国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ

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黒の騎士団の崩壊の危険

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タルカスは自分が信頼でき、かつ諜報の得意な部下を部屋へ呼び出し、ブラホードとその部下達についての動向を極秘裏に探らせた。
ブラホードに疑っていることを感づかれてしまうと、証拠隠滅・・・もしくはクーデターなど強硬手段に出てくるとも限らないと思ったからだ。
国の命運がかかっている問題だけに、最悪の事態の可能性について考えるのは、決して大袈裟なことではないと考えた。


「タルカス。結果が出たようだな」


「・・・」


数日後、部下からの報告を聞いてタルカスは愕然とした。
そんなタルカスに対し、いつもと変わらぬ態度でジョセフは報告の内容を聞く。


「ブラホードの手の者による死人の種の回収は事実であり、またそれをどこかへ運び出しているのも事実。そして何よりそれに関わっている人員が数百人ほど。そしてリュート辺境伯サマも織り込み済みなのか、ほとんど騎士団にも領内にも隠す様子が見られていない・・・こりゃ思ったより遥かに面倒だな」


言葉の割にジョセフは軽い口調だ。
だが、それは彼の性分だからであって、事態を軽く見ているわけではない。


「こんな事が露呈したら、この地のみならずランドールは終わりだ。かといって、すぐにやめさせてぇが、それも簡単じゃねぇ」


タルカスは大きく溜め息をついた。
騎士団の規律でだけでもブラホードを捕まえることは出来るが、彼が大人しく捕まってくれるかはわからなかった。最悪の場合は逆上したブラホードを筆頭にクーデターが発生する可能性がある。
そしてそうなったとき、そのクーデターは成功してしまう可能性があるということがタルカスには恐ろしくいてたまらなかった。


「死人の種に関わっているとわかっているだけでも数百・・・他にもどれだけブラホードの手が回っている騎士がいるかわかったものじゃないな。アイツ、人望凄いから」


ジョセフの言葉に、タルカスは胃が痛くなった。
ブラホードは気が回るし、本当に良いやつだと思っていた。だからこそ騎士団長の代わりを頼んだ。
そんな人望のあるブラホードが黒の騎士団の中に置いて、どれだけ子飼いを揃えているかがわからないが、もしかしたら1000を越えているかもしれなかった。
ブラホードの元に統率の取れている騎士が1000人いるとする・・・クーデターを起こされたとしたら、今こうして病に伏せっている自分なんかの指揮する騎士達でそれを防ぐことができるのだろうか?

いや、黒の騎士団の最高司令塔であるリュートが織り込み済みとなれば、むしろクーデターなど起こさずとも何かしらの冤罪を着せてタルカス達のような正常な騎士団員を排除することだって出来るかもしれない・・・タルカスはそんな最悪の想像が頭を過ぎっていた。

しかし、そんなときだった。


「あ、いけね。忘れてた。タルカス、アンタに手紙が来てたぜ」


マイペースなジョセフは、今更思い出したかのように懐を漁ると、スッと封筒をタルカスに手渡す。
急の空気を変えられ、少し呆れながらもタルカスは封筒を受け取った。


「なんだこんなときに・・・って、これは・・・」


手紙の差出人の名にはオミトの名が書かれていた。
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