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騎士団の異変を知る団長

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「よぉ団長。見舞いに来たぜ」


来る日も来る日も自室で療養しているタルカスの元には、非番で暇を持て余した団員がちょこちょこ顔を出していた。
本日も付き合いの長い騎士であるジョセフが酒を持って見舞いにやってくる。


「見舞いの品だ」


ジョセフはドンとテーブルの上に酒瓶を置いた。


「それのどこが見舞いの品なんだ・・・なんてな。俺にゃこれが一番の薬だ」


タルカスはそう言って、今持って来られたばかりの酒瓶をその場で空け、早くも口をつけて飲みだした。


「おいおい、いきなりかよ」


「来る日も来る日も部屋でじっとしてれば、酒で憂さ晴らしもしたくなるぜ。お前も籠ってみればわかるさ」


酒瓶の中身は一瞬にして半分ほどになっていた。
どうやら本当にタルカスは療養生活に飽き飽きしているのだなとジョセフは思った。


「どうだ?騎士団の方は変わりないか?」


タルカスは何気なくそう問う。別になんてことのない会話のつもりだった。
だが・・・


「あぁそれそれ。ちょっとだけ気になることはあるわ」


なんとも軽い調子でジョセフはそう答える。
ジョセフは常に飄々としていて、戦場でも今一つ緊張感の感じられない男であった。
代理を任せているブラホードから定期的に見舞いがてら報告があるので、別に取り立てて問題になっていることなどないと思っていただけにタルカスはジョセフの返答に少し驚く。


「団長が休んで以来、騎士団で変な動きがあるわ」


「なに?」


寝耳に水の言葉にタルカスは聞き返す。ブラホードからは一切そのような報告を受けていないからだ。


「最初はちょっとした違和感だった。だが、それをちょっと探ってみたんだが・・・どうやら、騎士団の一部の連中が森の定期討伐の際に死人の種をこっそり持ち帰っているようだ」


「はぁ?」


死人の種の持ち帰り。
死人の種のことは、黒の騎士団で長年脅威の物質としてしか認識していなかったタルカスからしてみると、それは奇行以外の何物でもなかった。


「あぁウチラの中でも知ってるやつってあまりいないんだけど、あれって世界的に単純所持すら禁止されている物質で、出すところに出せば結構金になるらしいんだわ。ちょっと俺も今回改めて調べてみてわかったことなんだけどよ」


「・・・うちの団員が密売してるってことか?」


「どうもそれっぽい。しかもそれを指揮してるのが・・・多分ブラホードかなって感じだ」


ジョセフの言葉に、すっかりタルカスは絶句してしまった。
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