を確保しようと立ち塞がった騎士達を鎧ごとあっさり斬り伏せた。


「なっ・・・!?」


教団の騎士達は戦い慣れてはいなかった。強大なアルス教団の聖騎士であるというだけで、人間なら戦意を喪失してろくに抵抗することもないからである。だから黒の騎士団の中でもブラホードが選んだ精鋭では、確保はおろか時間稼ぎにすらならないほどに圧倒的な実力差があった。

あまりに突発的な出来事に、騎士達は包囲網すら敷くことも出来ず、立ち塞がる者は易々と斬り伏せられて男達の逃走を許してしまう。


「な、なんだアイツらは・・・!お、追えっ!!」


聖騎士団は慌てて男達を追うが、もう遅い。
男達は既に騎士団の手の届かないところまで移動してしまっていた。


「決起のとき、来たれり!」


そして男達はそう叫びながら、散り散りになって姿を眩ませた。
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