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ドロシーと半同居

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「すみません、急に押しかけてきておいて、このように気を遣わせてしまって・・・」


「いいえ、お気になさらず」


ルーデル邸に戻ったオミトについてきたドロシーは、当初近くにある集落にある宿屋を拠点にする予定であった。
だが「恋人同士なのに離れ離れにするのは良くない」と言って、使用人一同が気を利かせて屋敷からそう離れていない、使用人達用の宿舎の空き部屋をドロシーに提供したのである。

勿論、流石にこれはドロシーも遠慮しようとしたが、辺境で娯楽に飢えているルーデルの使用人達はオミト達のことをギャラリーしたくてたまらないらしく、あれよあれよ言う間に強引に部屋に通されてしまったのだ。

ちなみに本来なら当主であるリュートに伺いを立てなければいけない案件だが、誰もがそのような手順など踏むことはなかった。話題にも上がらなかった。それだけリュートはルーデル邸では使用人達に軽んじられている。


「あの・・・何かお手伝いでも・・・」


流石にドロシーが恐縮してそう申し出るが、部屋にドロシーを案内したメイドはきっぱりとそれを断り


「その分の時間を、どうかオミトさんとお過ごしください」


と笑顔で言ったのだった。
ちなみに空き部屋は角部屋で、他の使用人の部屋とも少しばかり離れていて、「多少は部屋で音を立てても誰にも聞こえませんから」などとメイドはドロシーに耳打ちなどして、ドロシーが顔を真っ赤にする一面もあった。

実際には刺激に飢えた使用人達が耳を澄ませているので、とてもが出来るような環境ではないが。




-----



「すまない。なんだか、その、いろいろと大変なことになってしまって」


オミトはなんだかんだいつの間にか流れで、いつの間にかドロシーを様々なことに巻き込んでしまっていることについて詫びた。
呪術に関してもそうだが、宿についても好意という建前に押され、使用人達によってあれよあれよ言う間に部屋を強引にあてがわれてしまった。
使用人達一同に明らかに親切心以外の他意があることにはオミトだって気付いている。


「いえ、まぁ、多少は驚きましたけど・・・けど、この状況はこれ以上ないほどに好都合です」


「・・・まぁ、確かに」


オミトとの恋人とて、潜入する以上は、寝泊まりする場が近いに越したことはない。
それにルーデル邸から黒の騎士団の詰所は近いので、呪術師の捜査をするにはこれ以上ないくらい都合が良い環境だった。
しかもオミト達からの申し出なのではなく、使用人から無理矢理に近い状況で誘い込まれての下宿なのだから、ドロシーがここに来たことを怪しまれることもなかった。


「なんだか変なことになりましたけど、これから気を付けて捜査していこうと思います」


「ああ・・・そうだね」


オミト達は視界にこそ入っていないが、屋敷中のそこかしこから視線を浴びているのを自覚し、「やっぱり捜査する上でもちょっと不便かもしれない」などと考えていた。

とにもかくにも、ドロシーと半同居になった上でルーデルの騎士団の内部調査をオミトは始めることになったのである。
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