国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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矜持

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「私は、最初に会ったときから本当にオミトさんのことが好きなんです。一緒にいたいと思っています」


「な・・・」


あまりに場違いな告白に、オミトは絶句する。
ブラホードは「フッ」と面白くてたまらないという風に噴き出した。


「これからアルス教が介入し、この領地は・・・いえ、ランドールは一時的に混乱するかもしれません。ですが、その後は必ず平和が訪れます。そのときは、オミトさん・・・私と一緒になってくれませんか?騙しておいて、図々しいとは思ってますけど・・・」


顔を赤らめながら言うドロシーに、オミトは困惑顔を見せる。
あまりの超展開で頭がいっぱいいっぱいになり、何を言ったら良いのかオミトにはわからなかった。


それでも・・・


「いや、俺はルーデル家を裏切ることは出来ないよ。ドロシー」


気が付けば、オミトはそう口にしていた。
どれだけ頭が困惑していても、それでも絶対に彼の中で揺れ動かないものがある。

それはルーデル家に仕えてきた人間としての矜持。
それが考えるより先に、オミトに言葉を発させていた。


「俺とて君は嫌いではない。だが、この地に、ルーデルに災いをなすというのであれば、俺はただそれを見ているだけでいるつもりはない」


オミトはそう言って、腰元の得物に手をかける。


「貴様!」


叛意ありと見た神官が、オミトへ敵意を向ける。
数は圧倒的。ここで数人斬り伏せたところで、スタミナが切れてオミトはたちまちのうちにやられてしまうだろう。
それがわかっていても、ルーデル家の使用人としての矜持がオミトを奮い立たせていた。



「オミトさん・・・この地は確かに、禁止物である『死人の種』を密輸していたのですから、アルス教による介入があるでしょう。ですが、一時的なものです。反抗さえなければ、被害は最小限で済みます」


ドロシーが切なさそうに表情を歪めて言った。


「だが、ルーデル家は無くなるのだろう?」


「それは・・・」


ドロシーは答えに窮した。
アルス教が禁止物として取り締まっている死人の種を、現当主であるリュートが把握しながらにして密輸していたのだから、ルーデル家が無事で済まないだろうことは予想がついた。


「ならば、俺はドロシー。君と一緒になることはできない」


ドロシーの態度を見て決意を固めたオミトは、迷いなくはっきりとそう答えた。
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