429 / 470
ドロシーと半同居
しおりを挟む
「すみません、急に押しかけてきておいて、このように気を遣わせてしまって・・・」
「いいえ、お気になさらず」
ルーデル邸に戻ったオミトについてきたドロシーは、当初近くにある集落にある宿屋を拠点にする予定であった。
だが「恋人同士なのに離れ離れにするのは良くない」と言って、使用人一同が気を利かせて屋敷からそう離れていない、使用人達用の宿舎の空き部屋をドロシーに提供したのである。
勿論、流石にこれはドロシーも遠慮しようとしたが、辺境で娯楽に飢えているルーデルの使用人達はオミト達のことをギャラリーしたくてたまらないらしく、あれよあれよ言う間に強引に部屋に通されてしまったのだ。
ちなみに本来なら当主であるリュートに伺いを立てなければいけない案件だが、誰もがそのような手順など踏むことはなかった。話題にも上がらなかった。それだけリュートはルーデル邸では使用人達に軽んじられている。
「あの・・・何かお手伝いでも・・・」
流石にドロシーが恐縮してそう申し出るが、部屋にドロシーを案内したメイドはきっぱりとそれを断り
「その分の時間を、どうかオミトさんとお過ごしください」
と笑顔で言ったのだった。
ちなみに空き部屋は角部屋で、他の使用人の部屋とも少しばかり離れていて、「多少は部屋で音を立てても誰にも聞こえませんから」などとメイドはドロシーに耳打ちなどして、ドロシーが顔を真っ赤にする一面もあった。
実際には刺激に飢えた使用人達が耳を澄ませているので、とても彼らが期待しているようなことが出来るような環境ではないが。
-----
「すまない。なんだか、その、いろいろと大変なことになってしまって」
オミトはなんだかんだいつの間にか流れで、いつの間にかドロシーを様々なことに巻き込んでしまっていることについて詫びた。
呪術に関してもそうだが、宿についても好意という建前に押され、使用人達によってあれよあれよ言う間に部屋を強引にあてがわれてしまった。
使用人達一同に明らかに親切心以外の他意があることにはオミトだって気付いている。
「いえ、まぁ、多少は驚きましたけど・・・けど、この状況はこれ以上ないほどに好都合です」
「・・・まぁ、確かに」
オミトとの恋人とて、潜入する以上は、寝泊まりする場が近いに越したことはない。
それにルーデル邸から黒の騎士団の詰所は近いので、呪術師の捜査をするにはこれ以上ないくらい都合が良い環境だった。
しかもオミト達からの申し出なのではなく、使用人から無理矢理に近い状況で誘い込まれての下宿なのだから、ドロシーがここに来たことを怪しまれることもなかった。
「なんだか変なことになりましたけど、これから気を付けて捜査していこうと思います」
「ああ・・・そうだね」
オミト達は視界にこそ入っていないが、屋敷中のそこかしこから視線を浴びているのを自覚し、「やっぱり捜査する上でもちょっと不便かもしれない」などと考えていた。
とにもかくにも、ドロシーと半同居になった上でルーデルの騎士団の内部調査をオミトは始めることになったのである。
「いいえ、お気になさらず」
ルーデル邸に戻ったオミトについてきたドロシーは、当初近くにある集落にある宿屋を拠点にする予定であった。
だが「恋人同士なのに離れ離れにするのは良くない」と言って、使用人一同が気を利かせて屋敷からそう離れていない、使用人達用の宿舎の空き部屋をドロシーに提供したのである。
勿論、流石にこれはドロシーも遠慮しようとしたが、辺境で娯楽に飢えているルーデルの使用人達はオミト達のことをギャラリーしたくてたまらないらしく、あれよあれよ言う間に強引に部屋に通されてしまったのだ。
ちなみに本来なら当主であるリュートに伺いを立てなければいけない案件だが、誰もがそのような手順など踏むことはなかった。話題にも上がらなかった。それだけリュートはルーデル邸では使用人達に軽んじられている。
「あの・・・何かお手伝いでも・・・」
流石にドロシーが恐縮してそう申し出るが、部屋にドロシーを案内したメイドはきっぱりとそれを断り
「その分の時間を、どうかオミトさんとお過ごしください」
と笑顔で言ったのだった。
ちなみに空き部屋は角部屋で、他の使用人の部屋とも少しばかり離れていて、「多少は部屋で音を立てても誰にも聞こえませんから」などとメイドはドロシーに耳打ちなどして、ドロシーが顔を真っ赤にする一面もあった。
実際には刺激に飢えた使用人達が耳を澄ませているので、とても彼らが期待しているようなことが出来るような環境ではないが。
-----
「すまない。なんだか、その、いろいろと大変なことになってしまって」
オミトはなんだかんだいつの間にか流れで、いつの間にかドロシーを様々なことに巻き込んでしまっていることについて詫びた。
呪術に関してもそうだが、宿についても好意という建前に押され、使用人達によってあれよあれよ言う間に部屋を強引にあてがわれてしまった。
使用人達一同に明らかに親切心以外の他意があることにはオミトだって気付いている。
「いえ、まぁ、多少は驚きましたけど・・・けど、この状況はこれ以上ないほどに好都合です」
「・・・まぁ、確かに」
オミトとの恋人とて、潜入する以上は、寝泊まりする場が近いに越したことはない。
それにルーデル邸から黒の騎士団の詰所は近いので、呪術師の捜査をするにはこれ以上ないくらい都合が良い環境だった。
しかもオミト達からの申し出なのではなく、使用人から無理矢理に近い状況で誘い込まれての下宿なのだから、ドロシーがここに来たことを怪しまれることもなかった。
「なんだか変なことになりましたけど、これから気を付けて捜査していこうと思います」
「ああ・・・そうだね」
オミト達は視界にこそ入っていないが、屋敷中のそこかしこから視線を浴びているのを自覚し、「やっぱり捜査する上でもちょっと不便かもしれない」などと考えていた。
とにもかくにも、ドロシーと半同居になった上でルーデルの騎士団の内部調査をオミトは始めることになったのである。
10
お気に入りに追加
652
あなたにおすすめの小説
勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
主人公は、勇者パーティーを追放されて辺境の地へと追放される。
そこで出会った魔族の少女と仲良くなり、彼女と共にスローライフを送ることになる。
しかし、ある日突然現れた魔王によって、俺は後継者として育てられることになる。
そして、俺の元には次々と美少女達が集まってくるのだった……。
良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました
ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。
そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった……
失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。
その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。
※小説家になろうにも投稿しています。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
理不尽にパーティ追放されたので、『レンタル冒険者』始めたら、依頼が殺到しすぎて困る。
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極めるお話です。
「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」
この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。
しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。
レベル35と見せかけているが、本当は350。
水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。
あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。
それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。
リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。
その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。
あえなく、追放されてしまう。
しかし、それにより制限の消えたヨシュア。
一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。
その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。
まさに、ヨシュアにとっての天職であった。
自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。
生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。
目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。
元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。
そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。
一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。
ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。
そのときには、もう遅いのであった。
勇者召喚に巻き込まれたモブキャラの俺。女神の手違いで勇者が貰うはずのチートスキルを貰っていた。気づいたらモブの俺が世界を救っちゃってました。
つくも
ファンタジー
主人公——臼井影人(うすいかげと)は勉強も運動もできない、影の薄いどこにでもいる普通の高校生である。
そんな彼は、裏庭の掃除をしていた時に、影人とは対照的で、勉強もスポーツもできる上に生徒会長もしている——日向勇人(ひなたはやと)の勇者召喚に巻き込まれてしまった。
勇人は異世界に旅立つより前に、女神からチートスキルを付与される。そして、異世界に召喚されるのであった。
始まりの国。エスティーゼ王国で目覚める二人。当然のように、勇者ではなくモブキャラでしかない影人は用無しという事で、王国を追い出された。
だが、ステータスを開いた時に影人は気づいてしまう。影人が勇者が貰うはずだったチートスキルを全て貰い受けている事に。
これは勇者が貰うはずだったチートスキルを手違いで貰い受けたモブキャラが、世界を救う英雄譚である。
※他サイトでも公開
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる